見出し画像

Interview 台北Logy田原諒悟シェフ 2/3

「食材の力」に頼らない

訪れたのは松山空港近くの生鮮食品市場。野菜、フルーツ、鮮魚、精肉がひととおり揃っています。

画像2

画像3

田原――いつ来ても、ないことないんですよね。いろいろな素材が。筍も、去年から一年、このサイズ(大きい)がなかったことがない。細いのは出てくるシーズンがあるんですけど、この大きい筍はつねにあります。たぶん季節で品種は違うと思うんですけど。味は、夏のものはめちゃくちゃ甘くて、とうもろこしみたいな感じです。

編集部――以前、お料理に季節感を出すのが難しいとおっしゃっていましたね。少しわかりました。

田原――あと、台湾の柑橘、みかんとか、オレンジとか、グレープフルーツに、酸味がないです。とくにみかんと文旦。文旦は酸味がなくて、苦くもないし、甘い。これは台湾のゴーヤです。(小さくて)かわいいから使いたいんですけど、とても苦いです。

画像4

画像6

画像6

野菜売り場には日本でもおなじみの素材の他、台湾独特のものも。味は全体に薄めで、ハーブは味そのものが日本のものと違い、エシャロットはニンニクのニュアンスが強いそう。

画像7

秋冬がシーズンという菱の実(菱角・リンジャオ)。現地では栗のようにボイルするなどして食べるそうですが、田原さん曰く「形はかわいいけど味がない」。

画像8

この日田原さんが探していたステムレタス(茎レタス)。レタスの芯のような感じで、これだけでも成立しそうな味とのこと。出始めでまだ細い。

画像9

品数が多く揃う鮮魚コーナー。日本からの輸入品も多数。アマダイやノドグロは台湾でも高価だそう。

画像10

「台湾のカニはワタリガニ系です。身が少なくてミソが多い。アワビは肝に味がない。たぶん、味のある海藻がないんじゃないかな。イカは日本と同じ感じの味で、クルマエビはかため。イセエビはおしいです(田原さん)」

編集部――食材の仕入れはどうされているのですか?

田原――魚は、今は決まったお魚屋さんからとっています。最初のころはいろいろな業者さんを試しましたが、いい素材を扱っていてもすぐに冷凍してしまって生が手に入らなかったり、仕入れる量が少ないと相手にしてもらえなかったり。返品は基本的にできないし、相場をちゃんと調べないと高く設定されていることがあったりもしますね。

編集部――試していって、きちんと対応してくれるところを見つけたということでしょうか?

田原――そうです。

編集部――日本だと同業の方の紹介というお話も聞きますが。

田原――台湾でもそれはあります。ただ、知り合いのシェフが使っているからといって、新しいよそ者がそこに行っても、同じようにはやってくれません。自分で見つけていくしかないですね。業者さんは素材ごとに細かく専門に分かれていて、お店にリストが何百件もあるんですけど、よく使うところはだいたい決まっています。市場ではこうやって、欲しい素材の出回り具合とか、仕入れ価格と大きな差がないかとかを見る感じです。

画像11

続いて台北中心地の西側にある油化街(ディーホアジエ)へ。乾物やスパイス、漢方食材、雑貨、カフェなどが集まる場所。

画像12

ここで田原さんはフカヒレ、干しアワビ、干しナマコなど中華食材の値段をリサーチ。「ここに住んでいなかったらわざわざ使わないけど、今は住んでいるから使ってみようかなと思う(田原さん)」

画像13

画像14

何軒もある漢方食材屋さん。台湾では正月やお祝いのごちそうとして、瓶で蒸した薬膳スープを食べる文化が。家庭ごとにスープの調合は異なるそう。

画像15

画像16

ニンニクや生姜の専門店。「生姜は1年、2年、3年と寝かせたものがあって、古いほど辛みが強いです。その他に新生姜のような生姜が一年中出回っています(田原さん)」

編集部――こうした台湾の素材は、どのようにお料理にとり入れているのでしょうか?

田原――台湾の香りを使う時は、日本のものと合わせる感じで日本っぽくします。

編集部――日本っぽくですか?

田原――「台湾フレンチ」みたいな感じは、僕は合わないと思います。だったら、日本料理に寄せて、もう少しクリーンに仕上げるとかがいい。日本の味つけに台湾のフレーバーが入っている食べ物はあんまり見たことも、食べたこともないから。たとえばチキンストックとザーサイでとったスープにかつおぶしを入れて合わせだしを作るとか。そういう味のベースで、日本と台湾(の味や香り)を使っています。だから(Logyのシグニチャーディッシュの)茶碗蒸しも、日本っぽくありながら、きれいな台湾っぽさのあるコンソメのスープを合わせています。
あれはシグニチャーとして成立するように、世界中どこでも同じものが作れる素材しか使っていません。だから、すごくシンプルなんです。でも、ちょっとだけ変えたら……コンソメに干しイカを入れてスープをとって、カニのサラダはヴィネグレットで和えているだけなんですけどクコの実を入れて。クコの実と干しイカを抜いたら、ヨーロッパでもあり得る。そのふたつの要素だけで台湾っぽく仕上がるようにしています。それが、僕が思うバランス。台湾過ぎなくて日本っぽいんだけど、ヨーロッパでも作れる、だけど、誰も作らない味。

編集部――誰も作らないのはどうしてですか?

田原――え、だって、作らないですよね。僕、住んでるからじゃないですか? それに尽きると思います。ああいうのを作りたいんですけど、なかなか難しい。食材の力を借りたらここでしかできないものになってしまう。台湾にしかないものを使って台湾を表現するのはとても簡単だけど、世界中どこでもある、いもとか、キャベツとか、ビーツとか、根セロリとか。今どこでも流通しているものを使って、台湾っぽく、日本っぽく仕上げる。僕は、そのほうがいい。

画像18

油化街にある布屋さんへ。1Fは食材や飲食店のフロアで、建物の外からは上に布屋さんがあるとは一見わかりません。

画像18

テーブルナフキンに使う布を探していた田原さん。お店のユニフォームのシャツも好みのものが見つからず、自身で色、デザインを決めて発注したのだそう。この後雑貨店に立ち寄り什器をチェック。オープンから1年、「全然納得いっていない」というお店の備品などを少しずつ変えていきたいと話しました。

3/3「台湾で得た視点」に続きます

画像18