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データワールド(DataWorld)4話:完

□ 青衣亡き後:赤坂散りゆく

 

「青衣の敵は私が打つ‼」

 赤坂が霧咲の場所に向かう時、夜魅が壁となって立ちふさがる。

 金の矢を霧咲に向け放とうと強く弓矢の元を大きく引いているときだった。

 夜魅が口を開く。

「フフッ・・・フッ・・・青衣が一瞬で消滅するとは、面白いわね・・・」

「嘘でしょ……もしかして……あんた……記憶があるの⁉」

「あなたには言っておいても良さそうね。どうせ消滅するのだからね・・・フフッ」

「記憶をなくしたフリをして、何が目的??」

「あなたに教えるほど、お人好しじゃないわよ・・・青衣と同じように消滅させてあげる」

「そんなに簡単にやられるつもりなんかないは!」

 そう言葉にすると、先程の矢の先を夜魅に向け屋を放つ。

 金の矢は、はじめから、超加速して、夜魅の心臓をめがけて飛んでいく。

「始めから、あんたのことは信用していなかったのよ! 先にあなたから消してあげる!」

 そう言うと赤坂は、続けて銀の矢を放つ。

「実戦経験が少ない生まれたての子は、人間もデータでも、使えないわね」

夜魅は背中から、黒い翼を大きく広げ飛び立つと、金の矢と銀の矢を交わした。

夜魅は、黒い翼で進む方向がわからないように複雑な動線で赤坂に接近。

その動きはまるで蝶の様に華麗……。進む方向ははっきりしないような飛び方。

その複雑な飛び方のせいで、赤坂の追尾の機能が使えない。理由は赤坂の目で追える相手に金の矢を追尾させているのである。

つまり、先が読めない相手には無効だということだ。

それを戦いの中で学習した夜魅は見事、赤坂の能力を1つ無効化した。

その後との戦いは夜魅が優先的に事を運び複数回ランダムな方向から、刀で切り刻み、最後に赤坂の頭部を切り刻んだ。

 霧咲同様に、スピードが格段と上がり、矢を軽々交わせるスピードが合った。

「きゃー‼」

「フフフ・・・やっぱり弱すぎるわね。こんなおもちゃ作って面白いのかしら……」

その姿はまさに悪魔のように口渇で、禍々しい瞳を夜闇に浮き上がる。

「青衣くん……私は……私は……」

 赤坂は左目から斜め左を刻まれて青白い粒子が放出しており、その吹き出している粒子を右手で抑え込んでいた。

 そのボロボロの赤坂は左手になにか持っている。

 その左手にあるものと青衣のちって言った粒子に触れさせていた。

 あまりにも無意味に思えるその姿を哀れんだのか夜魅も霧咲も見ている。

 後少しで消滅する者として静かにその最後の別れの時間を与えているのだろう。

 だが、その時の赤坂の目は薬学の狂ったような表示に何処か似ている。

「青衣くん……私と一緒に戦いましょう……ね」

その時だった。

視界が一瞬見えなくなる。

赤坂が持っているなにかが、光が放たれ目の前が見えなくなる。

フラッシュアウトだ。

その視界が目に馴染むまで、数秒……。

なにか赤いラインが夜魅の視界に入ってきた。

とっさに赤いラインを避ける夜魅。

気づくと夜魅はバランスを崩して、落下していた。

なんと銀の矢でもなく金の矢でもなく、赤の矢が夜魅の右翼を貫いていた。

一瞬の出来事だった。

「⁉」

「どういうことかしら……あなた……確実に……」

 夜魅は、左翼をだけで飛ぶことができず、くるくると落下しながら赤い矢が飛んできた方向を確認した。

 夜魅の目に写ったのは半分赤い髪と半分白い紙になった赤坂の姿……。

 これは、本当に先程の赤坂なのかと疑問に思うくらい髪色もそうだが雰囲気が変わっていた。

 そう、青衣のような冷静さを感じるのだ。

「……まさか……」

 霧咲が静かに呟く。

「気づいたわね……そうよ……今の私は青衣を吸収したのよ……」

「まさかそんな事ができるとは……」

「こんな自体が起きた時私と青衣くんが一つになれるようにこの人工シナプスの欠片を薬学様からもらっていたのよ」

 落下している夜魅は苦笑いをして言葉を放つ。

「ホント……とてつもない執念ね……フフッ……」

 あの夜魅が苦笑いするほどだ。

 薬学の次にこの世界で頭がおかしいのは赤坂かもしれない。

それを感じさせたのは今の赤坂の外見。

先程まで、青い粒子をドバドバ出してた片目が綺麗に治っており、青衣の瞳になっており髪色も真っ白。

 もう片方の片目と髪色は元の色の赤色。

 つまり、半分赤坂であり、半分青衣の力を宿した状態。

 霧咲が呟く。

「もしかして……青衣の力も受け継いでいるとしたら……」

 赤坂は弓を構え夜魅の再び矢を放つ。

「次はこれでどうかな」

 冷静に狙いを定めて、矢を打ち放った。

 その矢の色は青色。

 霧咲は夜魅を守ろうと屋を弾くため、刀を振り下ろした。

 とっさに矢を弾くため、刀を大きく振りかざしたため、祇那は空中で一回転した。

(おかしい……弾いた感覚がない……)

 霧咲は目を大きく開きながら、夜魅を確認した。

「がぁぁあ!」

 青の矢がよる身の太ももに刺さっていた。

「まさか! 青衣の時間停止能力を使えるの⁉」

 霧咲は驚きと同時にいま対峙している相手が青衣のときよりも赤坂単体の時よりも手強くなったことを自覚した。

(もしや……あの赤い矢は赤坂の力の矢だった場合は……)

 夜魅は感づいた。

 落下しながらも、左翼を巧みに使い背後に飛んでいった矢が戻ってくる矢……。

 つまり、金の矢の能力があるとしたら、と思い警戒する。

 予想は当たりだ。

 あの赤い矢が夜魅に再度飛んできていた。

 だが、まだ距離がある。

 このまま落下した後に着地して、そのまま刀で弾くなり、ガードするなりすれば、間に合う。

 そんな距離だった。

「気づいて良かったわね……でも、1つだけ不正解……」

 青いの力を得た赤坂が不敵に笑う。

「⁉?」

 夜魅が着地の体制で刀を地面に指した時だった。

 赤い矢が急激にスピードを上げたのだ。

 とっさに、残っている右翼でガード。

「ぐぁあああ‼」

 夜魅の肩に矢が刺さった。

 そう、つまり、赤の矢は金の矢の追尾能力を保有しており、更に、銀の矢の時間調整能力&貫通能力が備わったという事だ。

 すなわち、赤坂の能力が赤の矢で青衣の能力が青の矢に付与されているといった状態になっている。

 夜魅と霧咲はとっさに今の赤坂がどれだけ危険な相手かが判断がつく。

「これで夜魅の邪魔が入らないわ……敵を打たせてもらう……祇那……」

 そう言うと赤の矢と青の矢を2本放つ。

 赤の矢を放たれた瞬間から速度が加速し、青の矢よりも先行する。

 その赤の矢のスピードに合わせて霧咲は刀を振り切っる。

 が、案の定赤の矢はスピードを落とし、刀の触れる直前で減速し、振りかざした瞬間に加速した。

 それを予感していた霧咲は鞘をもう片方の手に持ち赤の矢を弾いた。

 その後青の矢を探したが、見つからない……。

(―――痛い……)

 霧咲の腕から激痛が走る。

 赤の矢を弾いた振動で腕から感覚が無くなっていたと感じていた鞘の方を持っている腕を見ると、そこには腕と肩を貫いて居る青の矢があった。

「やってくれたわね……痛いじゃないの……はぁ……はぁ……」

「決まってるでしょう! 白夜くんの能力で時間を停止して埋め込んだのよ……まぁ能力の限界はあるけど、もう痛みで戦えないんじゃないの?」

その言葉どおり、霧咲はうめき声を上げていた。

「グッ……アァァ‼!」

「傷跡が痛むようね・・・」

 赤黒い粒子が方貫かれた方と腕の傷から放出している。

「そして、弾いた赤の矢はまだ追尾できるの……」

「⁉」

「これで消滅させてあげるは‼ ハハハ‼ ざまあみろ‼ 白夜くんの興味を奪い、命までも奪ったあんたには報いを受けてもらうわ‼ 死ね‼!」

「これぐらいで私がやられるとでも……本気で思っているのか?……女……」

「⁉?」

 先程までの雰囲気が一変している。

「まさか、もうひとりの人格・・・目覚めたのね……」

「そういう事だ……悪いが肩をつけさせてもらう……」

 そう言っている間にもみるみるうちに髪色がピンク色に染まっている霧咲。

 髪色が変化し終える前に、赤坂の視界から、霧咲が消えた……。

「どこ⁉?」

「上だよ!」

 赤坂は上を見ると先程矢が刺さっていた腕で刀を売りおろしていた。

「させない‼」

 それを確認した赤坂は持っていた弓でガードを固めた。

「⁉」

 すると、先程売りかかっていた霧咲が切りのように消えていく。

「まさか‼」

 そう、霧咲は痛みに夜魅を狙っていた時に霧の技を使っていたのだ。

 それに気づいた時にはもう遅い……。

 下から、赤坂を切り上げた。

「キャァァ‼!」

 赤坂の片目に傷跡が残り、片目からは粒子が飛び散る。

 切り裂かれた片目からは青白い粒子ではなく、青い粒子が放出。

 後ろから、様子を見ていたよる身が飛びかかって来た。

 その気配に気づいた赤坂は夜魅の攻撃を交わす。

「あっ! まずい……」

 そう、赤坂は攻撃を交わした瞬間気づいてしまった。

 これが、先程と同じ罠だということを……。

「ズバッ!」

「キャァァ―――‼!」

 今度は攻撃を避けた背後に本物の夜魅が待ち構えていて、その攻撃を交わすために、正面を向いた時だった。

 赤坂の残っていた瞳を一瞬で切られてしまった。

「また、私の顔面を……あんた達……」

 もはや、目を開けられない状態の赤坂は両目を抑えて泣き叫ぶ。

「私が弱いから青衣くんを守れなかった‼ 私が弱いから負けてしまう……もう、最後の手段よ……」

 赤坂は肉体的にも精神的にも弱っている状態だった。

 切られた後は赤坂の視界が真っ暗になる。

 痛みにこらえながら、両手で瞳を抑え込んでいる。

 もはや戦闘不可能といった状態だろう。

 そんな赤坂の片目からは青い粒子が出ており、もう片方の目からは赤い粒子がダラダラと放出されていた。

「もう、あんた達を……道連れに……してやるわよ!」

 そう、いうと赤坂は自分の目を覆っていた手を顔から外し、手についた赤い粒子と青い粒子を前に出し、叫ぶ。

「私の命を燃やす‼」

「夜魅なにか、やばいわよ‼」

「これは・・・」

 霧咲と夜魅の目に写ったのは赤と青の粒子で構成された架空の動物のシルエット。

 赤い粒子は鳳凰のシルエットとして、青い粒子はユニコーンとして粒子が特定の架空の形に構成されていた。

 こういった事ができるのも仮想世界ならではであり、気持ちの強さが力になるしょうめいにもなっている。

 だが、こんな事ができるのはデータで構成されたものに霊が宿った者だけに許される力には違いない。

 そして、その目から流れ出た粒子の鳳凰とユニコーンは赤坂の両手に反応して動いている。

「青衣のいない世界に私が生き残る未来はいらない‼」

その鳳凰のシルエットをよく見ると赤い粒子で構成された無数の矢。

同じく、ユニコーンのシルエットは無数の青い粒子で構成された無数の矢。

 その鳳凰は羽ばたく夜に霧咲に飛んでいき、ユニコーンの粒子の矢は夜魅に走るように襲いかかってくる。

「これはまずいわね……」

 夜魅はここで初めて真剣な表情に変わる。

 凄まじい位のどのオーラが赤坂の体から感じられる。

 粒子で構成された赤と青の矢が2人に襲いかかる。

「夜魅! 単体で戦ってもいいけど、ここは一ついい考えがあるの。試しましょう!」

 そおゆうと夜魅に何かを伝えた。

「なるほど、やってみましょう! 霧咲さん!」

 話がついた2人はおもむろに逆方向に走り出した。

 走っている最中に夜魅は幼い姿に変身し、霧咲は走りながら、腕についた端末をいじっていた。

「目が使えなくなってもあなた達の足音と息遣いである程度把握できるわ! 逃さない!」

 赤坂は大量の粒子を両サイドに放出。

最後の力を赤と青の矢に力を込め、夜魅と霧咲を追尾している。

 赤い矢は赤坂の能力を使い加速したり、減速したりして鳳凰の翼が羽ばたいているように見え、追尾能力で方向を夜魅に定めている。

 青い矢では、ユニコーンの走るようなシルエットで高速で霧咲に突進するが、ギリギリの所で霧咲が交わし、かわされたユニコーンは姿を消し、一瞬で姿を表した時にはまた霧咲の方向に向いている。

それを数回繰り返し、どちらも一歩も譲らない戦いが繰り広げられていた。

 やがて、夜魅と霧咲は左右逆方向に移動し終えると、再びお互いに合流するかのように中央に足っていく。

「霧雨!」

「シャドーボール!」

 夜魅と霧咲が同時に攻撃を繰り出す。

「そんな見え透いた技! 私にはもう通用しないわよ!」

 赤坂はそう言うと素早く赤と青の矢で止めを指して、本体を探す。

 案の定、夜魅と霧咲はお取りの偽物で、矢が打ち込まれた部分から消滅していく。

 その瞬間赤坂の背後から、凄まじいスピードで、夜魅と霧咲が刀で切りかかってきた。

「そこよ!」

 先程の鳳凰とユニコーンのシルエットを解除して、ものすごいスピードで2人を矢で貫いた。

「⁉」

 だが、夜魅と霧咲はまたもやお取りで消滅した後、その後ろから、夜魅の幼い姿が、切りかかってきた。

 そして、後ろから、夜魅が飛びかかってくるのと同時に前から、裏の霧咲が襲いかかる。

「甘くみすぎよ!」

 赤坂が自分の手のひらに付いていた粒子を矢に変化させ2人を撃ち抜く。

 まさかのこれも偽物だった。

 最後に変身前の夜魅と変身後の夜魅が真上から切りかかって来た。

 それと同時に先程のフェイクの死体で身を隠し、表の霧咲と裏の霧咲が下からスライドして切り上げてきた。

(やばい……体制を立て直せない……4人を確実に倒すのはもはや不可能……どうする……)

その時赤坂はみていたのは、走って変身する夜魅の姿を、そして、走って裏の霧咲のままで逃げていたオーラを覚えているのだ。

「つまり、本物は小さい夜魅と小さい霧咲だ!」

 そう、赤坂は目が見えない代わりに強さのオーラを感じて敵を判別していたのだ。

 つまり、生命エネルギーが強い方が本物と判断したのだった。

「グサッ……!」

 赤坂を真ん中にして、霧咲が上空と、夜魅が地面に立ち一瞬だけスローモーションになる。

 屋が打たれて押していく霧咲。

 地面にたった夜魅もその場で倒れ込む。

 赤黒い粒子と、青黒い粒子が放出する。

 そして、……。

 青白い粒子が赤坂の腹部から放出されていた……。

「ど・・・どういうことなの……」

 まさかのオーラが薄い方が、本物だったようで、夜魅と霧咲に腹を刺されていた赤坂。

「私達の作戦勝ちよ……」

 実は、変身した夜魅はすでに偽物。更にいうと端末をいじっていた霧咲も偽物で、初めに分身していた時に本体は隠れており、力を分身に多く移し、本体は普通に力を使わずに接近していたのだ。

 そのため、オーラが強いと本体と錯覚させたというわけだ。

つまり、話し合っていたのはふりで、目を潰した後にすでに入れ替わっていたことになる。

話し合ったふりをしたのもかの事を気づかせないカモフラージュのようなものだ。

「あ~……やられたわ……ごめん……青衣くん……敵は取れなかったみたい……悔しい……なぁ……」

 そう言いながら、赤坂は力尽きてその場でひだを付き後ろに倒れる。

 倒れる瞬間に瞳の傷跡からは水滴が流れ、青と赤の粒子が上空へ登っていき、腹から、みるみるうちに青白い粒子に変化して消滅していった。

「敵だったけど……この執念……すごいわね」

「……」

 霧咲が悲しい表情を浮かべている横で、夜魅の口元は引き上がっているように感じた。

周囲には赤坂の粒子が待っており、無残にも怪しく夜の空に溶けてゆく。

(さて、あともう少し演技を続けましょうか……)

 夜魅は、緩んだ頬を吹きしめ、記憶がないが、純真な眼差しを作り上げた。

その後、霧咲と夜魅は、№Ⅴを倒しに周囲を見渡すが、№Ⅴの姿はどこにも見当たらない。

そんな世界の暗い空に赤と青の粒子が舞い上がり、遠くの空で混じり合い静かに消えていった。


……これが、神夜立ちに追いつくまでの事の顛末だった。


ここで、現在軸の霧咲と夜魅に戻る。


  ◇◇◇

 

    □ ロンドンの時計塔:黒衣者の計画の終点


 俺たち3人は、暁斗が居る最上部に駆け上がる。

 そこには、時計塔の内部のギアが「大中小」無数に重なり合い時計を動かしていた。だが、その中に、1つコンピューターエリアが設けられているようだ。

 そのコンピューターを操作する黒衣身を纏った暁斗の後ろ姿。

暁斗の操作により《人類データ化計画》の準備を着々と進めていた。

コンピューターは緑色に発行して入力の有無がわかる仕様になっているハイテクマシンだった。

「蒼麻たどり着いたか」

 そう言うと、暁斗は、時計塔のコンピューターを操作して、時計塔の屋根を開き、空が見える状態にした。

 暁斗は、空を眺めながら、語り始めた。

「やっとこの時が来た……長かった」

 そう言うと、片手を上に上げて、四角い黒いキューブを生成した。

「でも、最後の最後で、3人を倒さなくちゃいけないのかも、この戦いが終われば、俺は……俺たちデータ人間の時代が来る……。さあ、始めようか、世界の未来を決める戦いを」

 その言葉は、決意の現れ。

 決意した暁斗は、黒いキューブにもう片方の手から、青白いキューブを生成して、キューブと球体を重ね合わせた。

 すると、みるみるうちに、形が変化していき、黒い大きなドラゴンに変化した。

《黒龍(ブラックドラゴン)》を創造召喚した暁斗。

 その黒光りした、黒龍は、蛇のとぐろを巻くように、尻尾で、暁斗の周囲をガードする。

 その光景を見ていた霧咲と夜魅が飛びかかる。

 その攻撃を黒龍が尻尾を使いガード。

「クッ……なんて硬いんだ……刃が通らない……」

「霧咲さんも刀が通らないなんて……」

 敵陣地のど真ん中ではあるが、やっぱり、耳に入ってくる言葉が気になる霧咲。

(だから……霧咲さんは……やめてほしいなぁ……)

 霧咲と、夜魅の刀でも切れない龍の鱗に手を触れて、そこから、暁斗は剣を生成した。

「ラストバトルだ……蒼麻」

「決着を付けよう……暁斗」

 夜魅は覚醒状態のままもう一度、刀で、斬りかかる。

霧咲は、周囲の崩れた時計塔の岩を伝っていき、壁を足場にして、背後まで、高速移動する。

2人とも、覚醒状態というのもあり、申し分ない連携を見せた。

だが、正直、先程のように弾かれてしまうのが目に見えていた。

2人は、ここで変化を見せた。

「軌円斬(きえんざん)!」

「シャドー連撃!」

 霧咲は、敵の裏に回ると、回転しながら落下していき、その勢いで、攻撃を何倍もの威力を増す技だ。

 夜魅の場合は、刀で、一回切る動作で、複数回影の刃でダメージを何倍も威力が増す。

 黒龍にどちらの攻撃も聞いたようで、暁斗のガードが緩んだ。

「いまだ!」

 神夜は、ガードが緩んだ一瞬の空きに弾丸を放った。

「キーン!」

 暁斗は剣で弾いた。その剣は、シナプスで構成したあのガンソードだ。

 更に、弾丸をはじいた後、そのガンソードを振り下ろす。

すると、黒い影の斬撃を放ち、夜魅を吹き飛ばした。

夜魅の斬撃もすごかったのだが、威力が違いすぎる。

 ―――これが、俺の中にいたシナプスの力か……―――。

 その斬撃を放った瞬間。ガンソードに創造の力で弾丸を装填し、青白い粒子を放ち、装填動作なしで、装填。

 その弾丸を霧咲に向けて、放った。

 その弾丸を切り裂こうとする霧咲の刀の動きを見て、暁斗が放った弾丸だけを分解して、刀が通り過ぎた後に、再構築した。

 その状況を予測していたのか、裏の霧咲は、もう片方の手に持っていた鞘で縦断をガードした。

「さすが、この距離で、やられたら、焦るわね」

「流石だな……対策していたのか」

「対策していたのは、私だけじゃないみたいよ……」

「⁉」

 暁斗は、とっさに頭上に気配を感じ上を見る。そこには、回転して、落下する夜魅の刀が、あった。

 夜魅は、やられた後に刀を投げて、飛び道具として、使っていたのだ。

 暁斗が、とっさにガンソードでガードしたときだった。

まだ、追撃がある。

霧咲が、時計塔の歯車を刀で、破壊した。

時計塔のシステムは歯車とプログラムで動いていたため、歯車のほうが破壊されれば、時計は機能しないだろう。そして、歯車は、雪雪崩のように、暁斗目掛けて、いや、この場にいる全員目掛けて、歯車のギアが転がり迫る。

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼」

そのギア雪崩を止めるために、青白い壁を創造して、雪崩を止める暁斗。

「流石に連続で能力を使うと、キツイな……」

暁斗の言葉通り、発動が、かなり遅くなっていた。

だが、追撃はまだ続く。

それは、神夜の追撃だ。

神夜は、銃を撃った後、銃弾を連打していたのだ。

その連打は、暁斗が創造して攻撃をガードする暇さえ与えないぐらいの近距離に迫っていた。

なぜ、気づかなかったかと言うと《ギア雪崩》の大きな音に紛れていたからである。

「⁉」

 戦闘能力が高い霧咲と夜魅に気を取られていて、意外に、神夜方面はがら空きだったのだ。

「ぐぁぁあ‼」

 何発か、体にヒットした暁斗。

傷跡からは、青白い粒子が、放出される。

「蒼麻……少しは、出来るじゃないか」

「お前達みたいに戦闘が強いわけじゃないけど、頭なら使えるからな」

 そう、神夜は、戦闘ではここにいる誰よりも劣っているが、戦術内なら恐らくこの中で1番であろう。

 そのため、現状の状況を把握して、戦術として、活用することを得意としている。

 この戦闘狂達と対等に戦えるとしたら、戦術がゆういつ劣っていない神夜だけの特質した点である。

「油断したが、問題ない。№Ⅳ時間を巻き戻せ……」

「時間の巻き戻し……だと……」

「了解」

 そう言うと、瓦礫に隠れていた№Ⅳが、暁斗の方へ手をかざし、暁斗の体を巻き戻し実行。

その見た目は、巻き戻しとゆうより、回復や復元に近い。

緑色のいかにも回復してますオーラがまとわりつき、みるみるうちに、傷跡が消えて、青白い収支も傷跡からでなくなる。

「これで元通り、ですぜ」

「助かった……また頼む」

―――おいおい………ヤンキーだから、それほど強く無いと思っていたが、これはこれで、相当やばい能力じゃね~か……ヤンキーで、回復とかギャップが……―――。

 などと、思っていたが、恐らく、霧咲と夜魅も同じことを考えているだろう。

 その証拠に、ふたりとも№Ⅳに顔を向け、びっくりした表情で固まっていた。

 すぐに我に返った。3人は、討伐しなくては、行けない優先順位の相手を№Ⅳに切り替えると、暁斗と黒龍を無視して、3人とも№Ⅳに攻撃を仕掛ける。

「瞬殺(しゅんさつ)抜刀(ばっとう)斬り(きり)」

「シャドーボール!」

「バンッ!バンッ!バンッ!」

 ―――俺だけ普通なのはなにかあれだが、流石。2人は反応が早い―――。

 瞬殺抜刀斬りで、相手に最速ダメージを与えられる技だ。

その後に、神夜よりも早く、撃ったシャドーボールを相手の視界を奪い。

 最後に、3連打の弾丸がシャドーボールの後に持っている連携技に意図せずなった。

「クッ!」

 霧咲がはなった攻撃は、素早すぎて回避ができなかったらしく、攻撃をくらい片腕が、落ちた。

 夜魅の攻撃は、時間停止能力を使ってその場に留める。

最後の3連打の神夜の攻撃は、暁斗の創造の力で作り上げられた金属の壁に幅割れた。

 ―――№Ⅳは、先程のように、巻き戻し能力を活用すれば、攻撃を回避できるはずだ。なのにしない……これはどうゆうことだ……もしかして、一回使ったら、次ぐに使うまでにインターバルがあるのか⁉―――。

