息子がいなくなった。
息子がいない。
今日は息子にとって、
初めて親と離れて過ごす.
「お泊まり保育」
静かだ。
私は正直、あまり心配していなかった。
私は旅行好きだ。
国内近場が多いが、
年に何度もホテルや温泉へ連れて
行っている。
息子もホテルが大好き。
だから、きっと友達と楽しんでいるだろう。
そう思っていた。
久しぶりに二人きりの夜。
妻をディナーに誘った。
私の街で最後の一件となってしまった百貨店の
最上階にあるイタリアン。
おそらく古くからあるのだろう。
妻は「こんなの久しぶりだね」と喜んでくれた。
確かにそうだ、息子の初めての外泊だ。
少なくとも、息子が生まれてからの5年間、二人きりで夕食を食べることはなかった。
私は料理を作るのが大好きだ。
外で食べるときは、これはどうやって作るのだろう?と思うようなものを食べたい。
その店の料理は、まさにそんな味だった。
美味しい。
妻は大満足だった様子。


なんの出汁か想像つかない奥深さ。
ベッドに入ると、妻がぽつりと言った。
「寂しい……」
「えっ!? 毎日『うるさい!』『もう嫌になるっ』って言ってるじゃん。」
「そうだけど……そう言ってしまう自分も嫌なの。」
妻は本当によく息子の相手をしている。リードもうまい。
もちろん我慢がならないときは、
息子に怒りをぶつけている、
文句も言っている
それでも私は構わないと思っている。
息子は、
理不尽だと感じることもあるだろう。
「なんでそんなこと言うの?」と
思う日だってあるだろう。
お母さんは僕のこと嫌ってるのではないか?
と思う日もあるだろう。
親だって人間なのだから、
そういうこともあることを
感覚として理解できるようになってほしい。
私は、完璧な温室のような環境で育てる必要は
ないと思っている。
むしろこの程度ならいいくらいだ。
そんな思いを妻に伝えた。
すると妻が言った。
「いつもありがとう。」
少し間があって、妻が言った。
「泣いてないかな。」
頭から離れないらしい。
「大丈夫だよ。今日は千潟遊びで疲れてるはずだから、
今頃はグッスリ寝てるよ。
いろいろ考えずに、もう寝よう。」
親としての年齢は、子どもの年齢で決まると言う。
息子が五歳なら、私たちは親として五歳。
子どもだけでなく、親もまた成長の途中なのだと感じた夜だった。
頑張れ、妻よ。
(おわり)
