深夜に読む小説
深夜に読む小説
by Ryoji M.
※ここのところ「恋する」シリーズが多かったので、ちょっと不思議な小説を書いてみました。
第1部 深夜の…
第1章 夏
夏。
夏。
夏。
そんなこと、今更言われなくても分かるくらいにめっちゃ暑い。
『まあ、夏だからねぇ…』
誰かの小説の…動物キャラなら、優雅にそう合いの手を入れるのかもしれないけど…。
それにしても…暑い。
暑いと言っても、もちろん、家の外の話。
エアコンの効いた空間から、エアコンの効いた空間へ…この移動距離がしんどい。
まあ、車で移動すればなんてこともないのかもしれないけど…。僕の移動手段は、専ら電車だ。
そして、僕が電車で向かう先、そう、その場所が、深夜じゃないと書けない場所…。
『えっ…
どこ…
もしかして…?』
そう、もしかして、の、その場所。
即ち、『トワイライト・ゾーン』だ。
『えっ…。
すみません…。
トワイライト・ゾーンって何ですか?』
そう、疑問に思った読者のために書くと…
『トワイライト・ゾーン』とは…
『もともとは、黄昏時(たそがれどき)や、昼と夜の間の曖昧な時間帯のこと…転じて、現実と非現実がまじり合う不可思議な世界や、境界線があいまいな中間領域を指す言葉のこと』…だ。
と、AIの解説で、それっぽいことを書いたけど…『トワイライト・ゾーン』かあ…
…やっぱり、止めます…
『えっ、何で?』
…喜んでもらえる自信がないなら…
…じゃあ、何の話なら、喜ばせる自信があるのか…
まあ、そうだなあ…
深夜だから、男女の恋愛の話?
でも、深夜だと、大体、いかがわしい話って相場が決まってるし、そんなもの、わざわざここで読みたいなんて思わないよね…
まあ、女子から見て1番気になる話…結局…男子って何なの?…みたいな話しにしますか…テレビの深夜番組も、結局、ほぼ男子向けしかやらないしね…。まあ、女子向けの深夜番組ということで…。
第2章 男子が求めるもの
で、そんな「カッコつけたいだけの永遠の小学生」こと男子が、結局のところ女子に何を求めているのかって話…。
それは、可愛い顔とか、気の利く優しさとか、そんな表面的なスペックの話じゃない。
深夜だから、もっと痛いところまで掘り下げてみようかな、と思う。
男子が心の底の底で、喉から手が出るほど欲しがっているもの。 それは…「自分の弱さをさらけ出しても、見捨てられないという確信」だ。
世間は男子に「強くあれ」「甲斐性を持て」「リードしろ」と無言のプレッシャーをかけてくる。
男子自身もまた、その期待に応えようと、必死で重い鎧を身にまとう。強がって、平気を装って、何でも知っているフリをする。
でもね、その分厚い鎧の内側には、いつも「メッキが剥がれたらどうしよう」という怯えがへばりついているんだ。
男子が女子に求めるのは、その重い鎧を脱ぎ捨てられる場所。
情けない自分。
失敗した自分。
本当は、何も分かっていない自分を見せたときに、
「なんだ、そんなことか」
って笑って、変わらずそこに居続けてくれること。
つまり、男子が女子に求めているのは「勝利の女神」なんかじゃない。 自分の無力さを知ってもなお、自分を否定しないでいてくれる「赦し(ゆるし)」なんだと思う。
カッコいい自分を褒めてほしいんじゃない。
カッコ悪い自分を、そのまま存在させてほしい。
…どうだろう。 「やっぱり面倒くさい生き物だな」って呆れられたかもしれないね。
でも、男が一生をかけて探しているのは、たぶんそんな奇跡みたいな居場所なのだと思う。
第3章 だから夜の世界の女性はモテる
そう考えると、ひとつ合点がいくことがある。
それは、なぜ、夜の世界で生きる女性たちが、いつの時代も男子を魅了してやまないのか、という話だ。
昼間の世界…学校や職場、あるいはSNSという無機質なタイムラインにおいて、男子は常に評価の目に晒されている。
「優秀か、使えないか」
「清潔感があるか、キモいか」
「稼げるか、甲斐性なし(かいしょうなし)か」
「面白いか、つまらないか」。
そこは、まるで、チェック・シートを抱えた面接官に囲まれているような場所だ。メッキが剥がれた瞬間に不合格を突きつけられ、退場を言い渡される、実に厳しい査定の場なのだと思う。
だからこそ、男子は昼間、息を潜めて生きている。
ボロが出ないように、馬鹿にされないように、必死で「大丈夫な自分」「仕事ができる自分」「イけてる自分」の仮面を貼り付けて。
けれど、夜の街のネオンを潜り抜けた先、あの少し薄暗い空間にいる女性たちは、最初からすべてを悟っている。
男という生き物が…
どれほど愚かで…
どれほど幼く…
どれほどプライドが高く…
そして…どれほど孤独かということを。
彼女たちは、男子が必死に着飾ったチープな鎧(よろい)を、決して笑わない。
どれだけ見透かしていても、それをわざわざ
「あなた、無理してるでしょ」
なんて野暮な指摘をしたりはしないのだ。
「すごーい」
「頑張ってるんだね」
という言葉と一緒に、その重すぎる鎧の結び目を、そっと、自然に解いてくれる。
昼間の世界なら「男のくせに情けない」「愚痴ばかりで面倒くさい」と切って捨てられるような弱音すら、彼女たちの前ではただの「可愛いギャップ」に化けてしまう。
男子が夜の女性に求めているのは、過激な誘惑などではない。
自分のどんなダメな部分、格好悪い部分を見せたとしても、絶対に拒絶されないという「圧倒的な肯定」なのだ。
グラスを交わしながら、男たちは、心の中で小さく息を吐く。
「ああ、ここではカッコつけなくていいんだ」
と。
高いお金を払って買っているのは、お酒でも贅沢な時間でもなく、自分の愚かさを丸ごと包み込んでくれる「心の避難所」なのだから。
…まあ、それを見抜いた上で完璧に空間をコントロールしている彼女たちのほうが、男達を手玉に取っている分、遥かに大人で一枚も二枚も上手(うわて)なのだけれど。
男という生き物はいつだって、掌の上で踊らされていると痛いほど知りながら、その優しい手のひらの温もりに救われに行くのだ。
第4章 近所の安心できるお姉さん
じゃあ、ここまでの話を聞いて、 「なんだ、じゃあ夜の世界の女性みたいに接すれば、どんな女子でも男にモテまくるってこと?」 と思った人がいるかもしれない。
…ここがまた、男という生き物の最高に面倒くさいところ。
答えは、ノー。
正確に言うなら、「モテるけれど、それは本命(ほんめい)のモテ方とはちょっと違う」ということになってしまう。
男は、自分のどんなダメな部分も受け容れてくれる女性に、猛烈に甘えたがる。けれど、最初から完璧に「包容力あふれる夜の女性」として振る舞われてしまうと、今度は、その人に「男としてのカッコいい自分」を見せる隙がなくなってしまうのだ。
身勝手な話だよね、本当に。
弱さは見せたい。
