マリは三日月が嫌いになった
マリは三日月が嫌いになった
針みたいに細い三日月が生まれ
空にひっかかると
夜はカリンと冴え渡り
心まで研ぎ澄まされてくるみたい
それは幼いマリの心をいつも奪った
怪しくて寂しくて冷たくて美しい
三日月はマリのいちばんお気に入りの月
あの人がいつも研いでいた懐刀
あの人がいつも研いでいた精神
その鋭さと煌めきは三日月に似て
病棟の窓と自宅の窓から見上げる
会えない夜を仲介してくれたのは
まあるいお月さんたちだった
あなたが空へ渡った日
空には大きく煌めく三日月が
美しく怪しく微笑んでいた
三日月の晩を選ぶとはあなたらしい
三日月があの人をつれていってしまう!
どうかつれて行かないで
あの日マリは三日月を恨めしく見上げた
ひょっとするとあの人は三日月に還ったのかもしれない
あれから1年あまりが経ち
今もまだ
三日月を憎んでいる
三日月を哀しんでいる
🌒 🌒 🌒
お粗末さまでした。先日、見事な三日月と目が合い、このような散文を書こうかなと着想しましたが、時間が取れないのと、思うようにすらすら出てこなかったので断念していました。
パンケーキさんの短歌と哀歌
そしたら、タイムリーに三日月をテーマにした美しい短歌と物語を書かれている記事に目が留まりました。普段から切ない恋愛小説やお題ショートショート、花言葉の紹介、保育士さんとしての日常など多岐にわたる分野で魅力的な記事を書かれているパンケーキさんです。
「繊月(せんげつ)」という素敵な言葉を初めて知りました。
抽象的な物語がまるで彼と私の物語と重なって、思わずコメントを書き込みましたら、なんと、さらに素敵な返歌でお返事くださいました。なんとおしゃれなことを!
パンケーキさんのコメントの哀歌は拙稿【知られざるアーティストの記憶】の二人の関係を抽象的に詩的に掬ってくださっているようで、びっくり感動してしまいました。パンケーキさんのコメントの哀歌をご紹介させていただきますね。
恋する気持ちのままで過ごすアナタとワタシ
結ばれてなお愛しいアナタ
フタリは愛より純粋なもので形どられている。
アナタを思うとワタシの身体はどこまでも透きとおり
叶うことなら、アナタの中の至るところまで澄み渡りたい。
アナタもワタシの身体の至るところまで染みてきて
証を残して細く優しく微笑んでいる。
逢いたいとココロを震わせる
研ぎ澄ませて感じているココロ。
***
コメントありがとうございます。
コメントに応える形の哀歌です。
「繊月のようなワタシの…。」コメント欄より
「フタリは愛より純粋なもので形どられている。」
「アナタもワタシの身体の至るところまで染みてきて
証を残して細く優しく微笑んでいる。」
美しい言葉で表していただき、ありがとうございました。
パンケーキさんにこのようなおしゃれなことをされては、と、私も葬り去ろうとしていた着想を頑張って形にしてみました。なかなかうまくは書けませんが、形にできてよかったです。
彼の懐刀
彼が亡くなってから、彼の工具入れからよく研がれた懐刀(ふところがたな)が出てきました。何年も仕舞い込まれていたら普通は錆びてしまうでしょうから、日頃からたまに研いでいたんだろうと思われました。
大工ではないけれど、よろず屋で、古民家の解体などもしていた私の知人がこの刀を見て、
「今日見せていただいた道具の中で、この刀が一番心に残りました。彼の道具を大切する生き方に感動しました。この刀は、私がいただいていくより、行美さんの宝物にされたほうがいいと思います。」
と言ってくださいました。
これがその刀です。

彼はこの刀とともに、常に心を研ぎ続けていたのかもしれません。
