DeFiで"損する人"が多い理由 ― 流動性提供の落とし穴と、変わり始める仕組み
「DeFiで資産運用ができる」
そんな話を聞いて、興味を持った人も多いのではないでしょうか。
特に「流動性提供(LP)」は、資金をプールに預けるだけで手数料収入が得られるという仕組みから、銀行預金の延長のようなイメージで語られることもあります。
でも、ここで一つ知っておいてほしい現実があります。
実は、流動性を提供している人の約半数が「損をしている」というデータが存在します。しかも、主要なDeFiプールに預けられた資金の8割以上が、実際には「働いていない」状態にあるとも言われています。
なぜ、こんなことが起きるのか。
この記事では、DeFiの流動性提供で損をする人が多い構造的な理由を解説します。そして最後に、その問題を解決しようとする新しい動きについても触れていきます。
「儲かりそうだから」ではなく、「仕組みを理解してから判断する」。そのための材料を、ここでお伝えします。
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この記事は 初心者シリーズ Vol.8 です。
Vol.7「Revoke完全ガイド」を先に読んでおくと、DeFiを触る前の「安全対策」が身につきます。
👉 Vol.7:ウォレット接続の"Revoke"完全ガイド — 資産を守るための基本のキ
第1章:流動性提供(LP)とは何か ― おさらい
まず、流動性提供の基本をおさらいしておきましょう。
🔄 DEXが動く仕組み
UniswapやCurveといった分散型取引所(DEX)では、ユーザー同士が直接トークンを交換できます。
でも、「売りたい人」と「買いたい人」がちょうど同じタイミングでいるとは限りません。そこで登場するのが「流動性プール」です。
流動性プールとは、あらかじめ複数のトークンがペアで預けられている「交換用の資金庫」のようなもの。ユーザーはこのプールを相手にスワップ(交換)を行います。
💰 LPの役割と報酬
この流動性プールに資金を預ける人を「流動性提供者(Liquidity Provider=LP)」と呼びます。
LPは、プールにトークンを預けることで、そのプールで発生するスワップ手数料の一部を報酬として受け取れます。
一見すると、「預けておくだけでお金がもらえる」ように見えます。実際、そう説明されることも多い。
でも、話はそう単純ではありません。
💡 DeFiの基本についてもっと知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
第2章:なぜ「損する人」が多いのか
ここからが本題です。
2025年11月、DEXアグリゲーターの1inchが発表したレポートによると、DeFiの流動性提供には深刻な問題があることが明らかになりました。
📊 事実①:資金の83〜95%が「働いていない」
UniswapやCurveなど主要なDeFiプールに預けられている資金のうち、実際にスワップに使われて手数料を生み出しているのは、わずか5〜17%程度。
残りの83〜95%は、プールに入っているだけで何も稼いでいない「遊休資産」になっています。
これは約1,200億ドル(約18兆円)規模の資金が「眠っている」計算になります。
📉 事実②:LPの約50%が損をしている
さらに衝撃的なのは、流動性提供者の約半数が「純損失」を出しているというデータです。
その損失総額は6,000万ドル(約90億円)を超えるとも報告されています。
❓ なぜ「預けているのに損する」のか
主な原因は「インパーマネントロス(変動損失)」です。
流動性プールに預けたトークンの価格が変動すると、単純に持っていた場合と比べて資産価値が目減りすることがあります。これがインパーマネントロスです。
手数料収入:+
インパーマネントロス:−
この差し引きで、マイナスになってしまう人が多いのです。
「預けているだけで増える」というイメージは、残念ながら現実とは異なります。
第3章:なぜこうなってしまうのか ― 構造的な問題
「損する人が多い」のは、個人の判断ミスだけが原因ではありません。DeFiの流動性提供には、構造的な問題があります。
🔒 問題①:資金が「1つのプールにロック」される
従来のDeFiでは、流動性を提供すると、その資金は特定のプールに「ロック」されます。
