幽霊の実在を前提とした量子力学モデル・前編😅😅

 前編(疑問編)では、量子力学の枠組みから幽霊が存在するための疑問や前提を取り上げます。果たして、幽霊という存在は量子力学的に存在できるのでしょうか、、、。


1.量子力学が幽霊の存在を許さない理由

 素粒子や原子など微細な物質の運動は空間的に拡がる波として伝播するため、複素の位置や速さ、軌道が可能性として重ね合わさって存在します。これは人間の日常生活からは理解しがたいですが、野球ボールが投げられて空中を飛んでいるあいだ、同時に複数の軌道を描いているようなものです。

 じっさいに観測する(キャッチャーミットに届く)までは、その位置や軌道は確定せず、伝播する波として複数の可能性が重なり合って存在しています。この波動関数は時間とともに滑らかに変化しつづけますが、観測がおこなわれた瞬間に波の拡がり一気に収縮し、特定の状態へと定まるように見えます。

 この量子力学の枠組みのなかで幽霊や霊障といった心霊現象を考えると、「波動関数の発展に、幽霊や霊障を表現する独自の干渉パターンや局所的なエネルギーの跳躍を自発的に起す情報処理主体=霊魂がいる」と仮定することになります。

 しかし、標準的な量子力学では、波動関数はきわめて厳密な保存則にもとづいて時間発展するため、そこに“意図的な割り込み”が入る余地はありません。

 波動関数は以下の量を保持したまま時間発展します。

👻位相情報
 波動関数は、波どうしの山と谷のタイミングやズレ具合を示す相対位相をもっている。波どうしが重なりあい、波の揺れを強めたり弱めたりする干渉パターン(コヒーレンス)の原因になる。揺れの強さである振幅の分布は、量子がそこに存在する確率密度を表現する。
 観測前の量子は、この位相情報を完全に保持したまま進化する。この情報が失われないかぎり、重ね合わせ状態はそのまま維持される。

👻総エネルギー期待値
 量子の運動の激しさや位置エネルギーの平均的な合計。波の揺れが「どれくらい急に曲がっているか(曲率)」と「どれくらい高く揺れているか(振幅)」の組み合わせで決まる平均エネルギー。
 純粋状態であれば総エネルギー期待値は変化しない。つまり、霊魂が「外からエネルギーを加えた」かのような跳躍は、基本法則上は起こらないということになる。

👻純粋性
 外部環境と絡んでいない量子状態は純粋状態であり、重ね合わせ状態はお互いに波として干渉するため、1本の波動関数だけで表せる。
 標準的な時間発展では純粋性も保存され、エントロピーは増減しない。つまり、状態の位相情報やエネルギーが勝手に増えることも、減ることも起きない。

 この場合、時間発展は線形かつ完全に可逆であり、位相情報の総量、総エネルギー期待値、純粋性は一切変化しません。線形とは、波動関数の各成分が互いに比例的に変化するという意味で、外から特別な偏りを作ることができません。さらに時間発展は「可逆」で、数学的な定式(法則性)に基づいて過去へ戻して再現することもできます。

 なので、線形可逆的な発展規則では、幽霊という情報やエネルギーをもちこむ抜け道はそこにはないのです😢

2.観測のとき、なにが起きているのか?

 しかし、じっさいに量子が観測されると、干渉成分である重ね合わせ状態は失われ、あたかもひとつの古典的な結果だけが現れたかのように見えます。この現象を理解するためにもっとも重要なのが量子デコヒーレンスです。

 量子デコヒーレンスでは、
 1.)量子が観測者をふくむ環境と相互作用すると両者は量子もつれ状態になる
 2.)量子もつれは位相情報を環境側へと転送する。
 3.)位相情報は量子もつれを介して巨大で乱雑な環境に拡散し、相互作用した量子の部分系は干渉性(コヒーレンス)は失われる。
 4.)相互作用した量子の部分系は古典的な混合状態(古典的な確率状態)になり、干渉成分である重ね合わせを観測することできなる。
 ※.)量子の全体系(量子もつれした量子系+環境)である波動関数は線形可逆的なまま発展する。

 量子は、光子や空気分子、観測装置を構成する原子などの外部環境と相互作用すると、両者は位相情報を媒介する量子もつれの状態になります。この量子もつれを通じて、量子がもつ位相情報は環境側へコピーされます。

 環境の要素がさらにほかの要素と量子もつれを通じて連鎖的に情報を共有するため、元の重ね合わせ状態に含まれる位相情報(波動性)は急速に環境全体へ拡散し、事実上、回復できなくなります。

 この過程により、観測対象となる量子(部分系)は、干渉性をもつ純粋な重ね合わせ状態から「環境と絡みあった古典的な混合状態」へと移行したかのように見えます。これにより、人間にとっては重ね合わせ状態が消えたように観測されます。

 デコヒーレンスは、わたしたちがなぜ日常生活で重ね合わせ状態を見ないのかという問いには答えますが、「なぜ重ね合わせ状態から特定のひとつの結果が選ばれ、確定するのか」という観測問題の核心は説明できません。

3.幽霊を量子力学で説明するために必要なこと

 幽霊を量子力学であつかうとすれば、もっとも重要な問題は「波動関数の収縮がなぜ、無数の可能性のなかから特定の結果だけを選ぶのか」という点です。

 なぜ、その瞬間にその干渉パターンの点だけが“実現した”のか

 ほかの可能性(干渉パターン)はどんな仕組みで“消された”のか

 その選択に外部的な相互作用(意図的な介入)が入りうるのか

 介入が本当にあるなら、位相・エネルギー・純粋性の保存則をどう修正すればよいのか

 このような疑問に答えるには、現在の量子力学の枠組みを越えた、波動関数の収縮のメカニズムが必要になります。

 幽霊という概念を理論に取りこむには、幽霊(霊魂)が「どのように波動関数の枝をひとつにまとめ、ほかの可能性を表現する位相成分(ほかの枝)を削り取るのか」を説明する新しいダイナミクスを導入する必要があると考えられるのです。


 次回、後編(解決編)へつづく