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rapid_sorrel8624
新説七夕物語 作:俺 #毎週ショートショートnote
(本文471字)
子どもたちが寝静まった夜。
夫婦は居間で晩酌をしている
部屋の隅には、子どもたちが一生懸命飾りつけた七夕飾りが立てかけられている。色とりどりの短冊が、風もないのにかすかに揺れていた。
夫はグラスを口に運びながら、その笹を眺めてぽつりと呟く。
「七夕ってさ、織姫と彦星が年に一度だけ会える日なんだよな」
「でも、なんで笹に願い事を書くか知ってるか?」
妻が首を横に振ると、夫は少し得意げな顔になった。
願いを叶えてあげると言われれば、みんな喜んで笹を飾る。そうして集まった笹は、実は彦星にとって欠かせないものなのだという。
笹が高ければ高いほど有利。
何に有利なのかと聞けば、夫は真顔で答えた。
――棒高跳び。
彦星は織姫に会える一日以外の三百六十四日を、ひたすら助走の歩幅を合わせ、跳ぶ練習だけを続けている。
そして七月七日。本番直前まで鍛え上げた彦星は、みんなが願いを込めて飾った笹を棒代わりにして、大きく空へ跳ぶ。
織姫のいる星まで、一気に。
「だからさ。彦星のためにも、笹はできるだけ高いほうがいいんだ」
妻はそうなんだねと頷くと夫のグラスへ静かにビールを注いだ
久しぶりに参加されていただきました😊
