ジムに「無限の階段」が現れた話 〜登山トレーニングは、こんなところにあった〜
久しぶりにジムに行ったら、見慣れないマシンが増えていた。

無限に回り続ける階段。乗った瞬間、頭の中に浮かんだのは「これ、完全に登山の練習台じゃないか」だった。
正体は「クライムミル」
このマシン、正式には**Matrix ClimbMill(クライムミル)**というらしい。いわゆる「ステアマスター」の系譜にあたる、エスカレーターのように階段そのものが回転し続けるタイプの有酸素マシンだ。ペダルを踏み込む一般的なステッパーとは違い、実際に足を上げて段を踏みしめる動作になるので、感覚としては本当に「終わらない階段」を上り続けているのに近い。
スペックを調べてみると、これがなかなか本格的だった。
ステップ(踏み板)は8段が輪になって連続回転する構造
踏み板の奥行きは約25.4cm、高さは約20.3cmで、実際の階段の一段とほぼ同じ寸法
速度は毎分26歩〜162歩まで調整可能。ゆっくり歩く速度から、駆け上がるようなペースまで対応する
抵抗(負荷)は段階的に調整可能で、同じ歩行速度でも脚への負荷を細かく変えられる
コンソールには時間・歩数・登った階数(フロア数)換算・消費カロリー・心拍数・METs(運動強度の指標)などがリアルタイム表示される
心拍センサーは接触式・テレメトリー式の両対応
汗が内部の駆動部に入り込まないよう逃がす機構(Sweat Management System)まで備わっていて、業務用ならではの作り込みを感じる
そして今どきのマシンらしく、送風ファンが内蔵されているモデルも増えている。階段を上り続けると想像以上に体温が上がるので、これは地味にありがたい装備だ。
「エッフェル塔」の高さまで登ってみた
このマシンの面白いところは、ただ漠然と階段を上るだけでなく、目標となる建造物の高さを設定して、そこまで登り切るという遊び方ができる点だ。試しにエッフェル塔(約330m)を選んで登ってみた。
数値としては知っていた「330m」という高さが、一段一段の脚の疲労感を通して少しだけ実感を伴うようになる。ゴールまでの残り距離がコンソールに表示され続けるので、ただの有酸素運動が「登頂ゲーム」的な感覚に少し近づく、という程度ではあるけれど。
そしてこの「高さで区切って登る」という発想が、登山をする人間からするとやけに相性が良い。数値としての標高が、実際に足で踏みしめた感覚とセットで蓄積されていく。たとえば「今日のトレーニングは、仙丈ヶ岳の小仙丈尾根の標高差分」というふうに、実際の山行に置き換えてメニューを組めそうだ。
なぜ登山トレーニングとして理にかなっているのか
ランニングやエアロバイクと比べて、階段を上り続ける動作には登山特有の負荷が近いという特徴がある。
動員される筋肉が、上り坂を歩くときに使う大腿四頭筋・臀筋・ふくらはぎと一致しやすい(ランニングは接地衝撃や前方推進の要素が強く、上り特有の「持ち上げる」動きとはやや性質が違う)
運動強度の目安であるMETs換算でも、階段上りは中〜高強度(目安としておおむね8〜12METs程度)に分類されることが多く、短時間で心肺への負荷をしっかりかけられる
天候に左右されず、季節を問わず毎週コンスタントに「登り」の刺激を入れられるのが最大の利点。夏の高山シーズンが終わったあとの体力維持や、逆にシーズン前の脚づくりにそのまま使える
正直に言うと、これまで登山前のトレーニングをそこまで真剣に考えてはいなかった。ジョギングで心肺機能を鍛えておけば大丈夫だろう、くらいの認識だった。ただ今回このマシンに乗ってみて、ランニングで鍛えられる持久力と、実際に登りで使う筋肉とは、必ずしもイコールではないことに改めて気づかされた。心肺機能だけでなく、登山特有の「持ち上げる」筋肉も意識してトレーニングする必要がありそうだ。
まとめ
まさか近くのジムに「無限に上れる階段」が導入されているとは思わなかった。エッフェル塔の高さを目標にできるという遊び心も含めて、単調になりがちな有酸素トレーニングが、登山の疑似体験のように感じられたのは新鮮だった。
天候に左右されず、季節を問わず「登り」の負荷をコンスタントに入れられるというのは、シーズンオフの体力維持にも、次の山行前の脚づくりにも使える、地味だが強力な武器だと思う。頻度や使い方はまだ模索中だけれど、しばらくは山行のスケジュールに合わせて、このマシンをどう組み込んでいくか試行錯誤してみようと思う。
