地球は天国であり地獄でもある
ベリンダ・カーライル(Belinda Carlisle)は1958年8月17日、ロサンゼルス・ハリウッド生まれ。ミュージシャン仲間との交流も盛んで、リンジー・バッキンガム、スザンナ・ホフス、アンディ・テイラー、ブライアン・アダムス、ブライアン・ウィルソン、ナターシャ・アトラス、デヴィッド・リンドレー、ブライアン・イーノなど著名なアーティストの名前があがる。
ベリンダの音楽キャリアの始まりはハイスクールの頃、イギー・ポップ(Iggy Pop)のファンになり、ロサンゼルスのパンクロックの祖といわれるジャームス結成時にドラムスで参加。脱退後の1978年、ゴーゴーズ(Go-Go's)を結成、5人の女の子の路上のおしゃべりからからスタートしたというバンドは、1980年にシングル「We Got The Beat」でメジャーデビュー、1981年のシングル「Our Lips Are Sealed」がヒット、デビューアルバム「Beauty And The Beat」はビルボード6週連続1位を記録、これは女性だけのロック・グループとして史上初の1位であった。再録音された「We Got The Beat」や「Vacation」、「Head Over Heels」などもヒット、しかし人気絶頂だったゴーゴーズは1985年5月10日に解散宣言する。解散の原因は、メンバー同士の確執、人気がなくなることへの不安とストレスからの飲酒、ドラッグなどで問題を起こしたことなど多数の説がある。
解散後のベリンダは一時精神的に不安定になり摂食障害を起こしたようだが、周囲の支えもあり復帰、1986年シングル「Mad About You」でソロデビュー、ビルボードチャート3位を記録するなど快調なスタートを切った。1987年には代表曲となる「Heaven Is A Place On Earth」と出会う。プロデューサーであるリック・ノヴェルズとパートナーのエレン・リップリーとの共作で1か月半でボーカルのレコーディングまでを終えた。リックはサビは気に入っていたが、Aメロがイマイチ気に入らず、ベリンダのボーカルが入った物を聞いても納得できなかったという。決断したリックはエレンを呼び、曲を書き直すことに。エレンは飛行機でニューヨークからロスへ駆けつけ、曲は3日で修正された。リックは『ボーカルを再録音しなければならない・・・』と恐縮しながら打ち明けたが、修正された曲を聞いて『前よりもっとよくなった』とベリンダも気に入ったという。トーマス・ドルビーのシンセサイザーをフィーチャーし、ミシェル・フィリップス、チナ・フィリップスとソングライターのダイアン・ウォーレンをバッキング・ボーカルに迎え再録音された「Heaven Is A Place On Earth」はビルボードNo.1ヒットとなり、日本では1988年にJR東海の「プレイバック・エクスプレス」のCMソングに採用された。
そんな大ヒットと華麗なキャリアの裏でベリンダの人生が暗転し始めていた。ベリンダは当時の自身の生活を振り返ると、複雑な気分になるという。
17歳から47歳までの30年間、私はドラッグに支配されていた・・・
長い間ドラッグ依存であったことを告白したベリンダ。ゴーゴーズは、その楽曲の良さと恵まれたルックスも相まって、商業的に最も成功を収めたガールズバンドの一つとなったが、この成功は20代前半でギリギリの生活をしていたメンバー全員にこれまで手にしたことのない巨万の富をもたらしたのだった。成功したミュージシャンにつきものなのがドラッグで、当時はドラッグをやっているのがクールという風潮があり、ベリンダもあっさりドラッグにはまり、中毒になってしまってしまったという。背景には複雑な生い立ちが関係しているとの分析がある。若くしてベリンダを産んだ母親はうつ病を患い、彼女の実の父親、継父ともにアルコール依存症患者で、特に継父は酒に酔うと暴力をふるったという。10代で家出同然でLAのパンクシーンへと逃避したベリンダは、常に寂しさを抱えていたことから、最初に酒を覚えたのが予兆だったと振り返っている。成功して大金を得てからはさらに即効性の強いドラッグに溺れ、精神的にも肉体的にも薬に振り回され、お金が入ったらすべてドラッグに注ぎ込むようになり、精神も身体も制御不能状態に。強迫性障害の症状が現れ、奇行を繰り返したという。さらには年齢によるレコード会社からの解雇が追い打ちをかけた。自分でもわかるほど、目にはまったく光がなく、肌も灰色、恐ろしい幻聴まで経験したという。
ドラッグに溺れるベリンダからたくさんの人が去っていっても、『何があろうとも絶対に見放さない』と、いつでもそばにいると約束してくれた夫(映画プロデューサーで夫のモーガン・メイソン)の支えとリハビリテーションプログラムを経て回復、現在は夫婦でメキシコに拠点を移し、8月には再結成したゴーゴーズのカリフォルニア公演、ソロとしては、若き日のカリフォルニアの黄金サウンドを通じ個人的な旅を振り返ったカバーアルバム「Once Upon A Time In California」もリリースされ元気に活動中である。
私はカリフォルニアで生まれ育ち、音楽がカリフォルニア文化の重要な一部だった時代を過ごしました。その音楽を聴くと、あの時代やカリフォルニアの思い出がたくさんよみがえります。私の夢の中のカリフォルニアに乾杯!
ちなみにこのアルバムではカバーされていないが、ベリンダの選んだマストアルバム5枚は、カリフォルニアで育ったベリンダにとって、DNAの一部というビーチ・ボーイズをはじめ、デペッシュ・モード、ロキシー・ミュージック、マリア・カラス、ザ・クラッシュのアルバムだそうだ。