 №Ⅳは来たれた傷口を抑えながら、先程止めた。シャドーボールを動かし、攻撃は、遠くの空に消えていった。

「いって~俺が回復するまで、頼んだぞ№Ⅲ……」

「りょうか~い!」

 №Ⅳは、回復の間№Ⅲにこの場を任せたようだが、№Ⅲのちからは、ただ人の心を読むだけの能力のはずだ。この場を凌ぐほどの戦闘能力は持ち合わせていないように見える。

 沿う感じて履いたが、警戒せずには、いられなかった。

 やがて、周囲に白い霧が立ち込める。

 暁斗と黒龍が黒い影のシルエットになり、霧に紛れていく。

 白い霧が立ち込めていき、周囲が見えなくなっていく。

 その場にいるものがすべて、孤立したように見える状況が作り出された。

 恐らく、神夜、霧咲、夜魅の3人を分裂させるためと、相手の位置を特定させない作戦だろう。

 その間に巻き戻し能力で、片腕をもとに戻す時間を稼いでいるのだろう。

 そんな白い霧の中から、黒いシュリエットが見えた。

 その影は、緑色に回復するような色が神夜の目に入る。

「そこか!」

「バン!」

 一発銃弾を打ち込んだ神夜。

 そこから、一歩も動かない影。

 ゆっくりとその方向に足を運びやがて白い霧から、影がだれなのかはっきりする。

「‼」 

 そこにいたのは、霧咲。

 神夜が撃った銃弾が太ももにめり込んで赤黒い粒子が、傷から、放出していた。

「祇那⁉ なんで君が!」

「ごめん! 本当にごめん!」

 霧咲は、顔を下に向けたまま痛みをこらえているように見えた。

「悪いと思っているなら、1つ頼みがあるの……」

「わかった! 何度もゆうこと効くよ!」

「ありがとう……じゃあ……」

 霧咲は、今までの淡々常菜していく裏のいつもの霧咲とは、雰囲気が違う。そして、その後に発言した言葉と動作に、驚く。

「消滅して」

 霧咲の腕にあったのは、霧咲の刀ではなく、小さなクナイ。

 そして、神夜の懐に、向けられているそのクナイは、なにかに阻まれて、腹に刺さる前に、止められていた。

 神夜に横を見ると、そこには、№Ⅲの姿。

「!」

 一旦後ろに、飛んで避けた神夜の背後には、偶然、夜魅がいた。

「夜魅……祇那の様子がおかしいんだ……」

「そう……」

「⁉」

 神夜は、声が違うのに気がついた。

 それと同時に、拳で、殴りかかって来る夜魅。

 その攻撃をガードするように、№Ⅲが夜魅の持っている刀で、夜魅の拳をガードした。

 神夜は、すぐさま、再びステップするように、夜魅から、一旦離れる。

「誰だ!お前……」

 №Ⅳが神夜に、ひとこと言いながら、傷ついた霧咲を警戒して、言葉を放つ。

「蒼麻くん! そいつは、敵よ!」

「⁉」

 №Ⅳが女口調で、神夜に話しかけてきた。これは一体。

「そいつがどんな風に見えるかわからないけど、私の前にいるやつが、№Ⅲで、蒼麻くんの目の前にいるのは、№Ⅳよ!」

 №Ⅳの容姿をした霧咲としか思えない発言をした。

「これ、いったい」

 先程撃ったはずの霧咲の傷跡が、痛む様子もなくすっと立ち上がり一言。

「あ~バレたなら、しょうがないわね~あんたが見える夜魅は№Ⅳよ」

 霧咲に見える№Ⅲがあっけなく種明かしをしてきた。これは、いわゆる№Ⅲのデメリット対策であろう。

平等に、接していないと相手の心を読まないという能力になっているからだ。役に立つこともあれば、このようにバレかけていた幻覚を認めることで、相手の思考を読む力を保有しているのだ。

「ばれちゃったから、言うけど、私の能力は相手の心を読む能力と、バレてしまうと勝手に解除される幻想能力よ!」

 №Ⅲと思われる霧咲の容姿で微笑むと、徐々に、白い霧が消えていき、№Ⅲの微笑みに変わっていった。

 周囲を見渡すと、元の容姿と姿に変わっていた。

「幻想能力……」

―――霧咲と夜魅がいなければ、完全に不意打ちを食らっていた……―――。

 少し安心して気を抜いた瞬間。

 神夜の背後に黒龍が立っていた。

「やばっ!」

「やれ! 黒龍」

「ギャオォォォォン!」

 黒龍の尻尾が3人に迫ってくる。とっさにガードしたが、止めることはできず、軽々中に舞う3人。

「キャァ!」

「うぁぁ!」

「ハグッ!」

 空中に吹き飛ばされた3人は、体制を立て直し、着地しようとする。

 霧咲は、刀の重みを利用して足や腕をうまく活用し、着地した。

 夜魅は、大胆にも、シャドーボールを打ち出して、体制を立て直す。

 神夜は、ちょうど、壁が近くにあったので、その壁に足を付き、ブレーキをかけるように、ズルズルと下の勢いをころし、着地した。

 神夜が、着地した時点で既に戦いが再開しており、霧咲は、№Ⅳに狙いを固定した。

 夜魅の方は、先程のように邪魔をされないよう暁斗と黒龍の足止めをしているようだ。

 神夜はとゆうと、どちらかが危険なときにサポートする要因として、ちょうどどっちにも対応できるように構えている。

 着地したときには、№Ⅳの腕は修復に成功しており、神夜に繰り出す。

 神夜は逃げようと反射的に足を動かそうと思った。

そう、思ったのだ。行動したくても思うだけ。

神夜の足は、ピクリとも動かなかった。

―――うご……けない―――。

 №Ⅳのスキルが発動したのだ。

 だが、神夜の口元を見ると、広角が少し上がっている。

 いやな予感を感じる№Ⅳ。

だが今は、№Ⅳがこの場を支配している。

負ける要素がない。 

そう、これが№Ⅳの「物体の停止能力」だ。

さらに、厄介なことに「物体の巻き戻し能力」もあるというチート級能力も持っている男。

 この状態で№Ⅳはふと自分の過去の出来事を思い出してしまう。

「んっだよ! こんな時に思い出すなんてよ……これじゃやられるフラグがたった見てえじゃねーかよ! クソがぁ!」

 神夜の微笑みから何かを察したのか、メンタル的に危機感を覚える№Ⅳ。

 №Ⅳが優先なのは誰がどう見ても揺るがないが、戦場での感は危機を感じていた。


№Ⅳの記憶が脳裏で蘇る―――。


★†「№Ⅳ(ヤンキー)」


 数ヶ月前―――。

 自分が不良グループのトップに上り詰めて新たな人生を歩んでいた真っ只中の時の出来事だ。

 そう、仮想世界(データワールド)に来る前の出来事。

 ある日、不良グループのリーダーを努めていた№Ⅳの拠点として使っていた縄張りの廃棄があった。

 その廃墟がとある謎の研究所に買収され、立ち入れなくなった出来事の話だ。

そして、彼の人生がガラリと変わる瞬間でもあった。

その日を境に№Ⅳは、現実世界の命と引き換えに仮想世界(データワールド)での能力を手に入れることになる。

そして、№Ⅳのこの2つの能力は先天的な能力から、拡張された能力である。

つまり、薬で力を手に入れたとしても、能力はここで違うため、発動するのは本人の能力と関係がある。

そう、能力の発動はその人物自体に特質した特性や性格などで、特徴が決まり能力として発動できる。

つまり、№Ⅳの《物体の停止能力》と《物体の巻き戻し能力》も№Ⅳ本人がもとから持っていた力を拡張した能力。

その感覚は当時中学生に身に着けた特殊な感覚だ。

それは危機管理能力というのだろうか。

喧嘩をしていた頃、№Ⅳは時間がスローになる状態を経験したことがある。

また、負けそうなときに決まってスローモーションに見える特性を持っていたため、それがデータワールドの《時間停止能力》と《巻き戻し能力》につながったのだろう。

中学の時の喧嘩のときもそうだった。

子供の頃の№Ⅳはひ弱で、とても人を殴れるような子供ではなかった。

だが、子供の頃に殴られて入院した経験がある№Ⅳ。

当時は喧嘩が強かったガキ大将に一発で「KO」されて入院した頃から自分の特殊な能力に気づき始めた。

そのパンチを食らう直前に空間がスローモーションになったような感覚を味わった。

さらに、そのことがきっかけで、怪我が治り退院したあとは、その特殊な特技で一発逆転を幾度もなく体感した。そう、このスローモーションになるときに、一撃を食らわせるという仕掛けだ。

入院した喧嘩の時は、はじめだったため、何が起きているのかわからず、そのまま攻撃を食らってしまったが、その特殊な力のおかげで、その後は誰にも負けないくらい強くなっていた。

毎日の特訓として、家の近くに立っていた大きな木を殴っている記憶や、ガキ大将に足をかけられて転ぶ惨めな姿が、脳裏に鮮明に思い出す。

初めてスローモーションになったあの時の敗北のパンチ以来から、見える世界が変わった。あの時に、ぶっ倒れたその時から、一度も負けたことがない№Ⅳ。

この記憶を思い出した後、データワールドに「フッ」と一瞬だけ思考を使う。


―――くそが! 過去の出来事を思い出すとか、俺がやられることを認めたようなもんじゃねえかよぉ・・・あのときのように・・・―――。


 実は、№Ⅳは小学生の頃はひ弱で病気がちの体が弱い子供だった。

 その事により、小学生ではあまり気にしていなかったが、中学に上がると体が貧弱で学校に来ない日などが度々あった。

そのことが、きっかけで、クラスの意地悪いグループに目をつけられ、いじられ始め、最終的には本格的ないじめにまで発展したのだった。

 そんな過去、があった№Ⅳしは、強くなることを決意。

№Ⅳの住んでいる地域は、田舎で何もなかったが、大自然があった。

そんな田舎の家の前には大きな大木が佇んでおり、近くには負数の太い気が立ち並ぶ。

そんな気を叩いたり、蹴ったりしていた№Ⅳ。

そう、戦闘力強化アイテムとして活用していたのだ。

 流石に、人の力ではびくともしないが、筋肉をつけるのにはうってつけの筋トレトレーニングとして日々鍛えていた。

 はじめは手がぼろぼろになっていたが、段々と素手で気を殴ることで、手の甲の革が熱くなり、拳が武器のように革が分厚くなっていった。

そのおかげでクラスの中で1番強いどころか、その地域の《高校生にも負けない強者》になっており、誰にも負けない強い男に変化。

 こうして、高校に上がると不良グループの頭を奪い見事高校で一番有名な不良グループのトップになることができた。

 その頃には、あれほど大きく感じていた木を素手でバキバキなぎ倒す事もできるようになり、木を倒した№Ⅳ。

 もはや学生で一番強いといっても過言ではない。

 それを不良グループのトップの就任式のように、大勢の部下の前で木をなぎ倒し、折った№Ⅳはもはや別人。

 中学生の頃の面影はなく、まさに不良のトップにふさわしい面構えになっていた。

 だが、そんな状態は長くは続かなかった。

かつて、いじめてきていた奴は金持ちの息子だったのだ。

つまり、今度は財力で部下たちを買収し、№Ⅳを孤立させたのだ。

 部下たちは力よりも財力に従うようになり、今度は拳の力では成り上がることができず、苦しい日々が続いた。 

 更に、不幸は続く。

 その後、№Ⅳの組織の拠点でもあった廃墟ビルが金持ちの研究関連で活用するとされ、売買された。

 その廃墟は凄まじい財力の力で、《何らかの研究》として、生まれ変わったのだ。

 そして、やはり不良の世界は拳の強さで上位層が決まっていたが、それ以上となると財力と権力争い。

 もはや拳でどうこうなるものではなく、かつての№Ⅳを慕ってくれていた部下は不良のリーダーという肩書についてきていただけだ。

 本心で慕ってくれる部下など一人もいなかった。

むしろ、財力でトップに居るものからしたら、かなりの邪魔者である。

 不良グループのトップになってしまったことで、今度は財力でのいじめを受ける№Ⅳ。

生徒や先生にも尊敬されていたみたいだが、部下が離れていった一軒で、もはや不良グループのトップではなく、ただ強い高校生。

学校のクラスメイトはその一見いらい、見る目が変わったらしく、全然寄り付かなくなり、№Ⅳを避けるようになった。

「結局は金と地位にしかなびかないっていうのか……」

かつてはいじめられっ子だったこともあり、メンタルはかなり弱かったため、しょんぼりと道を歩いていたときだった。

金をむしり取られたあげく、腹パンされ道路に倒れ組む弱気な同じ学校の制服を着ていた高校生を見つけた№Ⅳ。

その高校生を助けたが、絡んでいた不良はかつての部下たちだった。

色々言われてメンタルがボロボロになり、反撃もできないまま道路に倒れ込む。

「おい! この野郎は、お前さんを助けたって・コ・ト・ワ・だ・・・知り合いか? もし知り合いだったら、更にボコボコのボコボコの刑だけど、どうなの??」

「ち、違います! 僕はこんな人知りません!」

 №Ⅳに助けてもらった生徒はその言葉を言うと走って逃げていった。

 その男子生徒は実は学校でしたってくれていた同じクラスの生徒だった。

 まぁ、自分がやられないようにするためには正しい反応。

そう、普通の反応だろう、だが、何故か悲しくかつての自分の重ね合わせても、今の事態はこうなのかと更にメンタルがやられる№Ⅳ。

 その後、再びボコボコにされて路上に倒れ込んだまま自分の人生の方向性を再度考え直し、色々と思考し模索した。

その結果、もはや不良で成り上がることができないと感じたため、新たな選択をすることを決めたのだった。

その新たな道は不良の世界から足を洗い、いや諦めをつけといったほうがただしかもしれない。

その不良の道を呆れべて、まっとうな道(普通の学生に戻る)を進むことにした№Ⅳ。

 ここでかなりの自信を失い、これからは普通の人間として社会に適合していくことを決めた№Ⅳ。

赤茶だった髪を染黒にし、普通の高校生として生きるため、アルバイトの面接に向かう途中。

 再び知り合いに出くわしたのだ。

 しかも、かつての、いじめっ子に出くわした。

そのいじめっ子は金と権力を振りかざして屋上に連れてかれ、ガタイが良くなったということで不満に思ったらしく№Ⅳが生意気に筋肉をつけたと言われ、ボコボコにされる№Ⅳ。

 このとき、かつての自分なら泣きまくっていいたが、今の最強担った体にはいじめっ子の拳が痛く感じない。

 そう、それほどまでに強くなっていたが、状況が変わらないことに、この世界の歪みに深く悲しみを感じた。

 そして、やはり、こみ上げてしまう気持ちを抑えきれなくなった№Ⅳは言葉をつぶやきながら、行動に移す。

「本当・・・この世界は腐ってんなぁ・・・俺もだけどなぁ」

「何だおまえ! こんなにがたいいのに痛いのかよ! はは、オラオラもっと泣けよ泣けよ!」

 いじめっ子は自分が殴ったことの痛みで涙を流したと思い調子に乗っていたが、№Ⅳはこの世界の歪みを改めて感じたことでこの世の不条理な現実に悲しみを感じ、涙を流していたのだ。

 だが、もはや、もう、この気持を止めるものも止められるものもこのようにいないと感じた№Ⅳは思考を再びガラリと変えた。

そう、学生によくありがちな自分が特別だと思う感情だ。その環状から、この世を悟った№Ⅳはもはや権力や財力はどうでも良くなってしまい頭が真っ白になり感情に任せ行動に移した。

かつてのいじめっ子をボコボコにしたのだ。

つまり、不良の道を諦めきれなかったという裏返しの行動だろう。

目の前には自分の拳でボコボコの地だらけになったかつてのいじめっ子の金持ち。

もちろん息をしており、命を落とす程度の威力は出さず、手加減をしていたが、やはり、鍛えていない人間はもろい。

沿う感じながらも、自分の強さを再確認したところで、髪の毛を両手で立たせ、目つきを不良の目つきに戻した。

これで、夜中、面接の笑顔をする練習をしなくても良くなったことに清々しさを覚える№Ⅳ。

不良の道に進んだだけで、実はかなりの努力家。

そんなことを微塵にも感じさせないいかつい表情をひた旅取り戻し、その足で一度自宅に帰り身支度を始めた。

 自宅に戻ると髪を赤茶色に戻し、髪を立たせ諦めた目つきで、かつての廃墟に立ち寄る№Ⅳ。

「そもそも、この建物がどこぞの金持ちに買収されたのが始まりだったなぁ・・・くそ、忘れ物ついでに中の様子を見てみるか」

 これまでに、色々あったが、№Ⅳの人生が大きく変わったのはこの建物が買収されてからは間違いないだろう。

 その腹いせとして、不良なりに思うところがあり、まだセキュリティ対策が構築されていなかったため、なんなく、窓ガラスが空いており、その一階の窓から潜入。

 だが、今は夜。

 人気はないが、まだそんな夜でも光が漏れる部屋が近くになったため、№Ⅳは隠れる様子もなく、堂々と、ポケットに手を入れてその部屋に入っていく。

「ガシャ!」

「なんだ、高校生?」

 そこには、研究員らしき自分物が三人おり、研究を続けているようだった。

 おそらく、2交代制や3交代制で一年中かどうしているのであろう。

「おい! 俺のビルだ! 出てけ!」

「あっ~不良グループの頭ってところか? 仕事のジャマだ、どけ……社会のお荷物 というか、お前不法侵入だろ? 警備委員を読んでくれ!」

「呼ばせね~よ!」

 研究員は手に持っていた研究資料と、研究で使うであろう、黒い液体をビーカーに入れた状態で部屋を出ようとしたときだった。

「テメェ!!」

「ドンッ!」

「パリンッ!」

 ビーカーが手からスリ落ち、地面に他丈つけたら、地面にはビーカーの割れた破片と黒い液体が、地面に散らばる。

 №Ⅳはそのまま研究員をぶん殴り、壁にぶつけた。

「おっ、お前! 何をやってるんだ! 抵抗するなら、こちらも手段は選ばないぞ! テストの実験台になってもらう!」

 そう言うと研究員は眼鏡のボタンを押す。

 この眼鏡も研究用に開発されたと見られる特殊なメガネだ。

「ピッ」

 すると、どこからともなく、青白い光が、天井の証明から、溢れ出てきて、その粒子がどんどん降り積もり、立方体に変化。

 その立方体はポリゴン数が増えていくように、みるみるうちに、人のシルエットに形を変えていくではないか。

《仮想空間データから、実態をコピーしました》

《一時的なシステムの転送を実行……》

《粒子構成のデータを構築し定着に成功しました》

《システムの負荷があっています》

《この場で実行しますか?》

「もちろん、イエスだβ(ベータ)システム」

《了解しました。関係者の音声を認証、承諾しました。続けて実行します》

 何やら、研究員の声に反応するシステムが実行され多様だが、そんなことはお構いなく、次の研究員を吹き飛ばしていく№Ⅳ。

 そう、実は周囲にはあと二人ほど研究員がいたのだ。

「研究員とかいう白い奴らはこんなにひ弱の集まりなんだな。 存在感も薄いしなぁ」

№Ⅳが、総言葉を発して、3人倒したところで、外に出る時だった。

 得体のしれない殺気が背後から感じた№Ⅳ。

 後ろを売り向くと、そこには、青白い人のようなシルエットが佇んでおり、そっと歩いてくるではないか。

 研究員を倒すのに注力していたため、今はじめて、謎の物体に気づく№Ⅳ。

「んっだよ。このキモイ奴は・・・」

「ン・ダヨ、コノキモイヤツ・ハ・・・」

「なんかマジで、キモいなぁ」

「ナンカ・マジデ、キモイ・ナ・アー」

《音声で板を取得し、学習しました》

「はは、面白いだろ、これが我々の極秘研究の代物の一部だ。データ世界からデジタル人工を作るために、学習システムだ」

 痛めつけられた研究員の一人がボロボロの顔でほほえみながら語りかけてきた。

「こんなもんぶっ壊してやるよ!」

 そうゆうと凄まじい魂心の一撃を青白い収支で構成された人の形を見したシルエットにパンチを繰り出した。

《3億2千3百2のデータを取得しました》

《4億取得、5億取得、、、ビュー》

「ウッ!」

 青白いシルエットは一度パンチの勢いで周辺に吹き飛ばされたが、すぐに№Ⅳの腕に取り付くように集まり、払いのけるまでになにかの処理をしているようだった。

 とっさに不気味が悪く腕を振りきった№Ⅳの何億の何かが読み取られたようだ。

《ピュイー・・・取得したデータを元にデータの構築を行います》

《失敗》

《再度実行・・・失敗》

《連続処理を実行します・・・失敗》

《失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、シッシシシ―――――成功。3352回めで成功しました》

《成功したデータを復元し、再構築します》

 システムが行った途端。青白い粒子が形を変え更にわかりやすい人の形に構成されたようだった。

 だがその姿が、見覚えがある姿。いや、№Ⅳそのものの姿だった。

「おい!これはどうなってんだ! 白いやつ!」

「それはふれものの層のデータと身体機能のデータを取得するすステムでね。まぁ~我々の開発してる世界には欠かせない偽物の仮想人間を作る元データになるものだよ」

「!?」

「まぁ、気には難しくてわからないから、もっとわかりやすく言うと、気にの能力をコピーしたってことだよ」

「なに!?」

《なに? そんなに驚かなくてもいいんじゃねーか?》

「!!??」

《はぁ~やっぱびっくりするよなぁ~俺が俺と喋ってるっからなぁ~》

「俺の声で俺のように喋ってんじゃねかぁ⁉ これどうなってんだ?」

「だから君のコピーだよ。あと仕草や声だけじゃなくて、力も同じだと思うよ」

《なにくっちゃべってんだよ! おら、戦おうぜ!》

「ドッ!」

「ぐはぁ!」

「ガシャン!」

 近くにあったテーブルの上に殴り飛ばされ、PCに頭を打つ№Ⅳ。

「イッテッ~・・・んだよ。まじでコピーしてんじゃねーか。さっきはすりむけたくせに今度は当たるのかよ……」

 №Ⅳの頭からは血が流れ出ていた。

「君はもう、生きて返さないよ。このβ(ベータ)システムを見てしまったからね」

 研究員は先程殴られた場所を抑えながらニヤニヤと笑みを浮かべる。

「んなぁ、勝手なこと言うなよ」

 フラフラしながら、苦味を抑えて、立ち上がる№Ⅳ。

《何無視してんだよ! 俺!》

 凄まじいパンチが再び繰り出される。

《!?》

 №Ⅳをコピーしたパンチを本物の№Ⅳが止めた。

「悪いが、邪魔なんでぶっ壊すわぁ」

「なぜ、自分に勝てるんだ!? 100% コピーしているはずだぞ!?」

 β(ベータ)システムの攻撃を素手で止めて、一つの腕でβ(ベータ)システムの顔面を殴り飛ばした№Ⅳ。

「当然だろ。 俺より強いやつはいね~し、同じつえ~やつがいたらすぐにその倍の力でぶちかますだけだ! つまり、コピーしても俺はまた俺を超えるんだよ! 強い敵が現れたら更に強くなるのがヤンキーってもんだろ!」

 そう、№Ⅳは相手が強いほど強くなるという力を発揮するが、ヤンキーの喧嘩のみ。つまり、相手が剣や銃などを使っていたら、話は別だが、相手は自分のコピーなのだ。

 普通の人であれば、同じヂカラで勝ち越すことは難しいが、№Ⅳは拳の喧嘩であれば、戦いの中で更に力をつけることができる。

《俺の力が通用しないだと、俺がオ・レ二・・・ピー》

《グワーン データが一部破損しました》

 Βボイスシステムは片腕がなくなり、言語も破損したらしく、また片言に戻っていた。

「俺を倒せる人間は他にいねーのかよ! 人類は弱いんだな! へんてこ科学の実験でも俺には勝てねえんだなぁ! やっぱ俺つえ~わぁ! ハハッ」

「クソ! このやろ!! 薬学様を読んでやる!」

「は? 誰だ?」

「この組織のトップだよ」

「!?(ということは、俺のビルを買い取った頭か・・・)」

 先程の表情とは違い、鋭い目つきになる№Ⅳ。

 研究員は近くにあった緊急用バーチャル空有感転送装置のボタンを押す。

《ブオーン!》

 まさに底にいるかのように、ボタンを押した瞬間するにボタンの中から赤い粒子が出てきて、人が底にいるかのように定着した。

 その後ろには、もうひとり、男が立っていた。

「おまたせ、どんな状況だい・・・うん、でこのありさまわ・・・」

「薬学様! お早いですね! この子供が我々の研究成果を壊したのですよ! この馬鹿な子供にバツを!」

「この子供に壊された?」

「はい! こいつです!」

「君はとても優秀だと聞いていたよ」

「はい! ありがとうございます」

「でも、なぜ、実験のテストをこの状況で試したのかね?」

「ですから、良いテストだと」

「・・・そうか」

「はい! 異常なデータも取れたのですぐに実験に組み込もうかと」

「もういらないよ」

「え? このデータは有益な実験データですよ! いらないなんて勿体な!」

「違うよ、そのデータはいるが、君はもういらないよ」

「え?」

 その瞬間は一瞬だった。

 研究員の腕に注射器をさして、黒い液体を流し込む薬学。

「やく・ガクさマ・・・ナニヲ!」

 研究員の体はみるみるうちに人間のものではなくなり、化け物化していくではないか。それを目の当たりにしていて№Ⅳはすかさず、ガラスのかけらを手に取り、化け物化した研究員の駐車された部分を剥ぎ取るように、してその部分だけ切り取った。

 凄まじいほどの制度で、きれいに剥がしたため、人間の治癒能力で治る程度の傷跡。

 そう、先程の黒い部分だけを剥ぎ取ったのだ。

そうでもしないと、自分が殺されるほどおのさっきと恐怖心を抱いた№Ⅳには選択肢がなかったように素早く動いた。

不良の題6感みたいなものだろう。

 その場の空気が淀む。

「はぁ・・・はぁ・・・」

 急に息苦しくなる№Ⅳ。

「ほぉ、判断が優秀だね。今やらなかったら、君は死んでいたよ」

「何だお前は・・・」

「暁斗、この高校生ヤンキーは使えそうだなぁ。殺したら回収しろ。脳だけは残すようにな。こういうタイプのデータも世界に組み込みたいからな」

「わかりました」

 すると、№Ⅳはなめられた事により、いらだち、黒服の同い年くらいの暁斗に殴りかかった。

「てめっそんなひ弱な体格で俺に勝てると思ってんのか!」

 №Ⅳの鋭い拳が、暁斗に襲いかかる。

 しかし、暁斗は殴られるどころか、その場所から移動せず、立っていた。

「このヤンキーは使えますかね?」

 暁斗はそう薬学に投げかけると、軽く笑いながら、その場をあとにした。

「使えるとも、君のように一度データを転送させて、もとの現実に戻すことで動体視力や、活動の限界値は、人間の制限を取っ払い、極限状態で稼働できるようになる。そう、今の君のようにね」

