#013【番外編】300万のソファを高いと思わなくなる
12月から1月にかけて、渋谷で『ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ』が開催されていました。名作と呼ばれる椅子には、人を惹きつける不思議な力があるのだと感じます。
設計者として駆け出しの頃、苦手だなと感じていたのが、家に組み込む「造作家具」でした。 漫画家と歌手の方の家の設計補助がたまたま重なったとき、先輩が描いた家具図面を正しく読み取ることができず、ただ悔しかったのを覚えています。
そんな時、父が倒れたことをきっかけに実家へ戻ることになりました。
「この際、苦手な造作家具を徹底的に知ってやろう」
と考え、半年間、職業訓練校で木工の基本を学びました。
最初は家具職人になろうとも考えたのですが、縁あって家具工場の設計担当として働くことになりました。
そこで手元に届くのは、有名な設計事務所の図面です。 当時の私には、強度が足りないように見えたり、どう形にすればいいのか見当さえつかないものもありました。
「構造的に成立させるのが自分たちの仕事」
工場長に教わりながら、職人が実際に作れる「施工図」へと落とし込む日々。 けれど、家具の仕組みが分かってくるほどに、人の図面を見ては「自分ならこうするのに」という悔しさが募るようになりました。 作り方を知った今なら、もっと自由に、自分が納得できる設計ができる。
そう考え、設計の仕事に戻ることにしました。
300万のソファが「安く」見える理由
仕事柄、東京、名古屋、大阪などへ行く機会があるので、時間があればインテリアや水回りなどの設備関係の、なるべく品揃えが豊富なショールームへ立ち寄るようにしています。同じブランドでも地域によってラインナップが違うのを見るのが何よりの楽しみです。
東京の青山は、世界的な有名家具ブランドが集中していて、一度にたくさん見ることができる場所です。もし青山へ行く機会があれば、ぜひショールームを覗いてみてください。
ここから、私が青山で立ち寄るブランドのご紹介です。
Cassina ixc.(カッシーナ・イクスシー)|イタリアモダンの頂点。洗練された美意識と圧倒的な存在感
カッシーナのような空間で、300万円を超えるソファでも気後れせず堂々と座ります。むしろ「この内容なら安いかもしれない」とさえ思うことがあります。
画像は憧れのシェーズロング。ル・コルビジェ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ぺリアンの共同作。溜息出ます。
不朽の名作『LC4』を筆頭に、時代を超えて愛される「構成の美しさ」を肌で感じられる場所です。
Ritzwell(リッツウェル)|日本の職人技。木の温もりと端正な造形が共存
単なる「木製の家具」ではなく、人の体温に寄り添うような端正なディテールと、静かな気品が漂っています。
カッシーナのショールームのすぐ近くなので、セットで見て回ります。
木目が美しい。細部のディテールの美しさにほれぼれします。
ACTUS(アクタス)|ライフスタイルの羅針盤。北欧の名作から最新のトレンドまで
今の暮らしにどう家具を馴染ませるかのヒントが詰まった安心の定番です。
ACTUS青山店のおしゃれな雰囲気が好きで、行くと気分が上がります。インテリアのスタイリングが好きなショールーム。アクタスは20代前半に通い詰めたショールーム。
Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)|デニッシュ・モダンの真髄
ハンス・ウェグナーの椅子たちが放つ、100年使い続けられる「構造の正解」を再確認させてくれます。
「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」
椅子研究家 織田憲嗣さんのコレクション。「美しく丁寧に暮らす」というお考えで、半世紀に渡り集められた8千点にも及ぶ20世紀の家具と日用品のコレクション。すごく行きたかったのに行けなかった。次、機会があったら絶対に行きたい!です!
BoConcept(ボーコンセプト)|都会的で洗練されたデンマークデザイン
単に見た目が美しいだけでなく、暮らしの動線や間取りに合わせてサイズや素材を細かくカスタマイズできる「柔軟な機能美」が魅力です。
限られた空間をいかに豊かに、自分らしく構成するかという現代の住まいへ、解決策を提示してくれます。
Louis Poulsen(ルイスポールセン)|「光をデザインする」という哲学
「光をデザインする」という揺るぎない哲学を持つ、デンマークを代表する照明ブランド。ポール・ヘニングセンが手掛けた名作『PHランプ』をはじめ、計算し尽くされたシェードが作り出す不快感のない柔らかな光と影のグラデーションは、空間の質を一瞬で変えてしまう、まさに「光の魔法」と呼ぶにふさわしい存在です。
大好きなアーティチョークを見るために行きます。いろいろなサイズと値段と美しさにため息つきながら見ています。
formax(エスティックフォルマックス) |「座り心地」への誠実な回答。
「座り心地」を徹底的に追求し続ける、日本発のソファブランド。ものづくりの現場を知る目で見ても、カバーリングの縫製の美しさや内部構造の丁寧さは秀逸です。
日本の住空間に馴染むサイズ感と、最高級の素材を使いながらも長く愛用できる耐久性を兼ね備えた、誠実なものづくりの精神が宿っています。

一日使ってゆっくりと楽しむのもお薦めです
どれほど高価な家具を前にしても、気後れしないのは、作り手がどれほどの手間をかけ、どんな思いでその形に辿り着いたのかを、少しだけ知っているから。
家具の座り心地やサイズ感は、実際に体感してみないとわからないものです。 もし機会があれば、ぜひ気負わずにショールームへ足を運んで、実際に座ってみてください。
自分の体で感じた納得感こそが、家と一緒に長く使い続けられる「資産」を選ぶための、唯一の基準になるはずです。
今は画面越しにたくさんの情報が入ってきますが、実際の色やサイズ感、そして座り心地は触れてみないとわかりません。
ただ、実際に家具に触れられるショールームへ行く機会は、そう簡単には作れない場合あると思います。だからこそ、足を運べた時には、画面越しでは絶対に伝わらないものを確かめてほしいです。
図面の前に、まずは暮らしの風景を描く——
そんな設計の入り口を一緒にのぞいてみませんか?
次回の記事を読むと、あなたの家づくりがもっと心地よく、もっと自分らしいものになるヒントが見つかります。お楽しみに!
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