ドイツのクリスマス文化④、クリスマスマーケット
ドイツの豊かなクリスマス文化の全般概要について整理するシリーズの第4回目(*ドイツに住んでいます)。
前回まで書いてきた「①食べ物や飲み物」「②クリスマスツリーや飾り」「③サンタさん」に引き続いて、今回はクリスマスマーケットについて。
どの地域で行われているの?
まず、クリスマスマーケットの起源は諸説あって、たとえばドイツのフランクフルトとかドレスデンとか言われている。いずれにせよ、ドイツやオーストリアのドイツ語圏で14~15世紀の大昔に始まった。そして現代でも、このドイツやオーストリアが最も盛んな地域。
そこから、お近くのフランスやイギリス、および他のヨーロッパ諸国やアメリカなどにもこの文化が伝わっていって、世界中で広く開催されている。
クリスマスマーケットには何がある?
メインの一つは、様々なものが売られているお店。例えば、クリスマスに関連したグッズ類、伝統工芸品、伝統的な服飾品などなど。
(1)くるみ割り人形やオーナメントのお店

(2)煙吐き人形屋さん

(3)キャンドルホルダー屋さん
中にロウソクを置いて火を灯すと、ガラス越しにほのかに明るく光って美しい。ドイツ人はロウソクのような温かみのある光を好む人が多い。

(4)スパイスの飾り屋さん
オレンジなどの柑橘や、シナモン・八角など香りがするものが売られている。ヨーロッパの「冬の匂い」がする。

(5)クリッペ屋さん

<飲食できるお店>
モノの販売だけではなく、飲食できるお店も多い。スタンドで立ったままグリューワイン(スパイスの入った温かいワイン)を飲むお店や、テイクアウトできる地元の食べ物やお菓子のお店など。
(1)グリューワイン屋さん

(2)中世風の焼き栗屋さん

(3)中世風のお菓子屋さん

<イベント>
クリスマスマーケットでは他にも、移動遊園地が出たり、音楽イベントなどが行われるケースもある。
(1)中世風の音楽イベント

(2)火を噴くドラゴンの操り人形

(3)演劇イベント(の参加者)

なお、クリスマスマーケットはドイツやオーストリアで根付いている「文化」なので、商業的なものだけでなく、観光客の来ないような小さな街や村でも、地元の人たちによって地元の人たちのために開催されている。そういった地元のマーケットでは、お店に加えて、住民によるバザーが行われていたり、地元の青年会が子ども向けにイベントを開催したり、といった地元の人たちの交流の場にもなっている。
いつ開催される?
基本的には、アドベント(クリスマスまでの4週間)の期間に開催される。
注意しなければいけないのが、クリスマスマーケットは概ね12月23日くらいで終わってしまうこと。日本人的には、
「え? 24日とか25日がクライマックスじゃないの!?」
って思ってしまうけれども、ドイツ人にとってクリスマスの日はあらゆる人たちが家や教会で過ごすもの。街にパーッと繰り出す日ではないし、クリスマスマーケットで働いている人たちも家で家族と過ごすべき日。だから、基本的にはクリスマス本番が始まる前にクリスマスマーケットはおしまい。日本人にとっての元旦と似た感覚やね。
なぜマーケット?
長い伝統のある文化には、必ず背後に合理性がある、と僕は思っている。クリスマスマーケットがこの時期に行われていて、歴史の中で淘汰されずに今も残っている理由は理解できる気がする。
この時期のドイツは気候的に「イマイチな季節」。もちろん地域によって、また個人によって状況が違うのは当然だという前提だけれども、ざっくり言えば「陰鬱で寒くて良くない時期」。ドイツは緯度が高くて、この季節は日が出ている時間がとても短い。天気が悪い日も多い。仮に太陽が出ても、なんと光の弱々しいことか。地域によっては霧が出る日も多く、凍えるような湿気がまとわりついてくる(乾燥した日本の冬とは違う感覚)。
更に言えば、ドイツやオーストリアは海が遠い内陸性気候のエリアが多い関係で、海に囲まれた日本より1ヶ月くらい早く気候が移っていく。12月でも既に冬本番。
というような寒くて陰鬱な気候の時期が続く中、太陽の最も弱い冬至の日(≒クリスマス)に向かっていく。そんな陰鬱な気候の下で、光が溢れて、心が浮き立つ、みんなで集まれるような場所があれば・・・。それが現実にある場所が、クリスマスマーケット。
ということで、クリスマスマーケットが何百年にもわたって人々から支持される文化として残っていることには、充分な合理性があると思う。
冬至祭と結びついたクリスマス
「クリスマス前は一年で最も陰鬱な季節」について、一つ余談を。
クリスマスの12月25日はイエス・キリストが生まれた日という説もあるけれど、一方で本当は全然違う日だという説もある。
この時期にドイツや北欧では、もともと紀元前の時代から冬至祭が行われていた。そのイベントに、イエス・キリストの誕生の話が結びついて、クリスマスの日をこの時期に設定したとも言われている。
前述の通り、ドイツの冬は光が弱々しく、冬至はその太陽が最も弱くなってしまう日。でも冬至以降は、太陽が再び強さを増していき、春や夏に向けて、豊かな自然が力を増していく。つまり冬至という日は、それ以降は世の中に明るさと生命力が増していく、転換点になる日。
他方、先日の投稿でアドベントクランツについて書いたように、「イエス・キリストの誕生」は特別な意味を持つ日。キリスト教の信仰によると、イエス・キリストは神様によって特別に地上に遣わされて、それ以降は世の中に希望の光がもたらされることになった。つまりイエス・キリストの誕生日は「世の中の転換点になった日」という意味を持つ。
この「本質的に同じ意味持つ2つの日」が、ほぼ同じ日に存在しているのは、偶然ではなく、意図をもって同じ時期に設定された・・・としても、おかしくはない。もっとも、僕にはこの説の是非を判断できる知識はないけれども。
さて、ちょっと話が逸れたので、話に戻して・・・
【各地のクリスマスマーケットをみてみよう!】
(1)ドレスデン
大規模で盛大。その一方で、旧東ドイツ地域だからか、ひっそりした雰囲気も残っている。なんというか、心に触れてくるような素晴らしさ。