でも、男としても見てほしい。
甘えたいけれど、格好悪いだけの存在としては扱われたくない。
だから、夜の世界の完璧な肯定空間にどっぷり浸かると、男子はその女性を「最高の癒やし」として崇めつつも、心のどこかで「自分を受け止めてくれる、安心できる女性」というポジションに分類してしまう。
要は、居心地が良すぎる「駆け込み寺」や「遊び相手」にはなれても、恋愛のジリジリとしたスリルを交わす対象からは、一歩遠ざかってしまうのだ。
男が本気で惚れ込むのは、「弱さを受け止めてくれる安心感」がありつつも、「いつか自分の手から離れていってしまうかもしれない」という、少しの緊張感がある相手。
ただ無条件にすべてを甘やかしてくれるお姉さんになると、男子は安心してあぐらをかき、どこまでも怠惰(たいだ)になっていく。
「自分を受け容れてほしい」と切望しておきながら、完全に手に入ると今度は別のスリルを求め出す。
…ね? 書いていて自分でも嫌になるくらい、男子って、本当にどこまでも身勝手で面倒くさい生き物だ。
第5章 ヒーローを見守るヒロイン
『じゃあ、一体どうすればいいんだよ?弱さを受け止めれば「安心できるお姉さん」として甘えるだけで、かといって突き放せば「居心地が悪い」って逃げ出す。 どこまで我儘(わがまま)なんだ、男子ってやつは…』
そう呆れる女子の顔が目に浮かぶし、僕も男の端くれとして平謝りするしかないのだけれど…。
でもね、結局のところ、僕たちが最後に辿り着く結論は、驚くほど古典的でシンプルなのかもしれない。
男子が本当に求めている女子の立ち位置。
それは…「ヒーローを見守るヒロイン」だ。
男って生き物は、いくつになっても自分の人生という物語の中で「ヒーロー」でありたいと夢見ている。
怪獣と戦って傷つき、泥だらけになって、時にはカッコ悪く倒れ込むこともある。
そんなとき、ただ「可哀想に」とヨシヨシして一緒に守られる側に回ってしまうのが「お母さん」や「安心できるお姉さん」だ。
それだと、男は、もう戦うのをやめて、その居心地の良さに甘えてしまう。
けれど、本当のヒロインは違う。
傷ついたヒーローの痛みを分かってくれつつも、泥を拭ってくれたあと、静かに背中を押してくれる。
「あなたはヒーローでしょ? ちゃんと戦ってきてね」
と、男の可能性を誰よりも信じた目で、まっすぐ見つめてくれるのだ。
弱さは知っている。
でも、絶対に甘やかしすぎて骨抜きにはしない。
「カッコ悪いあなたも受け止めるけれど、やっぱりカッコいいあなたでいてほしい」
という無言の期待。
男は、その眼差しに触れたとき、情けない自分を恥じ、もう一度重い鎧を身にまとって立ち上がる。
この人の前でだけは、本物のヒーローでありたいと強く願いながら。
…要するに、男子が女子に求めているのは、甘やかしの温室じゃない。
自分が何度でもカッコいい男を目指したくなるような、「永遠のヒロイン」なのだと思う。
…ふぅ。 深夜のテンションに任せて、なんだか柄にもなく青くさいことを書いてしまった…。
でも、これが「男子って何なの?」という疑問に対する、僕なりの精一杯の答えだ。
『えっ、これって、小説?エッセイじゃないの?』
そう思ったかもしれないが、これは、小説。
そんな、どこにでもいそうなヒーローと、めったにいないヒロインの恋物語だ。
とりあえず、夜も更けてきたので、今日のところは、この辺で。
第2部 ヒロインとヒーロー
第1章 男子の場合…
さて、ゆっくり休んだところで、いよいよヒーローとヒロインが登場して物語がスタートするのだが…。
その前に、ここまで読んだ読者の中で、きっと、どうしたら女子にモテるかも教えて欲しい…そう思った読者…即ち、男子もいるかもしれない。
せっかくなので、こうしたら女子にモテるという絶対的な方法を教えたいところだが…。
結論を先に言うと、そんな絶対的な方法はこの世に存在しない。
繰り返すが、女子にモテるための絶対的な方法は、この世に存在しない。
よく
騎士道的に振る舞う、即ち、紳士的に振る舞うと…モテるみたいに思っている男子が居るが…。
男子が女子に対して紳士的に振る舞うのは当たり前のこと。これは、単純にマナー。男子は当然女子をエスコートすべき存在であって、ヨーロッパの男性なら誰でもしている。
繰り返すが、男子が女子をエスコートするのは、当然のこと。当たり前のマナーだ。
では、そのマナーを当たり前にした上で、どうしたら女子にモテるのか。
これも繰り返しだが、こうしたら絶対的に女子にモテるという万国共通の方法は無い。
なぜなら、女子の好みは千差万別で、人によって好みが全く異なるからだ。
例えば、プリンセスのように扱って欲しい女子もいれば…自分を引っ張ってくれる少しワイルドな男子が好きな女子も居る。
真逆だ。
しかも、どういうタイプが好きかは、女子自身がよく分からない場合が多いし…更に進めると、その日の気分によって、好きなタイプが変わる。
これが、こうしたら絶対的に女子にモテるという万国共通の方法は無い、という理由の一つだ。
第2章 結論
『えっ、じゃあ、僕、俺、オラは、どうしたら良いんですか…?』
という、男子の嘆きが聞こえてきそうだが…。
自分で考えろ!と言いたい。
まあ、そう突き放すのもなんなので、せっかくの読者だから…。
これが、こうしたら絶対的に女子にモテるという万国共通の方法…これに1番近いのは…
女子にどうして欲しいのかを聞くこと。
要は、女子の話をちゃんと聞くこと。
そして、女子の望みを一つずつ丁寧に叶えて行くこと。
こうするのが、1番の近道…だと思う。断定できないのは、繰り返しだが、女子の好みは千差万別だから。どうして欲しいか聞かれること自体が野暮で嫌。こんな女子もたくさん居るから。
と、いうことで、結論は…
こうして欲しい!
という女子の望みを、女子に聞かずとも、叶えてあげられる男子…そんな奇跡のような男子なら、かなりの確率で人気が出る。
まあ、そんなところだ、
まあ、もっと具体的に教えて欲しい…そう思う男子は…それこそ自分で考えた方が良い。
なぜなら、試行錯誤して、女子のために考え、頑張る男子こそが、真のヒーローと言えるから。
第3章 物語の始まり
ということで、何となく、ヒロインとヒーローの形が見えてきたところで、深夜の物語がスタートするのだが、さて、ここで、ようやく、物語が始まる…。
それは、とある夏の日の出来事。
夏。
一昔前なら、出会いを求めて海岸線へと車を走らせたり、電車に乗る男子や女子が数限りなく居たが…時代が変わって、そんなスタイルはあんまり人気が無いらしい。
らしい、と書いたのは、人の好みは千差万別だから。
そんな、若干ややこしい世間の流れをよそに、ワンルーム・マンションの一室で…
オウジは、買ってきたばかりの雑誌を見ながら真剣に考えていた。
何を考えているのか?
