【せりふ三題噺】 雑貨屋にて (715文字)
『SALE!』の紙が貼られた向かいの棚には、ふわもこのパジャマやブランケットが並ぶ。
「どれくらいふわふわなのかな?」
「一回くらい触ってみたいね」
「ね」
ちいさな文鳥の置き物といちごの箸置き。
長らく買われない同士、仲良しになった。
数日前から冬物セールがはじまり、ふたりは毎日、ふわもこパジャマへの憧れを話している――人間には聞こえない、小さな声で。
「ぼくたちの本物もふわふわしているのかな?」
「本物、見てみたいなあ」
本物を見るためには人間に買われるしかなかった。
『どんな人に買って欲しい?』と話す日々は過ぎ去り。彼らもまた『SALE!』売り場へ行くことや、その先……買われなかった先を恐れる日々だ。
「あっ」
いつもどおり仲良く過ごすさなか、突然、いちごの箸置きが大きな指先につままれ、宙に浮く。
どうやら買ってもらえるようだ。
文鳥は目を丸くして。
とっさに、ありったけの気持ちで叫んだ。
「おめでとう!!!!」
いちごも一瞬、声をなくしてから叫ぶ。
「ありがとう!!!!」
突然の別れは、一瞬の出来事だった。
文鳥の置き物もまた、同じ指でつままれたからだ。買い物カゴの中でふたりはかち合う。かちゃん。
『それも買うの?』
人間の声がする。
『なんだか目が合った気がして〜』
声の主の腕に、ふわもこパジャマもある。
レジで丁寧にたたまれたふわもこパジャマの上に、いったん置かれた文鳥といちごは、信じられない気持ちでお互いを見つめる。
いちごは文鳥にささやく。
「おめでとう!」
「ありがとう、おめでとう!」
「ありがとう、おめでとう!」
ふたりは、一緒のおうちに行ける喜びでいっぱいになりながら、憧れのふわもこパジャマに触れている。ふわふわ、もこもこ。
夢のような、幸せなあたたかさだ。
(了)
◆
はらとけいさんの素敵な企画「せりふ三題噺」への参加です。
はらとけいさん、いつもありがとうございます。
お題
◯ セリフ
「おめでとう!」
◯ 三題
(いちご/パジャマ/文鳥)
