乙ゲーやってたらヒロイックファンタジーになったんですけど③
翌日、私たちは日の昇る前に朝食を食べ、テントを畳んで出発
した。
足が痛いことをラトルに言ったら、どこからか大きな葉っぱを採ってきてくれて、それを太ももに貼ったらすーすーして大分楽になった。
前日と違ってなだらかな山を下って行くルートだったので、それ程疲れずに済んだ。太陽が頭のてっぺんに来る頃には山道を下り終えて、麓にある村にたどり着いた。道に沿って民間が五、六軒点在している。
私たちは最初に見つけた家で馬車を借りられないか聞いた。すると五軒目に大きな厩のある農家で運送業をやっているというので向かった。恰幅のいい主人とラトルが交渉し、馬車を借りられることになった。
「あなたたちは旅のお方なんですね。ようござんす、うちは農業のかたわら御者もやっておりましてね。よく旅人を乗せて街道を走るのです。馬は五頭いますが一番活きのいいのを二頭用意しやす」
「ありがとうございます。十万モンでよろしいですか?」
ラトルが、一万銀貨を十枚見せると主人の目の色が変わった。
「これば過分に頂いて。ところであなた方食事はよろしゅうございますか?」
「いえ、まだです」
「それなら早速用意致します。田舎料理で口に合わないかもしれませんが」
「ではお言葉に甘えて」
私たちは温かいランチを食べたあと、主人が御者を務める二頭立ての馬車に乗って街道を一路南西へ向かった。あたり一面は見渡す限りの葡萄畑だ。ワインがゴールドバニア地方の名物らしい。
私たちはそれから宿に寝泊まりしながらよ三日三晩馬車に揺られ街道を南西に進み、ようやく州都ベルベロベッラに到着した。

大平原に突如賑やかな商業都市ベルベロベッラが現れた。
アルパチノ山脈から流れ下る大河ミガモ川はこの地方の大動脈だ。その川の支流が農地へと枝分かれする場所、三日月のような中洲を形作った場所に、女領主ジェパ・ヴァレリラの居城……ヴァレリラ城が建っている。高く堅固な石垣で囲まれた城は、まるで水に浮かぶようにそびえ立ち、その周囲には城下町が広がっていた。
そこを中心に商人や貴族、武人の家がまとまって建ち並んでいた。街そのものには防壁はなく、主要な街道沿いに簡素な門と見張り台が設けられていた。
私たちは街道沿いに設けられたその門をくぐり、御者のおじさんにお礼言って馬車を降り、街の中へと足を踏み入れた。
金物加工がさかんらしく、あちこちの露天で指輪や金細工を売る商人の掛け声と、金属を叩く鎚の音が鳴り響いていた。女たちは青や黄色のベールをまとい、男たちは先の尖った帽子を被ってる。
「へえ、賑やかな街ね。エルカリア王国とは大分雰囲気が違うわね」
「ここは農業と金属加工が主な産業だからね。ここのワインは各国の王侯貴族で高値で取引されているし、ここで加工された宝石はベルベライトと呼ばれ王族の婚礼衣裳には欠かせない装飾なんだ」ラトルは得意気に言った。
「へえ、それにしては貧しい人もいるようね」
裕福そうな商人もいれば痩せこけて貧しい身なりの老人もいる。白いロバに乗った痩せた少年の目はどこか虚ろだ。
「そりゃどこの国へ行ったって貧富の差が出るのはしょうがないよ。富めるものは富を独占するからね」
はあ、私の暮らしていた日本もそうだったけどやはりこれはしょうがないことかのかな。
「ところでお城に行ったらなんて言うの? いきなり軍隊を貸して下さいなんて言っても無理そうだし」
「まあみてなって。僕の天才的な話術で何とかするって」
「うーん、なんか不安だなあ」果たしてラトルに交渉が務まるだろうか。
「それよりよ。武具屋に行って姫さんが扱える剣と弓矢買わねえか」タスケは武具のことしか関心がないようだ。