「ですが、」

「そうだね、気にのようには行かないけど、そこそこ強いよ」

「わかりました」


「なんで、てめ~は・・・クソひょろい体してつえーじゃねーか」

「まぁ、俺は人間のリミットを解除して稼働できるからな」

「くそ、そんなつえ~やつがいたとはな・・・秘密を見たから俺を殺すのか」

「まぁ、世間的にはそうなるが、実質的には体を保管し精神を切り離し別次元に送る」

「難しいことは分からねえが、俺はその世界で生きれるのか?」

「その世界で死ななければなぁ」

「もじかよ、現実世界とかわらね~な一度の命か・・・」

「ただ、その後に、またこの世界の体に戻ると、君はリミットが外れて、体を壊しながら人間以上の力を発揮できるようになる。今の俺もそんな状態で、力を出すとリミッターが外れるんだよ。この世界でももっと、力を出せるが、自分の体との調整が難しくなんだがなぁ・・・。適齢があれば、生きて帰れる。生きて帰れたらお前も俺みたいな力を発揮できるぞ」

「そうか・・・」

 どうしてか、№Ⅳの気持ちは穏やかな気持ちで暁斗の取り出した薬を受け入れて飲み込んだ。

 おそらく、今時分が置かれている状況を冷静に判断したからであろう。

 だが、ただではやられないというのが本来の不良だが、その意志も見られない・・・。

 つまり、この世界を生きていくのに疲れたという意味合いもあったのかもしれない。

 それは、本人しかわからない。

「この薬の周囲には薄い膜がかかっていて、その中に薬を飲みやすくするジェルが入っている。それを歯で破いてその円滑剤と一緒に飲み込め」

「飲み込まないとどうなる。ここでお前の首を落とすまでだ」

「なら、飲み込むしかねーなぁ」

「そうだ」

「グッ・・・」

 視界がぼやぼやしていき意識がなくなる№Ⅳ。

 気づくと、そこには薬学と暁斗の姿が見えた。

「まぁ、これでお前と対等に戦えるってことか! おら!」

「切り替えが早いやつだなぁ」

「まぁ死んだわけじゃないんだろ。体が保管されているなら、もとに戻れるってことだよなぁ。なら問題ねぇな。むしろリミット解除された俺の力がどんなもんなのか楽しみでしょうがね! 早速たたけうぞ!」

「元気なやつだなぁ」


 そして、№Ⅳは能力を手に入れたのだ。かつて自分が憧れていた能力を手に入れた。

それは、いじめられていた頃に戻りやりやり直したいという願いから生まれた力「時間の巻き戻し」と相手がどんなに強くても、動けなくする「物体停止能力」だ。

この能力はスローモーションに見える状態の特技が能力となったようだ。

これで、暁斗を停止させるが、その後に、赤坂が、出てきて、№Ⅳに屋を放ち、№Ⅳは矢を1本止めたが、物体の1つしか止められず、屋が刺さり、苦しむが、巻き戻し能力を無意識に発動し、回復。

赤坂びっくり。

暁斗は見守る。

薬学は嬉しがり、№Ⅳは赤坂の時間を停止させ、邪魔が入らないようにした。

再び№Ⅳは暁斗に戦いを挑むが、自分(№Ⅳ)すら動けなくなってしまったことにびっくりする№Ⅳ。

そう、このとき、暁斗もまた特殊な力を使ったことに気づき慌てる№Ⅳ。

そこで、暁斗は隕石を生成し、何でも生成できることを証明し、№Ⅳに当たる隕石を自作のシールドを生成し、ガード。

「ゴゴゴゴッ」

「ドーーーン‼!」

 隕石が№Ⅳの目の前ではられたシールドにぶつかり、その場で爆発。

 もちろん、№Ⅳだけではなく、その場にいた薬学、赤坂と自分にもシールドを張り、隕石の威力に負けることなくすべてをガードしてみせた暁斗。

同頑張っても勝てないことを目の当たりにさせる。

「やっぱり、お前には勝てね~みたいだなぁ~ホントつえ~なお前」

「お前の力をもっとうまく使えれば似たようなことぐらいはできるさ」

「冗談だよな(笑)」

「冗談に聞こえるか?」

「暁斗はいつだって本気よ。私が保証するわよ!」

 その話を聞いていた赤坂が話に入ってきた。

「俺は前の、いや暁斗の部下になるわ! 強いものには従うのが俺の生き方だからよ」

「好きにしたらいいさ」

「ないしん暁斗は嬉しいと思うわよ! ここまで張り合えたの白夜くらいかもね」

「白夜?」

「私達の幼馴染よ! そのうち会えるわよ!」

「そうか、同じぐらい強いやつがまだいるのか、戦いたいな、その白夜というやつと」

「そのうち会えるさ」

こうして、№Ⅳは新たな力と新たな仲間を手に入れた。

「やっぱり、強くなりましたね。素晴らしいですね。私のデータワールドへようこそ№Ⅳ」

「№Ⅳ?」

「気にはこの世界で力を手に入れた4番目の特異者ですからね。あなたはもう現実世界ではいないとされる人間です。なので、名前を改め、№Ⅳとしておきます」

 ここまで、記憶を思い出して仮想世界に意識を戻す№Ⅳ。

 ―――どっちが幸せな世界だったんだろうなぁ~―――。

黒衣者【男:ヤンキー】【№Ⅳ】【終了】


★†「№Ⅳ(ヤンキー)」

 その瞬間。神夜の方に、ものすごいスピードで、飛んでくる人影。

 霧咲だ。霧咲が剣を構えた状態で飛んできたのだ。

強烈なパンチを霧咲に繰り出す№Ⅳ。

№Ⅳの拳が太い木をなぎ倒すほどの強烈なパンチだ。

「ドュッン!」

 霧咲は、その攻撃を鞘でガードすると、ガードし終えた鞘をそのままにして、下に素早くしゃがみそのまま、鞘がない状態で刀を素早く切り裂く。

「瞬殺抜刀斬り!」

「ぐぁぁああ‼」

 今度こそ、一撃で仕留めるため、体を真っ二つにする。

 修復下ばっかりの№Ⅳは能力を発揮できない。

 もちろん停止能力も同様だ。

《GAME OVER》

「№Ⅳ!」

 暁斗が、夜魅との戦闘中よそみをして、叫ぶ。

「黒龍! 向こうの2人にブレスだ!」

 そして、ブレスで攻撃した黒龍は青白い粒子になって消えて行った。

「説明してあげるね! 黒龍とか、強力な戦力を想像すると、消費するエネルギーが多いから、攻撃に制限がつくの~つまり、創造の力も万能じゃないの!」

 №Ⅲは、№Ⅳが倒されたというのに平然と、いやむしろ楽しそうに話している。

 №Ⅲは頭のネジが外れているようだ。

 戦闘中よそ見をしていたこともあり、夜魅の刀の攻撃に耐えきれず、ふっとばされ、最後に回し蹴りを暁斗にお見舞いした。

「グッ!」

 暁斗はその場に倒れた。

 また、№Ⅲが暁斗の心を読み始めた。

「暁斗くんが凄く起こっているみたい! 今から強大な剣を創造するよ!」

 立て続けに、実況のように、心を読む№Ⅲ。

「次は、霧咲ちゃんの心を読むよ! その攻撃が来ても、刀と鞘でガードするよ!」

「夜魅ちゃんは、交わすつもりだよ!」

「神夜くんは……どうするか見てるよ! やっぱ一番弱そう!」

―――うるせーな……他の奴らが以上に強いだけだよ……―――。

 神夜は、内心そう思ったが、№Ⅲには筒抜けらしくニコニコ笑いながらこちらを見ていた。

 そんなことを考えている間に、ガンソードの周囲には、青白い粒子が、まとわりつき、やがて、長いロンドソードに変化していた。そのロングソードは、建物を真っ二つに出来るぐらいの巨大な刃となり、暁斗は躊躇なく、横に降った。

 №Ⅲが行ったように、霧咲は、鞘を立てにして、ガード。

 夜魅は、黒い玉をその場に浮遊させ、自分は天高くジャンプ。

 暁斗とは、とゆうと。一番遠くの位置にいたので、走って遠ざかる。

 青白い巨大な刃が、3人を襲う。

だが、3人とも攻撃をくらわずにやり過ごすことができた。

 その後、ガードをしている霧咲は諦め、空中にいる夜魅似狙いを切り替え、上にロングソードを振り上げた。

 夜魅は、とっさに刀でガードを試みるが、あいにく地面や壁が近くにないため、踏ん張る事ができず、ものそぐい勢いで、押されて上空へ吹き飛ばされ、ロンドンの時計塔の上部のかべに激突した。

「ぐはぁ!」

 夜魅は、そのまま落下。

 地面に叩きつけられた。

「バタッ!」

「一人目……戦闘不能だ」

 暁斗は、そう言うと、ロングソードが消滅した。

 ロングソードの刀の輝きが綺麗だったこともあり、消滅するときには、ガラスのようにキラキラと舞っていきながら、消滅していった。

神夜が死の予告を受けるときは、本当にその人物がなくなるときだ。今回は、何も起きなかったため、生存している裏付けだ。

―――まだ、死んでいないようだなぁ……よかった―――。

ギリギリ攻撃範囲外に逃げられた神夜は、1つ疑問に思う。


   ◇◇◇


□ 霧咲薬学


「この黒いメタルスライムはなんだ?」

 №Ⅲが神夜の心を読んで、驚いている。

「⁉……暁斗くん! この黒いスライムは……グサッ!」

 №Ⅲが喋ろうとした途端。黒いメタルスライムが、№Ⅲの心臓を一突き。

「気をつけて、その黒いメタルスライムから、薬学の声がする……の……」

 その場に倒れ込む№Ⅲ。

 だが、《GAME OVER》という、表示はされていなかった。


★†「№Ⅲ」スライムに刺される瞬間に時間がスロー


「あれ、……私、ここで死ぬの……いや、もう死んでるか……」

 №Ⅲの瞳からは赤色の涙が目の中に溜まっていく。

 丁度スライムが刺さった勢いで顔が上向きになり、赤い涙は彼女の瞳を十分すぎるぐらいにピンクがかった瞳を湿らせた。

だが、本来の彼女の瞳の色は黄色。白い涙に溶けるように赤い色の色素が抜けていき本来の黄色いきれいな瞳が現れる。


 彼女はどこにでもいるごく普通の女子高校生。

 甘い物好きなごく普通の女の子。

 

 学校に通い朝の登校時間では外の光を目に入らないように髪を少し長くしている。

光が入らないようにガードしながら、いつも投稿している。

髪はサラサラで瞳と髪の毛は薄黄色いきれいな淡い色。

みんなはキレイと言ってくれるが、私は少し不満だった。

「キレイね!」

「ありがとう……」

「どうしたの? 眠いの?」

「あっ……ごめんね。大丈夫だよ!」

 彼女の目がきれいな薄い黄色の瞳をしているのは珍しいのだが、生まれつき目の色素が薄かった。そのため、あまり光を目に入れると目が見えなくなる恐れがあることで、外であまり遊ばずひ弱な体になっていたのである。

 とはいえ、その御蔭で肌は日光にあまりさらされないため、吹き通った広い肌を保ち以外にも女子に「肌が白くていいな」や「瞳が綺麗で羨ましい」等とよく言われる。

決まって話題はスイーツやテレビの話で盛り上がるが、話についていけない女の子。

「あっ・・・そのスイーツのお店って、、、」

「あっ! そうだったね! ごめんね・・・」

 そう、彼女はスイーツ好きだが、スイーツの有名なお店すら知らないのだ。

 その理由は家庭の事情によるものと関連していた。

スイーツ好きのごく普通の女の子。

だが、家は貧乏でお金はなかったが、家族で過ごす時間が一番幸せを感じる瞬間であった。

そのため、貧乏であったが、彼女はスイーツをお食べられなくても、家族さえいれば幸せなのだ。

だが、どことなく、彼女の顔は栄養が足りていないように見え、よく見るとくまもできていた。光をあまり浴びない生活をしているからか、体は細いし、肌も白。

 そんな、彼女の1日は学校に始まり、学校のチャイムがなり下校する時間。

また、登校のときに話をかけてきた女子生徒と話していると、学校のチャイムが鳴る。

「ごめん! 今日も用事があって! また今度話そうね!」

「わかった! バイトしてるもんね! ゴメンね! またね!」

「うん! またね!」

 彼女は朝話しをしていた友達に断りを入れ、そそくさと帰っていく。

下校時刻になると、部活動を始めるものや帰宅する生徒たちが増える中、彼女は淡々と足を運ぶ。

その足は、少し細く同級生の女子の中でも一段と細い。

そんな華奢な彼女は暗い路地に消えていく。

 彼女が入っていった建物は廃墟のように見える怪しい建物の中。

 足音がコツコツなり静けさが漂うその先には一人の白衣を着た男が待っていた。

「おっ、きたか……待っていたよ」

「今回もよろしくおねがいします……」

「もちろんだよ。君のおかげで良いデータが取れるよ。さあ、いつものようにそこに座ってくれ」

その言葉を聞いた女の子は羽織っていた学校指定のジャンパーを脱ぎ学生服の袖をまくった。

「じゃ……3回目の血液検査をしようか」

 そう言うとお事は注射器を取りだし、注射針を彼女の腕にゆっくりと刺していく。

少女は、なれた様子で顔色人使えずに自分の血が抜かれている姿を目の当たりにしている。

「えっ!」

 少女の見ている眼の前で血液の色が変化した。

「これは!」

 なんと、赤かった血液が紫色に変化したのだ。それでも驚きだが、彼女の血液は更に色を変化させた。

「今度は、黒……色……」

「なんと! これは、成功だ‼」

 少女はそれを効くと嬉しそうに微笑む。だがその微笑みはその実験の成功ではなく、誰かを思い出して思いやっている表情。

「ありがとう! これで私の研究は更に深いところまですすめることができるよ!」

「それは、良かったです……」

「もちろん契約書に書いてあるとおり実験が成功した場合には報酬に成功した単価も上乗せさせてもらうよ」

「ありがとうございます!」

 少女はお金をもらえると効くとまたもや嬉しそうに微笑む。

 だが、その微笑みはお金に執着しているような表情ではなく、温かい人を思いやす表情。

「―――これで、お母さんと観留(みる)を助けられる!!」

観留は女の子の妹で、現在栄養失調で入院しており、学校帰りは怪しい研究所に立ち寄った後はいつも病院に足を運んでいる女の子。

「お金が溜まったよ!」

 少女が話をかけたのは入院中の妹。

「これで治療できるね!」

「ありがとうおねいちゃん!」

 なんとも愛があふれる病室なのだろうか。

 その幸せの表情と対比するように白い肌とくまが目立つ少女と、同じく体調すぐれているようには思えない妹の微笑み。

 そう、彼女の笑顔は妹の入院費と高額な手術費を稼げた喜びから来た笑顔だったのだ。

女の子は妹を助けるために命を削りわざわざ高額な治験バイトをおこなっていたのだ。

だから、学校でもいでも眠そうにしており、普段から薄っすらとクマができてるのだ。


実は、彼女の家は貧乏でおかながなかったためはじめは母親がお金をためていたが、体調を崩し、代わりに彼女がお金を稼ぐことになったのだ。

彼女がこの怪しげな治験のバイトをしているのはこういった背景があったからだ。

母親は妹の入院費や生活費を稼ぐために、パートづけだったため、体がボロボロになり、体調を崩して仕事中に倒れてしまう。


それを見ていた彼女も、喫茶店のアルバイトを始めるが、妹の入院費を稼ぐのには何年もかかってしまう。夏休みはすべてバイト付の日々が続いたが、お金が貯まらず、だんだん疲弊していく。

そこで、母親に危険と言われてやめた治験のバイトを思い出し、内容を確認すると一回絵妹と母親を助けることができる金額以上の高額案件を見つけてしまう。

その治験に応募した結果、見事当選となり選ばれたのだ。

危険がつきものの治験のバイトは高額案件ばかりだが、常に危険と隣り合わせの仕事だ。軽い治験の内容は命には別状はないが、妹の入院費を稼げる高額治験案件は命との隣合わせのバイトだ。

怖くないと言ったら嘘になるが、妹が元気になり、母親の負担を減らせる最高の仕事は彼女にはその治験のバイト以外選択肢がなかったのだ。

その治験のバイトは長期で行われるため、土日は研究所で寝泊まり生活が始まり、普段の日は学校が終わり次第治験バイトを行うビルに通う毎日を過ごしていた。

体がだんだんと悲鳴を上げていく。

だが、彼女はそれと同時に高額な治験の報酬を受け取っていたため、治験のバイトを続ける。

妹の高額な入院費にはそれでも届かないため、何度も危険がある治験バイトを続けていたが、ある時一気に入院費をまかなえるほどの高額案件の治験のバイトを見つけてしまう。

「プロジェクトD」という案件を見た彼女はすぐさま志願した。

もちろん、あまりにも危険な内容だったため、多くの治験者も名乗りを上げなかった案件であったが、妹が助かるならと彼女の思いは揺らぐことがなかった。

 研究所でよく見かける同じ年齢に見える他校の見慣れない制服を来ている男子生徒が彼女にもう投与をやめるように行ったが、彼女の決意は固く揺るがない。


 その結果、体がたいきれなくなり、彼女は妹の手術日に命を落としてしまう。

 そして、まさにその薬こそ、薬学が開発を進めていた薬で霧咲しなの母親を化け物化させた試作品「零式」だったのだ。


 皮肉にも、緊急処置として用意されていた「脳をデータに移行する違法処置」が用意されており、彼女はその死の瞬間にデータとして、意識がすべてデータ世界に転送された。


 そして、そのときに妹の身代わりになりたいという潜在意識からデータワールドで人の真似をできる力を手に入れることになる。

 また、それと同時に相手の思考を読み取れる能力も死の直前に開花した。

意識が朦朧としているときに薬学の声が聞こえた彼女。

「これで、この実験が成功したら私の子供と私の妻を蘇らせることができる! 頼むぞ!」

(あっ・・・この人も私と同じで家族を助けた買ったんだね・・・)

 そんなことを思いながら現実世界からデータ世界に転送されていった少女が№Ⅲだ。

彼女はそのまま記憶をなくし、再び目覚めたときにはデータワールドでの暮らしと新たな力。

そして、彼女に与えられた力は、感情を読む力。
それと、彼女は本来優しい性格だったため、隠し事ができない真面目な正確だったこともあり、能力の制限としてその条件もくわわった。 

そして、彼女の優しさから生まれた、病気の妹の代わりに自分がみぐぁ理になりたいという願いが彼女の力に変化して、人のモノマネができる能力を手に入れたのだった。

だがしかし、この能力にも優しい彼女の制限付きがあり、偽物だとわかると、その幻想が溶ける条件付きだ。

現実世界からデータワールド(仮想世界)に来た彼女の精神は薬でおかしくなっていた。

家族ために稼いだお金と、彼女の死亡した保険金で更に彼女の家族にお金を渡せたことに嬉しくなったのか彼女はずっと優しく微笑んでいる。

これが、№Ⅲの記憶だ。

―――そして、思考が仮想世界に戻ってくる―――。

黒衣者【女:心を読める】【№Ⅲ】【終了】


★†「№Ⅲ」スライムに刺される瞬間に時間がスロー


「ぁ……」

「あ⁉」

「ぁぁあああああ」

「なんだ⁉」

 そう、黒いメタルスライムに急所を貫かれた№Ⅲは、ゾンビのように断末魔のような声で、うめきながら、暁斗に向かってきた。

 動きが遅いのを見ると、よく映画などで知られるゾンビのような状態になっていた。

 もはや人間的な動きというよりは、操り人形のような動きで、足を引きずりながら迫ってくる様子は、まさにゾンビ。

 暁斗は、仲間だったとはいえ、現在ゾンビになってしまった仲間を容赦無くガンソードで撃ちまくる。

 連射した弾丸は№Ⅲの体にいくつもの穴を開けたが、足は止まらず。

 だが、銃弾を連射した衝撃で、№Ⅲの向く方向が神夜に向いた。

「蒼麻くん! 伏せて!」

「!」

「スパッン!」

 神夜が伏せた瞬間に、№Ⅲの首が胴体から離れて飛んでいった。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 №Ⅲの首の傷口からスライムがゆっくりと出てきた。

そのスライムは、顔の造形を作り、№Ⅲの顔に変化していった。

 完全に元の姿に戻ったようだ。

 №Ⅲの瞳が先程自らの首を落とした霧咲の方向に向き、瞬きを3回した。

 3回目のまばたきを終えると、霧咲を睨みつけ、そのまま先ほどとは打って変わって、アスリート何もスピードでダッシュして霧咲を蹴り飛ばした。

 思いも寄らない想定外の動きに避ける反応が遅れた霧咲は、なんとか鞘でガードをして、致命傷をまのがれた。

 だが、力があるようで、ものすごい勢いでふっとばされていく霧咲。

 時計塔の場外に吹き飛ばされる勢いだったが、空中で華麗に体をひねり、鞘から刀を抜き、鞘と刀で天井の壁に刀を突き刺し、鞘で近くにある壁に引っ掛けることでなんとか勢いを殺せ、地面に降り立つ。

「馬鹿力にもほどがあるわよ……ハァ……ハァ」

 霧咲は息を切らせながら、独り言をつぶやいた。

 そんな状態の中先程蹴り飛ばした足が折れているようで、その場で倒れている№Ⅲ。

 よく見ると、№Ⅲの体を利用して、地面にアタを開け、スライムが姿を隠しているようだった。

「がぁああ‼」

 その声は、暁斗の声だ。

 そう、そのまま黒いメタルスライムは、暁斗の背後に地面から周り、そのまま暁斗は以後から、心臓を一突きして、№Ⅲのように体内に潜り込んだのだ。

《GAME OVER》

「№Ⅲ⁉」

 それを見ていた暁斗も目を大きく開け驚く。

「こいつが……薬学……生きていたのか⁉」

 暁斗の言葉の次に霧咲も同じく驚く。

「私が、真っ二つにとどめを刺したはずだが……まさか、本当にスライムになって生き残っていたとは……」

 その時だった。

伸びたスライムの腕を使って、大きく棒高跳びのようにジャンプし、暁斗の頭上まで、飛び上がる。

「今度こそ消滅してくれ……」

 暁斗は、ガンソードに弾丸を創造の力で、装填。

6発連打でスライムを撃ち落とそうとしたが、攻撃がすべて吸収された。

 そのまま黒いスライムは、暁斗の口の中に入り、やがて姿形が、薬学の雰囲気を持ち薬学が復活した。それも、暁斗を器として。

 黒いオーラが暁斗の周囲に漂い始めた。

「ギャハハはぁ~~~! 成功したぞ! 私は、人体を移動して、生きられる体になった!」

「きさま、薬学なのか⁉」

「そうだ……この裏切り者たちを消しに来た……他の黒衣者はお前たちが倒してくれたのか……ありがとう……そして、お前らも消滅する時間だよ……」

「まぁ、私が死んだ時の止めに、器として、作ったのが、№なのだからなぁ、器にならないで、独自の行動をするとは思っていたが、こんなにも早くに裏切られるとはなぁ……びっくりしたよ」

 暁斗に取り付いた薬学がそう言うと浮遊して、黒い翼が青白い趣旨により、想像された。

「イメージは堕天使って所かな?……」

 その言葉通りに堕天使の不気味な気迫が漂う。

これも、暁斗の創造力で作り上げたのだろう。

「こんなことも出来るなんて……」

「あ! この体なら、スライム状態で自分にしか使えない重力変換が相手にも使えるな!」

 そう言うと、薬学は、手を大きく開き一言。

「重力負荷加算200%」

「ぐぁぁぁ!」

 重力に押し綴られそうになり、誰もが立っていることがやっとだ。むしろ立っているほうがすごいほど、圧倒的な重力の負荷がかかる。

 だが、暁斗の体を借りている薬学も同じように負荷がかかっている。その負荷は、この時計塔全体の重力負荷がかかり、建物が更に崩れていく。

「メタル化!」

 暁斗の器を借りている薬学は、メタル化になって重力を無効化した。

「これなら、私だけ歩けるな」

 動けず、地面に這いつくばる3人を見て、次に自分の武器について考え始めた。

「なんだ⁉ このガンソードは、不完全帯のシナプスじゃないか、実は、もう1つのシナプスも持ってるんだよね! さすが私だ!」

 そう言うと薬学は、手をおもむろに天井に向け白い宝石のような物体を青白い粒子を放ちその中から出した。

 以前の黒い薬と言い、薬学は、別次元からケームでよくあるアイテムボックスを活用しているのであろう。

 そこから、白い宝石を取り、薬学が、ガンソードを持っていない手で、握りしめると、青白い粒子とともに、白いレイピアに原型を変化させた。

恐らくこれは、創造の力だが、その武器に宿る天然のシナプスの影響もあり、強力なオーラをただ寄せている。

 右手に、黒いガンソードと右手に白いレイピアをもった暁斗に取り付いた薬学。

「こいつはいい! 天然シナプスが揃ったことで、共鳴が起きて力も増加しているじゃないか! ははは……これは面白い実験結果になったものだ」

 そんなことを一人でかたりながら、薬学は試し切りを行う。

「ビューン!」

 白いレイピアで、軽く降っただけにも関わらず、薬学から、一番遠い位置の壁に傷が入る。

「素晴らしい……」

 次に、今まで暁斗が使っていたガンソードの剣をフルと、凄まじい風圧と降った方向の近くの壁に穴が空いた。威力もあるし、遠距離でも戦える優れた武器が薬学の手元に揃ってしまった。

 そして、装填されている弾丸の玉を天井に向けて打つと、その弾丸は、凄まじい風圧と、威力を見せた。

「素晴らしいぞ! シナプスの片割れを集めてこうして手元に2つ揃うだけで、こんなにも強力な共鳴をして威力が跳ね上がるとは……これだから、実験はやめられないな……ははっ」 

