不便だからこそ、楽しかった──通信ケーブルとポケモンに教わったこと
「ゲームボーイ世代」の私が今、甥っ子と分かち合う遊びの記憶
「にいに、これ誰の進化系か分かる?」
実家に帰ると、小学1年になる甥っ子からポケモンクイズの連発。
かれこれ29年前、私もゲームボーイを握りしめてポケモンに夢中になっていた一人です。
通信ケーブル、裏技本「大技林」、そして友達との“通ケー”交換──不便だったけど、なぜか心が満たされていたあの頃の記憶が、今またよみがえってきます。
今回は、「不便さの中にあった満足感」について、懐かしのポケモンを通して語ってみたいと思います。
【1】ポケモンとの出会い──小学5年、人生が変わった瞬間
私が「ポケモン」と出会ったのは、小学5年生の頃。
1996年に発売された『ポケットモンスター 赤・緑』は、あっという間に小学生の心をわしづかみにしました。
当時はまだインターネットも一般家庭に広がっていない時代。
テレビCMやコロコロコミックの情報を頼りに、友達と「どのポケモンが最強か」「どの技構成がベストか」を真剣に語り合っていました。
ポケモンには「進化」や「育成」、そして「交換」「対戦」といった要素が盛り込まれていて、
単なるひとり用のゲームではなく、“友達と一緒に遊ぶ”ことを前提としたゲームだったんです。
当時、ゲームボーイは兄弟で1台を共有するのが当たり前。
セーブデータは1つしか作れないので、親に泣きついてもう1台買ってもらった子がヒーロー扱い。
おこづかいを貯めて攻略本を買い、「裏技」を知ってる子は神のように尊敬されていました。
私もその一人で、「大技林」という分厚い裏技本を愛読し、
ポケモンの技構成やアイテム増殖の裏技、伝説のポケモン「ミュウ」の出し方を読み漁っていました。
「どこまでが噂で、どこからが本当なのか?」
そんな情報すらあいまいな時代に、“自分で確かめに行く”ことが遊びの本質だった気がします。
【2】通信ケーブルと“交渉”というスキル
ポケモンには「交換進化」が存在します。
ゴーストをゲンガーにするためには、誰かとポケモンを交換しないといけない。
でも、当時はWi-Fi通信なんてない。
ポケモン同士をつなぐ唯一の手段が、ゲームボーイ同士をつなぐ「通信ケーブル」、通称「通ケー」でした。
この“通ケー”を持っている子は、学校で一目置かれる存在。
放課後に「〇〇んちで通信しようぜ!」とみんなで集まり、ゲームボーイを並べて通信。
ケーブルがゆるんで通信エラーになると、みんなで「あーーー!!」と叫んでやり直し。
そんな不便な環境でも、なぜか楽しかったんですよね。
私は当時、通ケーを持っていなかったので、通ケー持ちの友達の家に20分かけて歩いて行くのが日課でした。
「ギャラドスとカビゴン、どっちと交換する?」
「ミュウツーは出せんばい!」なんて、真剣に交渉。
この時の“交渉力”は、今思えば人生に役立つスキルでした。
スマホやオンラインゲームで簡単に「交換」ができる今と違い、
“人と会うこと”が交換の前提だったのが、今思うととても貴重だったと感じます。
【3】「不便」は、時に心を豊かにする
スマホ一つで何でもできる今の時代。
情報収集もオンライン、ゲームの攻略もYouTube、データ交換も一瞬。
正直、羨ましいと思う反面、何かを失ったような気もします。
「苦労してたどり着く」
「試行錯誤しながら覚える」
「友達に聞きながら学ぶ」
こういったプロセスが、ポケモンというゲームをただのデジタルな遊びから、実体験へと昇華させていたのかもしれません。
道具を増やす裏技を手書きのメモに書いて、
「この順番でやると成功するよ」と言い合った放課後。
インターネットがなかったからこそ、
人と人とが“向き合って”情報を交わしていた。
不便は、決して悪ではありません。
むしろ、人とのつながりや記憶に残る体験をくれる“スパイス”のようなものなのです。
【4】ポケモンがくれた“世代を超える共通言語”
そんな私も、今では39歳。
結婚し、3児の父となり、仕事は理学療法士をしています。
最近、実家に帰るたびに、小学1年の甥っ子から「ポケモンクイズ」を出されるようになりました。
「これ、進化系分かる?」「この技、どのタイプに効果抜群か知ってる?」
その瞬間、ふと気づいたんです。
ポケモンは世代を超えて“共通言語”になっているんだなと。
私は初代ポケモン、甥っ子はSwitchで最新作。
時代も、ポケモンのデザインも、バトルシステムも全然違う。
それでも「カビゴンは強いよね」「リザードンはかっこいいよね」という会話が、年齢差を一気に消してくれる。
そして私の仕事であるリハビリでも、ポケモンは大活躍。
特に子どもたちと信頼関係を築く上で、「好きなポケモン何?」という問いかけは最強のアイスブレイクです。
カタい雰囲気が一気にほぐれ、笑顔が生まれます。
【5】まとめ:通ケーがくれた“人とつながる力”
通信ケーブル。
いまの子どもたちに言っても「なにそれ?」と笑われる道具。
でも、あれこそが、私たちの“人との関わり方”を育ててくれたアイテムだったように思います。
自分で行動し、友達に声をかけ、交渉し、つながる。
ポケモンというゲームを通じて、**人との付き合い方の「原点」**を教えてもらった気がします。
そして、時代が変わっても、子どもたちとその話ができる。
それは、ゲームの枠を超えた「体験の共有」があったから。
たった1本のケーブルが、あれほど多くの笑顔や友情、ワクワクをつないでくれた。
今の便利さに感謝しつつも、あの「不便さ」が生んだ豊かさを、これからの世代にも残していきたいと思います。
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