旅する小人 小説 9章
すべてを失う前、僕には確かに始まりが
あった。
今回はその話です。
僕がこの旅に出たのは、2007年の12月だった。
新卒で勤めた会社を100万円という、とりあえず当面の旅の資金が溜まったからという理由で辞めた。
金がなくなれば、どこか別の国で働いて、金を貯め、また旅に戻ればいい。
そんなふうに生きることも、人生の経験になると思っていた。
24才だった。
30才までは、旅をして、働いて、また旅をして、
世界中の「知らない」を自分の目で見て回ろうと決めていた。
そして、その経験を元に、
いつか店か会社を経営して、
小説を書いて、
できるなら映画にもしたいと思っていた。
それが、20代前半の僕が描いた人生設計だった。
周りの人に話すと、
「そんな生き方してる人、周りにいないからよく分からないけど、いいんじゃないか。身体と命には気をつけろよ」
そんなふうに言われたと思う。
当時付き合っていた彼女に伝えたときには、
「ついていけない」と言われた。
「別れて旅に行くか、今すぐ結婚するか、どっちかにしてほしい」と。
将来の人生を思い浮かべたとき、
ここで自分のやりたいことを選ばなければ、
きっといつかその彼女のせいにすると思った。
だから僕は、「旅に行く」と言った。
彼女は間髪入れずに、
「さようなら」と言い、僕から去っていった。
それが、僕の旅の始まりだった。