 その時だった。

夜魅が這いつくばっている状態から、重力に逆らいその場に立ち上がり、シャドーボールを形成していく。

 そのシャドーボールはみるみるうちに大きくなり、今まで見たことがない大きさまで、膨れていった。

「記憶をなくした人形のくせに私に楯突くなど……許せないな……」

 そう、記憶が無いのだが、戦闘能力だけは無意識に体で覚えているのだ。薬学が驚きいらつくのも無理無い。

 裏切り者として、即始末されるだろう。

その大きなシャドーボールを2つに分裂させた。

「⁉」

「⁉」

「⁉」

 思わず、神夜と祇那も驚いてしまった。

 なぜなら、このシャドーボールを分身させる技は初めて見たからである。

 だが、薬学は知っている口ぶりだった。

「その技を出すのか……命が欲しくないようだな夜魅……自らな生命力を使って分身させる技を使うとはなぁ」

 そう、命がけの技らしいのだ。

 そして、その技は、本来、宙に浮いて放たれる攻撃なのだが、重力負荷の影響下、ボウリングの玉のように、地面を転がり、薬学の方に転がっていく。

 その威力が凄まじいことは、転がった後の地面が削れているので、よく分かる。

「どれ、試してみるか……」

「ビューン!」

 白いレイピアの人斬りで、1つ目の玉があっけなく消滅した。

「バンッ!」

 続けて、もう一つのシャドーボールに弾丸を打ち込んだ瞬間。玉が爆発するように、飛び散って消滅した。

「素晴らしい……なんだ! この威力は‼ これほどの力とは思わなかった」

 その間に、夜魅は、薬学の近くに近寄っていたのだ。

そのまま近づき、ニヤリと笑う。

重力不可を利用するため、薬学の上部に黒い小さなシャドーボールを複数生成していた。

つまり、大きな生命力を削って放った攻撃は、陽動で本命はこっちの小さなチャドーボールだったのだ。

重力負荷を利用して、一気に複数の小さなシャドーボールを振り下ろした。

「シャドーランス‼」

掛け声に反応してシャドーボールの造形が鋭いランスのように変化。

「バババババッ!」

 黒い針の雨のように薬学を無数の攻撃が襲う。

「……」

 そして、その攻撃がやんだ後、重力負荷の効果が切れており、メタル化も解けていた。

「今だ!」

 夜魅は近くにいたこともあり、勢いよく、刀の攻撃を繰り出す。

 下を向いていた。薬学は、その場を動こうとしない。

 力尽きたのか、それとも、なにか企んでいるのか、動こうとしないのだ。

 不審に感じたが、今が攻撃のチャンスだと思った夜魅は、不審な動きを見せたときのために、自分の周囲にシャドーボールを形成した。だが、その準備も虚しく夜魅はどこからともなく、攻撃をくらい吹っ飛んだ。

「バーン!」

 壁にぶつけられ、周囲には、縁のように壁にヒビが入り、体は、壁にめり込んでいた。

 数秒立つと、そのまま、落下し人形のように、地面に落ちた。

「創造の力で、遠隔操作することが出来るなんてなぁ……思ってもいなかったよ……この力、本当に便利だな」

 そう、薬学が創造の力で、自分の腕となる分身を作り出し、その手には、黒いガンソードと白いレイピアをもたせており、ガンソードの威力の一撃で、夜魅はふっとばされたのだ。

 倒れた夜魅はピクリとも動かなくなってい。

 そんな状況の中、静かに薬学の背後につく人影。

 霧咲だ。

 霧咲は、夜魅の攻撃にきがっている薬学に攻撃を当てるため、静かに忍び寄っていたのだ。

 大きく、剣を振り挙げる霧咲。

 その背後の気配に築いた薬学は、凄まじい眼力で、背後を睨みつけ、遠くにある剣を呼ぶ時間がないため、手元にロングソードを生成し、背後に回転斬りを繰り出した。

 薬学は、霧咲を見事真二つにできたが、周囲に、なにか、雪のように青白い光が浮遊している。

 その事に気づいた瞬間だった。

 切り裂いたはずの霧咲が、急に現れ、薬学を一刀両断。

「がぁぁ‼」

 片方の目を切り裂いた。

「目がぁあぁあ~……」

「薬学、お前との約束を果たすため、切り刻む……」

「斬撃(ざんげき)乱舞(らんぶ)!」

「ズバッズバッズバズバズズズズ‼」 

「がぁ‼!」

「そんな約束はしていない! 俺は、この世界を支配す存在だ!」

「薬学、お前が自分でこうなった時の対処法として、私を作り上げたんだよ……済まないが、今のお前には従えない……過去のお前の言葉に従うまでだ!」

 ボロボロに切り裂かれた暁斗の器に入った薬学は、不敵に笑い始める。

「ふふふっ……」

「何がおかしい」

「いや、昔の俺は、こんな力で、自分を殺せるとでも思っていたのかね……と思ったらおかしく思えてきてな……」

 そう言うと、薬学は、赤く光りだした。黒衣が赤い色に変化していき、暁斗の肉体も変化。

暁斗の肉体はみるみるうちに筋肉が発達していた。

本当の力は、これからだと言わんばかりに、笑いをこらえきれないのか不気味な表情で姿を変化させた。

「これが、私の最終形態だ!」

 姿を見ると、頭に角が生えており、まさしく魔王といった表現が似やう容姿に変貌していた。

「どうだ! まさしく魔王のような見た目だろ! デザインも優れているが、身体能力も強化されているんだ!」

「斬撃(ざんげき)乱舞(らんぶ)!」

「フファァははは! 聞かんよ! 既に人間をやめたこの体には刃は通らない!」

 薬学は、腕を挙げると、腕に赤い電流が流れ、たちまちその電流は、手のひらで、どんどん大きくなっていく。

 赤色の電撃なんて見たことがない。

「雷光(らいこう)・紅蓮(ぐれん)」

「ぎゃぁあぁぁぁ‼」

 霧咲の体に、電流が流れていくように、赤い電流が流れ、最後に膨大な電流が放出する姿は、まさに、蓮の花。

綺麗な花のはずだが、戦いの攻撃として生み出された花は、綺麗とは言い難い光景であった。

 霧咲がいた地面の焼け跡には、大きな花の模様が黒ずんでいた。

「祇那‼」

「はぁぁぁあ‼」

 先程まで、倒れていた夜魅は、膨大な量の力を使い大型のシャドーボールを3つほど生成して投げつける。

「雷光(らいこう)・紅蓮(ぐれん)!」 

雷光(らいこう)・紅蓮(ぐれん)を作り上げた薬学は、その原型を細長くし、剣の形にまとめ上げると、その刀化した赤い刃で、3つのシャドーボールを切り裂いた。

そのまま、切り裂いた雷光(らいこう)・紅蓮(ぐれん)を夜魅に槍のようになげつける。

夜魅はとっさにガードをこころ見たが、ガードなどできず感電。

霧咲のように、蓮の花の焦げ跡を残し、その場に倒れた。

「これで、掃除は終わりか……さぁ、計画の続きだな」

 そう言うと、ポケットから、大牙が入ったカプセルを周王のシステムに組み込もうとしていた。

「やめろ‼ 薬学‼」

 その時だ。

カプセルを開けた瞬間、青い炎が薬学の手を覆うように炎が回る。

薬学の全身を青白い炎が包み込む。

「クッ、ただのシステムのエネルギーの分際で、私には向かうなどと……」

 カプセルから、一気に大きくなり、出てくる大牙の勢いと相まって鬼気迫るものを感じた薬学は一旦炎を省いて後ろに逃げようとしている。

 薬学はとっさに体を回転させ体についた炎を払いのけると、大牙から、距離を取ろうとする。

 だが、大牙にとっては絶好のチャンス。

「逃さんよ! 人間! ワシにけんかを売ったのだ……貴様の命で次ぐ立ってもらうぞ」

「ただのオブジェクトに過ぎない分際で……本体は現実世界にあるんだろ……そんな遠隔操作の体で本来の力すら発揮できないお前になど、負けるはずがないだろ」

大牙「勘違いしているようだなぁ……ワシは意識の共有。記憶の共有。力の共有が可能だ。そして、その力は薄まることはない」

「・・・!?」

 薬学は度肝を抜かれたように表情が一変した。

「そうゆうことだ‼ 愚かな人間よ‼ して、ワシはこの体がなくても生きていられるのだよ‼」

 そうゆうと、大牙は凄まじい気迫とすさまじい熱を放ち薬学の足に肩に食らいつく。

 手足を使いガッチリ固定したまま徐々に、熱は上がっていく。

「おい、まさかとは思うが、自爆するきか⁉??」

「ガルルッ‼」

「やめろ‼!」

「バーンッ‼」

 周囲は一面青い炎が飛び散る。

 青い炎の爆炎が大牙と薬学の姿を消していた。

「大牙!」

 姿は見えない。

 やがて爆炎晴れていき、影が見えてきた。

 その影を見ると、首だけになった大牙の頭を素手で引き継ぎっていた薬学。

「以外に柔らかかったなぁ……。 神獣ってこんなもろいのか・・・」

「・・・」

 大牙の体は爆発の起爆として粉々になっていた。

「薬学‼」

「ん? なにか聞こえると思ったら、なんだ! いつぞやの少年じゃないか……存在が薄くて気づかなかったよ! ま、君には何もできないから、そこに突っ立っている所を見れば、君は賢いかもね……ははっ。でもさぁ~仲間も守れず、友達も守れず、よくそこに入れるよね」

 そう、神夜には、力がない、力が無いが、戦略を寝ることは出来る、だが、この魔王化した薬学に霧咲も夜魅も刃が立たなかったのだ。

 ―――俺が勝てるような相手じゃない……―――。

 だが、この場は、薬学と神夜しかいないのだ。戦わなくても計画を実行した薬学に消滅させられる運命だろう。だが、今動いても瞬殺されるだけだ。

 神夜は、考えた。戦闘能力がない神夜にも、勝てる可能性がある力を有していた。

そう、方法がある。それは、死の予告とプログラミングの書き換え能力だ。

この能力により、これまで、戦えなかった神夜に戦えるユイツの手段だ。だが、とんでもない相手になっていしまったものだ。なぜなら、今や、戦闘特化の霧咲と夜魅が倒されてしまった今、戦えるものは、神夜一人で、戦略で大牙に戦闘を任せることもできず、更に、シナプスに助けを求めることもできない。

まさに、一人での戦いになる。

「まだやれる……」

「私も戦える……」

霧咲と夜魅は大ダメージを追っていたが、戦えるようだった。

―――なら、2人にも協力してもらわないと今の薬学には勝てない……―――。

沿う感じていた神夜達に勝ち目などなさそうに見えたが、神夜には作戦があった。

それは何度も自分が死んで、いる予告を見て、それを改善する事で、勝つ方法にたどり着くという作戦だ。そして、結論を言うと、この作戦は失敗した。

実は、既に死の予告を受け、何回も改善した後だからだ。

それでも、魔王化した薬学には、勝て   た。

 だが、夜魅と霧咲が倒されない未来を選択することの成功した神夜はここで、戦闘能力の核となるシナプスの剣2本を奪う作戦を実行する。

「霧咲、夜魅、俺の指示に従ってくれ!」

 神夜がそう言うと、夜魅と霧咲は、神夜の方に横目でうなずく。

「夜魅は中長距離後方担当で、霧咲は、接近戦を担当してくれ!」

「わかった!」

「了解!」

なんども死の予告を受けてきた神夜には、魔王薬学の行動が手にとるようにわかった。

 夜魅の耳元に行き、コソコソと内容を伝える。

「夜魅は、ジャンプからの、スライディング回転斬りだ」

 神夜の言葉通り、ジャンプした瞬間薬学の攻撃が下段に集中して、夜魅が着地してスライディングした後は、上段と中段に攻撃が集中した。

 その回避は、攻撃を予測しているように見えたが、まさに、その現状を見た神夜には同じことの繰り返しでしかない。その攻撃を避けた後の回転斬りで、薬学は、足を負傷し、倒れ込んだ。

「ぐぅ……ちょこまかとめざわりだ! 雷塔激(らいとうげき)!」

 青白い雷が、空から降ってきて、等に直撃した。その投の電流は、一瞬にして、夜魅に降りかかろうとしていた。だが、急に雷の動きが代わり、夜魅ではないものに、雷が流れ込んだ。

 それは、霧咲の刀のアクに流れ込む。

 これも、事前に霧咲に伝えた方法だ。

「本当に蒼麻くんの行ったとおりだ」

 そう言うと、霧咲は、雷が落ちた刀を鞘にしまい、技名を変えて攻撃を放った。

 意外にも、遠距離と近距離を薬学に聞こえるように行った後、立場を逆転させることで、相手は動揺を隠せなくなる。

 更に、それに追い打ちをかけるように、薬学の攻撃を全てかわし、逆に力を利用したのだ。

「なんだと⁉ 先が読めるのか⁉」

「読めるんじゃない……死を積み重ねてきただけだ」

「⁉」

「瞬殺(しゅんさつ)抜刀(ばっとう)斬り(きり)・雷撃(らいげき)!」

「ぐぁぁぁ‼」

 自分で放った雷を全身に浴びて、感電する薬学。

 そして、その続きの作戦も夜魅と霧咲に伝えていた。

 夜魅は、神夜が行ったとおり、薬学が感電した姿を見て驚くのと同時に、自分のやるべきことを実行する。

 それは、先程薬学にも聞こえるように行った作戦の内容だ。

「シャドーボール!」

 そして、霧咲は、接近戦で立ち回る。

「雷切・斬撃(ざんげき)乱舞(らんぶ)」

 雷を纏った霧咲の攻撃の猛攻に、薬学は苦しむ。

「がぁぁぁ‼」

 ある程度、攻撃を与えた霧咲は、ジャンプし、その場から離れると、夜魅に目で合図をする。

「氷結・シャドーボール!」

 そう言うと、みるみるうちに黒いシャドーボールが氷つき、氷球に変化した。

 その氷球を薬学に投げつける。

「がぁぁぁあああ‼」

 単体では、ただの氷だが、電流が流れた、薬学に触れた氷で、感電の威力が更にましていきかなりの大ダメージを与えることに成功した。

「薬学、お前の計画はこれで、終わりだ」

「バンッ!」

 夜魅に作ってもらったとっておきの氷結弾を薬学に打つと、みるみるうちに効率いていく。

「貴様‼ 私の計画を成功させるために私は……‼」

 すると、薬学の頭部に生えた角が赤く光り始めた。

「命の灯火を削ることで、この膨大な力を使う事が出来るのだ! ハハハハッ! 今度こそ終わりだよ‼ 死ね―――‼!」

「やばい! みんな逃げろ!」

「爆炎! メテオフォール‼」

「バ――――ン‼!」

 凄まじ良い爆炎とともに、その場を火の海にする薬学の能力は、まさに、魔王そのもの。

 夜魅は、氷結シャドーボールを自らの周囲に何十に展開し、解けてはまた生成を繰り返し、しのいだ。

 霧咲は、素早くジャンプし、青白い粒子の翼を広げ、神夜を抱えて空に飛び上がる。

「ありがとう。助かったよ祇那」 

 神夜の言葉は早かったが、自分の対策はできずうろたえていた所を霧咲に拾われなんとか助かった。だが、下を見ると、火の海。

 この、戦いで予想外の高度を見せた薬学に対して、手立てがなくなった神夜はその状況を空から、眺めていることしかできずにいた。

「さて、先に夜魅お前を消滅させるとしよう」

「クッ……」

 氷結のバリアを貼っては、解けていき、貼っては、解けていくを繰り返す夜魅。とっさの判断だったため、空に飛ぶことができずにいた。

なぜなら、今翼を生やして問経てば、確実に雷か、炎で撃ち落とされるからだ。何かと、タイミングが合わなければ、そこを狙われてしまう可能性が非常に高い。

そう考えているうちに薬学の攻撃が始まった。

「行くぞ! 夜魅覚悟を決めろ!」

「させるか! 霧咲! このまま薬学に投げてくれ!」

「え⁉ でもそんな事したら……」

「作戦があるんだ!」

「わかった……」

 渋々神夜の提案を飲んだ霧咲きは、薬学目掛け、神夜を回転させながら放り投げた。

「馬鹿め! 自ら消えに来たか!」

 神夜は、自ら、死ぬことで、死の予告を何度も見て攻撃を何度も交わす作戦に出たのだ。

もちろん、死の予告を受けると、精神的ダメージの負担が大きいが、そんな事考えている余裕はない。つまり、ここが少年場だ。

「薬学‼!」

 

死の予告①―――心臓を白いレイピアで串刺しにされ消滅―――。

 この予告が脳裏に映し出された。回避するため、薬学に弾丸を打ちながら、白いレイピアでガードさせ、攻撃を回避する。その後にさらなる死の予告を見る。


―――ドクンッ……―――。


死の予告②―――ガンソードの降った風圧で、火の海に落ち消滅―――。

この予告が脳裏に映し出された。回避するため、続きざまに、ガンソードの方にも弾丸をうち、白いレイピアのように攻撃をガードに切り返させた。そして、またもや死の宣告を見る。


―――ドクンッ……―――。


死の予告③―――ガンソードの弾丸で頭部を破壊され消滅―――。

この予告が脳裏に映し出された。回避するため、最後に、弾丸が打ち出される少し前に、拳銃を頭部に持っていき、弾丸を拳銃に当てた。これで、死の予告を回避したが、拳銃が壊れて、使い物にならなくなった。


―――ドクンッ……―――。


 薬学の攻撃は、まだ続き死なないと、次ぐの行動が読めないため、死なない程度の攻撃が節注ぐらしいと神夜は思考し、次の手立てを考える。

 ガンソードを降って、神夜を風圧で弾き飛ばし、火の海に叩き落とそうとしたが、夜魅の氷結が神夜の周囲位に展開され、無事に着地することができた。

 その間、夜魅から視点がそらされたことで、夜魅も霧咲と同じように黒い翼を作り、その翼で上空に避難することができたのだ。

 それを気に、シャドーランスの雨が薬学に降り注がれる。

 更に、追い打ちをかけるように、霧咲の斬撃の雨が降り注ぐ。

「がぁぁああ‼」

 薬学は、その攻撃を弾こうと、ガンソードを振り、強烈な風圧を発生させる。

 その風圧により、死の予告を見る。

 その内容は、炎の海の火の粉が、神夜の服に引火し、火だるまになる内容だった。

 その自分を見た神夜は、あることを思いついた。それは、風の動きを先読みできるならではの思いつきで、大胆な発想だった。

 それは、風がふき、通れそうな空間ができた部分を通ると、ちょうど薬学の背後に行けるというアイディアだ。

 普通はそんなことを考えられないのだが、神夜には死の予告が味方をしているため、そんな荒業が可能なのだ。

 そして、その作戦はうまくいき、薬学の後ろにつくことができた。

だが、夜魅と霧咲から、意識をはなれ、神夜を攻撃してくるのは時間の問題だ。

 霧咲と夜魅が2人同時に全範囲攻撃を終えた後、2人は刀の構えを取る。

空中で構えるため、地上で構えるポーズ度は違ったポーズを取り、技を繰り出す。

「摩天楼!」

「氷結斬!」

 同時に技を繰り出し、薬学の刀が、ガードしきれずガンソードが中に舞う。

 すかさず白いレイピアで、カウンターを狙いに来た薬学は、思いがけない要素に築く。

「青白い雪⁉」

 気づかない間に、霧咲の技にも思えたが、何かが違う。そう、本当に、寒いときにしか見られない雪の結晶。

 まさかの夜魅と霧咲の技が、同時に発動していたらしい。それでかなりの範囲と威力があるようで、炎の海は、銀白の雪に柄にと変化した。

 フィールドが夜魅の得意な雪と氷で埋め尽くされたため、夜魅の力が大幅に増加した。

「結線(けっせん)抜刀(ばっとう)斬り(きり)!」

「瞬殺(しゅんさつ)抜刀(ばっとう)斬り(きり)!」

 霧咲と夜魅は白いレイピアの攻撃に同時に反応し、ダブルで、追撃した。

 見事、薬学の腕が弾き飛ばされ、白いレイピアも中に舞う。

 薬学がガンソードを回収しようと後ろを振り向くと神夜が、ガンソードを持っていた。

「貴様! 返せ!」

「だぁ‼」

 神夜は、ガンソードを両手で振り下ろした。

 すると、薬学は、黒い片腕を創造の力で構成してすぐに動かし、両手で刀を止めた。

「ガッ! まだ、お前には使いこなせないようだなぁ」

「⁉」

 神夜は、止められたことに驚いたが、次の攻撃を繰り出した。

 飛び上がり、ガンソードを斜め下に向け、引き金を引いた。

「バンッ!」

「スパンッ!」

 薬学は、頭と体を器用に動かし、弾丸を避けた。その風圧は、ものすごく、神夜は更に中へ飛ばされる。

「しまった⁉」

 薬学が見た光景は、神夜が、白いレイピアを手にしている姿とだんだん落下してくる姿。

「これで、止めだ‼」

 そう言うと、神夜は、落下の勢いを使って、思い切り薬学目掛けて、レイピアで突き刺した。

「キンッ!」

 薬学は、先程のガンソードを自分の手に持ち直し、そのまま振り上げる。

 ガンソードの威力は元々凄まじかったが、白いレイピアが近くにあることで共鳴し、威力が跳ね上がっていた。それは、レイピアの方にも言えることだ。

 薬学が立っている地面には、ヒビが入り、踏ん張る足場は、今にも砕け崩れそうな足場になっていた。

 ここで、霧咲や夜魅であれば、回転斬りや少なくとも足蹴りを食らわす機敏な動きを見せてくれるだろう。だが、神夜には、そんな動きはできず、そのまま弾き飛ばされ、地面に倒れ落ちる。

「やはり、弱いなぁ」

 そう言うと、薬学は瞬間移動するかのような素早い動きで、霧咲と夜魅をガンソードで吹き飛ばした。

「きゃー!」

「キャ‼」

 再び2人は戦闘不能になる。もう体力も能力も使い果たしたと言わんばかりに、横たわる。

「今度こそ、お前一人だなぁ。少年」

 そう言う薬学は、ガンソードを神夜の頭部に持ってきて、眼光を鋭く睨みつけた。

「弱いくせにしぶといんだよ! これで、終わりだ! 死ね―――‼」

 そう言うと、髪夜に止めを刺そうとする。だが、なぜか、振り上げたガンソードを振りおらさず固まっている。

薬学が、持っている黒いガンソードが、一瞬で白くなり、背景が暗くあり、別空間に飛ばされる神夜。


   ◇


   □ シナプス陰と陽


「なんだ⁉」

男性の声だ。男性の声は、いつもの聞き慣れたシナプスの声だった。

―――私の対を探してくれてありがとう。過去の記憶が対の近くにいることで、蘇ってきた。私は、霧咲迅だ。君の知っている霧咲祇那の母親紗友の兄だ―――。

次に聞こえたのは、女性の声だ。

―――神夜蒼麻・・・私の対を探してくれてありがとう・・・そして、今の状況、ごめんなさい・・・私の友人の暁斗と私の夫の薬学が迷惑かけてるわね・・・本当にごめんなさい―――。

「⁉??」

 神夜は疑問に思う暁斗が薬学の友人だという言葉が引っかかる。

「あっごめんなさい私が誰かと言うよりも先に、貴方の友達暁斗くんについて映像と一緒に言葉で教えるわね」

 そう言うと女性は神夜の脳に映像を出力して、過去の薬学の記憶が映る女性自身の視点で、一部始終を見せてくれた。

―――大人の暁斗⁉ その隣には若い頃の薬学……―――。

「そう、貴方が今疑問に思っていると思うけど、今貴方が知っている暁斗くんは、当時の薬学の研究所の同期で友達の暁斗なのよ。暁斗くんは、過去の暁斗さんの遺伝子から作り出したクローンのようなもので、薬学が復活させたの。その復活させた赤子はデータワールドでは成長しないわ。そこで、薬学は、一時的に復活した暁斗さんをリアルワールドで成長させある程度の年齢に来た時にもう一度データワールドに引き戻したの。その時、過去の記憶もすべて戻したのよ。そして、貴方が、であった№達もまた、薬学の同僚で同じように、復活させ成長させたクローンなの……。」

「⁉」

 そんな壮大な話だとは思いもよらず、真実を知って驚く神夜。

 だが、今思い返せば、データワールドのNPC化した時の出来事を思い浮かべた時、神夜は、青衣も赤坂も知らなかった。更に言うと、そのNPC化していた時の状態は、暁斗の記憶ベースで、心地よく構成されたフェイク世界に見えていたこともあり、しっかりと、NPCとしゃべることができた。だが、どことなく、自分ごとのようには感じられない空間だったが、その違和感は、暁斗の記憶ベースで作られた心地の良い世界だったと今では思得た神夜。

 つまり、暁斗の記憶を追体験していたようなものだ。神夜がデータワールドに馴染むためにNPC化して居る状態はこの世界の核となる暁斗の記憶が流れ込んできて同化していたのであろう。

 夢の空間のような時間が停止したようなこの空間で、一人の女性の声が、脳裏に響く。

―――私は紗友―――。

「紗友って霧咲祇那の母親なのか?」

―――そうです。そして、貴方が、ここまで運んできてくれた、対のシナプスの陰は私の実の兄・・・霧咲迅、初期のデータワールド開発者―――。

「⁉ 薬学じゃないんですか?」

―――薬学は計画を引き継いだどけで、その時の副リーダーだったのよ。そして、当初の目的とは真逆の計画として進んだのが今の姿のデータワールド本来は、共存する予定だったわ・・・本当にごめんなさい―――。

 ―――その罪を正すために、最後の力を使って貴方に語りかけているの―――。

「⁉」

 ―――命が尽きる時、兄の声が聞こえて気づいたら、天然シナプスと呼ばれる光となって存在していたのよ。同じく数年前になくなった私の兄の霧咲迅は一足先に天然シナプスと結合して、新たな存在に変化していたの。同じ天然シナプスと結合したのだけれど、私と兄の存在が2つになった所で、シナプスが分裂して、陰と陽に別れたのよ……その片割れが、私―――。

「⁉」

―――難しいことは覚えなくていいは、ただ、簡単に言えば、陰と陽を合わせることで、強大な力を発揮できるということよ。今の薬学は私が知っている優しかった薬学じゃない・・・お願い・・・この力で、あの人を止めて!―――。