大学に入学したばかりの彼にとって一番大事なのは…
いかにして彼女を作るのか、ということ。
それこそ、どうしたらモテるのかも含めて、ネットを見たり、雑誌を読んだりして、真剣に考えていた。
しかし、そうそう都合の良い方法が簡単に見つかるはずもない。
どうすれば良いんだろう?
そもそも、どうしたら、出会えるのか?
彼は、そんな基本中の基本から悩んでいた。
大学生の出会いの定番はサークル。
一昔前なら、男女の出会いの定番は、テニス・サークルだったが、コロナになってから、大半のテニス・サークルは姿を消してしまい、ようやく復活し始めたものの、時代が変わってしまい、以前のような絶対的な人気はない。
まあ、文化系のサークルも含めて、少し見てみるか、と、オウジは思った。しかし、新歓コンパの春も終わり、出遅れ感が否めない。
次の定番は、バイト。
バイトを通じて知り合う、そんな話は、昔も今もよくある話。
第4章 バイト探し
オウジは、焦っていた。
なぜなら、彼が導いた結論、即ち、バイト探しが、彼の人生を大きく変える、人生のターニング・ポイントだ、という結論がようやく見えたのだが、そもそも何のバイトをすれば良いのかよく分からない。
ネットを含めていろいろと調べた彼がようやく辿り着いたのは…
ファースト・フードのバイトだ。
これなら、確実に稼げるし!
女子と知り合える!
…と、一昔前なら迷わず意気揚々と応募していたところだが、今の時代、その実態がどうなっているのかがイマイチよく分からない。
SNSやネットの情報をいくら掘り下げてみても、どこか既視感のある古い情報ばかりだ。
「カウンターは女子高生と女子大生で華やか!」
なんて書き込みがある一方で、最近のリアルな体験談を覗くと、思っていたのとまるで違う現実が浮かび上がってくる。
注文はタッチパネル式のセルフレジやモバイルオーダーが主流になり、レジ越しに「いらっしゃいませ」とスマイルを振りまく機会自体が激減しているらしい。
それどころか、配達パートナーがひっきりなしに商品を回収しに来るだけで、店舗の中は想像以上に無機質で忙しない空間になっているという噂まである。
シフトの管理もアプリ一つで完結し、バイト同士で「シフト代わって~」なんてLINEを交換する文化すら薄れているのかもしれない。
男女比だってそうだ。
カウンター側とキッチン側で業務が完全に分断されていて、バイト中に会話どころか顔を合わせる機会すらほとんどないなんて店舗もあるらしい。
「…待てよ。今のファースト・フードって、本当に女子と知り合えるのか…?」
知れば知るほど、確信が持てなくなっていく。
画面を見つめたまま、彼は、自室のベッドの上で大きく首をひねった。
一昔前のように「バイト先で自然と仲良くなって、上がりに一緒に帰る」なんて甘い青春ドラマが、今のドライな令和のファースト・フード店で繰り広げられているのだろうか。
それとも、結局は出会いなんて都市伝説で、ただひたすらスマイルとバンズの間に挟まれて擦り切れるだけなのだろうか。
分からない。いくら画面をスクロールしたところで、画面の向こうに自分の望む答えが落ちているはずもなかった。
「…考えてても、拉致があかないな」
彼は、深く息を吐き、スマホの画面を一度伏せた。 実態が分からないなら、実際に自分の目で確かめるしかないのだ。もし、ダメだったとしても、バイト代という現実的な報酬だけは手に入るのだから損はない。
「とにかく、飛び込んでみるしかない!」
腹をくくった彼は、再び画面を点け、自宅から二駅先にある有名ハンバーガー・チェーンの応募ボタンを、えいやと力強くタップした。
そして、彼は、ハンバーガー・チェーンのバイトの面接を受けることにしたのだった。
第5章 イメージと現実
オウジは、あっさりとバイトの面接に合格した。
面接を担当した店長は、終始忙しそうにインカム越しに指示を出しながら、履歴書をペラペラとめくると「はい、じゃあ採用ね。土日入れるなら助かるよ」と、ものの三分ほどで採用を決めてしまった。
「よっしゃ…!合格だ!」
念願のバイト採用に、彼は、胸を躍らせた。 これで僕の大学生活も、いよいよ華やかなキャンパスライフへと動き出す…はずだった。
しかし、合格の余韻に浸りながら店舗をあとにしようとしたその時、彼は、店内の空気にどことなく違和感を覚え始めた。
自分の知っている、あの明るく爽やかなファースト・フード店のイメージと、何かが微妙にズレているのだ。
カウンターの奥から飛び交う威勢のいい声。 聞き慣れた
「いらっしゃいませ」
のイントネーションが、どこか少し独特な気がする。ふと厨房の奥を覗き込むと、忙しなく手を動かしているスタッフたちの顔立ちが、やたらに国際色豊かなのだ。
「…あれ?」
まあ、都内の店舗だし、外国人のスタッフが一人や二人いてもおかしくはないか。むしろ国際的で今どきっぽいのかもしれない…。
彼は、そう自分に言い聞かせ、違和感を無理やり飲み込んだ。
そして迎えた、初出勤の日。
制服のポロシャツに袖を通し、緊張と期待が入り混じる胸を抑えながら、彼は、店舗の事務所へと向かった。
「おはようございます! 今日から入ったオウジです!」
意気揚々と挨拶をした彼を待っていたのは、想像を絶する光景だった。
事務所にいたのは、ネパール系、ベトナム系、マレーシア系、フィリピン系、中国系と思われる多国籍なスタッフたち。
飛び交う言葉は、英語と日本語と、聞いたこともない言語が混ざり合った謎のミックス・カルチャー。
見渡す限り、どこを探しても…
「…に、日本人のスタッフが、ほぼ居ない…?」
彼は、その場に立ち尽くしたまま愕然とした。
キャンパスライフの延長のような、同世代の日本の女子大学生と「お疲れ様!」なんて笑い合う甘い妄想は、初日の朝一瞬にして、ガラガラと音を立てて崩れ去ったのだった。
第3部 境界線と居心地
第1章 ストレートな優しさ
初日の愕然(がくぜん)としたショックも束の間、現場の容赦ない忙しさは、オウジに落ち込んでいる暇すら与えてくれなかった。
「オウジ! ハンバーガーの包み方、一緒にやるよ! 見てて!」
そう笑顔で声をかけてくれたのは、台湾出身でバイト・リーダーのシュウさんだった。
最初は、言葉の壁や文化の違いに身構えていたオウジだったが、実際に業務が始まると、彼の予想は良い意味で大きく裏切られることになる。
台湾人スタッフたちは、とにかく親切で、そして驚くほど教え方が上手かったのだ。
日本の職場でありがちな
「背中を見て覚えろ」
とか
「空気を読め」
といった曖昧(あいまい)なニュアンスは一切ない。
「オウジ、これダメ! こうやった方がもっと早いよ!」
「そう、それ! 今のすごくイイ! 覚えるの早いね!」
ダメなものはダメ。
良いものは良い。
