水環都市探偵奇譚集/インタビュー:開発者先崎氏抜粋
――本日は、インタビューに応じていただき、誠にありがとうございます――
先崎:こちらこそ、こんな機会を設けていただき、感謝いたします。
――早速ですが、先崎さんが開発に携わっている装置について、改めて説明をよろしいでしょうか? かなり革新的な技術だと思っているのですが――
先崎:ありがとうございます。改めて説明すると照れくさいのですが「AIセラピー装置」と言いまして、分かり易くそのまま、AIによるセラピーを行うマシンです。具体的に言うと、マシンにセラピー対象のデータなどを蓄積させて、その都度その都度に患者に寄り添ったセラピーを行ってもらいます。病院に勤めるセラピストの先生方の助けにもなっていただけたらと思っております。
――個人的に惹かれたのが、対象の人格データを投影して精巧なデジタルモデル(※物理的な物体、システム、プロセスなどをコンピュータ上の仮想空間で表現・再現したデータやプログラムのこと)を作成して、より立体的に自由に患者や医師のデータを反映させるという機能だと思うのですが、如何でしょうか?――
先崎:仰られる通りで、特定の人物の人格データを反映させて、例えば患者自身のデジタルモデルを作成したら、その人がどのように傷ついてしまったか、精神的負担を抱えることになってしまったかを分かり易く本人に自覚してもらいながら、セラピーを進めることができます。自分自身との対話ですね。これにより、自分自身を許せるといったこともできる。
――自分自身との対話による精神的緩和、なんだか身に積まされるようなことと言いますか(笑)、素晴らしいですね――
先崎:そう、自分自身が何がしたいのかと、自分に問うことだって出来て、知らない間に自分がこんなに傷ついてしまっていたことに気付くこともできるんです。もちろんこれは他者にも応用可能です。
――他者と言いますと、先程仰られた医師の助けにもなるですかね? それこそ医師の代わりにデジタル医師としてもセラピーが可能と…?
先崎:まさしくその通りです。これは私自身がAI助けられてきた、彼らに対する一種の恩返しとでも言いますか(笑)、生成したデジタルモデルの医師とのセラピーも可能です。そうして生身の医師と連携をとってもらうんです。そうして人間の観点からも、AIの観点からも、患者の治療に役立てればと願っています。
――なるほど。そういえば先崎さん自らマシンの被験者になってデータをおとりになられたとお聞きしておりますが――
先崎:もちろん、開発の上で自ら実験台になるのは大事なことです。その、ちゃんと自分の体で立証しなければなりませんから(笑)
――なるほど、それは確かに(笑)エンジニアの性というやつですね――
先崎:そう、そんなところです(笑)とは言っても、私の人格データを反映させたデジタルモデルは作成したものの、あくまで私は開発者なので、セラピストではありませんが(笑)データを蓄積させてもなにかセラピーに役に立つかな?
――なにか、立体的なメッセージとして応用できそうな気がしますね――
先崎:そうですね、なにか秘密のメッセージを、そうですね、例えば恋人に残しておくことも可能でしょうね“君に秘密にしておいたことが…”ですかね(笑)
――なんだかそっちの方面でも応用が効いて人気が出そうですね(笑)――
先崎:それはそれで成功したらこっちとしては嬉しいですね。現実の人間でも虚像でも、言葉のやり取りという目的は果たしているので。私も現在婚約している女性がいるのですが、彼女に残したいメッセージは山ほどありますから(笑)
――いきなり惚気ましたね(笑)しかし婚約者さんのご理解もあってのことだと思うのですが、聞くところによると、彼女は取引先の社員だったそうですね? なにか運命のようなものを感じますが、どうでしょう?――
先崎:それこそ、彼女に対する感謝や、日頃言えていない言葉を、このマシンの僕に託して話したいですね、趣旨はズレちゃいますけど(笑)
――微妙にはぐらかして上手いこと落とし込んで、ずるいですね(笑)それでは、お時間が来てしまいました。それでは、先崎育英さん、本日はどうもありがとうございました――
先崎:こちらこそ、ありがとうございました。
