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ママの恋バナ 真希の章「パパはカツカレー」(ショート・ショート)

 連休最終日の穏やかな日に、ふんわり甘くて、ハッピーな家族のショート・ショートはいかがですか?(約1300字)



「何、このメモ?」

「ーー真希まきがくれたラブレターじゃん」

 日曜日、穏やかな秋の日差しがリビングに差し込む昼下がり。慶太けいたが断捨離をしようと言い出した。もうすぐ念願だったマイホームが完成する。その前に荷物を整理しようという話になったのだ。

 私は真希。高校の同級生だった慶太と結婚したのは5年前。それから、娘のつむぎが生まれ、つむぎは今年で4歳。今は2LDKの賃貸暮らしだ。

 同級生だったので卒業アルバムは2冊あった。1冊処分しようと、慶太のアルバムを開くとクリーム色のメモが挟んであったのだ。

「“好き。真希”って何これ、私?」

「真希が俺の下駄箱に入れたラブレター。覚えてないの?」

「覚えてない。というか、慶太から告白されて付き合い始めたでしょ。私たち」

「それはさぁ、こんなラブレターもらって、意識しちゃって......」

慶太が嬉しそうに目を細めてメモを眺める。

「えー、じゃあ慶太から好きになったんじゃないんだ!?」

「あぁ、いや、真希は可愛いと思ってたんだけど、好きになったのはこのラブレターもらってからかな?」

「だから、それはラブレターじゃないし。メモだし。書いた覚えない!」

「でもさ、この真希の希の上が十字みたいに書くのって、真希だろう?」

(確かに私の字だ。でも、全然記憶がない)

よく見ると、メモの”好き。真希”の文字の上部を切り取ったような跡がある。

「これは他のことを“好き”って書いたメモじゃないかなぁ」

「じゃあ、他のやつが好きだったのか?」

慶太はちょっと嫉妬しているようだった。

「ううん。好きな人はねぇ......。なんだろう?」

私はあわてて適当に誤魔化した。

「とにかく、真希から告白したんだからな!」

「え〜!なんかもやもやする」

結局、そのメモがなんだったのかはわからずじまいだった。

 そのあと、三人で建築中の新居を見に行くために、私はつむぎと一緒に車の後部座席に乗り込んだ。新居は母校の近くの住宅地。母校の脇を通って、高校時代からあるCoCo壱番屋の前を通り過ぎる。

(あのメモ用紙、もしかして部室にあったメモ用紙じゃないかな?)

CoCo壱番屋の看板を見て、突然そのときのことが蘇ってきた。

「ーー慶太!思い出した!」

「何?」

運転中の慶太は、ルームミラー越しにちらっと私の顔を見る。

「あのメモね、バスケ部のコーチの奢りでCoCo壱番屋から出前を取ったときに、何が好き?って聞かれて書いたメモだよ!」

「何、それ、俺はカレーだったの?!」

「きっと、菜々のしわざよー。メモを集めたのはマネージャーの菜々だもん。

あのとき、お腹が減っていて、“カツカレーが好き”って書いたの!」

「俺はカツカレーかよ!」

「パパ、かつかれーなの?」

チャイルドシートに乗ったつむぎが不思議そうに聞いた。

「そう、パパねぇ。カツカレーだったの〜」

(でも、菜々は知ってたはず。私が慶太が好きだったってこと。お節介だなぁ。ありがと。菜々)

私はつむぎの頰に頬を寄せて笑った。

「ねぇ、帰りはCoCo壱でカレーを食べていこう」

「あぁ、俺はカツカレーな!」

運転席で慶太も笑ってる。

「かれぇ、かれぇ、かれぇ」

つむぎの無邪気なカレーコールが車の中に響きわたった。





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