少し頑張りすぎた
学部生の講義のTAをしている。先日はレクリエーションの手伝いもした。そのとき使った風船を男子学生が両手で破っていた。その鈍い破裂音に驚いた女学生が小さな声を漏らす。風船なんて最近触ってないや。
数字の風船なら、インスタグラムで嫌というほど見た。薄暗い部屋で、その風船2つを抱えて俯き気味の女。いつだって満たさている感が演出されているストーリーの中でも、それはとくに嫌いだった。撮ってあげる男も含めて、針を立てれば割れそうなくらい軽い人間だ。みんな同じことをするのが好きだよな。
こうやって人のことは見下すけど、刺しはしない。そんな勇気ないもの。もし風船を割ろうとしてくる他人がいたのなら、その針が刺さろうとしているところにセロハンテープを貼る。音を立てて破裂はしなくなる。しぼみはするよ。でも針を突きつけられなくても、風船は時間が経てばしぼんでゆくだろ。
どこかでもらった風船はやけに上へ上へとあがっていった。天井に放っておくと翌日には一回り小さくなって、腰くらいの高さでゆらゆら浮遊した。幼い僕は、風船を生きている自分と同類だと思った。しぼんでゆく様子は少し残酷に見えたが、懲りず数多の風船を膨らませてきた。いまはもうそんなことはしない。いまはもう、顔がこわばって膨らませられないかもしれないから。
院生になって2カ月。ちょっと張り切りすぎた。誰に針を刺されたというわけではないけど、シューッと空気が抜けていった。だから明日の講義は休んでやろうと思う。仮病を使うよ。でも、フランス語は行く。すべてをやめていきていけるほど僕はビビットじゃない。
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