「えー」
「うん、僕も剣買おっと。それと領主に会うんだからいい服着買って宿屋でお風呂に入ろう」
「それは賛成ー」
武具屋で私でも扱える短剣と弓矢を買った。私とラトルが買った剣は異国からの輸入品のワキザシという剣だ。タスケは今持ってる槍を売り払って、トンボ切りという槍を手に入れた。ここら辺じゃちょいとお目にかかれない一品らしい。但しお値段もよくて、10万モンも(ここら辺の宿に十泊できるほど)支払ってしまった。潤沢な軍資金も心許ない。
それから服屋でシュミーズと青いドレスを買って、薬屋で傷薬や滋養強壮薬などを買ってから宿屋に泊まった。男二人とは別の個室に泊まって、お風呂に入って寛いだ。ヘクトーはご多分に漏れずこの宿屋もペット禁止だったので、一晩外で過ごしてもらうことにした。ヘクトーは
「なに、この街は残飯が豊富でねずみも肥えてるようだから、とっ捕まえて食ってやるよ」と言ったので
「頼むからやめて。あとでお肉上げるから」と言って大人しくし物置小屋に泊まってもらった。
翌朝、宿屋の一階でみんなで朝食を食べに集まると、ラトルがお化粧してきたのでびっくりした。目にはアイシャドウ、頬紅に口紅、いつ買ったのか金の耳飾りに首には紅玉の瑪瑙の首飾りを付けている。タスケとヘクトーがそれを見てゲラゲラ笑っている。私も思わず微笑んでしまった。
「ラトル、一体どうしたのよその格好。お化粧なんかしちゃって」
ラトルは顔を赤らめて言った。
「だってさ。無類のイケメン好きのジェパに会いに行くんだよ。おめかししなきゃ」
「おめかしってか女装じゃん。かわいいよラトル」
私は思わずラトルの頭を撫で撫でしてしまった。金髪のラトルは顔を赤くした。
「ちょっと笑わないでよ。今回の会談がこの旅の成否を握ってるんだからね。念には念を入れないと。タスケも少しは身だしなみに気を遣ったら?」
そういえば今朝のタスケはバサバサの頭に無精髭が少し生えている。毎朝きれいに川の水とか使って剃刀でキレイにしてたのに。
「あ、これ? ジェパがワイルド系が好きかと思ってわざと髭を伸ばした」
「なんじゃそりゃー」タスケはタスケで考えていたのか。
「あのよ姉ちゃん。もしその女領主と交渉がうまくいかねえ時は俺を使いな。喋る猫を差し上げますとかよ」とヘクトーがダミ声で殊勝なことを言った。
「え? いいのあなたを上げても」
「な~に頃合いをみて逃げ出してくらあ。俺も役に立たねえとな」
「ありがとうヘクトー」
「にゃ~お」
私はポケットの袋に入れてあった煮干をヘクトーに上げて頭を撫でた。
とにもかくにもこうして私たちは女領主ジェパの館に行くことになった。
私たちは意気揚々と橋を渡ってヴァレリラ城へ向かった。このお城はゴールドバニア地方の要塞兼政庁だった。塔の上ではドラコンの旗が風に揺れている。
石造りの壁に、金と紅の装飾が施された大きな門がある。周囲にはよく手入れされたライラックの花が咲き誇り、庭先には衛兵たちが数人ぴしっと立ち並んでいた。彼らは全員、長身で整った顔立ちの若者ばかりだった。
「うわ……全員イケメンじゃん」 私は思わずつぶやいた。
「なるほど。イケメン好きというのは本当らしいな」 タスケが小声で言う。
私たちは正門に続く石橋を渡り、重々しい扉の前で足を止めた。
「止まれ。ここはこの地を治める領主ジェパ様のお城だ。要件を述べよ」
門の前に立つ門番が、威厳ある声で言った。
ラトルが一歩前に出て、優雅に一礼する。
「僕たちはポロロクロイス城から参った旅の者。ジェパ様に謁見をお願いしたいのです」
門番はラトルの白粉に頬紅を付けた顔をしげしげと見たあと、訝しげにラトルを凝視した。
