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正直さは、安全を受け入れた先でしか機能しない。


以下は、前述した事実記述をもとに、
人物評価ではなく、あくまでもポリヴェーガル理論的(自律神経の新たな理解)に「何が起こっていたのか」を解説してみたいと思います。

人気ブロガー、S様。40代男性。
定職には就かず、読者から「会いたい」と言われれば、
どこへでも飛んでいく。辛辣な言葉で人生相談をし、その会話をそのまま文章にして発信している人だ。

彼の文章には、いつも同じ匂いがあった。
正直であれ。
正直に生きることは、美しい。

一か月ほど前、彼のあるブログ記事を読んで共感し、SNSでシェアした。
それを読んだKちゃんが「この人に、会いたい」と言った。理由は、よくわからない。でも、強くそう思ったらしい。

昨日、たまたま一緒にいたとき、S様が「今、大阪にいる」と発信しているのを見つけた。Kちゃんが連絡したら会ってくれることになった。その場にいた数人も同席し、了承を得たうえで、私の借りているマンションの一室で夕飯を一緒に食べることになった。

最初に会ったとき、ブログから想像していたイメージと、目の前の彼が、うまく重ならなかった。幸せそうには見えない。むしろ、苦しそう。
こちらを、少し警戒しているようにも見えた。

——あれ?そんな違和感が、一瞬よぎった。

夕食会が始まった。自己紹介をして、今日ここに至った経緯を話し、
「どうして大阪に来てたんですか?」そんな、当たり障りのない会話が続いた。

S様は、
「自分はなぜ呼ばれたのか」をはっきりさせたいようだった。
そこでKちゃんが言った。「最近ブログを読み始めて、無性に会いたくなりました。それと、友だちのMちゃんの相談も聞いてもらえたらと思って」

Mちゃんが、今抱えている状況を簡単に話した。
S様は言った。
「いったん、一人になったらいいんじゃないですか」
それだけだった。場が、少し止まった。

また、たわいもない会話に戻った。

しばらくして、
S様の様子が変わり始めた。

顔が歪み、下を向き、質問への答えが短くなっていく。

イライラしているのが、はっきり伝わってきた。

私たちも、戸惑い始めた。
「……今、何が起きているんだろう」

その空気を感じ取りS様が言った。「だから、こういうグループで会うのは苦手なんです。それを、いつも書いているのに」
「親戚の集まりみたいなところに呼ばれて、表面的な会話をするのがしんどい」そう言ってうつむき、目に涙を浮かべているようだった。

空気が、完全に変わった。誰も話さなくなり、食べる音だけが響いた。苦しい沈黙だった。

どうしたらいいのか、誰にもわからなかった。
「コミュニティって、僕がいると、いつもこんな空気になるんです」
自虐なのか、批判なのか、その区別もつかない言葉が、場に落ちた。

最悪な雰囲気の中Mちゃんの携帯が鳴り、彼女は席を外した。隣の部屋でのMちゃんの電話の会話が聞こえてくる中、気まずさは消えなかった。しばらくするとMちゃんの電話の声が止み、たばこの煙が漂った。
S様は「トイレを借ります」と立ち、そのまま一服に合流した。
彼がいなくなって、少しだけ、息ができた。

戻ってくるなり、S様は言った。
「さっき一服しながら、Mさんとは出会えた感じがしました。
でも、今日会いたいと言ってくれたKさんには、まだ出会えていない気がします」

Kちゃんは言った。「私も、Sさんに出会いたいです。
どうしたらいいですか?」

S様は、少し黙ってから「僕が今一番やりたいのは、
Kさんに本当に会うことです。でも、どうしたらいいのかわかりません」と言った。

沈黙のあと、
「無価値感かな」彼は、そうつぶやいた。

「え、無価値感ってどういうこと?」とKちゃん。

私が口を挟んだ。「本当の自分には価値がないと思って、
違う自分を装っている、という意味なのかな?」

S様は「そこまでは言ってない」
そして続けた。「はっきり言います。あなた方(Kちゃん以外)がノイズになっています。さっきから人のことを代弁して、過保護な母親のエネルギーを感じます」

その言葉に、私は何も返せなかった。

「今日は、これ以上難しいですね」そう言って、
S様はその場から逃げるように帰っていった。
彼はその日の所持金は500円しかなかったらしい。カンパはしたが、食事には手をつけず、宿の提案も断った。


彼が帰ったあと、私たちは長い時間、言葉を交わした。

誰かを断罪したかったわけではない。「何が起きていたのか」を知りたかった。
今なら、少しだけ整理できる。

あの場で起きていたのは、性格の問題でも、善悪でもなかった。「神経の問題だった」という感じがする。
Sさんは、人の感情をとてもよく感じ取る。空気の変化にも、期待にも、すぐに反応する。
その分、
・複数人
・役割が曖昧
・期待が集中する
そういう場では、神経が一気に過覚醒になる。

逃げるか、攻撃するか。どちらかしか残らなくなる。

集団が苦手なのも、人を拒絶してきたからではなく、
場に耐えられなかったからなのかもしれない。

そして、もうひとつ。
S様はずっと、「正直であろう」としてきた人だ。正直でいることで、自分を守ってきた人でもある。

でも、正直さは万能じゃない。
神経が崩れているときの正直さは、刃物みたいな形で外に出る。
本人の意図とは関係なく。

あの夜に起きていたのは、誰かを切りたかったわけでも、誰かを支配したかったわけでもなく、耐えられなくなった神経が、場を壊すことでしか自分を守れなかったという現象だったように思う。

正直さは、美徳だ。
でも、条件つきだ。

安全な器があること。
余白があること。
逃げ道があること。

それがない場所での正直さは、誰かを救う前に、誰かを傷つける。
正直さは、安全を受け入れた先でしか機能しない。

昨日、私たちが持ち帰ったのは、その氣づきだった。



※以下は、当事者の人格や生き方を評価するものではなく、心理カウンセラーとして、その場で起きていた神経系のプロセスを整理した考察です。

強い期待にさらされた神経系

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