凍える手でカメラを持ち走った。6年かけて辿り着いたフィンランドでオーロラを見た夜
「残念だけど、今回はやめておこう」
そう言って旅行代理店に電話し、フィンランド行きをキャンセルしたのが6年前、まだ大学生だった頃。ちょうど新型コロナウイルス“というもの”が日本でもついに出始めたらしい、という時期でした。
一緒にフィンランドを旅する予定だった友人の長年の夢は「オーロラを見ること」。その夢を叶えるはずだったのに。

あれから6年、昨年の11月ごろに友人から突然届いたメッセージ。
「オーロラ見に行かない?」
なんでも、2025年から2026年にかけてはオーロラがよく見える“当たり年”らしい。
「いいよ、いつにする?」
「クリスマスシーズンか、1月かな」
まるで「今度ランチ行かない?」ぐらいのテンションでトントン拍子で話が進み、1月にフィンランドを旅することが決まった。
ブラックフライデーで往復16万円の航空券を取り、国際線と寝台列車を乗り継いで、日本から24時間かけてたどり着いたフィンランド北部の街、ロヴァニエミ。

ホテルは“オーロラが見える”と謳われていた、市街地から離れたところを選んだ。コテージのような一棟建ての部屋で、受付から徒歩5分ぐらいのところ、「サービスだよ!」と部屋まで車で送ってくれた。
この日のオーロラ予報は「最高」。オーロラが見えると通知が来るアプリをダウンロードし、部屋でカメラ機材のセットをはじめる。
友人はベッドでゴロゴロ、私はソファで日本から持ち越しの原稿を書いていると…

来た!!
バタバタとダウンを着込み、帽子と手袋を装着し、三脚を持って歩いて3分ほどのビューポイントへと向かう。部屋を出ると、薄らと緑色の帯が空が浮かぶのが見えた。
すごい…!歩くスピードが速まる。

最初に撮れたのはこの写真。テンパってしまって、リモートシャッターを使わずにぶれてしまった。
でも、冷静になんてなれなくて、目で見て、シャッターを切って、また目に焼き付けての繰り返し。氷点下20℃の寒さも忘れ、オーロラに夢中だった。
分厚いアウター手袋はポケットに入れて、薄いインナーグローブでカメラを操作していたので手がじんじんした。
20分ほど経って、オーロラの活動が弱くなってきたので退散。「本当に見れたねえ…」となんだかふわふわした気持ちで部屋に戻る。
カメラを暖気に触れさせないよう、三脚ごとシャワールームに避難させ、次のアラートを待つ。
ポリポリお菓子を食べ、原稿の続きを書くこと1時間…2度目のオーロラアラートが鳴った!!寝ていた友人を起こし、また氷点下20℃の装備に着替えて急いで外に出る。

今度はさっきよりも活発なオーロラ!オーロラはカメラを通して見たほうがくっきり見えるものだが、このときは肉眼で見ても綺麗だった。
緑の帯がゆらゆら揺れていて、「これがオーロラのダンスかぁ…」と、私まで踊りたくなるほどすごかった。そう、すごかった。

「すごい!!見て!!ゆらゆらしてるよ!!」
と、興奮しっぱなしの私に対して、寝起きの友人はふにゃふにゃしながらぽかんと空を見あげていた。

「ほら!!夢だったんじゃないの!?!?」
と、思わず叫んだ。凍える寒さも打ち消す熱血教師爆誕である。
彼女の今回の旅のハイライトは、「オーロラに興奮したこっちゃん(私)が過去一大きな声を出したこと」だそうだ。オーロラよりも強いインパクトを残してしまった。

2回目は30分ほどでパタッと光が弱くなり、部屋へと戻る。ふたりでヒーターの前に手を掲げ、文明の利器のありがたみを噛み締めた。
そのあともう1回アラートが鳴って、同じように撮影に出かけ、私たちのオーロラ観測は幕を閉じた。

ちなみに、その3回目のオーロラ撮影のあと、部屋のドアが閉まらなくなる事件が発生した。思いっきり閉めても、すーっとドアが外側に開いてしまう。部屋の内と外の気温差で鍵の部分がおかしくなってしまったらしい。困った。
受付にメールをするも(部屋に電話がなく、スマホも通話機能のないesimを使っていた)夜なので返信は来ず。受付に直接呼びに行くか迷ったが、器用な友人が三脚でストッパーをつくってくれて、なんとかドアが開かないようにはできた。(翌朝、スタッフが見に来てくれて直った)
翌日のオーロラ予報は「低い」。初日に見られて本当によかった。本当にラッキーだった。
ホテルのスタッフさんによると、1週間泊まっても見られずに帰っていく人もいるそうなので、自力でのオーロラ観測はやはり“運”らしい。ああ、神様ありがとう。
❄️
「6年前じゃなくて、今来られてよかったのかもね」
フィンランドからの帰り道、友人がぽつりとつぶやいた。
たしかに、あのときはまだ写真を始めたばかりで、今ほど撮ることへの熱量も高くなかったので、「すごいねえ」と空を見上げるだけになっていたかもしれない。この6年のあいだに私も友人も写真が仕事の一部になっていた。
「オーロラを見る、そして写真におさめる」
そんな6年分の想いを強く握りしめて見上げたロヴァニエミの空。きっと、死ぬ前に思い出す景色になると思う。いや、もう一度見るまで、健やかに生きていようと思う。
❄️
▼おまけ(今回の装備)

▼オーロラ撮影は写真家・横田裕市さんのnoteを参考にしました
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