ことばは、安心できる場所で育つ
教室を始めようと思ったわけ
私は作文だけを教えたかったわけではありません。
子どもたちが、自分の思いや考えを、自分の言葉で伝えられるようになったらいいな。
その瞬間を、ともに喜びたい、見届けたい。
そんな思いから、この教室は生まれました。
子どもたちが教えてくれたこと
私はこれまでに、たくさんの子どもたちと作文を書いてきました。
自信をもってのびのびと書き進めていく子。
作文、大好き!と目を輝かせ、自分の世界を広げていく子。
「書けないよ……」と涙がぽろりとこぼれてしまう子。
「何を書けばいいのかな」と、考え込んでしまう子。
本当にさまざまでしたが、共通点があることに気づきました。
それは、「安心して話せる場所があると、彼らの言葉があふれ始める」ということです。
忘れられない五文字
あるとき、小学校に入学したばかりの男の子が教室に来てくれました。
でも、何を聞いても、「うん」も「ううん」もなく、うつむいたまま。
それでも、その子はお母さんと一緒に休むことなく教室へ通い続けてくれました。
数ヶ月ほど経ったある日のこと、私はレッスンでその子にこんなふうに話しかけました。
「先生ね、〇〇くんのことをよく想像してみるんだよね。今日は学校で何をしたのかな。ドッジボールかな、それとも鬼ごっこかなって。」
すると、ちっちゃな声で、ポツリ。
「……おにごっこ。」
たった五文字。でも、この五文字は、私にとって忘れられない言葉となりました。
それから少しずつ、本当に少しずつ心を開いて、「先生、あのね…」と、自分から話してくれるようになったのです。
そして、ある日、自分の言葉で作文を書き始めました。その子が初めて作文用紙に向かったときの姿…思い出すたび今でも胸が熱くなります。
本当に大切だったもの
子どもたちは、私に大切なことを教えてくれました。
問題は、文章力ではなかった。
語彙力でもなかった。
何より大切なのは、安心して話せる相手や場所があること。
安心できる場所では、不思議なくらい言葉があふれてくる。そんな大切なことを気づかせてくれたのは子どもたちでした。
作文の前に、対話を。
いつも心がけていることは「作文を書くより前に、対話を大切に」です。
「今日はどんなことがあった?」
「そのとき、◯◯ちゃんはどう思った?」
「◯◯くんだったら、どうしていたかなぁ?」
おしゃべり感覚で対話を楽しみます。子どもたちは問いかけにしばらく黙って考えます。その沈黙さえ、私には愛おしい時間です。だって、子どもたちは、その間、自分の中で言葉を温めているのですから。
ゆっくりでいいんだよ
急がなくていい。
焦らなくていい。
慌てなくていい。
子どもも。そして、お母さんも。
スピードや効率が重視される世の中にあって、「ゆっくりでいいんだよ」と伝えてあげたい。心も、ことばも、ゆっくり育っていくものだと、私は思っています。
作文を書く力だけではなく、子どもの柔らかでまっすぐな思いを大切に育んでいきたい。そんな思いを込めて、教室の名前を「コスモス作文教室〜ことばを育む、心を包む〜」にしました。
私自身も、これまでたくさんの人の言葉に励まされ、支えられ、育ててもらいました。
だから今度は、その温かな言葉を次の世代へ手渡していきたい。
そんな思いで、子どもたちと向き合っていきます。
コスモス作文教室で育てたいのは、上手な作文でも、整った作文でもありません。
子どもたちが、自分の思いを、自分の言葉で伝えられるように。
一人ひとりが持つ「その子らしさ」があふれる作文を、一緒に育てていきたいと思っています。
だから、この教室では、作文に苦手意識をもっている子に、いきなり「作文を書いてごらん」とは言わないのです。
…その理由は、また次回、お話させてください。
作文のこと、子育てのこと、小さな悩みでも気軽に話しかけてくださいね。
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