ここで、この不思議な世界は消えて現実に戻った。


   ◇


「何だ、ガンソードが動かない⁉」

 ガンソードが動かないようだ。

「⁉」

 神夜は、びっくりしたが、恐らく、兄の迅さんが記憶と力を取り戻した事による異変だろう。また、ガンソードを取るように、白いレイピアも誘導するように神夜の腕が、ガンソードの所へ行こうとしていた。

「わかったよ」

 神夜は、静かに、ガンソードに触れた瞬間だった。青色の雷が発生して、薬学を弾き飛ばした。

「な・何をしたんだ・・・少年」

―――いまよ。合体させて剣を作って!―――。

 紗友の声が脳裏に響く。

 薬学の問いには答えず、神夜は、ガンソードとレイピアを重ね合わせる。

「⁉」 

「⁉」

 すると、黒と白の粒子が周辺に飛び散る赤い剣が生成された。

「これが、天然シナプスの本来の姿か・・・美しい」

 薬学がそう言うと、見惚れているのか、その光景を眺めているだけで、逃げようとも、攻撃しようともしないため、その好きに神夜は剣を振った。

「がぁぁぁぁぁぁぁああああ!」

 薬学の周辺から、黒と赤の粒子が、ランダムに飛び散り倒れてしまっあた。

 その時に悪魔化した風貌が解けて、いつもの暁斗の姿に戻った。

「暁斗……戻ったのか⁉」

 神夜が、手を差し伸ばそうとした瞬間。

 薬学が目覚め、神夜が持っている剣を奪おうとしたが、赤い剣が分裂して、薬学の手元には、ガンソードだけが残った。

「油断したな少年! まだ俺が支配しているんだよ! 覚悟‼」

 薬学はそう言うと、ガンソードを振り下ろそうとした。

 その時だった。

「神夜くんは殺させない‼」

瓦礫の奥から、一筋の光がこちらに向かってくる。

作の銃弾だ。

奥で、待機していたのだが、神夜の命がかかっていることもあり、とっさに行動に出た作。

この最終局面までは、打たずに様子を見ていたのだ。

薬学に打ち込んだ銃弾は、薬学の致命傷を負わせた。

「作‼‼ 貴様!!!」

「いまだ! 目覚めろ! 暁斗くん‼」

 そう、弾丸に込められたのは、作が薬学から盗んだ薬が入れ込まれた弾丸で、その効果は、データ人間の免疫力を格段に上げる効果がある代物だ。

 つまり、薬学は、人間であり、暁斗はデータ人間。

 暁斗の意識が体に伝わり、体のコントロールを制御できる用になるのだ。

「体が、動かない……」

「⁉」

「弾丸にはあんたが、調合したデータ人間の免疫力を強化する薬を入れ込んである」

「さくぅうう‼! クソッ! 今頃になって目覚めるきか! 暁斗‼ 貴様ぁぁあああ‼」

「暁斗‼」

 そう言うと、暁斗の体を使い叩かつていた薬学の表示ではなく、あの暁斗の表情になった。

「蒼麻……済まなかった、本当はただ、俺たちデータ人間と、リアルの人間が、平等に扱われるような平和な世界を作りたかった。でも、今の薬学や、自分を彼奴感的に見たら、リアル世界の独裁者と同じだと今頃理解できたよ……すまなかった」

「暁斗」

「けじめを付けさせてくれ、元の世界に戻るには、データ人間の魂を使う必要がある。俺の魂なら、3人と狼を送り届けるぐらいの存在の力はあるよ」

「何言ってるんだ! 一緒に帰ろう!」

「そうだな……そうしたいが、こんな俺には、もう……資格すら無いだろう……今度こそ……さよならだ……蒼麻」

 そう告げた暁斗は、振り上げたガンソードを自分の心臓に突き刺した。

「グッハッァア!」

「暁斗‼」 
暁斗の体とともに薬学を倒した。

だが、その後、神夜の死の予告が発動した。

今回、命が失われるのは祇那。

小さいスライムの欠片が、残っており、そのスライムが心臓を突き刺し、薬学が復活する場面を目撃した。

 神夜は、その場面で敵対値に弾丸を放った。

 地面から出てきた所を狙い撃ちしたのだが、スライムに当たることはなかった。

 なぜなら、かなり遠い位置から、出てきたため、神夜の銃では、遠この標的に当てるのは至難の業だ。

「祇那! 逃げろ!」

「⁉」

 その声を聞いた霧咲は、後ろを振り返る驚きと動揺を隠せず、そのまま地面に足を取られた。

 その絶好のチャンスをスライムは逃さず、心臓を貫こうと鋭い刃に形を変え、霧咲を襲う。

「バン!」

 暁斗は、フラフラの状態であったが、神夜の様子を見たことで状態が読めたのだ。

 自分の中からは消えた薬学の魂が、スライムの欠片になって霧咲を襲っていることが分かり、ガンソードの弾丸でスライムを撃ち抜いた。

「暁斗‼ がァァああ‼‼」

 薬学は今度こそ、データワールドから消滅した。


   ◇◇◇


   □ 薬学の魂と別次元


その後、消滅した薬学は、データ情報は消滅したが、魂だけが別次元のどこかに飛ばされた。

そう、魂の入れ物になる器をたった今なくしたのだ。

魂だけが、異次元に飛ばされた薬学は、次元の狭間で自分が自分である事を魂だけになった薬学が自らを認識した。

認識したのと同時に、かつての自分の容姿を思い出し、薬学の容姿に変化していった。

思念体のため、物体ではなく、あくまでも、想像で作り出された模造体である。

その証拠に半透明で、青白い光を放っていた。

だが、データの青白い粒子ではなく、精神で想像された光。


認識した瞬間景色が一変する。


――――――。


――――――。


――――――。


青空が広がっている。

 

空を認識した瞬間に、地面という認識が新たに作り出された。

 

その地面になっている自らの器も意識の思念で作り上げた。

 

その思念体の足で地面を踏みしめている実感があった。

 

だが、その足元にどんな地面が作られたのか気になった薬学は足元を確認するとそこには宇宙が広がっている……。


「⁉」

 

先程まで、重力を感じてその場で立っていた感覚が一瞬のうちに無重力に変化していった。

 その宇宙を見渡すと目の前には、大きな月が目に止まり、その上に人が一人たっていた。


「‼……美彩」

 

そう、薬学の思念から、生み出された祇那の姉の霧咲美彩(きりさきみさ)が、月の上にたっていたのだ。

 創作された薬学の世界とはいえ、無意識に美彩を想像してしまったのだろう。

 かつての自分の行いを悔いるように美彩の視線は冷たく冷めた視線のように薬学には感じられた。

「よくもまぁ、私の前に出てくれるわね。 あんた……」

「美彩……私は愛していたのだ……愛ゆえに……」

「愛の形が殺害とはね……呆れた……」

「そんなつもりは……」

 その冷たい視線と月の静けさが相まって薬学には精神的ダメージを食らっていた。

 かつての薬学ならそんな感情が生まれることすらなかったが、今の薬学は素体をなくしたことで、かつての自分の精神を破壊した薬品の副作用が消えていて、もとの薬学に戻っていたのだ。

「美彩……本当に済まなかった。あのときの私の行動は許されないことだ。当然死んだ所で償うことなどできない……」

「じゃ、地獄に落ちれば少し許せるかもしれないわね」

 口元の広角が少し上がった様に見えた。

「地獄⁉」

「ほら、迎えが来たよ。お父さん」

「⁉」

 薬学は背後にゾッとする気配を感じた。

 恐る恐る振り向くとそこには大きな鉄の門が出現していた。

 その門のデザインは「ロダンの地獄の門」のデザインに良く似ているが、少し異なっており、人の部分が死神になっているデザインになっていた。

 その地獄の門が、ゆっくりと扉が開き、その中から、自分が作り上げた黒い魔の手のような手が無数に飛び出してきた。

 その腕は、薬学の作り出した腕によく似ていたが、超巨大。

 地獄の門も異常に大きく圧倒されるほどの門の上に、飛び出してきた無数の手は、一つ一つが門よりも大きい。

「⁉⁉⁉……」

 薬学は、とんでもない圧迫感を感じ、声が出したくても出ない状態。

 完全にその場の雰囲気を支配してしまった。

 その腕は、薬学に襲いかかり、とてつもない力で、体を圧迫してくる。

 あまりの、圧迫で、声が出ないどころか、意識が朦朧とする。

 そんなとき、自らが作り出した黒い魔の手をこの世界でも想像し、作り出し、なんとか腕から抜けられた。

「やめてくれ! 私を許してはくれないか! 美彩!」

「・・・」

 美彩は関係ないと言わんばかりに不表情で、月に座りながら、薬学を見下ろしている。

 地獄の黒い手は薬学を掴みに再び伸びて薬学の胴体を掴みかけたが、先程創作した黒い魔の手で地獄の門から出てくる黒い手を弾き飛ばした。

「私も似たようなことはできるのだよ。なめてもらっては困るなぁ……」

 その言葉が聞こえたかはわからないが、次に黒いては門の中に消えてった。

「やったぞ! 異世界の手に私の手が勝った! 美彩! みたか……私は人類生命体の頂点にたったようだなぁ……ははぁ」

「そこから出てきた黒い手は、現実世界では、蚊と同レベルよ」

 美彩が言葉を発したが、その言葉を聞いた薬学は理解が及ばなかった。

「蚊って虫の蚊か?? とんでもない、さっきのは異世界の強大な力を持つなにかではないのか?」

「後ろ。今度は、属性を持った蚊レベルの手が来たわよ」

「⁉ なんだね。 この大きな丸いものは・・・」

 薬学は上を見る。

「⁉」

 薬学が後ろを振り向き、上を見ると、先程の黒い手の何十倍の大きさになる赤い手が薬学の後ろにあった。

 はじめに認識できた丸いものは大きな手の一部で、小指であった。

「これが、人間界の蚊……門の向こうは化け物以上だなぁ」

 薬学は、目の光が、そこで完全に消えた。

 死を覚悟した目だ。

「嫌だ、死になくない……死にたくないよ! ……助けてくれ! 美彩!」

「・・・」

 赤いてはよく見るとグツグツと沸騰しているようで、泡ができては破裂するを繰り返していた。

 その腕からは高温な熱が放たれており、薬学の近くに寄っただけで服が萌え始める。

実は、その手は高温で灼熱の熱気を放つマグマの手だ。

このマグマの手は薬学の肌を焦がし、薬学の服をもやし、薬学を扉の向こう側にゆっくりと移動する。

「いやだ……し…に……たく……」

 薬学は原型を留められず、黒いメタルスライム状態に変化する。

 とっさに自分の体をメタルスライム化して、逃げ切ろうとしたよだが、既に時遅し。

 黒いメタルスライムになったことにより、更に溶け始め、ドロドロに溶けてゆく。

「あぁ……がぁあああぁああぁあぁあああぁ……ぶぐぅ」

 スライムの状態でもごき苦しみ、自分の一部だけでも逃れようと、複数体の一部を飛ばして逃げるが、無数のマグマの手に行く手を幅割れ、地獄門へと消えていった。

「……私は……家族……を……あい……」

「ドーンッ‼」

 門の中に薬学は連れて行かれた。 


      ◇◇◇


   □ 《薬学の友》と《蒼麻の友》:二人の暁斗の記憶


 データワールド内では、神夜の視界が真っ白く光り、やがて黄色い光が差し込む。


 ―――その場は、一瞬黄色い光が、神夜の視界を光が遮り、白い世界に入り込む。

 ここは、暁斗の記憶だろうか。天然シナプスとの連携により、暁斗や薬学、迅と紗友の結合した記憶が神夜に流れ込む―――。


 神夜の意識が《暁斗》の記憶とリンクする。

 白い煙のような世界から、抜け出すように、周囲の煙が晴れて一人の体の意識とリンクした。

 

―――ここは、暁斗の記憶―――。


―――薬学と話している俺。

―――俺は誰だ。


薬学の言葉から、今話している自分は暁斗だと知る神夜。

「暁斗! 今回の《粒子組み換え生命保有実験》は成功だ! やったぞ!」

「やったな! 薬学! これで俺たちも晴れて、データワールドプロジェクトに参加できるぞ!」

 ―――なるほど、俺は、暁斗の記憶を追体験しているのか―――。

 現状の自分の立場を悟った神夜は、暁斗の追体験をじっと見つめる。

 追体験は凄まじいスピードで見せてくれるが、重要な分岐点の出来事だけは、元のスピードに戻り主観の映像で真実を知る。

凄まじいスピードで、流れていく映像の中で、ゆっくりと時間が立ち始める。

凄まじいスピードでシーンが次々と変わっていき、また重要な分岐点で時間が通常の流れに戻り、再生される。

薬学が心配した顔で、こちらを見る。

暁斗の死の記憶だ。かつて薬学と共に研究に励んでいた神夜からすればもうひとりの暁斗。

「おい! 暁斗! しっかりしろ! 暁斗‼ お前が死んだら誰が、あの店を次ぐんだよ! 死ぬな……暁斗‼」

そのまま病院へ運ばれ、幽体離脱して、自分の死を悟る暁斗。

(―――俺は死ぬのか・・・死ぬ前にクロワッサン・・・食べたかったなぁ―――)


    ◇


その後、薬学は、暁斗を生き返らせるため、脳の伝達組織ごと、データワールドに送り込みデータワールド内で、構成した。

暁斗をデータワールド内で復活させることが出来たが、赤ちゃんの状態で出てきたため、一度、成長させなければ、会話すらできない。

さらに、仮想世界(データワールド)では成長しないため、データワールドから、一旦リアルワールド(現実世界)に暁斗を送り込む必要があった。

実は、データで生まれた、データ人間の寿命は短く、成長も早い。

その事をさとられないように、玄芳の両親には、電子催眠機器で暗示をかけて、何事もなく、育てる環境を作り出した薬学。

その後、高校生くらいに成長した暁斗の記憶を戻し、データワールドに帰還させた。

俺(蒼麻)の驚いている顔が見えた。転送した時の映像だ。

その後、視界が消え青白い空間から、一瞬に暗闇の世界に転送される暁斗。

ここは、ロンドンの時計塔上部。薬学のデータワールド内での研究所兼データ人間製造開発所だ。

―――ここからの記憶は俺と暁斗が転送された後の暁斗の記憶か―――。

「暁斗・・・蘇ったか」

「薬学・・・お前が俺を・・・」

「一緒にデータ人間が暮らせる平和な世界を作ろう」

「そうだなぁ、だが、俺はもう昔の暁斗ではないようだ。リアルワールドで暮らしたことで、そちらの人格も馴染んでいる。薬学、今は親しいようで親しくない存在に感じる」

「それは仕方ないなぁ」

「データ人間の創造主なんだもんな。今のお前は・・・薬学様といっておくかぁ」

「素晴らしい! そのあだ名で行こう!」


(―――薬学・・・雰囲気が別人のように変わったなぁ―――)


    ◇


雰囲気が変わっていいた薬学に少し、違和感を抱いた暁斗は、かつて研究所で同じマンションに住んでいる青衣白夜に相談をした。

 暁斗とも白夜も当初の記憶を持っており、この仮想世界で復活した者同士、彼もまた薬学が親御さんの記憶を書き換え、リアルワールドで新たな生活をし、成長したたぐいであり、まさに暁斗と同じ。

 白夜の他にも研究者を復活させることができた人間は他にもいたが、一番信頼できる元研究員は白夜くらいだった。

 その内容を話し終えた暁斗は白夜の返答を効いて驚く。

「暁斗……お前も感じているんだな……実は俺は計画を実行するふりをして、ひて非なる新たな計画をすすめるつもりだ。丁度いい暁斗も新たな計画に協力してくれないか……」

「新たな計画だと⁉」

「もちろん、薬学には内密にな……」

 その後白夜から効いた話を聞き暁斗はその提案を受け入れるかどうかを考えていた。。


―――やがて、暁斗達№は、自ら考え思考し始める……―――。


 ある日、暁斗の感情に違和感が芽生え始める。

その感情は薬学の計画が正しいものかどうかだった。

 雪山を歩いているときだった。

 この雪のようにすべてを覆い隠してしまうということだよな。そうなれば、地面は消えてしまう。そう、蒼麻の世界がなくなってしまうということだ。

 つまり、このまま計画を実行すれば、現実世界が消滅してしまうということになる。

 かつては、自分も地面の人間だったのにも関わらず、今は雪のように、覆いたくなる。この雪のように、たくさん集まり、覆うことで、雪達(データ達)は存在することができる。

 だが、そのデータは、地面に落下して、多くの雪が消えていったあとに積み上がり、存在することが許される。

 つまり、データ人間は、はじめリアルワールドの人間に良いように使われたり消されたりして、その歴史の上にこれから生存が許されるという意味と同じような気がしてしまう暁斗。

「この花(味方)の上に雪(データ人間)が落ちた(共存した)としても、はじめのうちは(反対する人間に滅ばされ)みんな解けてしまう。こんなに綺麗(味方)に見える花(現実)の上でも」

 その後暁斗は蒼麻とデータワールドで出会い初めての戦いを経験する。

「俺がやっていることは果たしてあっているのだろうか・・・やらなければ、消えてしまうのは俺たちデータ人間・・・蒼麻には悪いが現実世界の人間には・・・せめて、薬学の言うように滅ぼすのではなく、全員をデータ化する方が良い世界になる・・・これは、データ人間の身勝手だろうかぁ・・・かつては俺もリアルにいた人間だぁせめて、データとして生き残らせたいなぁ」

 これが、暁斗の本音だ。つまり、薬学の計画に反するということだ。

 だが、暁斗の考えと計画は途中まで一緒のため、あえて反乱はせず、従っていたが、その考えを他の№達に話す機会ができた。

 ここで、暁斗は、№たちと話し合い元人間という共通点があって全員の同意をもらうことが出来た。

 他の№達も同じような事を考えていたらしい。

もちろん皆家族が現実世界にいるのだから、遅かれ早かれ、誰かの口から出る事になっただろう。

つまり、薬学は現実世界を消し去る計画だ。一方№達の結論は仮想世界に現実世界に生きる者達を全て人体粒子化し、仮想世界のみの世界を作り上げることだ。

№達は、全世界の統一。

薬学は、愛する家族の再構築とそれ以外の存在の排除。

似ているが、計画の内容は違うものだった。

 このときから、薬学の計画とは違う計画が動いていた。

 そう、№達の裏切りだ。つまり、薬学の計画には賛同していないことになる。だが、№達の思いもあり、違う計画を勧めていた。

 どちらも、薬学は家族の愛を求め、№達は仮想世界の平和を優先し、神夜達は現実世界の保持を願う。

 思いは違えど、何かを守るべく戦っているのだ。そして、彼らのすべての同期は紛れもなく正義なのかもしれない……。

ここで、暁斗の夢が覚める。

夢から冷めた神夜は次なる夢を見る……そう、他の記憶だ。

そして、次なる記憶は霧咲薬学の記憶に潜り込む神夜の精神―――。


    ◆◆◆


 ―――薬学の記憶―――。

神夜の意識が《薬学》の記憶とリンクする。

 薬学にリンクした神夜は紗友を見る。

 ニコニコしている。

 楽しく暖かな時間が流れている。

 ある日、研究がうまくいかなくなっており、同僚の暁斗が死んでしまう。

 その後、迅もなくなり、の代わりとして、薬学が研究を引き継ぐ事になった。

 だんだん周囲の期待に答えることがプレッシャーになり、おかしな性格になっていく。

 おかしな薬を作り、自らが実験体として投与する。

そんな紗友が薬を投与され、獣化してしまう。

 紗友を取り戻そうと、投与したが、姉と妻には効かず、蘇ったのは、暁斗と研究員だけ。

 データとして生き返る事ができる人間と出来ない人間に別れてしまったようだ。

 愛があるが、狂った愛。

 その狂った愛から、実の子供である霧咲祇那に注射を打つことになり、もうひとりの祇那の人格が構成された。

 これが、裏の霧咲だ。

 ここで、夢が覚める。

 暁斗の時よりも素早いスピードで回転していく。


   ◆◆◆


―――迅の記憶―――。

神夜の意識が《迅》の記憶とリンクする。

 迅の視点で過去の出来事を知る。

 研究者の天才と歌われていた若き天才。

 こちらは、期待以上の成果を出し、プレッシャーよりも趣味のように楽しみ次々とデータワールドの仕組みを開発。

 嫉妬していた何者かに殺される映像が蒼麻の脳内を駆け巡る。

 その後、暁斗や同僚の死を目の当たりにして、薬学が研究を引き継ぐ。

 ここからの結末は、薬学の暁斗の記憶と薬学の記憶のとおりに進むことが予想される。

 ここで、夢が覚める。


   ◆◆◆


―――紗友の記憶―――。

神夜の意識が《紗友》の記憶とリンクする。

 紗友の視点で過去の出来事を知る。

 祇那と姉を可愛がる紗友視点の神夜に写ったのは、母のことが大好きな笑顔。

 この笑顔は見たことがない表情で、今の霧咲とは思えないぐらい普通の女の子。

 やがて、他の記憶にも出てきた悲惨な獣化が始まり、周囲を襲う視点の紗友の目線の神夜。

 獣化していた紗友の意識はその状態でも子どもたちのことを思っていたが、体がゆうことを効かない心の叫びが聞こえる。

 倒れて目を閉じる直前に、なにか光る物体が紗友の中に入り込んだ。

 されが、迅だったのだ。

 迅は、肉体を待たない精神となり、自分が作り出したシナプスと融合することで、新たな存在になっていた。その存在として紗友も生まれ変わる。

 

 ―――おかしくなった薬学と一人の少女を残して―――。


 その後、シナプスと融合を果たした紗友は、祇那と姉を心配して、データワールドに飛び込んだ。

 ここで、夢が覚める。

 データワールドに関わった重要人物達が神夜の脳裏に映像として駆け巡り、この夢が最後で、目覚めていく。


   ◇◇◇


   □ 別れの時


 現実の仮想空間に精神が戻ってくる神夜。


神夜は、暁斗の記憶から、抜け出し、記憶の世界から、仮想の世界である《データ・ワールド》に意識をもどした。

 暁斗の記憶にアクセスしたのは、ほんの一瞬だったが、長い時間暁斗の記憶を見ていた気がした神夜。

 そして、暁斗は、自分の記憶で構成されたこの世界から、脱出するには、自分の存在を消すか、それと同じだけの対価が必要になる。

 つまり、暁斗の存在となる核……そう《命》そのものだ。

 暁斗は自らの手で心臓を体から切り離す。

「ぐぅあぁあ……」

 暁斗の声から察するに相当激痛が走るのだろう。

 それもそのはず、完全に自分の腕を心臓に突き刺し、心臓を体から切り離したのだ……。

激痛で意識を失わないほうが、おかしいくらい……。

そんな自分の痛みに耐えながら、自らの心臓を持ったまま装置に近づく。

黄色に光る魂を取り出し、機械に埋め込み、緊急脱出装置を起動させた。

《緊急脱出装置作動確認》

《緊急措置を実行》

《データワールドから、現実世界の生命体を感知……検索中です》

《検索に5つの現実世界の生命体を感知しました》

《5名の生命個体を緊急脱出させますか?》

《YES》

 その表示のボタンに《YES》の操作を行うとその場に倒れる暁斗。

「暁斗‼」

 その途端緊急脱出装置の心臓を媒介として、小さな黒い球体が生成された。

 ロンドンの時計塔上部でブラックホールのような次元転送ゲートが開き、3人と一匹を吸収。

 ブラックホールに吸い込まれていく、神夜以外は壁や天井などに捕まるものがなく、吸い込まれていく。

 新城の声。

「わぁぁあ!」

 霧咲の声。

「蒼麻くん!」

 夜魅の声。

「クッ・・・」

 やがて、ブラックホールのような球体の吸収転送ゲートの外には、黒い球体が複数出現し、一直線に円になり、くるくる回り始める。

 その黒い球体も仮想世界の空間や物を吸収し、中心のブラックホールが増えていくたびに周囲の球体が数を増やしていく。

 おそらく小さい球体でブラックホールの空間を保持しているのであろう。

 そんな制御システムのような役割を担っている用に感じた。

 残された、データワールドの光景は、意外にも美しく、夢のように輝いて見えた。

 その時だった。

 空間の吸収や建物が崩壊していくことのより、壊れた屋根や煉瓦などが落下。

 その中には、ロンドンの時計塔の一部である煉瓦や、システムの仕組みを構成している歯車などが、大量に降り注ぎ、青白い粒子を放ち小さいものは消滅していく。

 その中でも、システムに必要な歯車や中核に位置している機材、更に、建物の壁や天井などが、落下してくる。

そのため、神夜の頭上に煉瓦や歯車が落ちてきていた。

「⁉」

「ゴゴゴゴッ―――‼」

 

  ◇


□ 玄芳暁斗の本心

 

「グシャッ……」

「‼」

 暁斗がシステムの動力をになう歯車や、壁などの残骸の瓦礫に埋もれってしまった。

 そう、神夜を助けるため、自分が犠牲になったのだ。

 神夜の頭上に落ちてくる落下物に築き暁斗は神夜を突き飛ばしたのだ。

 これは紛れもなく、助けたと言えるだろう。

「ここから始まり、ここで終わる……みたいだなぁ……」

 暁斗が口から血のような青白い粒子を履く。

「暁斗‼」

 神夜は、ブラックホール型の転送装置に飲み込まれないように、建物の建造物にある煉瓦を掴み耐えている。

その壁を伝って、そのまま暁斗の方へ近づいていく。

 体が、軽々と浮いてしまう強風の中で、神夜は必死に建物にしがみ付いていた。

「蒼麻……今までありがとなぁ……生きろ……」

 暁斗は自分命の灯火が消えると悟ったように神夜に話しかける。

「お前も一緒に帰るんだよ⁉ 手をつかめ暁斗‼!」

 神夜の瞳に映る暁斗の姿は直視できる姿ではなかった……。

 そう、体が、ロンドンの時計塔の針と煉瓦の下敷き担っており、大量の青白い粒子が放出していたのだ。

「蒼麻……本当にお前を助けられて良かった。本当はお前ともっと……先も友達でいたかった……」

「なら、一緒にこの世界から抜け出して帰ろう! なぁ⁉」

「それは無理だなぁ……」

 そう言うと暁斗は穏やかな微笑みを見せた。

 神夜は悟った。

 暁斗のその笑みの後ろで青白い粒子が流れ、水たまりになっており、下半身が瓦礫で潰されて、その傷口から大量に青白い粒子がドバドバ出ていることを……。

「あぁ……もう、感覚がなんだよ……俺どうなってんだ……ハハッ」

 暁斗は無邪気に笑い今までの後悔を語り始めた。

「今まで悪かったな……実は……お前が薬学に狙われないようにできるだけ遠ざけていたんだけどな……お前……お人好しだから、霧咲の娘に協力するんじゃないかと思ってたけど、やっぱり協力することに……」

