糸島の漁港に見る、エコシステム
福岡県糸島市には、全部で12の漁港があります。今回、(株)アジアン・マーケットに同行し、そのうち志摩地域にある船越・岐志・芥屋の3箇所を回りました。
1. 船越漁港
最初に訪れたのは、船越漁港。


漁港内にある加工所を見学しました。大きい鍋や練りもの用の機械、加熱加工の為のスチーマー、瓶詰めの充填機、真空パック機など、様々な設備が揃っていました。そこで、練りもの等の加工作業が行われています。

これまで私は、水産業の現場に足を踏み入れたことがなく、別の場所に送られてから分業で加工されているものとばかり思っていました。今回船越を訪れ、漁港内で加工から出荷まで担う形態があることを知り、漁港へのイメージが大きく更新されました。
調べてみると、このような形態はまだ一般的ではないようです。特に高度経済成長期までの日本の漁業は、基本的には分業制で、漁師の仕事は獲ることでした。しかし、徐々に取り巻く環境が変化する中で、市場に出すだけでは立ち行かないところも増え、付加価値を生み出す為の仕組みが求められるようになりました。船越加工所も、そうした六次産業化の流れの中で糸島漁協により整備されました。だからこそ、ここで開発され、消費者のもとに届いている商品があります。時代や状況に応じて、戦略的に仕組みをつくることの重要性を目の当たりにしました。
一方で、隣接する「直売所 いりこ」と書かれた施設は、現在閉鎖されています。

不漁などの影響によって、イリコ漁そのものが行われなくなった為だそうです。施設内にはボイラーなどの大型設備もあり、この設備に数億円かかったという話も聞きました。役割を失った施設ですが、解体するにもかなりの費用がかかる為そのままになっているそうで、今直面している厳しい現実にも触れました。
2. 岐志漁港
次に、岐志漁港へ。




岐志は糸島漁協の本所があり、糸島で最も多く牡蠣小屋が集まっているエリア。これまで何度か遊びに行ったことはあったものの、その裏側を見たのは初めて。岸から船に渡り板がかけられ、その先で漁師さんが殻を磨く作業等をされています。「こんな風景が広がっていたのか」とこれまで表しか見ず、その裏を想像することさえもしていなかったことにハッとしました。

牡蠣漁師であり、牡蠣小屋 大黒丸を営む中西さんに、出荷前の岩牡蠣を見せていただきました。水槽には紫外線殺菌灯が設置されており、これで浄化された海水の中で岩牡蠣が殺菌されるそうです。



私たちが安全に食べることができる背景には、こうした設備や管理体制があることを改めて実感しました。
また、牡蠣殻の集積所も見学しました。二つに区切られ、一つの場所には身を外した後の殻が集められています。こちらは柳川市の民間工場に運ばれ、粉砕加工されて、アルカリ性の石灰からなる土壌改良剤「シーライム」へと生まれ変わっています。


もう一つには、身がついたままの死貝の殻が集められています。これは商品になる前、養殖中に死んでしまったものです。実は、育てたうちの約7割は死んでしまうそう。タンパク質がついた状態であることを活かし、有明海の方で海底環境の改善に向けて進められており、今現在も有効利用の方法が模索されているそうです。

こうした牡蠣殻活用の取り組みを牽引したのは、JA糸島 古藤さん。以前、牡蠣小屋で出た牡蠣殻は、他のゴミと一緒にまとめて廃棄され、年間数百万円がかかっていたそうです。その状況を変えるべく、行政が音頭を取り、糸島漁協も連携して牡蠣殻の分別・再利用する仕組み作りが始まりました。
海の恵みを土に還し、その土が再び川の流れを通じて海に流れ込んでいく。この循環を実現できたのは、多くの人や組織が協力し、仕組みそのものをつくり上げたからこそ。きっと後世にも受け継がれていく、価値ある取り組みであると思います。
3. 芥屋漁港
船越・岐志と北上し、最後に芥屋漁港へ。

ここは上の2つと比べると少しコンパクトで、ウニやサザエ、ふともずく等がとれ、海女漁が盛んです。対岸には、芥屋海水浴場があり、遊覧船も運航されています。港にはイカ漁船や平底の船が並び、その向こうにはパラソル、海の家。そのコントラストが印象的でした。

芥屋漁港の支所長である鹿毛さんは、糸島漁協で漁業を守り、地域に伝えていく為、販促や博多女子高校の見学の受け入れなど、様々な活動に取り組まれています。以前、私が勤めていたシェアオフィスのイベントスペースで、「糸島カキ」のワークショップをご一緒させていただいたことがあります。
持ち前の明るい人柄と、海や漁業への強い思いを持ち、漁師の方々とともに現場を支えている方の一人です。今回はご不在だったので、また改めてお話を伺いたいなと思います。




Reflection
今回3つの漁港を訪れて、多様な主体が関わり合いながら形成されているエコシステムを基盤に漁業、そして水産業が成り立っていることを実感しました。
現場を訪れたことで、一つの産業の仕組みが少し見えてきたように思います。これからも現場に足を運びながら、もっと深く知っていきたいと思います。
