Math Note Ⅰ 第12話
12 2次関数の平行移動――センターピンを狙う
「お前は黙っていろ。これは俺と典子の問題だ」
昨日は晩御飯を食べながら昭雄さんと典子の話をしようと思ったのだけれど、相手にしてもらえなかった。昭雄さんはあんな風になると頑固で人の言うことを聞かなくなっちゃうのよね。
でも、典子が昭雄さんの言うことを聞くとは思えないし、このままでは平行線だから、何か作戦を考えないと。そうなると――やっぱり、まずは買い物にいかなくちゃ。今日は何を着ていこうかな。
寝室のクローゼットを開けると、そこに一冊の白いノートが落ちていた。あれ、これは昨日洗面所で見たノートだ。何故こんなところにあるのかしら。
ノートを取ろうと手を伸ばしたとき、部屋の窓は閉めていたはずだけど、風が吹いたようにノートのページがひとりでにパラパラとめくれた。クローゼットの中がぼんやりと明るくなった気がした。
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〈問〉放物線 $${y=x^2+2x+3}$$ は、どのように平行移動すると放物線
$${y=x^2-4x+2}$$ に重なるか。
〈解〉$${y=x^2+2x+3}$$
$${=(x^2+2x+1)-1+3}$$
$${=(x+1)^2+2}$$
頂点($${-1}$$,$${2}$$)
$${y=x^2-4x+2}$$
$${=(x^2-4x+4)-4+2}$$
$${=(x-2)^2-2}$$
頂点($${2}$$,$${-2}$$)
よって、$${x}$$ 軸方向に$${3}$$ ,$${y}$$軸方向に $${-4}$$ だけ平行移動すればよい。

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2次関数のグラフは必ず一定の形の左右対称な曲線を描く。それは物を放り投げたときにできる曲線と同じだから「放物線」と呼ばれる。上に凸、下に凸という差はあるが、放物線の形(開き具合)は $${y=ax^2+bx+c}$$ の $${a}$$ の値で決まる。$${a}$$ の値が同じであれば、$${b}$$ や $${c}$$ の値が異なっても、放物線の形は同じだ。この問題の場合も、どちらも $${x^2}$$ の係数は1だから、放物線の形は同じだということがわかる。あとはそれぞれの「位置」がどこにあるかを見ればいいのだが、放物線では「頂点」が代表的な点となるから、平方完成で頂点の位置を調べて、頂点をどのように動かせばよいかを考えればいい。
……だから、何なのかしら。
この問題の本質は、いろんな点を調べなくても、「頂点」を調べれば済むということだ。放物線の中でもっとも重要な点は頂点だ。ボーリングでいえば、すべてのピンを倒すにはどこを狙うべきか、それは「センターピン」を狙うことだ、というのとよく似ている。
じゃあ、昭雄さんにとって「頂点」にあたるものって何なんだろう。昭雄さんはそれを守ろうとして、頑なになっているのかもしれない。昭雄さんが一番大切にしているものを私もちゃんと大事にして話をしないとね。
ノートをベッドの上に置き、出かける準備をする。それにしてもショッピングモールに行くのは本当にワクワクする。たまには昭雄さんも一緒に行けば気分も変わるのに。