ETH-USDCのプールに預けたら、その資金はそのペアの取引にしか使われません。他のペアや他のプロトコルでは活用できない。
これが、資金の8割以上が働かない原因の一つです。
⚔️ 問題②:プール同士がTVLを奪い合う
DeFiの世界では、各プロトコルが「TVL(Total Value Locked=預入資産総額)」を競い合っています。
より多くの資金を集めるために高いAPY(年利)を提示し、ユーザーを奪い合う。でも、その高APYは持続可能とは限りません。
プロトコル同士が競争する構造が、資金の分散・非効率を生んでいます。
📉 問題③:小口LPが不利になりやすい
大口の資金を持つプロの運用者は、価格変動に素早く対応してポジションを調整できます。
一方、小口のLPはそこまで頻繁に管理できないことが多い。結果として、価格変動の影響をもろに受け、インパーマネントロスを被りやすくなります。
⚠️ 問題④:「APY表示」のワナ
DeFiプロトコルでよく見かける「APY 50%」「APY 100%」といった数字。これは魅力的に見えますが、注意が必要です。
APYは「その瞬間の利率」であり、将来を保証するものではない
高APYはリスクが高いことの裏返しでもある
インパーマネントロスはAPY表示に含まれていない
見た目の数字と、実際に手元に残るリターンには、大きなギャップがあることを知っておく必要があります。
第4章:変わり始める仕組み ― 「共有流動性」という考え方
こうした構造的な問題に対して、改善を試みる動きが出てきています。
🌊 1inch「Aqua」の提案
2025年11月、DEXアグリゲーターの1inchが「Aqua」という新しいプロトコルを発表しました。
Aquaの特徴は「共有流動性」という考え方です。
従来のDeFiでは、資金をプールに預けると、その資金は1つの戦略にしか使えませんでした。
Aquaでは、資金をウォレットに保持したまま、複数の戦略に同時に活用できる仕組みを目指しています。
🔄 従来型との違い
従来のDeFi
資金をプールにロックする
1つの戦略にしか使えない
プール同士がTVLを奪い合う
Aquaの提案
資金は自分のウォレットに保持
複数の戦略に同時に使える
共有基盤で効率化
例えば、USDC・USDT・ETHを持っている場合、従来なら「どのプールに預けるか」を選ぶ必要がありました。
Aquaの仕組みでは、同じ資金をUSDC⇔ETH、USDT⇔ETH、USDC⇔USDTの複数ペアに同時に活用できる可能性があります。
📅 まだ「これから」の段階
ただし、Aquaは2025年11月時点で開発者向けプレビューが公開された段階です。一般ユーザー向けのインターフェースは2026年Q1(1〜3月頃)にリリース予定とされています。
つまり、今すぐ使える仕組みではありません。
また、新しい仕組みには新しいリスクも伴います。スマートコントラクトのバグや、想定外の挙動が起きる可能性はゼロではありません。
🌐 改善の動きは他にも
Aquaだけでなく、DeFiの資本効率を改善しようとするプロジェクトは他にも出てきています。
「流動性の断片化」という問題は業界全体で認識されており、今後も新しいアプローチが登場する可能性があります。
⚠️ 本記事は特定のプロジェクトへの投資を推奨するものではありません。新しい仕組みにも固有のリスクがあることを理解した上で、情報収集を行ってください。
ここから先は、「じゃあ今、私たちはどう判断すればいいのか」について、より実践的な視点でお伝えします。
まとめ
この記事では、DeFiの流動性提供で「損する人が多い理由」を解説しました。
📌 ポイントの整理
主要DeFiプールの資金の83〜95%は「働いていない」遊休状態
LPの約50%がインパーマネントロス等で損失を出している
資金が1つのプールにロックされる構造が非効率を生んでいる
1inch「Aqua」など、改善を目指す動きは出てきているが、まだ発展途上
高APY表示に惑わされず、実質リターンとリスクを見極めることが重要
DeFiは確かに新しい可能性を持った分野です。でも、「預けるだけで増える」という幻想は捨てたほうがいい。
大切なのは、「儲かりそうだから」ではなく、「仕組みを理解してから判断する」こと。
この記事が、その判断材料の一つになれば幸いです。
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