「⁉? どういうことだ……暁斗……」

「本当はお前を死なせないために、薬学の目の届かない所にいてほしかったんだ……そして、薬学は最終段階で俺が止める予定だったんだよ……」

「そ……そんな・・・」

神夜は驚く。

「だが、ギリギリ担ってやっと目標が達成できたみたいだなぁ・・・ゲホ・・・ゲホッ」

「暁斗! もういい、喋らず安全にしてろ! 今そこから出すけ出す!」

「バカヤロ……俺が命をかけて守ったんだ……どっちみち俺の命はここまでだ……行け……」

 神夜は初めから、助けてくれていたのかの過去の出来事を思い返す。

 ―――全て俺を薬学から遠ざけようとしていた……?―――。

―――俺の体から黒い天然シナプスを取り出したのも……薬学に近づけさせないため……?―――。

―――初めて戦った時もとどめを刺そうとはしなかった……?―――。

―――その次の戦闘は本気で戦ったように思っていたが、暁斗の能力でもっとどうとでも戦えたはずだ……―――。

―――気づかなかった……―――。

―――暁斗が俺を殺させないために考動していたなんて……気づかなかった……―――。


今思い返せば辻褄が合うと納得する。


「でも、どうして俺をそこまで……」

「バカヤロー……そんなの親友だからに決まってんだろ……」

 暁斗は痛みをこらえながら微笑んだ。

「暁斗……お前ってやつは……そんなバカみたいな理由で……」

「まぁ、あながち嘘じゃないが……納得する理由がもう一つあるんだ……」

「⁉」

「実はな、薬学の友だった時の俺の信念を思い出させてくれた子供がいたんだ……」


   ◇


 暁斗が研究員として働いてから、約2年が立った頃だった。

 そんな時、独身の男女にランダムで人体実験の依頼が来るようになっているのがこの《WD社》だ。

後に神夜が居る仮想世界(データワールド)を作る会社である。

 この会社では、実験がうまくいき安全性が確保できた状態で、最終人体実験として、人にその実験効果が正常に反映するかどうかの選定が個のランダム投票だ。

 このシステムにより、不平等な状態を取り除くことができるとして採用された人体実験選抜システム。

 この選抜に選ばれて、実験体として活躍した藻には次の研究のリーダーや役職など、優先的に優遇されるとして、リスクを抱える分それなりのリターンが用意されている。

 だが、暁斗は受けるのを悩んでいたのだ。

 もちろん断ることもできるが、果たして、それはこの世界のためになるのか、という疑問だ。

 理由は単純で、実験体に選ばれると死のリスクを背負うがその致死率は過去2%である。

 つまり、大抵は成功するのだが、極稀に失敗した例もあり、身体に障害が残ったり場合によっては無くなった人もいる。

 だが、その確率は確実に最小限に抑えられており、医療体制も充実している。

 そのことから、逆に志願したいという研究員が後をたたないのだ。

 なんせ何もせずに人体実験を成功させることができれば給料も上がるし、責任のある職務にもつけ、将来安泰だ。

 つまり、喜んで受けるものも多い。

 そのため、暁斗は自分以外に適任が居るのではと思っていたのだ。

 実は、暁斗は出世に興味がない。

単純に人の役立つ研究をしたくてこの会社に入社していた。

「他に適任である人は……やはり、薬学だよなぁ~あいつ研究づきだから適任だよなぁ」

 そう、暁斗は親友である薬学に人体実験の被検体許可を放棄し、薬学に譲る事を考えていたのだ。

 実は、ランダムで決められた被検体者で、その権限を放棄するには、誰かにその役目を田はしてもらうことができ、またその指名権は選ばれた被検者に一任されている。

 つまり、誰でもこの権利を譲る事ができるのだ。

 そう考えていた暁斗はその権利が記載されている契約書を持ち、薬学の実験室に行こうとした時だった。

「いて!」

「あっ! ごめんよ!」

 暁斗は小さな男の子にぶつかったのだ。

「あっ! これって階級が上がる契約書じゃん‼ 激レア書類見っけ‼」

 小さい子供は嬉しそうに書類を見ている。

 こんな小難しい書類を楽しそうに見ている子供は初めてだ。

 小さい子は物欲しそうに書類を握りしめている。

「だめだよ! これは違う人に譲ることにしてるんだ」

「なんで?」

「なんでって、僕みたいな人間よりも研究熱心な人が使うことでもっと良い研究ができるだろ。だから、そういった才能がある人に譲るんだよ。僕が上に上がっても人の役立つ事しか考えてないから良い研究ができるかどうか……」

「難しい事はわからないけど、お兄さんは自分のために研究してるんじゃなくて、みんなの為に研究してるんだよね? それって一番良い研究だよね?」

暁斗は才能がある人々に囲まれていつしか自分のやりたいことまでできなくなっていたのだ。

(こんな小さい子に気付かされるなんてな……俺もまだまだだなぁ……)

 その後、考え結論を出した暁斗。

 人の役立つ研究をすることこそ、自分がやりたかった事だということを思い出したのだ。

 それを思い出させてくれたこの子に感謝をし、被験者には玄芳暁斗が実験体になった。

 そう、この時に出会った子供が神夜蒼麻だったのだ。


  ◇


「その子供が、お前だったんだよ。かつての記憶から知ったんだけどなぁ……。蘇った俺は、自分のために計画を進めようとしていた……。まさか、今回もお前に考えを改めさせられるとは思わなかったよ……偶然なのか必然なのかわからないが……やっぱり、俺の根はそこみたいだ」

 暁斗は清々しいほどの笑顔を神夜に向けた。

「まぁ、その後研究が失敗して死んじまったんだけどな……。でも、あの時の感謝は本物だ。こうして恩返しができるとは思ってもいなかったけどなぁ……」

 神夜は暁斗を助けようと瓦礫をどかすため、残っていた銃弾で瓦礫に打ち込み壊していくが、瓦礫はあまりにも多く崩れても崩れても暁斗の上から除去できない。

 だが、諦められない神夜は、何度も同じことを繰り返す。

「蒼麻‼!」

 朦朧としていた暁斗が大声で叫ぶ。

 後ろには扉から這いずり出てきた真っ黒い影。

 薬学だ。

「全てはお前がぁ! お前がきたことで計画が失敗したのだ!! お前だけでも道連れにしてやるぅ‼!」

「‼」

「させるか‼!」

 とっさに暁斗は自分の動く左手を青白い氷の剣のような刃を構成。

 その刃物で瓦礫の山に潰されている自らの動かない下半身を切断。

「ガァあああ‼」

 そして、もう一つの腕をロケットの噴射口を創造し、その噴射口を備えた腕で勢いよく薬学に飛びかかった。

「グサッ!……」

「あぁあ・・・・・・・・・・・」

 薬学の体には大きな穴が空き、暁とはその穴から、遠くの方に吹き飛ばされる。

 暁斗は最後の力を振り絞り、神夜をまたもや助ける。

「暁斗……」

 神夜はその大きな穴から暁斗を見る。

 薬学からは赤黒い粒子が放湿し、暁との切断された傷口からは青白い粒子が大量に出ていた。

「紗友…………私は……」

 薬学の腹には大きな穴ができており、その傷口から、異様な物が飛び出してきた。

 赤黒い腕……。

 そう、薬学の精神体の世界で地獄の門から出てきたあの手だった。

 そして、薬学の影がみるみるうちに大きな扉の影に変化していき、そのドアが開く。

 その扉から出てきたのは見覚えがある儚げな表情の少女……霧咲美彩だ。

「あぁ……美……彩……」

「お父さん……こっちに来て……」

 薬学の腕を掴む美彩。

 そう、薬学は腹に穴を開けただけでは死なないのだ。

 以前のようにメタルスライム化して逃げてしまう恐れがある。

 それを止めようとしてるのであろう。

 霧咲美彩は小さく神夜にお辞儀してそのまま薬学を影の門に引きずり込んでいく。

 だが、薬学も命は惜しい。

 《黒い魔の手》を自らの背中から創造し、赤黒い手と対峙する。

「お父さんはまだやることがあるんんだ! 頼む! 紗友を助けたいんだよ! 紗友を‼ 私が生き返らせてみせる‼」

「ここまで来てもお母さんの事しか、見えてないなんて……私の事はどうでもいいのね……」

 美彩は悲しげな表情から、段々と怒りの表情に変貌。

 その姿はまさに鬼。

 赤鬼に変貌した。

「やめろ!!」

「ヴィン‼……」

 薬学が今度こそ消滅。

 それを確認する暁斗の目から生命の灯火が消えていく……。

 暁斗も消滅したことを確認するとホッとした笑顔で消滅した。

 その暁斗の口元で3文字の言葉を発していたが、暁斗が出した爆風で耳が一時的におかしくなり、音が聞こえない……。

「い・き・ろ……」

 暁斗の言葉はおそらくそういったのだろう。

 神夜は沿う感じ、涙が溢れ出る。

 暁斗が消滅した事で、この世界の構成していた軸が無くなった。

 つまり、それは、この世界の崩壊を意味する。

 もう、この世界は終わりだ。

 それにより、ブラックホールの威力も増加し、神夜の握力では耐えられないほどの威力に変化。それにより、建物がこの世界に定着できないレベルのブラックホールになっている。

 これも、この世界の創造主の霧咲薬学と世界の構成もとの玄芳暁斗がいなくなった事による影響。つまり、核と重要人物が消滅したことで維持できなくなったのであろう。

 その証拠に、全ての想像された世界の空や地面、建築物や飛んでいるカラスなどにノイズが走り、小さいものから青白い粒子を放出し、消滅していく。

 涙が止まらず、そのままブラックホールに吸い込まれていく神夜。

崩壊していく仮想世界で、神夜の涙が中に舞う。

 無重力のような空間とかしたこの世界の最後の景色はまるで宇宙。

赤黒い粒子と青白い粒子をバックに神夜の視界に飛び散る。

 その光景はまさに無重力の星星を見ているような光景。


 最後まで、この世界は綺麗に見えて儚い世界だった事を実感するのと同時に、神夜の親友である暁斗との別れで心が痛む。


神夜の涙と青白い粒子、その周りには赤黒い粒子が飛び散り、儚くも幻想的な空間となっていた。

 

 そのまま神夜蒼麻はこの仮想世界の終わりに直面し、現実世界に帰還した。


   ◇◇◇


□ 現実世界への帰還


 神夜は、目を開ける。

「……眩しいなぁ」

 神夜の視界に入ってきたのは青い空と、今まで暗い世界で生きてきたため、光が眩しすぎて視界が一瞬だけフラッシュする。

 徐々に目がなれてきて目で確認できる用になった。


 神夜の目に映るのは、木が均等におから、その上に金属が2本。

 線路だ。

 線路は長く続き、その目線の先には、オレンジ色に光る太陽と、空の夕日が目に染みる。

「ここは……帰ってきたのか?」

「その通りみたい……」

 隣に、いるのは、表の霧咲。

 瞳を見ると、きらきら、空の夕日が反射しており、透き通るような瞳から一筋の水滴が流れ落ちた。

瞳から流れた水滴は地面に落ちる。

霧咲の目に映るのは、現実世界の夕日の景色。

あのデータワールドに来る前の線路に二人は佇んでいた。

そして、その後ろには夜魅の姿も確認できた。

「ここが、リアルワールドなのね。私がいた世界……」

 そう、夜魅は記憶を失っている為、自分の過去を思い出せないでいた。

そのおかげで、協力してくれたのだが、記憶が戻ると、今までの記憶も消えてしまう可能性が高い。

 神夜は、いつ記憶が戻るかわからないが、記憶が戻っていないことを確認すると、肩の荷が下りた気がして、肩をなでおろした。

「私は、一人で行動するわ……じゃあ」

「行くあてでもあるのか?」

「少しだけど、記憶にある場所に向かうわ」

「そうか……」

 そういうと夜魅は、その場型立ち去った。

 立ち去る夜魅の表情は、記憶を失う以前の表情で笑みを浮かべていた。

 その顔は、顔が見えなくなった途端に変貌したため、神夜は気づく事ができなかった。

 だが、それえも、暁斗を助けられなかったことを悔やむ神夜には、違った意味の涙が、流れた。

こうして、データワールド(仮想世界)から、帰還してリアルワールド(現実世界)に戻れた。

大牙は、爆発したことで体を失っていたが、魂は残っていた。

大牙というと、帰還後、光の魂となって中を浮遊していたつまり、魂だけで実態がない。

 それもそのはず、実は元々実態を持っていたが、体はとっくの昔に腐ちており、現在は魂だけ力の根源となり存在しているのだ。

「ワシは神獣―――つまり、姿形がいない獣の神だ。すなわち、元の神社に戻るぞ。小僧」

「まさか、体がないのか、実態がないが本体はあるって……そういうことか……」

「もう、これ以上ここにはとどまれないようだ。本来のあるべき場所に行かねば消滅してしまうのだ。 ワシは人々に祀られることで力を得ているからな。 神獣神社でまた会おう新たな主、いやもう違うなぁ」

 こうして、神夜蒼麻は元の世界に戻り平和な日常生活を取り戻した。

 そして大牙も自らの力の源が集まる神社に青と白の光を放ちながら、放物線を描いて、神夜の元から飛んでいき元の本体へと戻っていく。

神夜と霧咲は、夕日の包まれながら、線路を歩く。


   ◇◇◇


    □ 現実世界:新たな火種


現実世界の人々からすれば、祇那は数日だけ現実世界に存在していないことになっている。

その間は、データワールドに転送されているのだ。

神夜の場合は数時間で帰還できたのだが、祇那に関しては、数日間いなくなっていることになるため、その間研究所の異変に気づくものがいるはずだ。

そう、現実世界では、祇那と薬学は行方不明者として、研究所は厳重な警備が敷かれるだろう。だが、その事実が広まるよりも先に新たな事件が起きる。


    ◇


 ―――祇那賀帰還する前日―――。

 数日海外の研究所に粒子分解研究を見に行っていた新人研究員が海外から帰還。

研究所が黒焦げで、あれ立てた姿を目にした新人研修員はすぐさま警察に通報。

そんな時だ。

「バ―――――――――ン‼」

大規模な爆発が起きた。

爆発発生元は東京にあるWD研究所だ。

「⁉」

 ―――大規模な爆発とともにこれから、未来を切り開いていく若き才能の灯火が一瞬で消滅した―――。

新人研究員の通報により、到着した警官が現場を包囲し、原因を調査し始めた。

「何だ⁉ 大爆発が起きたのか? 通報してきた男性とは連絡が取れなくなりました……」

「爆発に巻き込まれたか……運が悪かったな・・・」

 その後、消防車や救急車が到着。

火を消す作業が始まり、ようやく火を消火した頃には、辺りが明るくなっていた。

 そう、日を消す作業は、夜の時間帯もひたすら消しにかかり、やっと日日が昇る時間帯の頃に消化活動が終了したのだ。

 それだけ大きな火災だったと見て取れる。

「嫌な時代になったもんだ」

 そう言葉を発すると、警官の男がタバコを懐から取り出し、一本取ると口に加えライターを片手に、火をつけようとした。

 それを横で見ていた女の警官が走り口調で男に向けて言葉を発した。

「不謹慎です。タバコはこの現場から離れてから吸ってください」

 男は不満げな子男で、女の顔付近を凝視すると、言葉を返した。

「お前さんは良いのかよ⁉」

「私は、良いんですよ! 飴ちゃんですから」

 女性の口元には、タバコのように加えられた棒付きの飴を口に含み言葉を返していた。

「飴ちゃんも不謹慎じゃないか・・・?」

 そうゆう男と女が会話を続けている間にも、多くの警官や救急担任が黒焦げの現場で、生存者や瓦礫の撤去などの作業を進めていた。

 

    ◇◇◇


 霧咲は、事件のこともあってか、仮想精神医療病院に治療として入院していた。

再び元の生活に戻るリハビリをしていたのだ。

実は、さほど問題ないのだが、医者いわく精神的な影響で、現実世界に馴染めない事例があるらしい。

そういったリスクを少なくするため、一時入院という形で精神治療という名目だが、至って普通に暮らしているだけだ。


    ◇


全国放送で流れているテレビニュース。

「速報のニュースが入ってきました。東京の都内の研究所が何らかの理由で爆発し、少なくても、空いて死者は50人以上とことです。大規模な研究を行っているや《DW研究所》が燃えており、昨晩の朝やっと火を消し止められたそうです。繰り返します……」

そのニュースをたまたま見ていた祇那は、すぐさま、家から飛び出し、研究所に向かった。

そう、この研究所こそ薬学がデータワールド開発として使っていた研究所だ。

現場はすでに警備が厳重に配置され、通れないようになっており、関係者以外は立ち入れることは出来ない体制を整えていた。

テレビでの状態を見る限り、現場に行かないとわからないことだらけだった。

母親と姉の遺体がどうなっているのかを確認するため、自分な足で見に行くことを決めた霧咲。

「これじゃどうなっているかわからないわね・・・大爆発した原因は一体・・・現場に行かないとわからない・・・」

 

病院のテレビで事件を知る霧咲。

仮想精神病院から飛び出し、研究所に向かう。

慌てていた霧咲は、銀の懐中時計を交差点で落としてしまった。

霧咲の大切なものを拾ってくれ女性がいた。

祇那の視線が固まった。

 祇那の目に映るのは、若くなった母親の姿。

そう、霧咲祇那の母親である霧咲紗友の姿だ。

日が眩しそうに太陽を影から見る瞳が祇那の記憶の母と重なる。

 

―――彼ら、彼女らの物語は終りを迎え、再び景色が変わり動き出す―――。


   ◇


   □ 現実


「お母さん⁉」

「ん? 落としましたよ⁉??」

 とても似ていたが別人。

 知らない人である。

神夜も霧咲もデータワールドから帰還して、頭の整理がついていないのか何かと人間違いをしてしまう精神状態。

神夜と同様に人違いを認識するとそのまま交差点をあとにした。

「あ! ごめんなさい! 何でもありません! ありがとうございました!」

 その場から離れる霧咲には、まだ未練があるかのように眉を寄せて下を向いて歩む。

(―――もう、母は、いないの・・・わかってるでしょ・・・私・・・―――) 

 霧咲は、自分にそう言い聞かせる。

 データワールドでは、200年経過したとはいえ、現実世界では数日だ。

 数日の間に、助かり、もしかしたら、生きていると思ってしまうのも無理はないだろう。

帰還した2人は過去から、未来へと一歩進み始めるため、過去の記憶にけじめを付けるように、淡々と歩む。

過去を受け入れるため、現状を把握するためにも、爆破された現場に行くのが霧咲の今の気持ちであった。


―――仮想世界(データ・ワールド)が止まった今―――。

―――現実世界(リアル・ワールド)が動き出す―――。


 神夜蒼麻は、日常生活に戻り、元通りの生活へ戻っていく。

 霧咲祇那は、リハビリを終えたあと、元の学校似通う予定だったが、新たな学校に転入したほうが良いと対人関係や精神的なストレスがあるかもしれないと医者に転入を勧められた。


 薬学の場合は行方不明となっていたが、暁斗の場合は、存在ごと消滅したようで、リアルワールドの人には、なかった出来事、「存在していない」事になっていた。


    ◇◇◇


その頃神夜は、休日ということもあり、学校がなかったため、宛もなくスクランブル交差点を歩いていた。

「データワールドの出来事が頭から離れない・・・俺にはデータワールドも本当の世界と同じように感じていたのか⁉」

そんな事をつぶやいて歩いていた時だった。

「ボー」とそんな事を考えて周囲を眺めていた時だ。そんな時、一人少女が目に留まる。

神夜は驚いた。

なぜなら、データワールドで消滅したはずにお櫻井旬によく似た人物を見つけたからだ。

―――もしかすると、旬がリアルワールドに転送されたかもしれない―――。

そんな淡い願いが希望に変わった瞬間でもあった。

神夜はスクランブル交差点で、一人の少女とすれ違う。

そのすれ違った瞬間に神夜は気づいたのだ。

その見覚えがある顔に似ていた……そして、その名を……。


―――旬……―――。


「⁉」

「今のは⁉ 櫻井旬⁉」

追いかける神夜。

旬によく似た人物を神夜は追いかけて、肩に触れた。

「旬! 旬なのか⁉」

「何?? だ……誰ですか⁉」

 どことなく似ていたが、近くで見ると、別人で声も全然旬の声ではない。

「あ・・・すみません・・・人違いでした・・・」

 神夜は、人違いだということを伝えると、もしかするとという気持ちがなくなり、我に返る。

―――それもそうだよな……旬はデータワールドで消滅したんだ・・・―――。

 旬の事実が変わらないことを自覚した神夜は、そのまま交差点で歩み始めた。

 忘れたくても忘れられないデータワールドの記憶が神夜にまとわりつく。

 これからはリアルワールド(現実世界)で暮らしていくのだ。

 どうということもない平和な日常に戻るだけだ。


 ―――そんな事を考え終わると非日常の思考から、日常へと戻っていく―――。


「明日は学校か~。なんだか、久しぶりな感じがするけど、現実世界では数時間しか経っていないなんてなぁ~」


    ◇◇◇


高層ビルの最上階。

計画通り、事が運びました。

夜魅は、本当の創造者の前にひざまずき、指示を待った。

「夜魅・・・探し出し、回収しろ」

データワールド内で作られて魂や存在は、現実の祖先にやどり、生き続けるプログラムを開発したと初期開発者《迅》のレポートに記載されており、その情報の書類や開発のデータはすべて、夜魅の創造主が回収していた。

そんな重要な書類が、創造主のディスクの上に散らばっている。

「創造主の仰せのままに……」

「計画は順調だな」

「ええ。まぁ、途中で魔獣たちの邪魔が入りましたが、支障はありません」

「魔獣……?」

「はい。白い狼の魔獣がなぜか敵意を持って襲いかかってきたので少し計画の進行に変更を加えましたが、問題ないかと」

「あのとこに神獣かぁ」

「神獣?」

「まあいい、引き続き頼むぞ」

「はい、お任せください」

 その言葉をいい終えた後、夜魅はふと自分が魔獣だと思っていた白い狼のことを「神獣」といっていたことに疑問に思ったが些細なこなのであまり深く追求することはなかった。


―――高層ビルの最上階に位置する社長室内―――。


夜魅は、大きな窓が開いている社長室のベランダに出ると、再び夜魅の主らしき男が言葉を発する。

「……次の命令は仮想世界から現実世界に出現したイレギュラー個体の回収だ」

「はい……」

「仮想世界から戻ってきてすぐに次の仕事を頼んですまんな……夜魅」

「そんな事はありません……私を復活させてくださったのはあなたですから、当然……むしろ、この不老不死の私に休みなど与えなくても仕事はしっかりやり遂げます……」

「ありがとう……皆お前のように素直であればいいのだがなぁ……」

「きっと他のものも分かってくれると思います……」

「そうだと、いいがなぁ・・・」

 夜の夜景を見ながら夜空の星々に目をやる男。


   ◇◇◇


神夜は、スクランブル交差点を渡りきると、なんとも言えない違和感を覚えた。

 そう、データワールド内のことは覚えているが、データワールドに行った理由と出れた理由がわからなくなっていたのだ。


―――それもそのはずだ。神夜は、暁斗の事を忘れているのだから・・・。


つまり、データワールド内で起きた出来事は覚えているが、データ人間の№達の記憶は無い。

それが、データ人間の宿命。

もとある形に戻るだけ。

誰と争い誰を助けようとしたかは神夜の記憶から消えていた。

先程旬と見間違えた人物の存在する記憶からなくなっていく。

多くの人がすれ違う交差点の中に見覚えがある物を見つけた神夜。

神夜の記憶はすでに薄れているため、誰だったかも定かではないが、どうしても気になってしまい一人呟く。

「クロワッサン……そしてあの雑誌は……って……あいつが、いるわけないじゃないか……あれ?……俺は誰を探していたんだっけ?」

 データワールドの記憶がさらに薄れていく。

交差点を渡り切ると完全にデータ人間の顔や名前など、記憶が消えていった。

先ほどすれ違った男が交差点を渡りきると一言つぶやいた。

「やっぱクロワッサン……うめ~なぁ~……」

ここで、男は青空を見上げながら、自分の中の過去を思い出す。


★†「№0:玄芳暁斗」「№Ⅰ:青衣白夜」「№Ⅱ:赤坂水紅」


 男の脳裏に映し出されたのは、楽しい過去。

 小さい頃よく遊んでいた友達との思い出と彼らと出会った思い出を思い浮かべていた。


町外れの建物。

友達3人で集まるのが当時の楽しみであり、何かと3人で遊んでいた仲良しグループだ。

よく3人で集まると、隠れんぼをしながら、日々の退屈な時間を過ごして楽しんでいた。

退屈といったのは子供達にとっての退屈問いうことだ。

大人たちは何かにとりつかれたように研究に夢中になっている。

実は3人の親は研究者であり、毎日研究所にあつまり、日夜研究に励んでいたこともあり、子供と遊ぶ時間など取れない。

そこで、研究者の子どもたちを集めて遊ばせたのがきっかけだった。

そのことがきっかけで3人は仲良くなり隠れんぼをして遊んでいた。


過去の男の記憶の子はツンツン頭の少年。

「暁斗くん! どこ見てるの?」

「暁斗くん? 早くかくれんぼしようよ!? どうしたの?」

 そう、幼少期の暁斗の記憶だ。

 そして、そこには暁斗の友達二人が、暁斗を心配そうに覗き込んでいた。

「あっ・・・わりぃ! なんでもないよ! よし、かくれんぼするか!」

「うん!」

「だね!」

 青い髪の毛の男の子と、黒い髪の毛の女の子は暁斗の話を聞いてすぐに隠れんぼの準備を始めるため、遠くの方に持参しておいていたリュックまでかけていった。

「なんか、白い狼が遠くの屋根の上に見えたような気がしたけど・・・夢だったかな?」

遠くの方で、隠れんぼでいつも使用している鬼専用のワッペンと隠れる人専用の腕につけるワッペンを出し、二人は競争するかのように暁斗のいた場所へと戻ってきた。

途中で黒髪の女の子は足をくじいいてコケてしまったが、それを見た青い髪の男の子はお腹わ抱えて笑っていた。

暁斗はそんな二人を見て口を片方だけ膨らませて、恥ずかしそうに下から上を見て睨みつけている少女と、その姿で大爆笑している男の子を見て暁斗も釣られて笑い始めた。

「あははっ!」

―――こんな平和な生活が終わる直前とも知らずに―――。



 暁斗の幼少期の記憶から、更に、さかのぼり、先程の2人と出会う少し前に更に遡る。


―――数ヶ月前。

 ―――研究室の「児童預け施設」に初めて3人が出会うあのときの記憶―――。

「はーい。今日からお世話になる子が2人いるから、みんな紹介するね!」

 この研究所で育児経験がある大人が交代でこの子供の施設を回しているのだが、先生というよりは、研究所の監視員みたいな感じがして暁斗は馴染めていたかったが、他の子どもたちはなついているようだった。

