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琥珀色の記憶を、パンの香りにのせて

あらすじ

「消えたお店と、導かれた再会」
四度目の出逢いを経て、穏やかな恋人としての日常を歩んでいた颯と紗月。
ある日、ふたりが思い出の小さな骨董屋を訪ねると、店は跡形もなく消え去っていた。
落胆する紗月だったが、数ヶ月後、別の街の静かな路地裏で聞き覚えのある真鍮の風鈴の音を耳にする。吸い寄せられるようにドアを開けると、そこにはあの時と変わらない笑みを浮かべた骨董屋の店主が佇んでいた。
「壁の絵と、颯の気づき」
思わぬ再会に胸を躍らせる紗月は、店内で見つけた真鍮と木の美しい「アンティーク・ブレッドケース」に夢中になる。
その横で、颯は壁に掛けられた一枚の古い油彩画に目を留める。
パリの街角にあるパン屋の前で、肩を組んで笑い合うふたりの青年――。
描かれた男のひとりは若き日のパン屋のマスター、そしてもうひとりは、目の前で静かに時計を修理しているこの店主だった。
「……このふたり、知り合いどころか……」
颯は、店主が隠していた驚くべき過去とマスターとの絆に最初に思い至る。
「開かれたケースと、閉ざされた記憶」
紗月が買い求めたブレッドケースをいつものパン屋へ持ち込むと、それを見たマスターの手が大きく震える。
ケースの二重底からは、三十年前にふたりがパリで書き残した「幻のレシピ」の断片が見つかったのだ。
かつて同じ夢を追いかけながらも、ある出来事をきっかけに袂を分かったマスターと店主。
「過去」を愛でる骨董屋となった男と、「今」を焼き続けるパン屋となった男。止まったままの二人の時間を動き出させるため、颯と紗月はレシピの解読と「思い出のパン」の再現に協力することを決意する。
「琥珀色の記憶が溶けるとき」
試行錯誤の末、ついに焼き上がった焼き立てのパン。その香ばしい香りに導かれるように、骨董屋の店主がパン屋の扉を叩く。
三十年の時を超えて交わされる言葉と、あたたかなパンの味覚。
骨董屋の琥珀色の記憶はパンの香りに包まれて優しく解きほぐされ、颯と紗月の絆もまた、より深まりを見せていくのだった。

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