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第2話 気にかけてくれて、こころが...

その日、私は少し疲れていた。

子どもが夜中に熱を出して、ろくに眠れなかったまま朝を迎え、
バタバタと家を出て、気づけばエプロンのポケットに子どものハンカチが入っていた。
夫は何も言わずに出勤していった。いつも通り。まるで空気のように。



そんな状態で職場に入ったから、いつも以上に気を張っていたのかもしれない。

開店準備のとき、商品が入った段ボールを運ぼうとしてバランスを崩した私に、
後ろからすっと手が伸びた。

「無理しなくていい。休憩、入ったら?」

その声に、ふと力が抜けた。



午後の休憩室。
たまたま時間がかぶった彼と、2人きりになった。

私はアイスコーヒーを持って、ソファに沈むように座った。
彼は私の向かいに腰を下ろして、缶コーヒーを手にしていた。

「朝倉さん、…今日、ちょっと元気ない?」

何でもない風にそう言われて、一瞬、言葉に詰まった。

「娘がちょっと熱出しちゃってて、寝不足で…」 

「ああ、それはしんどいな。奥さんって休まれへんよな」

その一言が、不思議と胸に沁みた。



夫は、こんなふうに私の体調や気持ちに気づいたことがあっただろうか。
いや、たぶん、もうずっとなかった。

私は苦笑いをしながら、「まぁ…そんな感じです」とだけ返した。



彼は、視線を外して缶コーヒーのプルタブをいじっていた。

その姿がなぜか妙に落ち着いていて、
この人といる時間が少しだけ心地いいと思ってしまったのが、
自分でも意外だった。



休憩が終わると、彼は立ち上がってこう言った。

「無理せんといてな。って、言っても、無理しちゃうんやろけど」

その声のトーンが、少しだけ優しくて、
私は思わず背中を見送ってしまった。

ほんの数秒、なぜか動けなかった。



      次回一気に距離が縮まる。。

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