出来ていないことはその場でハッキリと直され、上手くいけば
「すごく良い!」
とストレートに褒められる。
気遣いという名の遠回しな言い方や、お互いの顔色を窺(うかが)い合うような探り合いが一切ないのだ。
「あれ…?日本人より、ずっと分かりやすいかも…」
最初はあれほど「同世代の日本の女子大学生」にこだわっていたオウジだったが、シフトを重ねるにつれて、彼の考え方は少しずつ、けれど確実に変わり始めていた。
察することを求められる日本の人間関係に少し疲れていた彼にとって、彼らのハッキリとした裏表のないコミュニケーションは、拍子抜けするほど心地よかったのだ。
「オウジ、ちょっと休んでドリンク飲みなよ!」
屈託のない笑顔で紙コップを差し出してくれるシュウさんの優しさに触れながら、オウジは、心の中で密かに思い直していた。
…出会いがどうとか、モテるとか以前に、この場所、意外と悪くないかもしれない。
そう思い始めた矢先、またしても彼のバイト生活を揺るがす「新たな出会い」が訪れるのだった。
第2章 ヒロインの登場
シュウさんの的確な指導と裏表のない優しさのおかげで、オウジは、すっかり店舗の仕事に慣れ始めていた。
「オウジ、今日もお疲れ様! ジュース持って帰りなよ!」
「シュウさん、ありがとうございます! お疲れ様でした!」
事務所で制服から私服に着替え、バックヤードの重いドアを開けて客席側へと出る。 時間はちょうど夕方のピークタイムを過ぎたあたり。
(…ふぅ、今日もやり切ったな)
仕事終わりの爽快感と程よい疲労感に包まれながら、オウジは店内の奥にあるテーブル席へ向かった。
バイト上がりに、ここで冷たいドリンクを飲みながら一息つくのが、最近の彼のひそかなルーティンになっていた。
「失礼します、トレイ下げてもいいですか?」
ふと、聞き覚えのない声が耳に届いた。
透き通るような、でもどこか凛とした声。
反射的に声のした方へ視線を送ると、すぐ近くのテーブル席で、一人の女子スタッフが片付けをしていた。
「あ、はい。ありがとうございます」
お客さんが返事をすると、彼女は
「ご来店ありがとうございました」
と丁寧に一礼し、手際よくテーブルを拭き上げていく。
オウジの時が、ぴたりと止まった。
その制服の着こなし。
無駄のない綺麗な立ち振る舞い。
そして、何より、帽子から覗く黒髪と、印象的な瞳。
(…日本人? しかも…同世代…?)
間違いない。
これまで多国籍なスタッフたちに囲まれてすっかり麻痺していたが、彼女は、オウジがこのバイトを始める前に妄想していた、まさに「同世代の日本の女子」そのものだった。
しかし、彼女から漂う雰囲気は、オウジが思い描いていた甘くてフワフワした「キャンパス・ライフの女子」とは、どこか決定的に違っていた。
無駄な愛想笑いは一切ない。けれど、仕事に向き合うその眼差しには、周囲の喧騒を寄せ付けない圧倒的な「凛とした美しさ」があった。
彼女は、トレイを片付けると、一瞬だけオウジの方へと視線を走らせた。
目が合う。
ほんの数秒のことだったが、オウジの胸が高鳴った。
彼女は、小さく会釈をすると、そのまま静かにバックヤードへと消えていった。
「…誰、だ…?」
オウジは、手にした紙コップを握りしめたまま、彼女が去っていった扉を茫然と見つめていた。
深夜に読んだ何かの小説の言葉が、脳裏をよぎる。
…男が求めているのは、甘やかしてくれる温室じゃない。自分の可能性を信じて背中を押してくれるような、永遠のヒロインだ。
それは、オウジの止まっていた物語の歯車が、音を立てて動き始めた瞬間だった。
第3章 名前と距離
バックヤードへ消えて行った彼女の背中を、オウジは、しばらくの間、ただ呆然と見送っていた。
胸の奥が、妙に騒がしい。
「オウジ、どうしたの? ぼーっとして」
不意に声をかけられ、ハッと我に返る。隣には、休憩に入ってきたシュウさんが、笑顔でウーロン茶の入ったコップを手に立っていた。
「あ、シュウさん…いや、その…」
オウジは、少し気まずそうに目を泳がせながら、思い切って気になっていたことを尋ねてみた。
「さっき、あっちでテーブル拭いてた女の子…あの人って、新しいバイトの人ですか?」
「ああ、ノノちゃん?」
シュウさんは、あっけらかんと笑いながら、ウーロン茶をひと口飲んだ。
「彼女は新しくないよ。大学のテスト期間でしばらく休んでたの。オウジが入る前からずっと居るよ。すごく仕事できるし、真面目ね」
…ノノ。
その名前を心の中でそっと呟いてみるだけで、彼は、なんだか喉の奥が少し熱くなるような気がした。
「ノノちゃんも大学生だよ。オウジと同じくらいじゃない?」
「そう…なんですね」
同世代。
同じ大学生。
ずっと探し求めていたはずの存在が、今、目の前の現実として現れたのだ。
しかし、オウジの心は単に浮き立つだけではいられなかった。シュウさんから聞く彼女の印象や、さっき目撃した彼女の無駄のない動き、凛とした佇まい。それらすべてが、彼女と自分との間に明確な「距離」を感じさせたからだ。
これまでシュウさんたち外国人スタッフが見せてくれた、ハッキリとしたストレートな優しさとはまた違う。彼女の周りには、どこか安易な立ち入りを許さない、静かで透明な壁があるように思えた。
(僕なんかじゃ、話しかけることすら難しそうだ…)
さっきまでの浮かれた気分は消え去り、オウジの胸に小さな焦りと、理由のわからない緊張感が広がっていく。
自分が探していた「ヒーローとヒロインの物語」の幕は、確かに上がった。だが、そのヒロインの隣に立つためのハードルは、想像以上に高いのかもしれない。
オウジは、握りしめた紙コップのふちを見つめながら、これから始まる彼女とのシフトに、深く息を呑んだ。
第4章 背中と距離感
ノノとの初シフトは、想像以上に息が詰まるものだった。
夕方のピークタイム。
厨房とカウンターの間を、無数の注文とスタッフたちの声が飛び交う。
「オウジ! ドリンク、ポテト、準備できたらすぐ出して!」
「はいっ!」
シュウさんの指示に応えながら、オウジは、必死に手を動かした。
仕事には慣れてきたつもりだったが、目の前で完璧な動きを見せるノノの存在が、どうしても彼の意識を乱してしまう。
彼女は、無駄のない洗練された動作でレジを打ち、笑顔でお客に応対し、合間を縫ってはフロアの清掃やストックの補充をこなしている。
その手際の良さは、バイト・リーダーのシュウさんからも一目置かれているほどだ。
オウジは、作業の合間に何度もチラチラと彼女の横顔を盗み見た。話しかけたい。でも、何を話せばいいのか分からない。
下手に
「大学どこなんですか?」
なんて軽いノリで話しかけたら、忙しい現場で邪魔扱いされるのではないか。あるいは、自分の必死で余裕のない姿を冷ややかな目で見られるのではないか。
