資料②:「マンションにて」20●●年11月20日 鏡屋恭一さんへの取材記録

※以下、雑務担当のザム・ザッツウェルによる聞き取り調査を文章化したもの。

ザム:どうもっす、本日は聞き取り調査協力感謝っす。
鏡屋:どうも、このマンションの管理人をしております、鏡屋恭一です。いや~若いのに探偵の雑用とは大したもんだね。うちで使ってる監視AIについて聞きたいんだってね。差し障りの無い範囲までなら話せるよ
ザム:お願いするっす
鏡屋:これといって大きなことはないさ。ただ、何人かの住人では不思議なことがあったとか、世間話で聞いたぐらいだね。私も含めてそこまで気にしちゃいないというか。
ザム:それくらい、なんてことは無かったってことっすか?
鏡屋:一つ一つは奇妙な話だよ。例えば仮の名前で言うけど、2階に住むDさんの話だけど、丁度マンションに帰って来て駐車場に車を止めた時だ。奇妙なものを見たって言うんだよ。夜だったんだけどやけに輪郭のはっきりしない人の姿が靄のように浮かんでいたらしいんだ。興味本位で近づいて見たら人だとわかったんだけど、季節外れの春着を着てた男性で、何度も同じ所を行ったり来たりしてたそうだ。かと思えば誰かと話しているようなやりとりをしたりして、流石に気味が悪くなって自室へ帰ったそうだ。でも今にして思えば、あの人物の輪郭はやけにぼやけていて、CGで映し出されたような光があったから、後からあれはホログラムだったと思ったそうだ。
ザム:それで、そのホログラムは監視AIから映し出されたものだったんじゃないかってことっすか?
鏡屋:Dさんの見解ではそう納得したそうだ。別に監視カメラの映像が誤作動を起こして立体映像を映し出したって、なんも不思議じゃないってね。さっぱりした人だよ。
ザム:そりゃあ、テクノロジーが発達したこの世の中じゃあ、そう思うのも案外普通なのかもしれないっすね…。他には?
鏡屋:2つ目はNさんだね。この人の場合はマンションの公園で見かけたらしいけど。真昼間に丁度子供達が遊んでいる光景を目にしたそうだよ。
ザム:それだと普通っすね。
鏡屋:そう、だけど一目でおかしいとわかったのは、季節は冬だったのに皆夏服を着ていたそうだ。しかも、よくよく見ると子供たちの姿は、さっきの話と同じだけど妙な光の揺らぎがあって、遊具で遊んでいても、時より擦り抜けていたそうだよ。それでこれはなにかの立体映像が映し出されているって気付いたそうだ。それはそれとしてなんでこんな不可解なことが起きているのかわからず、しばらく辺りを見渡してたそうだよ。そうしたら同じく異変に気付いた他の住人も集まって来て、皆で子供達のホログラムを眺めていたんだとさ。
ザム:それで、結局それも監視AIの誤作動か何かだと皆思ったんすか?
鏡屋:何気なくDさんが、公園近くに設置されている装置を見て、そこから変な音が鳴っていたり、公園に一筋の光の線が伸びていることに気付いて、これは機械の誤作動でこんなホログラムが映っているんだなとわかったそうだ。それで特に害があったわけでもないし、皆納得して帰っちゃったんだ。
ザム:皆そんなに気味悪がったりしないもんなんですかね。まあ機械の誤作動だってからくりがわかったならそりゃあそうかもしれませんけど…。
鏡屋:皆案外そんなもんでしょうねえ。一昔前では不可思議な怪現象って騒がれたでしょうけど、世界もこの街もあんなことがありましたからね…皆不思議がってもそこまで騒ぎ立てたくないのかも、面倒な事件に巻き込まれたくないって。
ザム:それは確かにわかってしまうような気がするっす…。
鏡屋:ただ、少しばかり変わった内容の人はいましたよ? Lさんだったかな? この人の場合は部屋の中で起こった出来事でしたからね。

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