「下呂温泉から始まった、私たちの旅物語」
旅先で食べる一口が、何年経っても記憶を呼び戻すことがある。
私にとって「飛騨牛の串焼き」は、まさにその象徴だ。
数年前、妻と訪れた下呂温泉♨️
まだ付き合い始めたばかりで、どこに行っても新鮮で、どんな時間もかけがえのないものだった。温泉街のにぎわいの中で、香ばしい匂いに誘われて食べたのが飛騨牛の串焼きだった。ひと口かじった瞬間、思わず顔を見合わせて笑ったのを今でも鮮明に覚えている。
松坂牛や近江牛といった有名どころも口にしたことはあるけれど、飛騨牛は格別だった。何よりあの時の雰囲気と一緒に味わったからこそ“特別”になったのだと思う。
その旅では、ホテルのロビーでも一枚の写真を撮った。柔らかな光が差し込む空間で、二人とも自然に笑っていた。後から見返しても、あの笑顔は作ったものではなく、心から楽しんでいる顔だった。妻はその写真をずっと気に入ってくれていて、誕生日にマグカップへプリントして贈ってくれた。今も我が家の食卓にあるそのカップを見るたび、ロビーの空気感や、あの時の高揚感がふわっと蘇る。
マグカップにはもう一枚、忘れられない写真がプリントされている。夕陽を背に、海辺で二人並んで座る後ろ姿を撮ったものだ。オレンジ色の光に包まれた私たちのシルエットは、まるで映画のワンシーンのようで、言葉にしなくても心が通じ合う時間だった。旅の中で見た景色や食べたものはもちろん大切だけれど、こうした「心を重ねた瞬間」こそが、思い出をより強く刻んでくれる。
飛騨牛の串焼き、ロビーの写真、夕陽の後ろ姿。
どれも「旅が終わっても続いていく宝物」だと感じている。
あの時の思い出があるから、今も二人でまた旅に出ようと思えるし、これから先も「新しい宝物を見つけていこう」と思える。
旅の一口と一枚の写真が、私たちの人生に温かい灯りをともしてくれている。