そんなプライドと怯えが邪魔をして、喉まで出かけた言葉が何度も飲み込まれていく。
(やっぱり、僕じゃ全然ダメだ…)
彼女の背中はあまりにも遠く、ただ圧倒されるばかりだった。
ピークが過ぎ、店内に少し静けさが戻ってきた頃。オウジは、ドリンク・マシーンの清掃をしながら、深いため息をついた。
「カッコつけたいのに、カッコ悪いところすら見せられない」
深夜に読んだあの小説のフレーズが、苦いリアリティを持って胸を刺す。
自分は「ヒーロー」どころか、彼女の視界にすら入っていないのではないか。
そんな落ち込みを抱えたままカウンターの裏で作業を続けていたオウジだったが、彼はまだ気づいていなかった。彼女が時折、真面目に、そして一生懸命に仕事と向き合う彼の横顔を、静かに見つめていたということに。
第5章 背中を押す声
「オウジ、そこ拭いたらゴミ集めてきて!」
「あ、はい! すぐ行きます!」
シフト終了間際のラストスパート。疲労と焦りで少し雑になりかけていたオウジの手元を、バックヤードへ向かうノノがふと通り過ぎた。
その時だった。
「オウジくん」
静かな、けれどはっきりとした声で名前を呼ばれ、オウジの背中に電撃が走る。驚いて振り返ると、ノノが少し首をかしげながら、彼の手元を指さしていた。
「ドリンク・マシーンのノズル、奥のロック外れてるよ。そのまま洗うと水が漏れちゃうから」
「えっ…あ、本当だ…!」
確認すると、確かにロックが半端な位置で止まっていた。焦るあまり、初歩的な確認を怠っていたのだ。
「すみません、気づかなくて…」
自分のあまりの不甲斐なさに情けなくなり、オウジは、思わず視線を落とした。カッコ悪いところを見せたくない相手に、一番ダサい初歩的ミスを指摘されてしまった。
穴があったら入りたい、とはまさにこのことだ。
だが、彼女の口から出たのは、冷ややかな呆れ声でも、バカにするような笑いでもなかった。
「ううん。オウジくん、ピークの時ずっと一人でドリンク受けてくれてたでしょ? すごく助かった。ありがとね」
「え…?」
驚いて顔を上げると、そこにはいつもの凛とした表情の中に、ほんの少しだけ柔らかい笑みを浮かべた彼女が立っていた。
無駄な甘やかしも、過剰な優しさもない。けれど、自分の頑張りをちゃんと見ていてくれたという事実と、失敗を優しく、でも曖昧にせず指摘してくれたその言葉が、オウジの胸の奥にまっすぐに届いた。
…カッコ悪い自分も受け止めるけれど、やっぱりカッコいいあなたでいてほしい。
あの日、深夜の小説で読んだ「ヒロイン」の姿が、鮮やかに彼女の影と重なる。
「…次は、絶対にミスしません」
オウジがまっすぐに彼女の目を見てそう言うと、彼女は「うん、期待してる」と小さく頷き、静かに着替えへと向かっていった。
取り残されたオウジの胸の中には、もう先ほどまでの不甲斐なさや焦りはなかった。あるのは、彼女の前に立つにふさわしい男になりたいという、心地よい決意だけだった。
こうして、オウジの「ヒーロー」としての物語が、今、静かに動き始めたのだった。
第4部 ヒーローの覚悟
第1章 自分の足で立つ
「うん、期待してる」
ノノに残されたその一言は、オウジの胸の中でずっと心地よい熱を帯び続けていた。
そして、翌日からのオウジの仕事ぶりは、自分でも驚くほど変わった。これまでのように「どうすればカッコよく見えるか」とか「失敗したらどうしよう」なんて余計な雑念は、きれいに消え去っていた。
ただ目の前の仕事に集中する。
ひとつひとつの作業を、丁寧かつ確実に行う。
…それだけを考えた。
ドリンク・マシーンのノズル・チェックはもちろん、氷の補充、資材のストック確認。
言われる前に動く。ミスをしない。
「オウジ! 今日の動き、すごくイイネ! ハヤイ!」
バイト・リーダーのシュウさんが、いつものように満面の笑みで親指を立てて褒めてくれる。
「ありがとうございます! シュウさんの教え方が良いおかげです!」
ハッキリと、声を出して応える。察してもらうのを待つのではなく、自分から言葉を伝え、行動する。台湾人のスタッフたちが教えてくれたストレートなコミュニケーションが、いつの間にかオウジの血肉となっていた。
ピーク・タイムの店内は、相変わらず目が回るような忙しさだ。けれど、オウジの視野は以前とは比べものにならないほど広くなっていた。
自分の持ち場を守りながら、ふと、カウンター側に目をやる。 そこではノノが、相変わらず無駄のない動きで整然とお客に応対している。
以前のオウジなら、その圧倒的な存在感に気後れし、遠くから指をくわえて見ているだけだっただろう。 けれど今は違う。
彼女は、自分を守ってくれる存在を求めているわけではない。 甘やかしの温室を用意してくれる男を待っているわけでもない。
自分の足でしっかりと立ち、自分の役割を果たしている人間だけが、彼女の隣に並ぶことを許されるのだと、オウジは理解していた。
「オウジくん、ポテトLサイズ、2分で上がれる?」
注文の波の隙間から、ノノの声が飛んでくる。
「上がれます! あと1分30秒で出せます!」
オウジは迷いなく答え、タイマーに目をやった。
ノノが一瞬だけオウジの方を振り返り、満足そうに小さく頷く。その短いアイコンタクトだけで、オウジの背筋はピンと伸びた。
カッコいい自分になりたい。 彼女の期待に応えられる、本当のヒーローになりたい。
自分勝手な妄想から始まったオウジのアルバイト生活は、今、確かな覚悟を伴った青春へと変わり始めていた。
第2章 背中をあずける夜
それからの二人は、まるで長年組んできたパートナーのように、阿吽(あうん)の呼吸でシフトをこなすようになっていた。
週末の夜。
店内はピークのピークを迎えていた。カウンターには長蛇の列ができ、厨房のタイマー音がひっきりなしに鳴り響く。配達パートナーが次々と駆け込み、店内は戦場のような熱気に包まれている。
「オウジ、ドリンクのシロップ切れちゃった! 補充お願い!」
「了解です、すぐ代えます!」
シュウさんの指示に素早く動きながら、オウジは、一切の無駄なく手先を動かした。
慌てない。
焦らない。
自分の役割を完璧に果たすことだけに全神経を研ぎ澄ます。
ふと、カウンターへ目をやると、ノノが次から次へと入る注文を驚異的なスピードで捌いていた。だが、その額にはうっすらと汗が浮かび、息も少し上がっている。いくら完璧な彼女でも、この猛攻を一人で受け止めるのは限界に近かった。
「ノノさん、ドリンクとポテト、全部準備できました。右側のトレーから出せます!」
オウジがカウンターの奥からハッキリとした声でサポートを入れる。
「あっ…!ありがとう、助かる!」
ノノは、一瞬だけ驚いたように目を見開き、すぐに眩しいほどの笑顔で応えた。
以前のオウジなら、
「大丈夫?」
