イケメンの苦悩
リック・スプリングフィールド(Rick Springfield)が25年前のステージ転落した際、脳を損傷していたことが最近の検査で判明したというニュースを見つけた。
リックはシドニー生まれのメルボルン育ち、いくつかのバンドを経た後アメリカへ渡りレコードデビューしたが、プロモーションの問題からレコード会社を移籍、次のレコード会社ではヒットが出せずに契約解除、その次はレコード会社の倒産と不遇の時が続いた。その後ルックスのよさを買われて俳優業に転身、テレビドラマ「600万ドルの男」、「ロックフォードの事件メモ」などに出演し話題になった。
昼メロドラマ「ジェネラル・ホスピタル」に出演し大人気だった時期、代表曲「ジェシーズ・ガール(Jessie's Girl)」が生まれる。リック自身が作詞作曲した曲で、1981年2月にリリースされ、アルバム「Working Class Dog」にも収録されている。

この「ジェシーズ・ガール」は、親友のガールフレンドに恋してしまった若者の甘酸っぱい片思いについて歌ったもので、友達の彼女を好きになってしまったものの何もできず、いつまでもモヤモヤ、ウジウジという、体育会系に見えるイケメン主人公が実は繊細だったという内容。逆に女子は母性本能をくすぐられたのかな?
リックの実話だというのは有名で、リックは学校でステンドグラスの授業を取っていて、そのクラスには友人のゲイリーとゲイリーのガールフレンドもいたそうで・・・
『そいつには出来立てホヤホヤの彼女がいて、俺とは全く何の関係もないはずだった。その頃しばらく作曲していなかったから、ステンドグラスの授業中にいい成績を取ってやろうと思っていたが、そうしたら結果的にあの曲を作り始めていたんだ。』
リックは当初、友人の実際の名前を使いたかったが、『"Gary's Girl"では歌った時の音が気にいらない』というシンプルな理由により、別の名前にすることにした。"Randy's Girl"も候補にあったが、リックが"Jessie"を選んだのは、フットボール選手のロン・ジェシーの名前が入ったジャージを別の友人が着ていたのを見つけたからだという。
またおもしろいことに、しばらくの間、リックは『この曲のことを知らない人に話すな』という意味で曲のタイトルを"Don't Talk To Strangers"と呼んでいたが、後にこれは彼の2番目に大ヒットとなった曲のタイトルになっている。(たまたまな)
リックによれば、この曲のインスピレーションとなったそのガールフレンドの名前は覚えておらず、彼女も自分が"Jessie's Girl"であったことを知らないと確信しているそうで、『僕は彼女に紹介されたことがないんだ。いつも遠くからイライラ嫉妬しているだけだった』と、テレビ番組「オプラ・ウィンフリー・ショー」で語っている。
リックによると、「オプラ・ウィンフリー・ショー」の関係者が彼女を探そうとしたところ、当時のステンドグラスのクラスの教師が2019年に亡くなっており、彼の死後一年の間にそのクラスの記録が破棄されたことまで突き止めたという。またゲイリーとも連絡が途絶えてしまい、後に彼は亡くなってしまったのがわかったそうだ。
1981年2月にリリースされたこの「ジェシーズ・ガール」は、8月1日から二週間ビルボードチャート1位を獲得、年間チャートでは5位を記録した。リックの唯一のNo.1ヒットとなったが、3月28日のホット100チャートインから1位を獲得するまでに19週間を要し、最終的に32週チャートインしている。
チャートの上昇も時間がかかったが、曲の完成までも2か月以上かかったという。覚えやすいシンプルな曲なのに『簡単に仕上げられる曲じゃなかった』そうで、レコーディングも試行錯誤の連続だったようだ。その中でプロデューサーのキース・オルセンはギターソロの演奏をリックではなく別の人に任せたかったのだという。白羽の矢が立ったのは、パット・ベネター(Pat Benatar)の夫でもあるギタリスト ニール・ジェラルド(Neil Gerardo)だった。
この曲が1位だった1981年8月1日はMTVがスタートした日。ビデオクリップではリックがソロを弾いている(演技をしている)が、本当はニールによる『短いが甘く、派手ではあるが、決して甘すぎない、独創的な個性を発揮している。』絶妙なソロになっている。
さて、冒頭のニュースの話だが、リックのコメントが載っていた。
『25フィート(約7.6メートル)落ちて頭を打ち、その後、木材が落ちてきて頭を直撃し、さらにステージに頭をぶつけたんだ。手首を折っただけだと思っていたんだけど、検査の結果、あの転倒による脳損傷があることが分かった。今は、それを修復しようと努力しているところだよ』
これをキッカケに"Jessie's Girl"の名前を思い出すかもしれないね。(簡単に言うな)
