支援サービス3年運用するも伸びず→ネットに慣れた作家のアドバイスで起きた変化とは? ギャップがかわいい女の子のショート漫画が人気のクリエイターに聞く
先日、Twitterを見ていると、とても素敵で可愛らしい女の子のイラストが目にとまり、思わず見入ってしまいました。
キャラクターから受ける第一印象と、その後の変化のギャップに引き込まれます。


このイラストは、1.4万回以上リツイートされ、10万回以上いいねされていました。投稿者は、イラストレーターであり漫画家の凛愛(りえ)さん。
凛愛さんは、秋田書店「どこでもヤングチャンピオン」において、『失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました』を漫画担当として月刊連載中(ニコニコ静画でも閲覧可能)。
また、Web漫画サイト(アプリ)の「少年ジャンプ+」でも読み切りを発表されたりと、精力的に活動されています。
実績を公開できないゲーム関連の企業案件のイラストを主に手がけてきたという凛愛さんは、これまでネットでの活動にあまり力を入れておらず、Twitterやpixivにイラストを投稿しても反応をもらえることは少なかったそうです。
また、クリエイターがファンから支援を受けられるサービス「pixivFANBOX」でも3年ほどコンテンツを投稿してこられたそうですが、支援者数はほとんど増えなかったのだとか。
ところが、ネットでの活動に慣れたクリエイターからアドバイスを受けるようになった途端、Twitterで作品が拡散されるようになり、FANBOXでの支援者数も増え始めたと言います。
これからクリエイターエコノミー的な活動により取り組みたいというクリエイターの方々にとって参考になる一事例として、話を伺いました。
イラストで生活費を稼ぎながら、漫画に挑戦
ーー今日はよろしくお願いします。凛愛さんは、女の子の絵がすごく可愛くて魅力的ですね。
凛愛:ありがとうございます。これまでも、かわいい女の子のキャラクターを描くことをメインの仕事としてやってきています。

凛愛:ちょうど3年前くらいに独立して、今では漫画家とイラストレーターをやっているんですが、その前はゲーム会社で正社員としてイラストレーターのお仕事を8年くらいやっていました。
ーーゲーム会社でのキャリアが長いんですね。
凛愛:私の場合は、イラストレーターとして入社したんですが、描くのがメインだったのは新人の頃だけでした。
キャラクターデザインやゲーム内の1枚絵を描く仕事もやっていたんですけど、どちらかというとアートディレクターのような立場での仕事のほうが多くて。
キャラクターの3Dモデルの監修や3Dモデル用の衣装デザイン、アニメなどのメディアミックス企画における監修など、幅広くクオリティ管理の仕事を担当してきました。
契約の関係で、基本的に実績公開はできないんですけどね。
なので、当時はSNSなどでも公開できない作品が多く、世の中には特に認知されない絵描きという感じでした。
ゲーム会社の中だと、そういったイラストレーターさんが結構いる印象です。
ーー新卒のときからイラストレーターだったんですか?
凛愛:いえ、最初は広告のグラフィックデザイナーをしていました。
そこで3年くらい働いたあと、やっぱり漫画やアニメ、ゲームに関わる仕事がしたいなと思って、アニメのグッズを作る会社に入ったんです。
当時はイラストの仕事をメインでやろうとは思っていなかったんですが、そこでは制作進行をやりながら、グッズ用のイラストをちょっとずつ描かせてもらうようになりました。
とは言っても、グッズのイラストは2〜3等身のちびキャラが多くて。等身の高い人物のイラストをちゃんと仕事で描くことはほとんどなかったです。
そこでグッズ制作の仕事を2年くらいやった後、モバゲーが流行り始めたくらいの時期に、イラストレーターの需要が一気に増えて。
イラストレーターを未経験でも採ってくれるゲーム会社があったので、転職した形です。
ーー会社員時代はアートディレクターのような立場でお仕事されていたということですが、独立されたのは、「もっと自分で絵を描きたい」といったご意向があったり?
凛愛:まさにそういう感じですね。もっと自分で作品を生み出したいという欲求が高まった結果の独立でした。
ーーとはいえ、独立って結構な勇気が必要なものじゃないですか?
凛愛:独立に踏み切れたのは、漫画の連載をしないかというお誘いをいくつかいただいていたからですね。
それまで漫画を描いたことはほとんどなかったんですけど、子どもの頃の夢が漫画家で、挑戦してみたい気持ちがあって。
とはいえ、会社に勤めながらではとてもやれないので、悩んだ結果、独立を選んだ形です。
ーー漫画を描かれた経験はほとんどなかったということですが、どういった経緯でお誘いが?
凛愛:しっかり覚えていないんですけど、多分Twitterかpixiv経由で、4ページ漫画を1つだけアップしていたんですよね。
仕事として受けられるレベルの絵が描けているからだと思うんですが、それを見てくださった何社かから、連絡をいただきました。