とオロオロ尋ねるか、要領を得ない手伝いをして足引っ張っていただろう。
だが今のオウジは、違う。
彼女が今、何をしてほしいのか。聞かなくても状況を見れば分かる。
…こうして欲しいという女子の望みを、聞かずとも叶えてあげられる男子。
あの日、深夜の小説で読んだ「真のヒーロー」の姿が、今の自分と重なる。
怒濤のピークタイムが過ぎ、店内はようやく静けさを取り戻した。 バックヤードで冷たい水を飲みながら、オウジが深く息をついていると、隣にノノが歩み寄ってきた。
「オウジくん、今日…本当に凄かったね」
ノノは、胸の前で少し手を組み、まっすぐにオウジの目を見つめた。
「私、いつも一人で抱え込んじゃう癖があって。でも今日は、オウジくんが後ろにいてくれたから、安心して前に立てたの。背中をあずけられるって、すごく心強いよ」
「ノノさん…」
照れくさそうに笑う彼女の言葉は、どんな褒め言葉よりも深く、オウジの胸に響いた。
守られるだけのヒロインじゃない。 戦う彼女の背中を支え、共に前に進む存在。オウジは、拳を小さく握りしめ、力強く頷いた。
「これからも、任せてください。僕が絶対にサポートしますから」
二人の間に流れる空気は、もう「ただのバイト仲間」のそれ(境界線)を、静かに越えようとしていた。
第3章 夏の終わりとひとつの問い
怒濤のピークタイムを二人で乗り越えたあの夜から、店内の空気は確実に変わっていた。
言葉数が劇的に増えたわけではない。けれど、ふとした瞬間に交わす視線や、作業の合間にこぼれる短い会話の中に、以前のような遠慮がちな壁はもう存在しなかった。
「オウジくん、今日の上がり、何時?」
シフトの終わり際、事務所で荷物をまとめていたオウジに、私服に着替えたノノが声をかけてきた。
「あ、僕はちょうど今上がるところです」
「そっか。じゃあ…ちょっとだけ、付き合ってくれない?」
少しだけ恥ずかしそうに、でもまっすぐに自分を見つめてくるノノの瞳。断る理由なんて、オウジにはどこにもなかった。
二人で店を出ると、夜の風がほんの少しだけ秋の気配を孕んで頬を撫でた。あんなに狂おしいほど暑かった夏が、いつの間にか終わりを告げようとしている。
駅へ続く夜道を、二人は静かに並んで歩いた。
「私ね、最初はオウジくんのこと、ちょっと不思議な人だなって思ってたんだ」
ノノがポツリと口を開いた。
「最初はすごく焦ってて、何かを探してるみたいで…でも、どんどん変わっていったでしょ? シュウさんたちともすごく仲良くなって、仕事も一生懸命で。気づいたら、私の方がオウジくんの背中に助けられてた」
「…僕なんて、最初は全然ダメでしたよ。カッコつけたいだけで、自分のことしか考えてなくて」
オウジは、苦笑いしながら、深夜に一人で悩み抜いていたあの頃の自分を思い出していた。
モテたい。彼女が欲しい。出会いが欲しい。
そんな不純でちっぽけな動機で飛び込んだ世界で、自分はあまりにも多くの大切なことを学んだ。
シュウさんたちが教えてくれた、嘘のないまっすぐな優しさ。
そして、ノノが教えてくれた、誰かのために背伸びをして立ち上がり続ける覚悟。
「ねえ、オウジくん」
足をとめたノノが、振り返ってオウジを見つめた。 夜風に揺れる黒髪と、街灯の光を映す澄んだ瞳。
「オウジくんはさ…どうしてこのバイト、始めようと思ったの?」
それは、かつてのオウジなら、口が裂けても言えなかった問いだった。
「…本当のことを言うとね」
オウジは、深呼吸をし、まっすぐにノノの目を見返した。もう、誤魔化す必要も、格好つける必要もなかった。
「…素敵なヒロインに、出会いたかったからです」
夜の静寂の中に、オウジの声がハッキリと響いた。
ノノは、一瞬、きょとんと目を丸くした。そして次の瞬間、まるで蕾がほころぶように、これまでで一番鮮やかな笑顔を弾けさせたのだった。
第4章 夏の答えとこれからの物語
「…ヒロイン…って?」
ノノは、一瞬きょとんとした後、可憐な蕾がほころぶように、くすくすと声を立てて笑い出した。
「ふふっ…なにそれ。オウジくんって、時々すごく不思議なこと言うよね」
「…本気ですよ。最初は本当に、不純な動機だったんです。モテたいとか、出会いが欲しいとか、そんなことばっかり考えてて」
オウジは、照れくさそうに頭を掻きながら、まっすぐに言葉を続けた。
「でも、シュウさんたちやノノさんと一緒に働くようになって、気づいたんです。カッコいいヒーローになりたければ、まず自分が誰かのために一生懸命にならなきゃダメだって。…だから、僕にとってのヒロインは、ノノさんです」
ストレートすぎるその告白に、ノノの笑顔がぴたりと止まった。
夜風が二人の間を通り抜け、街灯の光の下で、彼女の白い頬がほんのりと朱に染まっていくのが分かった。
ノノは、少しだけ照れたように視線を泳がせると、小さく息を吐いてオウジをまっすぐに見つめ直した。
「…ズルいよ、オウジくん。そんな風に言われたら、私、逃げられなくなっちゃうじゃん」
「え…?」
「私もね…最初は自分のことで精一杯で、誰かに頼るなんて考えもしなかった。でも、オウジくんが隣で必死に頑張ってくれて、私の背中を支えてくれた時…あ、この人となら一緒に歩いていけるかもって、思ったんだよ」
ノノの瞳に、夜空の星のような強い光が宿る。
「私のヒーローは、最初からオウジくだよ!」
街の喧騒が遠のき、二人の鼓動だけが夜の静寂に響く。
あの日、ワンルームの部屋で「どうしたらモテるのか」と頭を抱えていた一人の男子は、もうどこにもいなかった。試行錯誤し、人のために悩み、真剣に泥臭く頑張ることで、彼はいつの間にか、彼女だけの「真のヒーロー」になっていたのだ。
「ノノさん、よかったらこの後…少しだけ、どこかで話しませんか? バイトの話じゃなくて、これからの僕たちの話」
「うん。…喜んで」
ノノが嬉しそうに頷き、二人は歩みを進めた。
夏の終わり。
夜風は少し冷たくなっていたけれど、繋いだ手のひらはどこまでも温かかった。
深夜から始まった不器用な二人の物語は、こうして、眩しい青春の1ページへと続いて行くのだった。
第5章 いつもの席で
「…ここ、夜は、けっこう静かなんだね」
店から少し離れた、小さな公園のベンチ。
自販機で買った缶コーヒーを二つ買い、オウジとノノは並んで腰を下ろした。
バイト上がりのいつもの夜風とは、どこか違って感じられる。隣に座るノノとの距離は、店内のカウンター越しよりもずっと近い。さっき手を繋いで歩いた時のぬくもりがまだ残っていて、オウジの胸を静かに満たしていた。
「私、バイト先のあの店、実は辞めようか迷ってた時期があったんだ」
缶コーヒーのあたたかさを確かめるように両手で包み込みながら、ヒカリがぽつりと呟いた。
「えっ…ノノさんが?」
