黄色いチューリップを食べて死にたい
私にはかつて、熱狂的に好きだった歌手がいました。
その人の曲に出会ったのは15歳の頃。
高校受験真っ只中で、私は周りの人が進学校や偏差値の高い高校を受験しようと必死なのに比べて、将来なりたいものがなく、受験したい高校も見つけられずとにかく劣等感を抱いていて、受験というものから逃げようとしていました。
そんな中、ハマっていたアニメのエンディング曲にその歌手の曲が採用されていて、初めて聞いたとき衝撃を受けました。
「当の私は出来損ないでどうしようもなくて、夜明け夢見ては地べた這いずり回っている」
「それでも誰かと比べてばっか 周りを見ては立ち止まって
欠けたものを探した そんな自分を変えたい」
歌詞に込められた歌手が感じていたであろう劣等感と当時の自分の気持ちにかなり刺さり、一気にその歌手のファンになりました。
曲のタイトルは「ミカヅキ」で欠けた自分を月に例えるアイデンティティにも惚れました。
それからというもの、その歌手に魅了された私はYouTubeで公開されている曲を漁り、SNSをすべてフォローし、その人の投稿を一から遡り、どのような考えを持って生きてきたのかを見入るようにネットサーフィンに日々を費やしました。
そんな日々が私にとっての楽しみでもあり、彼女の考えをもっと知りたいと、曲の歌詞を一文一文考えて聞いてました。
その歌手がインスタライブしていたある日、こんな一言を残していました。
「黄色いチューリップが食べたい、毒性があって、心臓に危ないかもしれないんですけどね」と。当時聞いていた私には衝撃的な一言でしたが、それを経由して黄色いチューリップが好きにもなりました。
その歌手はとにかく黄色が印象的でした。ミカヅキの黄色、ギターも特注の黄色で、食べたいチューリップも黄色でした。
チューリップは漢字で書くと鬱金香と書くようです。また、黄色いチューリップの花言葉は「正直」「名声」などがあります。
彼女が綴る詩は明るい詩より生きることへの苦悩や翳のある歌詞が多く、これまで生きてきた死生観に真っ直ぐな詩を綴る人でした。その詩ゆえに多くの人の心に届き、たくさんのファンが居て、黄色いチューリップの花言葉のようでした。
ですがそんなある日、その歌手がこの世を旅経ちました。世のファンには衝撃的な通達だったと思います。死因については公表されていませんでした。
私は数年たった今、その歌手のことを思い出し、もしかしたら本当に黄色いチューリップを食べたのかな、なんて思いにふけました。
私は彼女の歌に感化され、励まされ、時に涙し、彼女にあこがれて弾き語りを始めるなど、私の中で生きる動力になっていました。年を重ねるにつれて違うジャンルの曲を聴くようになりましたが、当時をさかのぼり、あれほど熱心にハマった歌手は後にも先にも彼女だけです。
そんな彼女の選んだ道に私は間違いはないと思うし、世に残された楽曲の数々は今でも尊いものです。
あなたが歌手になってくれたおかげで、今の私がいます。きっと多くの人が私と同じように彼女の楽曲に救われて生きてきたことでしょう。
この場を借りて、心よりご冥福をお祈り致します。