ーーとはいえ、本当に会社を辞めて挑戦するとなると、不安も大きかったのではないでしょうか。
凛愛:めちゃくちゃ不安でした。実際に、悩み始めてから会社を辞めるまで1年くらいかかりましたしね。
その間、会社で何をやっていたかというと、社内の漫画事業部で新連載用の漫画のネームを描いていました。
というのも、会社に「独立して漫画家を目指したい」と相談したら、「他社でやるくらいならうちで描いて欲しい」と言われたんですよ。
ただ、そこで半年くらいネームを出し続けたんですが通らなくて、やっぱり他社で描きたいとお伝えして、独立したんです。
いきなり覚悟を決めて辞めたというより、助走が長かった感じですね。
ーーなるほど、徐々に気持ちが固まっていったというか。
凛愛:そうですね。それに、前職を辞めるときにはすでに他社での連載自体は決まっていて。
独立後は、知人からイラストの仕事を受けて生活費を稼ぎつつ、漫画を描く生活をしています。
基本的にはイラストはゲーム関係で、ごくたまに配信用のアバターなどのご依頼をいただきますが、これは不定期ですね。
収入の割合については、漫画を描いてもらっているのが3分の1くらいで、残りはイラストの仕事で稼いでいます。
ーーそういった働き方だと、普段の仕事のスケジュールって、どんな感じになるんですか?
凛愛:私の場合は育児しながら仕事をしていて、ようやく最近、子どもが保育園に通えるようになったんですけど。
基本的に10:00〜16:00に仕事をして、それ以外の時間は赤ちゃんの世話をするという感じです。
ときどき、すきま時間でも仕事をしていますが、お昼ご飯の時間を抜くと、仕事に充てられるのは一日5〜6時間くらいになります。
漫画は月刊連載なので、月の一週目にネームを描いて、2〜4週目で清書という感じ。その合間でイラストの仕事を入れていくような形です。
漫画の仕事が軸になっていて、使っている時間の割合はそちらのほうが多いですが、ゲームのイラストの仕事は単価が高いので、漫画の仕事の合間に受けるだけでもそれなりにお金が入ってくるんです。
ーーイラストの仕事で生活費を稼ぎつつ、漫画というまだ不安定な仕事に挑戦できているという点で、理想的なポートフォリオのように思います。ちなみに、ゲームのイラストは月にどれくらい担当しているんですか?
凛愛:一枚絵をしっかり描き切るような仕事ではないので、月に何枚くらいというふうに、分かりやすく伝えづらいのですが……。
外注したイラストのクオリティチェックをしたり、線画だけを描いたりしています。
契約も会社によってバラバラで、一枚あたりいくらという契約のところもあれば、月ごとの契約料を提示いただいて、その金額でお受けできる範囲で対応するような形の仕事もありますね。
3年続けるも支援者数がほぼ増えなかったFANBOXに変化
ーー続いて、ファンからの支援を受けられるサービス「pixivFANBOX」の活用について伺いたいのですが、凛愛さんはいつから利用されているのでしょうか。
凛愛:サービスがリリースされてすぐから利用していると思います。今確認してみると、最初に投稿したのは2019年の9月ですね。
ちょうど独立したばかりの頃だったので、ネットでの発信を頑張ってみるかと思っていた時期でした。
それまでTwitterなどにちゃんと絵を上げることもしていなくて、趣味の延長の落書きを投稿するくらいだったので、絵をアップしてもそんなにいいねも来ないくらいの感じでした。
ーーなるほど。FANBOXのようなサービスについて、「お金を取るのか」と言われるのが怖くてなかなか始められないという声をクリエイターさんからよくお聞きするんですが、凛愛さんの場合はいかがでしたか?
凛愛:そうなんですか。そういった考えは全然なかったですね。
私だけじゃなく、自分の周りだとそういったことを言っている絵描きは一人も見たことがなかったです。
会社員として絵を描いてきて、自分の成果物に対してお金をもらうのが当たり前だったからでしょうか。
自分の時間を割いて絵を描いているのに、お金をもらわない意味が分からないという感じです。
ーー凛愛さんのような方と、ネットでの活動からスタートしたという方では、感じ方が違うのかもしれませんね。これも、クリエイターエコノミーの発展によって起こっていることだなと思います。
ここからは少し踏み込んだ質問になりますが、凛愛さんはどれくらいの人数に支援されているのか、お聞きすることはできますか?
凛愛:私はFANBOXの利用自体は長く、コンテンツもずっと投稿してきたんですが、これまでほとんど支援されていなくて、支援者さんは両手に収まるくらいの数なんです。
もともと、100円のプランと1,000円のプランを用意していて、100円のプランの方は支援者がほぼおらず、根強く応援してくださる数人の方が1,000円プランで支援してくれているという感じでした。
ただ最近は、少し前に知り合った漫画家の根田啓史(ねだひろふみ)先生が、活用方法をたくさん教えてくれていて。
先生のアドバイスに従った結果、支援者さんと支援額どちらも少しずつ増え始めているところです。