(2)ニュルンベルク
とても完成度が高くて、万人から愛されるマーケットだと思う。


(3)シュトゥットガルト
それぞれのお店の屋根の上に、いろんな飾りが乗っているのが特徴。


(4)デュッセルドルフ
比較的小さな街なので、アットホームな感じ。

(5)ミュンヘン
ドイツの中でも独自の「山の文化」が確立している地域。屋台も山小屋風の雰囲気のものが見られる。


(6)オーストリアのウィーン
ドイツのものとは、また少し雰囲気が違う。


クリスマスマーケットは、都市ごとにそれぞれに特徴があって、雰囲気もそれぞれ違っている。正直、気軽にランキングを付けられるものではないな、と思う。「文化」と同じで、「それぞれが違っている」、けれども「絶対的な優劣があるわけではない」。あるのは、ただ「違い」だけ。
あと大都市のマーケットもいいけど、観光客の来ない街や村で地元の人しか来ないマーケットも、手作り感に溢れていて、個人的には結構好き。地元の人たちが熱心にバザー品とかを食い入るように見つめていたり、手作りのクリッペが並んでいるのを眺めるのも、それはそれでドイツ人のナマの生活が垣間見れて、おもしろい。

【ひと言コメント】
クリスマスマーケットに行って、いつも気になっているのが、クリスマスマーケットの光。蛍光灯の白い光ではなく、暖色の暖かい光が使われていることが多い。
ところで、僕をはじめ日本人は、黒に近い「濃い茶色の瞳」を持った人が多い。夜は蛍光灯の白い光でないと、暗くて見にくい。
一方でドイツ人や北欧の人たちは「青い瞳」や「薄い茶色い瞳」を持った人が多い。彼らは日本人よりも遥かに夜目が効く。日本人たちとは、見えている光の量も違うし、そもそも見えている光の色すら違うはず。
そんな薄い色の瞳を持ったドイツ人たちにとって、このクリスマスマーケットの暖かくて光が溢れるような光景は、どんな色でどんなふうに見えているのだろうか。
こればっかりは、、、どれだけ彼らから話を聞いても、同じ光を見ることはできないんだろうなぁ。
by 世界の人に聞いてみた