「うん。大学の課題も忙しくなってたし、外国人スタッフの人たちはみんなパワフルでさ。言葉も習慣も違う中で、私が一生懸命空気を読もうとしても、空回りしちゃう感じがして…少し疲れちゃってたんだよね」
夜の静寂に溶け込むノノの告白に、オウジは、黙って耳を傾けた。
「でもね、久しぶりに復帰したら、オウジくんがいたの。シュウさんたちとカタコトの日本語でコミュニケーションを取りながら、すごく楽しそうに、でも必死に仕事に喰らいついてて。…『あ、こんな風にまっすぐに接していけばいいんだ』って、救われた気持ちになった」
ノノは、横顔を少し綻ばせ、オウジを見つめた。
「オウジくんが私を『ヒロイン』だって言ってくれたけど、私をあの場所に繋ぎ止めてくれたのは、間違いなくオウジくんなんだよ」
オウジは、喉の奥が熱くなるのを感じた。自分がただ不器用に、我武者羅に動いていた姿が、知らないうちに彼女の心を支えていたのだ。
「…僕、これからもずっと、ノノさんの隣で一緒に歩きたいです。バイトだけじゃなくて…大学の帰り道とか、休みの日の街とか」
オウジは、まっすぐに彼女の目を見つめ、言葉を放った。
「私の休日、結構ハードだよ? 行きたいカフェ巡りにつき合ってもらうし、買い物も長いし…わがまま聞いてもらうことになっちゃうけど、いいの?」
少しいたずらっぽく微笑むノノに、オウジは、頼もしく笑ってみせた。
「望みなら、何でも教えてください。全部、叶えてみせますから!」
あの日、深夜の部屋で読んだ「真のヒーロー」の条件。 女子の望みを、一つずつ丁寧に叶えていくこと。
「ふふっ、期待してるね。私のヒーロー!」
冷え込んできた夜風の中で、ノノがそっとオウジの肩に自分の肩を預けた。小さく重なる二人の影。
不器用な男の模索から始まったバイト生活は、ここに最高の答えを見つけ出し、二人だけの新しい物語へと続いて行くのだった。
第5部 二人の軌跡
第1章 日常のなかの二人
そして、二人が公園のベンチで肩を寄せた日から、数週間が過ぎた。
季節はゆっくりと移り変わり、夜風の冷たさも秋の深まりを静かに告げる。
あの日を境に、二人の関係は「バイト先の頼れるペア」から「大切な存在」へと変わったが、だからといって職場の雰囲気が甘甘になったかと言えば、決してそうではなかった。
「オウジ! ドリンクまだー? カウンター混んできたよ!」
「あ、すみません! すぐ出します!」
むしろ、シフト中の連帯感と阿吽の呼吸はさらに研ぎ澄まされていた。
業務中に無駄なイチャつきなど一切ない。
ノノは、相変わらず凛とした態度でテキパキと接客をこなし、オウジもまた、彼女の背中を支えるべく完璧なサポートを徹底していた。
プロとしてのラインをしっかり引き、互いの仕事を尊重し合う。その程よい緊張感こそが、二人にとって居心地の良い距離感だった。
変化があったのは、アルバイトが終わった後の時間だ。
「お疲れ様でしたー!」
更衣室で着替えを済ませ、店舗の裏口を出る。
夜の静かな通りに出た瞬間、ノノがそっとオウジの手を握りしめてくる。
「…ふぅ。今日も疲れたね、オウジくん」
店内にいた時の「頼れる先輩スタッフ」の顔から、一瞬で「年相応の女の子」の柔らかい表情へと切り替わる。そのギャップに、オウジの胸は毎回のように高鳴った。
「お疲れ様、ノノさん。今日のドリンクのピーク、すごかったね」
「うん。でもオウジくんがフォローしてくれたから、全然慌てずに済んだよ。…ありがとね」
二人は、手を繋いだまま、駅へと続く夜道を並んで歩く。
…以前は「どうやって女子と知り合うか」「どうすればモテるのか」と頭を悩ませていたオウジだったが、今ではそんな焦りや妄想は綺麗さっぱり消え去っていた。
誰かのために一生懸命になる。
相手の望みを、言葉にされる前に察して叶える。
オウジがバイト先で身につけたその姿勢は、今や二人で過ごす日常のなかでも自然と活かされるようになっていた。
「ねえ、オウジくん。今度の休みだけど…前に言ってたカフェ、付き合ってくれる?」
嬉しそうに上目遣いで尋ねてくるノノに、オウジは頼もしく頷いた。
「もちろん。何時間でも…付き合うよ!」
二人の物語は、特別な事件などなくても、こうした愛おしい日常の積み重ねの中で、静かに深まり続けていた。
第2章 初めての休日
そして、待ちに待った休日。
約束の午前十時。
オウジは、駅前の時計台の下で、落ち着かない様子で足踏みをしていた。バイトの制服姿しか互いに知らないオウジにとって、ノノと私服で会うのはこれが初めてのことだった。
…昨夜のこと。
「…どんな服で行けばいいんだ…?」
と、オウジは、部屋で一人ファッションショーを繰り広げていた。
そして、今日。結果として、シンプルなシャツとパンツという無難なスタイルに落ち着いたものの、緊張で喉はカラカラだった。
「オウジくん、お待たせ!」
声がした方を振り返ったオウジは、思わず息を呑んだ。
人混みの中から歩み寄ってきたノノは、柔らかなニットにロング・スカートという、いつも店舗で見せる凛とした姿とはギャップのある、女の子らしい装いだった。
「…あ、ううん、僕も今来たところ。すごく似合ってるよ、ノノさん」
「本当? よかった…。私服見せるの、なんだかちょっと緊張しちゃった」
少し照れたように微笑むノノ。その仕草ひとつで、オウジの胸が高鳴る。
「さ、行こっか! 今日は行きたいお店がいくつかあるんだ」
ノノが嬉しそうにオウジの先を歩き出す。彼女が連れていってくれたのは、路地裏にある隠れ家のような静かなカフェだった。
テーブルにつき、運ばれてきた季節限定のスイーツを口にした瞬間、ノノの顔がパッと華やいだ。
「ん〜! すごく美味しい! オウジくんも一口食べる?」
「え、いいの? じゃあ…」
遠慮がちにフォークを差し出してくるヒカリの無邪気な姿にドキドキしながら、オウジは、一口もらった。
「本当だ、すごく美味しい」
「でしょ? ずっと来てみたかったんだ。でも一人だとちょっと入りづらくて…だから、今日オウジくんと来られてすごく嬉しい」
そう言って、ノノは、まっすぐにオウジの目を見つめた。店内で完璧に仕事をこなす彼女も素敵だが、こうして自分の前で甘いものに目を輝かせたり、素直な気持ちを口にしてくれたりするノノは、どこまでも愛おしかった。
あの日、オウジが深夜の部屋で思い描いていた「モテるための振る舞い方」みたいな上辺だけのテクニックは、最初から要らなかったのだ。
ただ、目の前の彼女が何を喜び、何を望んでいるのかを真剣に考える。そして、何より、一緒にその時間を楽しむこと。
「ノノさん、次に行きたい場所は? 行きたいところ、全部付き合うよ!」
オウジが力強く微笑むと、ノノは「じゃあ、次はあそこの服屋さん!」と満足そうに頷き、そっと、テーブルの下で、オウジの足に自分の足を絡めたのだった。