ーーなるほど、具体的にはどんなことを?
凛愛:根田先生のFANBOXでは、漫画家向けに、Twitterでウケる漫画の描き方やFANBOXの運用方法など、ネットで活動していく上でのノウハウを教えるというプランを用意しているんですけど。
私はそのプランに加入していて、今は週に1回打ち合わせをしています。
これまでネットでの活動はあまりうまくいっていなくて、何かを投稿してもあまり反応が返ってきていなかったんですが……。
根田先生と打ち合わせをして作った2ページのショート漫画(※編注:記事冒頭で紹介した地雷系ヴァンパイアのイラスト)を公開すると、いきなりすごくたくさんの人に見てもらえて、びっくりしました。
それがきっかけで、Twitter経由でFANBOXで支援してくださる人も増えたんですよ。
ーーこれまで3年くらい支援サービスを運用し続けてもほぼ投げ銭されてこなかったけれど、よりSNSでの漫画投稿や支援サービスの活用に長けた作家さんのアドバイスを聞いたところ、成果が出始めたということでしょうか。
凛愛:そうですね。このイラストについては、最初に「地雷系ファッションとヴァンパイアが好き」というのをお話ししたら、それを描きましょうと言ってくださって。
「地雷系だとこういう感じの見た目になるね」「どんな性格なんだろう」と雑談のようにお話しするなかで、キャラの人格やセリフ、シチュエーションが決まっていきました。
なので、私が好きなものを引き出していただいて、それをどうやって描いたら見た人に刺さるのかを一緒に考えてくださったような形ですね。


凛愛:あとは、もともと用意していた100円のプランを止めて、新しく500円のプランを開くようにもアドバイスをいただいたんですけど、このイラストをきっかけに500円のプランに加入してくださった人が複数いらっしゃいました。
ーーFANBOXの担当者の方も以前、「100円のプランからスタートするのはもったいないから、まずは500円のプランを設定するのがおすすめ」とおっしゃっていました。
凛愛:そうなんですね。
根田先生がおっしゃっていたのは、「100円じゃ安すぎて、自分のやる気が出なくない?」「500円に上げて、その額を支払ってくれる人のためのコンテンツを出したほうがいいのでは?」ということでした。
それをお聞きして、確かになと思い、値上げしたという流れでした。
ーーファンの方々がお金を支払ってくれた理由というか、これを見たいと思ってくれたんだろうなというポイントは何かありますか?
凛愛:正直まだあまり分からないです。
Twitterでショート漫画を上げて、FANBOXで差分を上げてみたりしたんですけど、これ目当てで入ってくださっている感じはしないしなと思ったり。
これから模索していきたいところですね。
ーー最後に、今後クリエイターとしてどういった活動に力を入れていきたいか、お伺いしたいです。
凛愛:ネットで実績を公開できない仕事を10年以上続けてきた実感として、もう少し世の中に自分の仕事を知ってもらったほうが道が開けるんじゃないかとは思っていて。
単純に知っていただけると嬉しいですし、SNSのフォロワーや支援者さんが増え、よりネットでの存在感が出ていけば、いろんなジャンルのお仕事をもらえて楽しくなるんじゃないかと思いますし。
今のところは、そういう状態を目指して活動していけるといいなと考えています。
◆
というわけで、今回はイラストレーター・漫画家の凛愛さんにお話を伺いました。
本人もおっしゃっているように、現状の凛愛さんはまだ、個人クリエイターとしてネットでの発信や行動で大成功を収めたという事例ではありません。
しかし、長らくプロとして活動してきた実力のあるクリエイターが、3年もの間、支援サービスを運用し続けても支援者数が伸びず、そこからネットでの活動歴が長いクリエイターの指南を受けた途端、うまくいき始めたというのは、興味深いポイントでした。
クリエイターに何より求められるのは、優れた作品を創造することであり、これは今後も変わらないでしょう。
一方で、ネットで見つけてもらったり、ファンに応援してもらったりというクリエイターエコノミー的なノウハウを身につけることで、活動の選択肢が広がるクリエイターは多くいるはずです。
そういったノウハウが広まっていけば、より自由に活動できるクリエイターが増えていくだろうなと、改めて期待を持てるインタビューとなりました。
凛愛さんのように、よりクリエイターエコノミーの流れに乗って活動していきたいという方々の選択肢を広げられるように、今後も記事を発信していきます。
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