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野垂

いつも取り巻きがいっぱいで
何をやっても一等賞だった
おふくろは自慢してまわり
近所のババアたちも褒めそやす
舞台では主役をはって
いつも間違いなく満点を取った

ああクソ野郎だったよ
畑を駆ける山犬に憧れて
夕焼けを横切る雉に心奪われ
海に沈みゆく陽に胸を焦がした
それなのに全部捨てて
どこにでもある役を演じちまった

いやになったよ続かなかった
嘘をつかれていつも寂しくなる
パーティの後に放り出されて
寒さでひとり目が覚めてしまう
たまらなくロマンチックな作り話と
剥き出しの下卑た欲望が
俺のベッドでよろしくやってるんだ

欲しかったのは優しさじゃない
喜びでも温かさでもない
俺が欲しかったのは正直さだ
ひとつの曇りもない透明さだよ
お前が酒を飲んで暴れまわって
俺にゲロをかけた日だって
正直なお前が愛しくて抱きしめた


思えば随分昔の話だ


わかるだろう?
何かになりたかったわけじゃない
金も拍手も要らないんだ
ただお前と罵声を浴びせ合いながら
お前はお前で
俺は俺で
ただそれだけで良かったんだ


故郷じゃ誰もが
俺は死んだって言ってる
おふくろだって今は
俺の話なんかしやしない


せいせいしたぜ


賢い必要なんかないんだ
そのせいでたくさん損をしても
道端で寝ることになっても
歯が抜けて顔がひしゃげても
あのクソ野郎よりはよっぽどいい
汚ねえ顔のお前と俺は
幸福な王子とツバメなのさ


だって腹の底から笑っただろう?


誰にも見向きもされず
街の隅で凍えている者たち
明日はもういないかもな
でもその青ざめた顔が
そのくしゃくしゃに絡んだ髪が
その臭いのとれないボロ布が
そのままでいま美しい


もうすぐ時間だ


ほんの少しでいい
あの曲を聴かせてくれ
眠ってしまう前に
もう一度だけ


Fairytale Of New York

※多少の刺激を得ていることを除けば、この詩と動画の曲は関係はありません。


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