「社会復帰の訓練? 盆踊りのスタッフやって!。」ひきこもりの若者を祭り会場に放り込んだら、顔つきが変わった話。
こんにちは。 ギルドマスターの本田です。 愛知県常滑市で「若者自立就労センター」という、文字通り人生の脱輪から復帰を目指す若者たちの「ギルド(活動拠点)」を運営しています。
さて、突然ですが質問です。
「人間関係が怖くて家から出られない若者」に必要なものは何でしょう?
心理カウンセリング
自己分析シート
盆踊り大会でゴミ箱の横に立つこと
普通の支援機関なら「1か2」と答えるでしょう。 ですが、私がこの3年間やり続けて確信したのは、圧倒的に「3」です。

そう、うちのセンターでは、訓練生たちを地元の盆踊り大会にスタッフとして合法的に巻き込んでいます。
机上の理論より、提灯の飾り付け
「若者支援の事業所が、なんで盆踊り主催してんの?」
地元の人からもよく聞かれます。お祭りって、裏側はめちゃくちゃ泥臭いんです。 会場の設営、提灯のコードの絡まりを解く作業、受付、キッチンカーの誘導、音響の爆音調整、ゴミの分別指導……。
でも、これこそが最高の「生きた訓練場」なんです。
最初はみんな、人前に立つなんて怖くてビクビクしています。 「自分なんて何の価値もない」と本気で思っている子たちです。
そんな彼らに、私は心理学の難解な理論を語ったりしません。 代わりに、提灯の紐を渡して「そこ結んどいて!」と頼みます。 ゴミ箱の横に立ってもらって「ペットボトルはあっちねって案内して」と頼みます。
お祭りには、無駄な仕事が一つもありません。 そしてここから、ちょっとした「魔法」が起こり始めます。
人を変えるのは「支援」ではなく、近所のおばちゃんの「ありがとね」
会場でゴミを分別してあげた訓練生に、近所の来場者や小さなお子さんが言うわけです。
「ありがとねー! 助かったわ!」 「暑いのに頑張ってるねぇ」
この瞬間です。
それまで死んだ魚の目のようだった若者の目が、カッと見開く。 猫背だった背筋が、すっと伸びる。 「あれ? 俺、今めちゃくちゃ感謝された……?」という顔をする。
自己肯定感なんてものは、自己啓発本を読んでも、部屋で一人で「自分はできる」と念じても絶対に上がりません。 「誰かの役に立った」という生の手応えでしか、回復しないんです。
お祭りが終わる頃には、あんなに人嫌いだった子が自ら歩み寄ってきます。 「ギルドマスター、次は何片付ければいいですか?」 「来年もこれ、俺にやらせてもらえませんか?」
心理カウンセリングを50時間受けるより、盆踊りで「ありがとう」を10回言われるほうが、人は圧倒的に変わります。
100%理解なんて無理。だから一緒に汗をかく
正直に言います。 支援歴がどれだけ長くなろうが、私には彼らの苦しみを100%理解することなんてできません。人間の悩みを完全に分かった気になるなんて、支援者のただのエゴです。
だから、理屈で人を変えようとするのをやめました。
「分析」なんて机の上でやってないで、とりあえず笑顔がある明るい場所に連れ出す。 一緒に重いテントを運び、汗をかき、おみやげの焼きそばを食う。
「完璧じゃなくていい。人と話せなくてもいい。とりあえず今日、提灯一つ吊るせたら100点!」
人間は、誰かに「お前ならできる」と心から信じられた分しか、自分を信じられるようになりません。だから私は、彼らの可能性を100%バカみたいに信じることにしています。
若者は「変われない」んじゃない。「場所」がなかっただけだ
今年も無事に盆踊りが終わり、誰もいなくなった会場を見渡しながら確信しました。
若者が引きこもったり、動けなくなったりするのは、本人のやる気がないからでも、能力がないからでもありません。 ただ単に「自分が役に立っている」と実感できる場所が、たまたま無かっただけです。
もし今、 「うちの子、もうずっと部屋から出てこないんです……」 「何をしても変わらないんじゃないか」 と一人で絶望しているご家族がいたら、ちょっと待ってください。
魔法みたいに一瞬で人生がドラマチックに変わるなんて言いません。 でも、小さな「できた」と、誰かからの「ありがとう」を食べることで、人生のエンジンは必ず再び動き出します。
変われない人間なんていません。 変われる場所に、まだ出会っていないだけです。
「できることからやってみる」 人生を取り戻す第一歩なんて、本当にそれだけで十分なんですよ。
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