記者風になった記事
くだらないゴシップ記者にはなりたくない。
ひっそり隠れてる怪しいものを観察したい。
観察して正体を突き止めたい。
出来れば種明かしされても怪しいままであってほしい。
解明できてもがっかりしないネタは何があるだろう?
ゴシップの定番、有名人の本性とかはどうか?
う~ん、解明したくなるほど芸能人とかに関心が湧かないな。
テレビとか見ていると、整えられた表面が見える。
私はファンになるほど誰かを応援したことはない。
幻想をあえて信じたい人がファンになるのかもしれない。
人気なタレントでも一度変な噂が流れたなら一気に暗黒面がさらされる。
「あの人はそんな人じゃない」
「表出した汚い部分こそ本性だ」
「まずは情報を精査すべき」
などなど、様々な派閥が争い始める。
結局は何が本当なのかわからないまま。
忘れ去られてうやむや。
毎回同じ流れになるのは不思議ではある。
だけど、有名人への関心は強くないからな。
なにか違うスクープが欲しい。
いっそのこと身近ななんでもないようなことでもネタにしようか。
窓の外を眺めてぼんやりとする。
一人で贅沢に時間を過ごしてる間にも世間は忙しく働いている。
私も何かした方が良い気がしてくる。
皆も休めればいいのにね。
苦しいところまで追いつめるのが仕事の常識になっている。
こんな世間に誰がした?
誰かが社会悪にもメスを入れなければならぬ。
誰かがやってくれないか?
例えば時間が余っていて、窓の外を眺めているような人。
仕方がない。
現場の声でも聴きに行くか。
「贅沢に時間を過ごすのも悪くないと思いますが、なぜそんなに忙しそうなのですか?」
いや、よくない。
こんなこと、忙しい人に聞くことではない。
いっそのこと人間以外に聞いてしまえば、私の方でも困らなくて済む。
たとえば通りすがりの虫とかね。
怠ける働き蟻へのインタビューはどうだろう?
蟻の集団にも働かないやつがいるらしい。
働かないなら蟻は何をしてるんだろう?
蟻のAさんに声をかけてみる。
「すいませんちょっとお時間よろしいですか?周りの蟻たちは忙しく働いているのに、あなたサボってますよね?うろうろしているだけで何もしてませんよね?」
習性に従って、即断即決なのが生物としての強みではないのか?
食べ物なんて食べられれば何でもいい。
服は迷うどころか、いっそのこと着ない。
利他とか利己とかもない。
無駄な思考を許さずにひたすら効率を求め続ける。
そんな集団にいる異常個体。
習性に逆らってでも働かない。
「・・・黙秘ですか?」
働かない蟻のAさんは私を無視してどこかへ行ってしまった。
もしかしたら、迷っているんじゃないか?
習性に従って即決即断すれば迷わず動ける。
それだと納得できないから決められない。
迷っているから動けない。
そんな仮説が浮かぶ。
記事にするために証拠が必要。
芸能人の熱愛記事なら写真一枚で証拠になるかもしれない。
でも蟻の場合は写真を撮っても証拠にならない。
ただのブロマイドにしかならず、サボってる証拠としては不十分。
蟻Aさんが本音を語れば何かわかるかもしれないが、決して口を割らないだろう。
家の前で張り込むか?
服を着てオシャレしたり、美食を求めて不健康になったりする。
そんな隙を見せることがあるかもしれない。
そこを写真に収めることが出来れば証拠にできる。
考えすぎて人間に近づきすぎた蟻。
結果、迷って決められない。
逆はどうだろう?
考える事をやめて、蟻に近づきすぎた人間。
・・・やめておこう。
忙しい人の迷惑になる。
今の私にはヤマがデカすぎる。
今回はボツだな。
興味とか怪しさが足りなかった。
考えすぎるのも良くないみたいだ。
別のネタ探しに外回りに行くことにする。
