VANSと歩いた先へ| From Era to Authentic
VANSのEra(エラ)。
何年前に買ったのか覚えていない。
とにかく長く履いてきた。
買ったきっかけは安かったから。
普通の靴が欲しかった。
靴なんて何でもいいと言っていた。
それなのに納得できる普通が見つからなかった。
Eraは普通のイメージに近い気がした。
「これでいい。」
そう言い聞かせて履いていた。
新しい靴を買った時に起こるような喜びは、あまりなかった。
それから、どこへ行くにもこの靴を履いた。
雨が降っても迷いなく履いた。
フェスに行く時も、病院に行く時も。
気づけば、いつもこの靴だった。
時々、他人の履いている靴が少し羨ましかった。
次第に色が褪せて、ソールが減っていった。
靴紐を結び直すことも、ほとんどなくなっていた。
足を突っ込めば、そのまま歩き出せた。
「次は違う靴にしよう。」
何度もそう思ってきた。
それでも、この靴とたくさんの景色を見てきた。
長い距離を、一緒に歩いてきた。
最後の旅は、横須賀から横浜まで歩いた一人旅だった。
帰ってきて靴を脱いだ時、靴に大きなヒビが入っていることに気づいた。
よく見ると、あちこちにダメージが残っていた。
「ああ、そろそろ買い替えどきなんだな。」
そう思った。
新しい一足を買う日が来た。
今度は、前より少し自由に選べるようになっていた。
いろいろ見て回った。
でも、気づけばまたVANSを手に取っていた。
選んだのは、Authentic(オーセンティック)。
周りから見たら、前と何も変わっていない。
買った時は、嬉しかった。
安いから履く靴が、いつのまにか、好きだから履く靴になっていた。
シンプルで、どんな服にも合う。
履き込むほど味が出る。
少しくたびれた姿の方が格好いい。
自分が見たい景色に、そんなに高い靴はいらない。
自分らしく歩ける靴。
Authentic。
これからは、この靴で歩いていく。
そして、Eraは、まだ捨てていない。
いつか捨てる日が来ることはわかっている。
それでも、もう少しだけ玄関に置いておこうと思う。
雨の日に、また履くかもしれない。

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この靴で歩いた最後の旅については、こちらに書いています。
