第2章|生まれ変わり二回目 ひらく子(ふう)― 社会に戻り、限界を知った日々 ―
生活を続けるための選択
しのが生まれて半年ほど経った頃、
私は十年暮らした土地を離れ、実家のある町へ戻った。
働きながら子育てをするなら、
この環境がいい。
そう思ったからだ。
それは覚悟というより、
生活を続けていくための、
ごく現実的な判断だった。
仕事と、ふうの到来
しのが一歳になる頃、就職活動を始めた。
そして、仕事が決まった。
同時に、ふうが、お腹に来てくれた。
「仕事決まったのに、妊娠してしまったなあ」
正直、そう思った。
でも、隠そうとは思わなかった。
人事に相談すると、
「三か月だけど、働いてから産休育休に入ればいいよ」
そう言ってもらえた。
あのときのうれしさは、今でもよく覚えている。
社会に戻る感覚
職場に行くこと。
仕事仲間がいること。
役割があること。
それだけで、心がとても軽かった。
産休に入ってからは、
しのの成長を、そばで見守る時間を持てた。
支援センターにも通い、
ママ友とランチをする日も増えた。
この頃の私は、
「働くこと」と「母でいること」が
同時に成り立つ感覚を、
初めて体で知った。
フルタイム復帰という現実
一年後、フルタイムで復帰してみると、
思っていた以上に、生活は忙しかった。
時間に追われ、
余裕をなくし、
「時短にしておけばよかったな」と
何度も思った。
それでも、私はフルタイムで働き続けた。
たった三か月しか働いていなかったから、
一日の仕事の流れを、
一度ちゃんと経験してみたかったのだ。
後ろめたさと、確かな手応え
振り返ると、
一歳になりたてのふうを保育所に預けながら働いたことに、
少しの後ろめたさも残っている。
けれど同時に、
仕事の楽しさも、確かにそこにあった。
人との関係ができ、
任される仕事が増え、
私はまた、社会の中に戻ってきていた。
そして、思うようになる。
——このままでは、続かない。
頑張れば回るけれど、
頑張り続ける形では、
いずれどこかで壊れる。
ひらいて、教えてくれた子
ふうは、
私の世界をひらいてくれた子だった。
同時に、
「全部は無理だよ」と、
体で教えてくれた子でもあった。
生まれ変わり二回目は、
広がりと、限界を知るための時間だったのだと思う。
夜の配置が語ること
今のわが家の夜は、
少し不思議な配置になっている。
末っ子のあきは、ベッドでひとり、すっと眠る。
長女のしのは、父と一緒に布団に入る。
そしてふうは、今も私の隣で眠る。
誰かに決められたわけでも、
そうしようと話し合ったわけでもない。
気づいたら、そうなっていた。
ふうが戻ってくる場所
ふうは、私と眠りたがる。
「母がいい」と、はっきりした理由もなく、
ただ当たり前のように、私のところへ来る。
三人の中で、
いちばん私と生活のリズムを共有してきたのが、
ふうなのかもしれない。
働きながら子育てをすること。
時間に追われる日々。
余裕をなくしていたあの頃。
ふうは、
私が外に向かって広がっていく時間を、
いちばん近くで一緒に過ごしていた。
確認のような、まなざし
だから今も、
夜になると、私のところに戻ってくるのだろうか。
それは甘えというより、
確認のようにも思える。
——ここにいるよ。
——ちゃんと戻ってきたね。
ふうは、
私の世界をひらいた子であり、
同時に、
私を「家」に引き戻してくれる子でもある。
生まれ変わり二回目は、
広がりと、つながりを行き来しながら、
自分の居場所を探していた時間だった。
第三子の記事はこれです。
