大御所Grant Greenがポップスに立ち向かう一枚、「Visions」
ブルーノートの看板ギタリストであるKenny Burrellについて書いたら、もう一人の看板ギタリストGrant Greenについても書かねばならないだろう。ブルーノートのオーナーであったアルフレッド・ライオンはこの二人のギタリストを相当気に入っていたのか、ブルーノートレーベルの名盤にこの二人のどちらかが頻繁に登場している。
私がグラント・グリーンというギタリストの名前を知ったのは大学生の頃の同級生が好きだったからであった。彼は相当このギタリストを気に入っていたらしく、グラント・グリーンのアルバムを愛聴し、ギターでコピーしていた。
もっとも、グラント・グリーンのギターフレーズはシンプルで圧倒的な説得力があるのでフレーズをコピーしたところでなかなか彼のような音楽ができるわけではない。現在活躍するギタリストの多くがこのギタリストからインスピレーションを受け自分のスタイルに取り入れていることからも彼がどれだけ華々しい活躍をしていたかが窺い知れる。
私も学生の頃彼のレコードを聴き、ジャズギターというものに強く憧れていた。特に「Grantstand」というアルバムが好きで(彼の代表作の一枚である)繰り返し何度も聴いていた。初期のグラントグリーンはストレートアヘッドなハードバップギタリストであったのだが、私も初期のレコードが好きでそれらを中心に聴いていたのを覚えている。
グラント・グリーンはその後少しずつ音楽性を変え、当時流行っていたジャズファンクを演奏したレコードが続く。エレクトリックベースが入り、それにより生み出される力強いグルーブの中で演奏されるギターはグラント・グリーンの真骨頂とも言えるだろう。私自身、その時代のアルバムも持ってはいて、凄いことは凄いのだけれど、あまりにもギラギラしているのであまり頻繁には聴かなかったのを覚えている。
そんな中でちょっと異色作の「Visions」というアルバムがあり、ここでもファンクビートにのってグラント・グリーンがギターを弾きまくるのだが、このアルバムに限っては曲目もポップで比較的聴きやすい。
曲目だけを見ると、当時のカーペンターズ等のポップスやロックのヒット曲からモーツァルトまで幅広い選曲である。こんな曲で本当にグラントグリーンの音楽ができるのかよ、とちょっと不安になるのだけれど、聴いてみるとそこには紛れもないグラント節がありちょっと安心する。エレクトリクピアノ(おそらくウーリッツァー)が入っていたりヴィブラフォンが入っていたりして、いかにも70年代の幕開けという感じのサウンド作りである。その上でグラントグリーンは独特のリズム感でハードバップ時代と変わらないシンプルでブルージーなジャズギターを聴かせる。
そのギターの太い音色、ピッキングによりちょっと歪む感じなんかがまたカッコいい。グラントグリーンとケニーバレルは当時の他の売れっ子ギタリストの多くの音色作りがクリーンで明るいのに対して、ちょっと歪んだサウンドで弾いているのもブルーノートらしさにつながっていると思う。
「Visions」に収録されている曲目から、このアルバムはともするとイージーリスニングみたいな音楽に仕上がりそうな危険さを持っているのだけれど、グラント・グリーンのギターがそうさせない。その絶妙なバランス感覚が彼の音楽の魅力の一つでもある。60年代にはラテンのアルバムを録音したり、ゴスペル曲集やカントリー曲集をリリースし、それ等も彼の音楽に仕上げてきた実績がある。マイケル・ジャクソンやらモーツァルトの曲を演奏しても大丈夫(何が大丈夫なのかはわからんが)。
それでも、有名曲が演奏されているという点では、グラント・グリーンの入門作としてちょうどいいのかもしれないとも言えなくはない。グラント・グリーンがどんなギタリストなのかを味わうにはこのくらいわかりやすい方がいいのだろう。オルガントリオで熱く泥臭いジャズを弾きまくっている彼の初期のアルバムよりも、このくらいがちょうどいいかもしれない、と、自分に言い聞かせて聴いてみているのだが、案外悪くない。
グラントグリーン、久しぶりに聴いてみようかなぁ、なんて考えている方はぜひ聴いてみてください「Visions」
それにしても、このジャケット、ちょっと怖い、、