秋の澄んだ空の下、二人の特別な休日は、ゆっくりと続いていった。
第3章 シュウさんの言葉
カフェ巡りと買い物を楽しんだ初デートから数日後。
シフトが重なった夕方の混雑がひと段落したバックヤードで、オウジはシュウさんに呼び止められた。
「オウジ、ちょっとイイ?」
缶入りのジャスミン茶を片手に持ったシュウさんが、いたずらっぽい笑みを浮かべてオウジの顔を覗き込んでくる。
「最近、オウジとノノちゃん、雰囲気変わったね。すっごくイイ感じ!」
「えっ…あ、いや、その…」
オウジは、一瞬で顔が熱くなり、思わず視線を泳がせた。職場では完璧に公私混同を避けていたつもりだったが、バイトリーダーの目を誤魔化すことはできなかったらしい。
「ハハッ、隠さなくてイイよ! 僕たちみんな、最初から気づいてたからね」
シュウさんは、ポンとオウジの肩を叩き、少しだけ表情を柔らかくした。
「オウジ、最初に来た時、すごく迷ってる顔してた。でも今は、自分の仕事にも、ノノちゃんにも、すごくまっすぐ向き合ってる。台湾ではね、自分の気持ちに嘘をつかないで、大切な人をちゃんと大事にする男が一番カッコいいって言うよ。今のオウジ、すごくカッコイイね」
外国人スタッフたちの裏表のないストレートな教えに救われ、仕事の楽しさを知ったあの初日。そして今、こうして自分の成長と変化を温かく見守ってくれていた先輩からの言葉に、オウジの胸の奥がじんわりと温かくなった。
「シュウさん…ありがとうございます。僕、この店でバイトを始めて、本当によかったです」
「ハッキリお礼言うの、イイネ! じゃ、休憩終わり! 後半もガンバロウ!」
「はいっ!」
バックヤードの扉を開けてカウンターへ戻ると、ちょうどお客様の対応を終えたノノと目が合った。 ノノは、少し首を傾げたあと、オウジのすっきりとした表情を見て、満足そうに小さく微笑んだ。
曖昧な雰囲気に逃げず、大切な人の望みを叶えられる男になる。 シュウさんからのエールを胸に、オウジは、自分の持ち場へと力強く一歩を踏み出した。
第4章 それぞれの夢と重ねる手
秋が深まり、大学の講義や課題も本格化していく中で、二人の話題は自然と「将来のこと」や「それぞれの夢」へと広がり始めていた。
バイト終わりの夜道。
冷たい空気に白い息を吐きながら、二人はそっと手を重ねて歩いていた。
「私ね、将来は海外と関わる仕事がしたいんだ」
ノノが夜空を見上げながら、ポツリと口を開いた。
「この店でシュウさんたちと一緒に働いて、言葉や文化が違っても、お互いを尊重し合えばすごく良いチームになれるんだって知ったから。だから、もっと広い世界を見てみたいんだよね」
まっすぐで、自分の意志をしっかりと持ったノノらしい夢だった。
以前のオウジなら、彼女が遠くに行ってしまうような気がして、焦ったり不安になったりしていたかもしれない。けれど、今のオウジは違った。
「ノノさんなら、絶対素敵な仕事ができるよ。だって、この店でも誰より周りを見て、みんなを支えてるんだから」
「ふふ、ありがとう。…オウジくんは? 将来、やってみたいこととかあるの?」
ノノに問われ、オウジは、少し照れくさそうに微笑んだ。
「僕はね…誰かの挑戦を、一番近くで支えられるような人間になりたい。シュウさんが僕を導いてくれたみたいに、僕がノノさんの背中を支えたみたいに。…大切な人が前に進むための、一番の味方でいたいんだ」
不純な動機で始まったアルバイトだったが、ここで過ごした時間が、オウジの中に「どんな大人になりたいか」という確かな軸を育てていた。
「…そっか」
ノノは、足を止め、重ねた手に少しだけキュッと力を込めた。
「じゃあ、私が世界に飛び出す時は、一番近くで応援してくれる?」
「もちろん。ノノさんがどこに行こうと、僕がずっと一番の味方だから」
オウジの迷いのない答えに、ノノは嬉しそうに目元を緩め、そっとオウジの腕に寄り添った。
お互いに寄りかかり合うのではなく、それぞれが自分の足で立ち、同じ方向を目指して歩んでいく。 二人の描く未来は、夜道の先に続く街灯の光のように、優しく、そして確かに輝いていた。
第5章 終わらない夏のその先へ
いつもと同じバイトの日常。
「オウジ! ドリンクとポテト、準備オッケー?」
「バッチリです! すぐ出せます!」
相変わらずのピークタイム。
だが、今のオウジの手つきには、迷いや焦りは一切ない。シュウさんから教わったまっすぐなコミュニケーションと、ノノの背中を見つめながら培った覚悟が、彼の動きに確かな頼もしさを与えていた。
怒濤のピークを乗り越え、バックヤードで冷たい水を飲みながら一息ついていると、カウンター側からノノが歩み寄ってきた。
「オウジくん、今日の上がり、そろそろでしょ?」
「うん。あと五分で上がりだよ」
「そっか。じゃあ、着替えたら裏口で待ってるね」
そう言って微笑むノノの胸元には、いつもと同じバイトのネームプレートが誇らしげに輝いている。
制服から私服に着替えて、店舗の裏口を出る。
夕暮れ時の街には、まだあの日の夏と変わらない熱気が残っていた。
一昔前の古い情報に振り回され、出会いを求めて迷走していた一人の男子の姿は、もうどこにもない。
出会いは、スマホの画面の中に落ちているものではなかった。モテるための絶対的な魔法なんて、やっぱりこの世には存在しなかった。
けれど、実態の分からない世界へ思い切って飛び込み、戸惑いながらも誰かのために一生懸命汗を流したこの夏の只中で、オウジは、自分だけの「最高のヒロイン」と巡り合い、そして自らも彼女の「真のヒーロー」になることができたのだ。
「ねえ、オウジくん。今日の夕飯、何食べる?」
並んで歩く夜道、ノノが嬉しそうに手を繋ぎ、上目遣いで尋ねてくる。
「何が食べたい? ノノさんの希望なら、何でも叶えるよ!」
オウジが頼もしく笑ってみせると、ノノは
「ふふっ、言ったね?」
と嬉しそうに目を細めた。
…彼女の言葉、問いかけに真剣に耳を傾ける。そして、相手の望みをひとつずつ丁寧に叶えていく。
この夏に学んだその言葉こそが、不器用な一人の男子がたどり着いた、永遠に変わらない恋の形だった。
やがて、二人は繋いだ手に少しだけ力を込めた。そして、二人は、ゆっくりと、どこまでも続く優しい色の街並みへと歩みを進めたのだった。
Fin.
※この物語は、いったんここで完結です。もし良ければ…良いね!をいただけるとありがたいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
2026年8月15日
Ryoji M.
©2026 Ryoji M. All rights reserved.
本作品のキャラクター、文章、画像の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。