 その研究員の手を握っていたのは二人。

 左手を両手で掴み不安な表情を浮かべていたのが、黒髪の女の子。

 右手に捕まっているというよりは、仕方なく研究員の袖を掴んでいたのが青髪の男の子。

「ほら、挨拶して!」

「赤坂・・・赤坂・・・水紅」

「青衣・・・」

 女の子の方は心細いのかまだ両手で研究員の左手をみったまま挨拶をした。

 男の子の方は不機嫌なのか、名前を言わない。

 何らかの理由があり、言いたくないのであろう。

 しかし、その態度を良しとしないものがこの児童預け施設にはいるのだ。

「何だこいつ! 髪が青いぞ! おい! 名前はなんていうんだ!?」

 それを聞いて黒髪の女の子が、距離キョロ周りを見回し慌てふためく。人見知りのようだ。

 一方、青髪に触れたのことが気に食わなかったのか、男の子はその問いかけてきた質問に表情を変えず無視。

 無視された男の子は気に触ったようで、青髪の男の子に起こった様子でつかずいていく。

「おい! 先にいる僕たちが先輩なんだから! 無視は失礼だろ~がよう!」

「・・・」

「テメェ! その態度はなんだよ!」

 この児童の中でも1つ頭が出ていて一番態度がでかいやつがいたのだ。いゆるるガキ大将的な立ち位置にいた男の子だ。

「やめなさい! 仲良くしないと、今日はご飯なしよ!」

 今日の担当員がこの児童の親御さんで良かった。

「わかったよ! チェ!」

 小さな危機は去ったようだ。

「俺は玄芳暁斗、よろしくなぁ!」

 暁斗が挨拶をして、手を出したのだが、女の子は手を取ろうとはせずに、もじもじと服を握り、恥ずかしがっているだけだった。

 やはり、人見知りだ。

「玄芳暁斗だ! よろしくなぁ!」

 次はあの男の子に挨拶をしてみた。

「・・・」

 先程の一見で心を閉ざしたようだ。

 それから、女の子は何が怖いのか、どの児童とも仲良くなろうとはしない。

 男の子の方もひたすら自分が持ってきた本を読んでいるだけで、誰とも話をする素振りもなかった。

 ある時、少しなれてきたみたいで、女の子の方はみんなと話して打ち解けるようになった。

 しかし、ここは、研究所の施設。仲良くなっても親の仕事が一段落すれば、帰ってしまいもうこの施設に来ることはないのだ。

 なので、賢い子どもたちは仲良くなっても無駄だということを知っているため、極力仲良くしないという頭のできた子供もいるのだ。

 おそらく、青髪の男の子がそれに当たるだろう。

 そして、研究を終えて帰っていき子供は3人だけになってしまった。

 少しすると、男の子と女の子はそれぞれ違う意味で孤立していたが、女の子の方はウロウロしながら、青衣に話しかけようとしているようだった。

赤坂は話をかけたがっていたが、青衣くんは知ってか知らずか、いつもそっけない態度を撮っていた。

ある時、男の子が、ブラックコーヒーをよく飲んでいるのを見かけるようになった。

顔色人使えず、コーヒーを飲みながら本を読んでいる。

その、謎はすぐに溶けた。

そう、大人の研究員の真似をしているのだ。

暁斗の親もよくコーヒーを飲んでいることもあり、その貢献を見て納得するあ暁斗。

早く、おとなになりたいのであろう。

「美味しいの? その黒いの?」

 水紅ちゃんが青衣くんに話をかけた。

「別に・・・」

 本から目線をそらさず、受け答えた。

 一番長く時間を共有していたため、少しは心を開いたのであろう。

「私にも飲ませて!」

「やだ」

「いいじゃん! 飲ませてよ!」

「わかったから、君の分も明日作って持ってくるから、それでいいか?」

「うん! ありがとう!」

 何かがおかしい。青衣くんはあんなにも一人でいたのに、急に飲ませてあげると行ってきた。

「・・・なんだ・・・この違和感・・・」

 そして、その日がやってきた。

「昨日頼まれてたコーヒーだよ」

「ありがとう! ゴクッ」

 相当嬉しかったのコーヒーを一気に飲む水紅ちゃん。

「まずい!! なにこれ! まずい!」

「僕は大人だからね」

 広角が少し上がる。初めての表情だ。だが、少し、いたずらしたような表情にも見えた暁斗は青衣くんのコーヒーを飲んでみた。

「甘い、、、水紅ちゃん、このコーヒーには砂糖がたっぷり入っている!」

「暁斗くん! 勝手に僕のコーヒーを飲まないでくれ!」

「ごめん謝るよ。でも、自分は砂糖入りのコーヒーを飲んでおいて、水紅ちゃんには無糖を上げるなんて良くないと思うよ!」

「ひどい!」

「決まっているだろ! 君たちみたいに子供じゃないからね」

「砂糖を入れたコーヒーが大人ね」

「うぅうううるさいね! 暁斗くんは無糖のコーヒーなんて飲めないだろ!」

「俺か? 毎朝飲んでるぜ」

 そう言うと、暁斗は砂糖が入っていないブラックコーヒーを水紅ちゃんからもらい、一気に飲み干した。

「あ~やっぱりうまいな~」

 青衣くんは顔が真っ赤になっていた。

「まあいい。それよりも、文学の面白さは大人にしかわからないからね。僕のほうが大人だよ」

 あ持っていたより、大人ではなく、子供であると革新した暁斗はすかさず、自分の文学の知識を語り始めると、、みるみるうちに青衣くんの顔が更に赤くなっていった。

実は、父親が本を書くのが趣味で、その影響で文学にもかなり知識を持ち合わせていた暁斗は、青衣くんの目の前でペラペラと知識を披露した。

「あっごめん、ごめん! 大人の青衣くんにはそんなことくらい、とっくに知っているよね」

「もちろんだよ! そんな本はとっくに読んでいるよ! 大人だからね・・・」

 暁斗はなんだか可愛そうになってきたためそれ以上突っ込むのをやめた。


 それから、数週間がたった頃。


 出会った頃よりも遥かに仲を深め、あのときの「からかい」が功を奏して、3人で遊ぶ仲になっていた。

 だが、二人の親御さんは研究者ということもあり、子供を実験体として活用することは珍しくはなかった。

 そして、青衣くんと赤坂ちゃんも例外ではなく、謎の実験で使われる注射液を駐車されてしまい、その副作用で、青衣くんは青色の上から真っ白にまり、赤坂ちゃんは黒髪から赤髪の変化していた。

 はじめは2人とも嫌だと泣いていたが、だんだん珍しいく、きれいな髪色になれてきて、今ではミゼビラ貸すよう担っていた。

 また青衣くんの下の名前も教えてもらったため、下の名前で呼ぶようになったのだが、教えなかった理由が単純に名前がキラキラネームだったかららしい。

つまり、キラキラネームで恥ずかしかったそうだ。

 やはり、大人に憧れる子供である。

 もちろんその3人の中でリーダーを務めるのは暁斗。

 青衣くんはすっかりトゲトゲしさがなくなり、ただのいいヤツになっていた。

 そして、今日は3人で集まり、何かを話し合っているようだ。

 青衣白夜が大人びた口調と背伸びをした表情で中二病的な発言をする。

俺たちクール研究青き流星団の仕事は謎の研究の解明だ!」

 それを聞いた赤坂水紅が面白がるようにかぶせてくる。

「いいえ! 違うは赤き月の幸運に従い私達はきれいな花を探しに行くのだ!赤き花!」

 恥ずかし中二病的な言葉をスラスラと青衣白夜のマネをして無邪気に発言し、手を顔の前に持っていき、いかにものポーズをした。

 それを聞いた白夜はすかさずツッコミを入れた。

「いや、赤き月とか・・・・おかしいだろ」

赤坂水紅はいたいところをつかれたのか、気まずそうに態度を一変した。

「うっ・・・・・・」

 それを冷静に見ていた暁斗も白夜にツッコミを入れた。

「まぁ、それを言ったら青衣くんの研究じゃなくて俺たちの親がしている研究なぁ」

「そんな冷めたこと言うなよ! 大人はもっとクールに構えてないと」

「いや、大人の研究を自分たちの研究とするのは大人じゃないぜ白夜、それは子供のすることだぜ!」

「そうだそうだ!」

 水紅はすっかり人見知りがなくなり、仲良くなった人にはよく喋る性格ということが、3人のやり取りでよく分かる。

「じゃぁ鬼ごっこしいょうぜ! 前の続きで俺が鬼な!」

 暁斗はすかさず、自分の意見を述べたが、そうはうまくは行かないようだ。

「暁斗くんいつも逃げ切るから鬼ごっこにならないよ」

「じゃ俺が鬼になるわ‼」

 それを聞いていた白夜が鬼になると宣言。

「それもそれできついものがあるけど……まぁ追いかけラル法が良いかぁ見つからなきゃいい話だ」

「よし、隠れんぼしようか」

「じゃ‼ はい、これ2人ともつけて!」

 どうやら、水紅がたまに見かけないと思ったら、2人のブレスレットを作っていたようだ。

「これが私達の仲間の証よ‼」

「おっ!」

「ありがと! どうしたんだこれ⁉」

「私のお母さんたちのチームがサンプルとして開発した追跡システムよ! 試作品だけど、世の中に流通しない最新テクノロジーを集結した凄いやつよ!」

腕にブレスレットをつける3人。

赤坂水紅は赤色のブレスレッド。

青衣白夜は青色のブレスレット。

玄芳暁斗は黄色のブレスレッド。

それぞれのメインカラーを装着する。

「長押しすれば追跡できるから隠れんぼが終わればこのボタンを押して居場所を確認しましょう‼ いい!5時よ!5時」

「わかった!」

「よし! かくれんぼスタートだ!」

「おー!」

「おー!」

「おー!」

 隠れ始めた玄芳暁斗は隠れる芭蕉を探していると、不思議なきりの中に入っていってしまい迷ってしまったのだ。

「やべ、ここどこだ・・・ん?・・・なんだ?」

 なにか青白い光の玉が見えた玄芳暁斗は誓うにあった大きな岩陰に隠れた。

「白夜の端末の光かな?」

 すると、その光は1つではなく、2つに増えたのだ。

――まさか、幽霊だなんてことはないよなぁ・・・―ーーー。

 そう思うと寒気がし始める玄芳暁斗。

 少し立っても何も起きなかったため、様子を見るため様子を確認する。顔を出してみるとそこには先程の光はなかった。

 ほっと肩をおろし、ため息を付きながら上を見る。

「・・・」

 まさか、上にあの青い2つの光があるとは思わなかった玄芳暁斗は見た瞬間すこし、体が硬直し、その後、すごいビックリし、声を上げた。

「わぁァァァァあああ!!」

 それもそのはず、青い光の招待は狼の瞳だったのだ。

 しかも、その狼は大きな牙に大きな口、それどころか普通の大きさではない大きな狼。

体は真白な毛で包まれていた。

 大人二人分ぐらいあろうその大きな狼の姿を見たあと、怖すぎて玄芳暁斗は目をつぶった。

「・・・あれ、何も起きない・・・」

 気になり薄っすらとまぶたを開けるとそこには大きな真白い狼はどこにもいなく、周辺を見渡してもどこにもいない。

 まさか、本当に幽霊的ななにかだったのではと自分の目を疑うのと同時に寒気がした。

「あ! やべ! 5時過ぎてる!」

 遊び終わる時間を過ぎてしまっていたことに気づいた暁斗。

 慌てて約束の場所に向かったが

「どこにいるんだ? どこにもいないじゃないか・・・」

 時間を過ぎていても二人はいない。

集合場所に戻り数分立ったが、誰も戻ってこない。

おかしい。

二人が週語場所にいないなんて、何かあったのではと感じ始める暁斗は端末の位置確認システムを起動させ居場所を確認した。

「なんだ、この場所・・・しかも二人とも動いていない?」

 気になった暁斗は急いでその場所に向かった。

 その場所はボロボロの廃墟のようなもう南殿も使われていない倉庫。

そこで、噛み砕いている音が聞こえてきた。

反響してどこからからわからない。

 更に奥に進む。

足に何かが引っかかり、倒れそうになる暁斗。

暗くてよく見えない。

目を細めて見ようとする。

だんだん暗闇に目がなれてきて少しずつ見えるようになってきた。

「なんだよったく暗くてよく見えない・・・糸でもあるのか?」

 糸。

 それは糸が多く絡まっており、糸?・・・。

いや、これは糸ではない、髪の毛だ。

人の髪の毛。

「⁉」

 暗くて見えなかったが、少しずつ慣れてきてなんとなく赤色のような色に見えてしまった。

―――いや、いつも目にしているから単純に重ね合わせてしまっただけだ。そうだ・・・それだけだ・・・大丈夫・・・違う・・・これは違う・・・―――。

 暁斗は途端に鼓動が速くなる。

「ドクンッ! ドクッドクッドクッ」

 さらに、奥に進むと窓から木漏れ日の光が指していた。

 その光の下にも髪の毛があった。

 今度ははっきりと見える。

髪の毛の色は「赤い髪の毛」だ。

 ―――不気味な違和感は本当のようだ―――。

 再び衝撃が走る。

 でも、この髪が赤坂のものだとは証明できなかった暁斗は、自分に違うと思い込ませその場を冷静に保とうとした。

 近くにペンキが大量に落ちていた。

 その近くには赤い絵の具が散乱していた。

 再び冷静な思考を取り戻す。

 感情がコロコロと揺れ動く。

「なんだ、やっぱり絵の具で赤くなっただけか、はぁ~・・・」

 暁斗はゆっくりと、更に、奥に進む。

白い髪の毛を発見。

 今度は短い。まさに、青衣くらいの長さだろう。

 ―――でも、冷静に考えろ・・・平均的な長さだろ。みんな男子はこれぐらいの髪の毛の長さだ。ましてや、近くに白い絵の具があるだろ・・・―――。

 そう感じた暁斗は首位を見渡す。

 だが、いくら探しても、絵の具らしきものは見当たらなかった。

 近くには大きな瓦礫の山があり、その周辺を見渡すがそこには不気味なマネキンしかない。

 バラバラのマネキン。

 マネキン。

 マネキン?

 頭がない体だけのマネキンだったが、周辺には二人が来ていた洋服と似た服のかけらが刻まれるようにばらばらになっていた。

 あまりにも似すぎている。

 そう、感じた暁斗は再び寒気がした。

 だがまた、絵の具やら、なんかしらの勘違いだろうと思い込み二人を捜索しようと再び進もとしたときだった。

「ガシャン!」

「⁉」

 瓦礫の山のてっぺん付近から大きな音がした。

「ゴロゴロゴロ、ガッシャン!」

 そのまま何かが転がってきた。

 マネキンの頭だ。

 地面に落ちた頭には長い髪の毛がくっついていた。

赤い絵の具を通り、その影響でスピードが遅くなり、ゆっくりと最後の回転でちょうどマネキンの顔が見える位置で止まった。

「!????!!!!???」

 恐怖と混乱で声が出ない。

 そのマネキンだと思っていた頭は赤坂の頭だった。

吐き気を感じていたが、飛んできた方角で何かが動く音が聞こえていたこともあり、暁斗は必死でこらえる。

この時点で初めてわかったのは先程の赤い絵の具は人間の欠系であり、それも、一人分とは思えない量。複数ここで人が殺されているよに思える。

そのため、走って逃げたいところだが、あまりにも、悲惨な現場だったため足が動かないし、動いたら自分も同じ目に合うのではと直感的に感じたのだ。

「ん? 誰かいるのか!?」

 声が響く。

 赤坂を殺した犯人だろう。

「なんだ・・・・・・残念・・・・ネズミか・・・子供だったら良かったのによ~まだ腹減ってるからもう少し探しに行くか」

「ドスンッドスンッドスン……」

 暁斗は近くに落ちていた鏡越しにはっきりと暗がりの中姿を確認できた。


―――黒い鬼の姿を―――。


黒鬼が去ったあと、恐怖でこわばり、動かなかた足が動くようになっていた。

 そのまま、黒鬼がいた場所にトボトボと向かうと、そこには、ばらばらになった青衣と赤坂が身につけていた洋服が刻まれるように破かれ散らばり、そのあたりに、赤と青のブレスレッドが落ちていた。


□ その少し前の出来事「青衣と赤坂がこの廃墟に隠れるときの出来事」


「私こういう場所、好きじゃないんだけどな……。」

 なぜか、赤坂と青衣はともに行動していた。

「この雰囲気苦手だけど、今日は暁斗くんの誕生日だからね! 我慢するわ!」

「プレゼントも用意してるんだから、我慢してくれよな! わざわざ、俺が鬼になったんだから失敗は許されないぞ!」

「わかってるわよ!」

沿う感じた赤坂は渋々青衣のあとについていく。

そこで、例の黒鬼に出会うのではなく、白い狼にであった。

「おぉ~。餌から来てくれるとは~今日は付いてるなぁ~」

「⁉?」

「赤坂、先に集合場所へ戻ってろ!」

 青衣はとっさにその異様なお威圧感に気づき、赤坂を気づかせずに帰らせようとしたが、赤坂は気づかない。

「せっかくドッキリ仕掛けて祝うんだから! 急にこの雰囲気で青衣くんも怖くなったの?」

 赤坂は、後ろ向きで、青衣の顔を見るようにバックステップで後ろにさがり、満面の笑みでニッコリと笑った。

 だが、その後ろには白い狼・・・。

「ばか! 戻ってこい!」

 蒼衣白夜はとっさに呼ぶも凄まじい速さで赤坂の首を鋭い爪で切り裂いた。

「どうしたの!? びゃくやぁ・・・ぐちゃ」

 少女の首が落ちた。

「ミクうゥうゥゥゥ!!!」

 近くに落ちていた鉄のパイプを手に取り、白い狼に殴りかかる青衣白夜。

 その数秒後、男の子の頭も鋭い爪で切り離された。

「やれやれ、いきの良い子供だったなぁ。俺に襲いかかるとはな。まぁ、そのまま逃げたところで、大牙の真似をしていたから、俺がやったとは誰も思わないからなぁ~」

 子供の服を剥ぎ取り、食事を始めた。

 その姿は、白い狼からみるみるうちに黒くなり、人の形に変化。

 すると、頭に角がみるみるうちに生えてきた。

 見た目は黒い鬼。

 そう、このあと暁斗が見た黒鬼だ。


□ データワールド崩壊の中で

 舞台が変わり《仮想世界(データワールド)》崩壊していく世界。

 次元が歪み、綺麗な星たちが無数に広がる夜空。

その光景はとても綺麗な夜空。

だが、データワールド内の星もそうだが、全てが《偽世界》。

崩壊していく中で、空もまた、歪んでいき、とどまれないほどの大きな次元の歪みのように波立つ。

周囲の星々が歪む。

デジタル世界であるのだが、この世界の「肉眼」=《仮想肉眼》でも歪んでいるのが確認できる。

今まさに崩壊しているこの世界(データワールド)はこの歪みとともに、徐々に青白い粒子となって消えてくではないか。

そう、この根源となる物質はこの世界のエネルギー源。

そんな中、偽の世界に取り残された、脱出できない、いや、脱出というよりはこの世界でしか、生きられない命が2つ。


―――そう、先程、仮想肉眼でこの世界を見ていた者達。

―――静かに地面に横たわっていた、この世界のガイドを務めていた者達。


このAIガイドの二人の視点から、この歪んだ世界を見ているのだ。

もう彼ら以外、この世界(データワールド)に生き物の気配はない。

もちろん。AIガイドもまた《無機物》の《オブジェクト》に過ぎない。

厳密に言うと、はじめから生命体はこの世界にはいないのだが、人型や生物的な役割を与えたれたオブジェクトは彼らだけなのだ。

AIガイドの瞳から見える景色は崩壊中のデータワールド。

テスト用にカメラアングルシステムが起動し、この世界を現実世界のモニターに移していたのだった。

彼らは仰向けのまま横たわっている。

現実世界の研究所の、そのモニターを確認している人物はおらず、暗い夜の研究所の試験用ディスプレイに歪んだ星々が映し出されていた。

 その中でこの世界にとどまろうとオブジェクト消去の通知を打ち消すかのように、青白い電気が「ビリビリッ!」や「バチバチッ!」と無音の世界になり響く。

AIガイドは、元々迅の息子と娘をモデルに作られた迅の思いが詰まったシステム。

姿形は、まさに、迅の息子と娘の《生き写し》―――。

数年前に迅は実の息子と娘をなくしており、その後、交通事故で迅も命を落とすことになるのだが、立て続けに、迅が生きていた証が消えていき、今まさに最後の迅の生き様とも言えるデータ世界も崩壊していく。

この一連の出来事は、果たして偶然なのか、必然なのか・・・もはや、誰もが解明できない謎と言えるだろう。

つまり、迅が残したあらゆるモノが消えていく、あらゆる迅の残した大切なモノが消えていく。

迅の娘と息子の二人をイメージしたモノが、AIガイドであり、この世界で初めてガイドしてくれる存在だったのだ。

この世界には、亡き息子と娘を思い出したかったのだろう。

だが、そんな願いも叶わず、データワールドは崩壊していく。

このデータワールドで豊かに暮らす未来も、なかったようにすべてが水の泡、いや、データの泡で消えていく。

恐らく、このデータワールドでは、迅は息子と娘と一緒に暮らしていけると考え作ったのだろうが、その願いは叶わず、この世界そのモノも今まさに消滅しようとしている。

この世界であれば、いつでも娘と息子に会える理想の世界を作り上げたかったのだろう。

その世界を構築し、その世界でともに暮らすのが迅の研究のゴールでもあり、目標であったのだ。

とはいえ、薬学のような世界をイメージしたのではなく、純粋にデータ世界を楽しんでもらうためのバーチャル世界を目指していたのだが……。

結果はその世界は叶わず……。

今まさにその世界が崩壊している途中なのだ。

周辺に空間の歪みが発生し小さなブラックホールが形成され、データワールドそのものが、飲み込まれ、迅の研究成果や迅の息子と娘、この世界すらも《無》に帰っていく。

そう、もともと無かったように。

《新しいデジタル世界という希望の未来》が消えていく。

これが、データワールドの最後。

 ここが、神夜たちが、抜け出した世界の末路。

 この世界に神夜達が、残っていたら、脳から体の全てが無になっていただろう。

 つまり、現実世界には二度と戻れず、何もかも「脳」「体」「記憶」すら《無》になっていただろう。

 神夜達が、抜け出せなかった場合には、データワールドと同じように脳や体が、青白い粒子となって多くのオブジェクトお同じように仮想世界からも消滅し、現実世界には戻れない。

 それを阻止するには、核となるエネルギーが必要なのだ。

だが、その核となるエネルギーは存在しないため崩壊は避けられない。

 薬学本体が世界の核としてエネルギーとなっていたため、そのエネルギー源がなくなったことで、データワールドのすべての機能や世界、オブジェクトが透け、消えていく。

だが、その法則には当てはまらない存在が残っていた。

迅が残した2つのオリジナルオブジェクトだ。

それは、AIガイド。

そう、その2体のAIガイドだけは、消えそうで消えない状態を保っていた。

実は、この2つのAIガイドだけは別システムで管理していたこともあり、データは消えずにこのデータワールドに存在し続けられる。

しかし、この世界には配信という形で存在していたため、最終的には姿形はこの世界から消えてしまうが、別の場所にデータが残るようになっていた。

そのため、存在が消えても再び復元するシステムが起動しており、この世界に残ろうと「ビリビリ」や「バチバチ」と、言いながらも今世界に居続けようとしているのだった。

もちろん、今世界を監視しているものは誰もいないし、彼らを強制的にこの世界から離脱させる操作も誰にもできない。

彼ら(AIガイド達)だけが消えずにとどまる。

 唯一、この2体のAIガイドのみが、薬学ではなく、迅により生み出された迅の残しモノ。

彼らAIガイド達。

 つまり《薬学自身のエネルギー源》が消えたとしても、このAIガイドは影響を受けない。

 なぜなら、迅が独自に開発した《仮想心臓》を試験的に実装していたからだ。

 もちろん、実験段階の時に迅は命を落としたため、未完成だが、心臓のように自力でエネルギーを発電して循環させることで稼働するように作られている。

そのシステムは完成していたのだ。

 その心臓の管理場所は他の研究データに管理されているため、この世界では消えても、再び復興できるようになっていた。

「ビリビリッ!」

「ビリビリッ!」

「バチバチッ!」

「バチバチッ!」

 やがて、ブラックホールがAIガイド2人の周囲にも発生。

 近くの瓦礫の山が、ブラックホールに削られ、崩壊していく。

 その瓦礫が崩れて落ちてきた中、消えゆく瓦礫の山から、青い液体が降り注いできた。

 実は、迅が開発した特殊な青い液体が、迅だけしか、わからない空間に隠してあったのだが、次元が歪んだことで、自然に解除され、一部がこの空間に出てきていたのだ。

誰にも開けられないようにバーチャル空間のさらなる空間に隠してあった予備の《青い液体》だ。この青い液体は迅しか作れない貴重な液体。

「ピチャッ!」

「バンッ! ビリビリビリバチバチバチッ!」

 その液体がかかったAIガイドはビリビリと電流が流れ、その液体の一部が口から入り込むと、みるみるうちにボロボロの体が、治るように生身の人間のような表情と体に変化していった。

 青い薬が口にかかり、偽物の体に、偽の記憶が復元され、人格が生まれる。

 作り物の瞳に魂が宿るように、命が吹き込まれたように瞳の中に光が宿る。

 男の子は、自分が死んだ息子の代わりに作られた思いのこもったシステムだと知る迅の記憶と、死んだとされる迅の中にある息子の記憶を手に入れる。

つまり、まさに迅の息子として記憶を得たようなものだ。

 女の子のアンドロイドの方は、迅の記憶とその中にある、亡き娘の記憶を手に入れる。

 同時に、迅の娘の記憶がやどり、AIガイドは新たな存在へと覚醒する。

 そう、AIガイドに魂が宿ったのだ。

 男の子に方は、白い光を纏、女の子の方は黄色い光を纏うように、記憶のデータがAiガイドの脳裏や周辺を暴れまわり、しばらくすると定着したのか光が徐々に消えた。

AIのボディーに注ぎ込まれた青い液体は、迅の娘と息子に二人の記憶が宿った《器》となったのだ。

つまり、迅が愛していた、娘と息子の存在がAIガイドに宿った。

青い液体の中に、迅の記憶が含まれていたのだろう。

その記憶とともに、青衣と赤坂を殺した本当の事実や出来事も迅の記憶を通して知ることになる。

その迅が作った青い液体の仕組みは、ナノマシンで作り出した特別な人工シナプスを培養し、混ぜ合わせることで、配合した人物の記憶を見ることができる。

その記憶は、映像として脳裏に映し出される仕組みだ。

 これが《青い液体》の効果だ。

 この青い液体を使うことで、実験はもちろん、あらゆる場所で悪用できる力ということもあり、薬学はその薬を真似して作っていたが、成功することはなく、その代わりに違う効果の黒い液体を生み出すことになった。

その時生まれたのが「№Ⅲ:愛幻夢(あいげんゆめ)」から生まれた《黒い液体》だ。

この黒い液体を使い生まれたのが、№達。

 そして、なぜ、迅はこの青い薬で、自らの娘と息子の記憶をAIガイドに注がなかったのか。

 いや、注ぎ込むために開発したのが青い液体だが、その日が来る前に迅が命を落としてしまったからだ。

その過去の記憶もAIガイドに流れ込む。

そう、神様の気まぐれなのか、今まさに迅が成し遂げたかったことが、偶然にもデータワールド崩壊中に行われたのだ。


 ―――青い液体に含まれていた「過去の記憶と本来の真実」―――。★★


 迅の記憶がAIガイドに流れ込んできた。

 その記憶は「魔獣捕獲計画」の記憶。

 かつて、迅はデータワールドの核として、必要だったエネルギーの開発に着手しており、迅は誰からも尊敬される優秀な研究員。

だが、それと同時に周囲が呆れるほど、動物好き。

つまり、動物好きの迅は、魔獣を犠牲にして研究を続けるのには抵抗を感じていた。

どうにかいい方法はないかと試行錯誤した結果、たどり着いたのが「魔獣捕獲計画」だ。

「魔獣捕獲計画」は迅の計画に必要な要素であり、魔獣を捕獲して「魔獣のクローンを作り上げる目的」を実行するための計画。

つまり、魔獣そのものの犠牲は遺体が、クローンを用いれば少しでも軽減されるのではと考えたのだろう。

そのクローンを自らの研究の核として活用する目的。

つまり、捕獲した本物魔獣のDNAデータが取れた後は、開放する予定の計画。

この方針は、迅自身の性格もあったのだろうが他にもいくつか理由がある。

捕まえたのになぜ、開放するかというと、保護動物のように、存在が稀で、なおかつ、古くから生きている魔獣は現在にはごくまれな存在なのだ。

つまり、その貴重な魔獣の生きる自由を奪うことは迅自身もそうだが、世間的にも批判のみが差し向けられるだろう。

法律にも《魔獣を捕獲した後、強制的に拘束してはならない》と記載されており、捕獲するにも、捕獲期限と、一時的な《捕獲期限申請証明書》を記載し、審査に通る必要があるのだ。

だが、そんな中、前触れもなく迅が事故死。

その計画の実行者《迅》亡き後は、その意思を引続者はいたのだが、迅を尊敬していた研究者は薬学が後を引き継いだことで、迅派はほとんど研究所を去ってしまったのだった。

だが、薬学はかつての迅の思想を引き継ぐ意思はなく、自らの思想を具現化するためのエネルギー源として魔獣を利用しようとしているのだった。

そんな、世間的に受け入れられていない計画のため、もちろん子どもたちにも言えるわけがないのだ。

だが、実は、その計画に重要なのが子供。

子供を使うことで、魔獣も姿を表すとされ、無垢な心の持ち主の前にしか、現れないとされているのが現代の魔獣。

つまり、魔獣をおびき寄せるためには、子供がこの捕獲計画には必要不可欠ということになる。

だが、子供にはそんな不名誉なお取りの餌などになる子供などいないだろうし、ましてや、大人事情で受理されたことなど子供にとっては理解できないであろう。それどころか、抵抗して、計画に参加してくれないなんてことも起きる可能性が高いため、子どもたちには話すことなく計画は実行されることになっているのだ。


―――それから数日後……。


魔獣捕獲計画の当日。

「魔獣捕獲計画」の協力者3人は子供たち3人が良く遊ぶ様になった公園の草むらや木の陰、岩の陰に隠れて、息を殺していた。

しかし、子供3人が到着するときには、2人の協力者は何者かに殺害されており、その死体は、木の陰、石の陰に隠されるように、横たわっていた。

実は、2人を殺したのは協力者の1人だった。つまり、この「魔獣捕獲計画」の生き残りが2人を殺害した人物なのだ。

この真実は迅が命を落とす直前にわかることだが、このときは誰もこの真実を知らずに、過ごしていた。

子供達3人はそんな危ない人物に監視されているなど、知らない。

楽しそうに会話をして、ブレスレットを装着している。

そして、ブレスレットをつけ終わると「隠れんぼ」を開始。

いつものように、3人は遊び始めた。

その後、暁斗と大牙が出会う場面へとつながる。

その背後には、例の協力者の影。

そう、協力者で2人を殺害した危険人物が後をつけていたのだ。

その後、大牙が協力者の気配に気づき、暁斗の前から消え、その場を去ってしまう大牙。

計画は失敗したが、その協力者一人は諦めず、念の為用意していた次の作戦に段階を移行した。

「気づかれたか……どっかに逃げたなぁ~クソッ! 念の為要していた作戦を試すかぁ」

その場から消えてしまった大牙をおびき寄せるために、子供を殺し、その血で誘い込んだほうが良いと考えを変え、行動に移すため、青衣と赤坂を探しに行く。

そう、ここからが、例の子供たちが無残にも殺されていくシーンに繋がるのだ。

迅の部下であれば、そもそもこんなことは起きなかったであろう……。

そう、実は協力者として迅のもとで働いていたが、本当の正体は監視者。

その監視者は、大牙をおびき寄せるために、子供を殺そうと創作したが、見つからなかったため、研究所に戻り、事前に子供の血液を採取していた血液パックを持ってきて、廃墟の中でばらまいたのだ。

その匂いは人間にも感じ取れるキツイ匂いだったが、大牙にとって数十メートル離れていたとしても嗅ぎ分けられるほどの強烈な匂い。

大牙は監視者の目の前に現れた。

「血の匂いを嗅ぎ分けて来ると思ったよ、何百年いや、何千年者時を過ごす魔獣、大牙」

「われの名を知っているのか・・・だが、一つ勘違いしているようだなぁ……小僧」

「なんだ」

「われはもう何百年と人の血を食らってはいない」

「我慢するなよ。ここにもう一つ血液パックがある……食っていいぞぉ」

「ガルルル、、貴様、われを淡く見てもらっては困るな、もはや血を食らうよりも、人間と同じものを食らった方が上手いと感じているのだよ小僧」

「小僧か、大牙から見ればみんな赤子のようだなぁ。だが、その小僧の中で、最も力がある人間がいるんだよ。それが俺だ」

「ほぉ。少しは力があるようだが、何が言いたいのだ小僧」

「俺と契約しろ。そうすれば、悪いようにはしないさ。俺たちが組めばこの世を支配できるぞ」

「興味はない。それよりも、その血液の量、何人殺したのだ」

「20人くらいかな?」

「・・・貴様のようなやつは好かんな」

 少しだが、さっきのように気配を感じさせる気迫に見える大牙。

 昔の魔獣とは何かが違うのであろう。

「そうか、それじゃあどうしても契約しないというのではれば、実力行使と行きますか」

「小僧が割れに勝てるなどと思っているのか?」

「それは、昔の話だろ。今は科学技術が発達して、いろんな優れた物や技術があるんだよ」

黒い薬を飲み、ガラスを投げ捨てて割ると、みるみるうちに悪魔化。

その力で、はじめは話せていたが、力が足りないため、もう2本追加で、飲みほすととものすごい力を発揮して、大牙を吹き飛ばし、カプセルに閉じ込め回収。

だが、力とひきかえに、筋肉が急激に衰え、ヨボヨボの姿になる。

喉が渇き、先程のパックを飲むと、少し回復したようで、動けるようになったが、まだ足りない。

見た目は、黒い狼だったが、化け物化した監視者は黒から、白い毛並みに変化していくではないか。

「こうすれば、全てお前がやったように見せられるからな。この姿で誰か食うかな。あ~のどが渇いて仕方なぇ~お前のために用意していたが、魔獣がこんなに弱くなってたとはなぁ~地を飲んでないからか?」

 そう言うと、化け物化した男は、残りのパックを口いっぱいに放り込み一気に噛み砕いた。

「ビュチャー!」

「ガルルルッ」

 魔獣は動けない。

 そして、血を飲みすぎた者は体の制御と血の飲み過ぎで自我を失う。

「ガァァァ‼!」

つまり、人間であるものが急に魔獣化したわけだ。

変身するために、とてつもないエネルギーと膨大な血が必要になってくるだろう。

決定的なことは、急に魔獣化し、急に血液を大量に摂取したことでの、一時的副作用は大きくなると容易に想像できる。

ここで、暁斗は時間が過ぎていたことに気づき、探索を始める。

「やば! 時間過ぎてんじゃん! 戻らないと!」

その後、監視者が悪魔化した現場に青衣と赤坂が到着して、我を忘れた、血に飢えた監視者が二人を喰らう。

その血で自我が戻り、もとの人間の姿へ変化し戻る。

「あぶねぇ~血液の新鮮さにも影響するのか、魔獣って以外に不便なんだなぁ」

 周辺には青衣と赤坂の髪や服が落ちており、周辺には血も大量に血液パックの残りとともに散らばっていた。

その後、魔獣に子供達が食われたと報告し、チームの2人も行方不明だと迅に報告する教職者。

そんなことも何も知らない研究所の人達。

監視者のチームの一人として振る舞い、潜入していたこともあり、誰も彼の悪事をあばける者はいない……。


□ 金髪AIガイドに流れこむ記憶

もうひとりの金髪の少女の記憶が客観的視点で処理され整理される。

簡略化され、AIガイドの脳(コア)に送り込まれる。

脳裏映し出されるのは、今までの迅とそれ以外の記憶も映し出された。

つまり、周囲の研究者達の記憶が混じっており、その御蔭で記憶の整理が高速回転し、再生が簡略化される。

複数の記憶がAIガイドに流れ込む。

銀髪少年の得た記憶と同じだが、金髪少女の得た記憶は、客観的にかつ、これまでの隠された情報も取得していく。

この客観視の記憶は防犯カメラを眺める監視委員や、周囲の研究員たちの記憶などで構成されている。

青白い粒子が様々なオブジェクトに変化。

これは、金髪少女の脳裏で行われている記憶の伝達手段としての映像。

つまり、青白い粒子ですべての世界のあらゆる過去の映像を作り出しているのだ。

青い粒子から徐々に本物のように変化。

まるで、過去の世界にタイムスリップしたかのような映像が脳裏に映し出される。

場面が変わるたびに映像が乱れ、再び青い粒子に変化し、強風に吹き飛ばされたかのようなあらあらし動きで周辺へ飛び散り、次なるシーンを想像し、また構成されて行く。

こうして、何度も様々な映像を作り出していく青い粒子。


―――記憶が整理され、粒子で構成された映像が脳裏に浮かぶ―――。

―――迅の記憶の後に、迅亡き後の複数の研究員の記憶―――。


WD研究所の研究中にある計画が発案された。

その発案者は今は亡き迅の計画だ。

迅は当時天才的な頭脳を持ち合わせていながら容姿も良く、性格も人格者という欠点がない人間であった彼の計画には多くが賛同。

そんな中「魔獣捕獲計画」という迅をリーダーとしてチームが結成。

だが、迅は自らの研究で忙しく、なかなか、魔獣の捕獲に着手することができないでいた。

そんな時、迅の代わりとなり計画を実行してくれるチームを結成したのだ。

これで、迅は研究に専念でき、同時に計画も実行できる。

そのチームに独自に動いてもらい「魔獣捕獲計画」を実行しようとしたのだった。

だが、結成後に「青衣白夜」「赤坂水紅」が魔獣に食い殺されてしまい。その後を応用に「迅」も事故死を遂げたのだ。

研究所の休憩室。

男性研究員がつぶやく。

「こんな時期に事故死・・・いや、誰かが迅を・・・」

女性研究員達もこの迅の《事故》が《事件》ではと噂し始めた。

「迅さんは、いつも人一倍研究熱心で、それと同じくらい安全確認を怠らない人だったのにね……」

そう、迅は交通事故として処理されていたのだ。

「だよね。でも、そんな人が事故に合うなんて、信じられない。研究も安全第一で入念にテスト試験を何回も行う人なのに……」

「まさか……誰かに……」

「誰かに!? 誰かにって事故じゃなくて・・・殺人事件だって言いたいの??」

同僚の研究員が驚くのを見て、女性研究員は話を続けたが、探偵のように渋い目つきで語り始めた。

「可能性的には高いわよね……。しかも、こういうときって身近に犯人が、なんてことも……」

「うそ! ということは研究員の中に犯人がいるってことなの?? そんな怖いこと言わないでよ!」

「可能性の話だよ! 真に受けないでよ!」

「本当だったらやばいよね・・・」

「そうね、本当だったらね・・・」

女性研究員は、休憩所の自販機の前で同僚と話している。

その彼女らを鋭い視線で見つめる者が近くに潜んでいた。

缶コーヒーを飲み干した彼女は探偵じみた雰囲気を醸し出しながら一言。

「さっき、誰かの視線を感じたわ・・・」

「やめなさいよ! あんたはただの研究員の見習い補佐でしょ!」

「あんたも同じでしょう!」

二人の研究員はじゃれあっていただけのようだ。

だが、彼女らの話していた内容は他の研究員も感じていたようで、多くの研究員は犯人がいると思っていたが、口には出さないでいたのだ。

おそらく巻き込まれたくないのであろう。

研究所の雰囲気はかつて明るい空気が漂っていたが、迅の死後、重たい空気が張り詰めるようになっていた。

何者かの計画により抹殺されたとしか思えないほどのタイミング。

つまり、それに気づいているが、その話をすれば、自分の首が色んな意味で飛ぶのではと重たい空気が流れる。

調査もろくに行われずに処理されたことから、誰もが原因を知らず、この事故は閉じられようとしていた。

そんな、状況を知っている研究員たちがろくに死因も教えてもらえなかったことが事故ではなく事件と思うのも無理はないのだろう。

そう、誰かの圧力によってもみ消されているような違和感を覚えたのだ。

そんな、謎の死を遂げた迅の死因に関わっているのはおそらく、霧咲薬学。

そう、霧咲薬学が迅の死に関わっているのではないかと周囲は噂していたのだ。

そう思われるのも無理はなかった。

なんせ、ここ最近の薬学の様子がおかしかったからだ。

薬学ではあるが、以前の薬学とは何かが違う。なんとも言えないが、たしかに雰囲気が違うのだ。

薬学は迅の死後研究を引き継ぎ、迅の研究機材や研究成果を活用して、迅とは似て非なる計画を進め始めたのだ。

周囲の研究者たちは、そんな身勝手に動く薬学についていけないと反発。

研究を降りたものもいれば、この機会に出世できると迅によく思われてこなかった《クセモノ研究者》がここぞとばかり協力を志願。

クセモノ研究者達は性格に難があるが、研究では成果を出すいわゆる天才だが、人間としてはイマイチと言った者達。

そのため、薬学に近寄る者はクセモノ以外寄り付かない。

彼らは、昇進目的で薬学の引き継ぎと継続を後押ししたのだ。

これが、過去に起きていた真実だった。

だが、この真実にはさらなる続きがあったのだ。

この真実の過去を確認したAIの脳裏に再び衝撃的なシーンを映像で見ることになる。


―――舞台はWD研究所内―――。

迅の死後、薬学が計画を引き継ぐ頃だ。

薬学は迅が立入禁止にしてた研究室に足を運ぶ。

迅が危険なモノを隠していた研究室だ。

その研究物を調べるために、薬学は一人、研究所の一室に足を運んだ。

―――研究所の一室―――。

研究所のドアには《関係者以外は立入禁止》の文言とともに、《危険薬品生物管理研究所》との記載もある怪しい雰囲気の部屋。

その取っ手部分を見ると厳重な鍵でロックされているではないか。

扉は金属で、鎖と鍵付きの厳重な南京錠が3つ。厳重さが伺える。

その扉の外にも中にも監視カメラ。

つまり、中には重要書類や危険物が保管されている裏付けになる。

 薬学は迅の研究室から1つのリングにいくつのも鍵が固定されているすべての鍵を試す。

「ガチャッガチャッガチャッガシャン!」

「おっあいた」

「ギギィギィ・・・」

「ホォ~・・・冷えるなぁ~」

男はその厳重なロックを解除し、中へと足を運ぶ。

中へ入ると真っ先に一番目立つ中央の実験体を閉じ込めている水族館のガラス張りの水槽。

いや、水槽のようなと言ったほうがこの場合に限っては正しいだろう。

なんせ研究物を保管する特殊な液体につけるための水槽なのだ。

水槽のような特殊な実験用なのであろう。

頑丈なつくりで、なにか黒い物体を閉じ込められている。

 その、黒い何らかの物体を、特殊な専用器具を活用し採取。

その物体を研究台に乗せて、まじまじと眺める。

 細かく切り離した黒い物体は心臓の鼓動のように「ドクッドクッ」と動いている。

「これが、迅さんが極秘研究していた黒いスライムかぁ~。動いているなぁ~。まさにSFで見るような未確認生物だなぁ」

男はそう言うと、裏ポケットに入っていた写真を取り出し、眺め始めた。

そこには男の妻と子供の写真が写っていた。

「父さん、この実験を引き継げるように頑張るからなぁ」

「ピチャ!」

その言葉を発したあと、写真の後ろに何かが取り付いた。

「ん? 何だ?

損写真に取り付いたのは黒いスライムのかけら。

男はその黒いスライムをとっさに取り払うため指をスライムに触れた瞬間だった。

「わぁ!」

黒スライムのかけらは、凄まじい勢いで指から肩にかけて覆い尽くした。

薄くラップのように貼られた暗いスライムの力凄まじのだろう。男の力では払えないレベルの吸着力。

男自身にも制御が効かないほど、主導権を奪われてしまった。

「何だ! こいつ!」

男はフリ洗おうとしたが、離れない。

手と黒いスライムが一体化したように進捗していく。

「クソ! 離れろ!」

 腕ごと勝手に持ってかれるように、制御が効かなくなる。

その手を抑えようと、片方の手で黒スライムに侵食された腕を抑え込む。

だが、主導権を取られた腕から、抑え込む腕にも侵食していくではないか。

 制御が効かなくなった両腕は、ガラスの中にある黒いスライム本体にものすごい力で、共鳴試合。禍々しい黒い電気のような磁場で吸い込まれるように本体へ近づいていく。

 そして、両腕の指が頑丈な刀のように変化。

それと同時に、先ほどよりも、更に強い力で引っ張られる。

 その勢いは、まさに、重力を横にしたようなくらいの凄まじい吸着力。

「パリンッ!」

 研究用の水槽のガラスを難なく突き破り、研究用の液体と黒スライムが解き放たれる。

 流れた研究用の液体が、床に満ちていく。

 その液体により、男は脚を滑らせ転倒。

「ドーンッ!」

 頭を強く打つ。

本体と融合するように、男の両腕は黒いスライムに収集されていく。

倒れた男は走破させないと必死に抵抗する。

先程の衝撃で頭が痛い男。

そんなとき、家族が写っている写真が黒いスライム本体にひらひらと落ちていくではないか、そのスライムと写真が重なり合った瞬間写真に写っていた妻と子供の姿に変形した。

「なっ!」

 自分の目を疑った瞬間だ。

 しかし、頭を打った頭痛で現実の光景が妙に夢のように思えてくる。

 更に、床に飛び散った液体が黒いスライムが返信した妻と子供の姿が地面に映る。

 異様で、不気味で、恐怖を感じる光景だが、どことなく愛おしく、男は逃げようとはせず、何故か見とれてしまった。

 自分の家族の姿をした生命体が目の前にいるのだ。動揺するのが当然だが、頭を打ったことでなにか夢の中のように「フワリ」とした夢の中特有のフィルターがかかる。

「・・・」

 先程までの吸引力は消えており、子供と妻と手をつないでいた。

 左手には妻の手、右手には子供の手をつないでいる男はその姿を眺める。

妻と子供は何も言葉を発することなく、男の腕を両手で掴んだ。

その時、再び凄まじいいい力で男を吸収しようとする。

「わぁ!」

 我に返った男。だがすでに手遅れだ。

油断した男はそのまま黒いスライム本体にも取り憑かれて、全身が黒く覆われた。

その侵食が凄まじいことに、血液や、男の臓器まで侵食し、真っ黒になってしまったのだ。

先程の妻と子供の姿は油断させるためなのか、ただ、写真の人物を模倣したのかはわからないが、男を捕まえた瞬間再び黒いスライムに変化し男を真っ黒なスライムが覆い尽くした。

その男こそ、霧咲薬学。

迅の研究を引き継ぎ、後に№を生み出し、データワールドを作り上げた研究者。

そう、このときにすでに薬学食い殺され、薬学の記憶と薬学の殻をまとったなにかに変化していたのだった。

つまり、今この時点で薬学は命を落としたということだ。

つまり、神夜が出会った頃はもう既に、黒い何者かの生命体に体を乗っ取られており、薬学であって薬学ではなかった。

正体は迅が密かに研究してた悪魔の細胞から生まれた謎の生命体。

今の薬学は薬学ではない。

黒いスライムに乗っ取られてしまったということだ。

だが、黒いスライムは初めて人に寄生したようで、感情や人格、自分のことを薬学本人だと思い込んでいる謎の生命体らしく、自分を薬学だと思い込んでいる仕草を見せる。

「いててっこれんだのか? おかしな、研究所がめちゃくちゃじゃないか、たしかここに黒いスライムがあったようなぁ?? 勘違いかなぁ? まあいいか、そろそろ、終電が近いなぁ。変えるか」

「ガチャン!」

 もう一度いうが、この男はもはや薬学ではなく。

 薬学の記憶を引き継いだ別の生命体……。

この部屋には防犯カメラなどなく、金庫のように厳重に鍵をかけられていた部屋なため、目撃者はいない。

つまり、この部屋に、隔離されていた黒いスライムの正体も誰も知らず、黒いスライムすら自分が薬学だと思いこんでいるため、正体は謎のまま。

黒いスライムは自分を本当の薬学だと思いこんで、このあとも普通に薬学の記憶と薬学の体で暮らし始めたのだった。

これが、真実であり、証されなかった重要な過去。

そう、AIガイドが得た過去の記憶で、迅の過去と、薬学の過去も衝撃的な事実が判明したのだ。

つまり、薬学は薬学の記憶を得た黒いスライムが招待で、元をたどると、薬学は神夜が合う前からすでに死んでおり、黒いスライム(黒い鬼)に体と記憶を奪われていたのだった。

 ―――ここで、過去の記憶の映像は途切れた・・・―――。

 

AIガイドに流れ込んだ記憶は衝撃的なものだった。

とはいえ、人間の感情を持ち合わせていないシステムには、なんの思い出や感情も出てこないであろう。

そう思われたが、感情が宿らないはずの瞳からは青白い光。

《システムエラー》

《修正を自動実行しました》

《システムエラー》

《修正を自動実行しました》

《システムエラー》

《修正を自動実行しました》

 通常ではありえない状況にシステム側もエラーとして処理しているようだ。

 AIガイドの目からは青白い涙のような光が出てきて、いかにも泣いているように思えた。

 この涙は勘定による涙なのか、それとも、システムの消去や取得したデータの兼ね合いで生じた粒子なのかを知るものはこの世界にはいない。

エラーを修正しては再びエラー。その無限ループと修正の通知やエラー通知音だけがこの世界に響き渡る。

そう、今この世界は暗い闇の世界。

しずかで、消えるオブジェクトすべて消えたあと。

 暗闇世界に最後の通知が表示された。

《完全にデータワールドのデータを消去しました》

 これが、データワールドの最後だった。


―――データワールドが崩壊し、消滅し、舞台は現実世界のリアルワールドへと空をとうして視点が切り替わる―――。


一方、現実世界の神夜は、違和感を数十秒前に抱いていたが、その違和感を思い出すことができなくなっていた。

その違和感を胸に残したまま神夜蒼麻は、この日を境に普段の日常へ溶け込んでいく。


―――なんかモヤモヤするんだよな~この気持はなんだろ・・・―――。

                                       

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

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