「おまえ、女か?」
ラトルはにっこり笑って言った。
「ちがうよ。そこら辺にいるイケメンだよ。ポロロクロイス城で王様の近習をやってんの」
衛兵は一瞬ぽかんとしたあと、はははと笑い出した。
「面白いな。……少し待っていろ。執事に取り次いでやる」
やがて来た黒服の上品なおじいさんに中に通された。豪華な内装が広がっていた。大理石の床、シャンデリア、壁に飾られた巨大な武将の肖像画。椅子の背にも金細工が施され、天井には葡萄と孔雀をモチーフにしたフレスコ画。
「貴族って……やっぱり住む世界が違うなあ」私は思わず見上げてつぶやいた。
「やはり財政的に豊かなようだね」
「ヘクトーなんて連れてきて大丈夫かな」
「なに、心配ないって」
「ではここでしばしお待ちください」
執事にそう言われ、応接室で待たされ数分後、ゆっくりと扉が開き、きらびやかな衣装の背の高い女性が現れた。
「遠路はるばるよく来たわね。ポロロクロイスの使いにしては若すぎるようだけど」
私たちはペコリとお辞儀した。ラトルは言った。
「私たちはポポロクロイス城から来た旅の者です。ジェパ・ヴァレリラ様のご高名はかねがね伺っております。お目にかかれて光栄でございます」
「へえお世辞が上手いわね。ところでなんの用かしら?」
ラトルは淀みなくここに来た経緯を説明した。ジェパは不敵な笑みを浮かべてじっと耳を傾けている。
「……つまりそこにいるお嬢ちゃんは神聖マロン帝国の皇太子の元婚約者で、反乱軍を討伐して皇都を奪還するから軍を貸して欲しいって? あははは。もうろくしたねえ、ゾクダクスのじいさんも。誰がそんな火中の栗を拾うってんだい?」
ジェパは甲高いソプラノで高笑いした。色白でシャープな顔のラインに化粧を施した妖艶な目と口。艶やかな長い黒髪。ここベルベロベッラの女領主ジェパは噂と違わぬくせ者らしい風格を備えていた。
「いえ正確には500万モンの軍資金共に、この神聖マロン帝国からの留学生であるリリーティア様に私共ふたりを護衛に付け、あとは好きなようにしろと仰られたに過ぎません」
「ははーん大方ことを構えたくないんだね。あのじいさんは。いや元老院の意向かね」やはりバレたようだ。
「畏れながら申し上げます。ジェパ様の治めるこのゴールドバニア地方は広く肥沃な大地。農業生産力は元より上質な馬が揃っております。そして貴下の兵士は屈強な精兵揃い。中でも美男だけを集めた親衛隊を揃えていると聞き及んでおります」
「ほほほ。子供の癖に口が達者だこと。そうよ、私の親衛隊はイケメンぞろいよ。もちろん兵の練度も最高。演舞でも見ていく?」
「それはありがたき幸せ」
そう言ってラトルはお辞儀しながら、チラリとタスケに目配せした。ラトルの交渉術がうまくてびっくりした。
「ここにおりますタスケ・レイヴンはエルカリア王国近衛兵、随一の猛者でございます。この者があなたの親衛隊長に勝ったらあなたの軍の一部をお貸し願えませんでしょうか?」
「あら、面白いことを言うわね。だったら私の親衛隊長が勝ったらどうなるのかしら?」
「僭越ながらわたくしとこのタスケがあなた様の元で滅私奉公する所存でございます」
「ほう。面白いわね。この娘は?」
ラトルが私をチラリと見た。
「リリーティア様は女官としてあなた様にお仕えいたします」
「ええーーっ!」
ジェパの目が怪しく光った。
「ラトルっていったかしら。あなた中々可かわいい顔をしてるわね。そしてタスケ、あなた中々いい男。色気があるわ。それにこの娘さんもかわいらしいわね。うちの兵たちの慰みものにならないか心配だから、私の夜伽の世話でもしてもらおうかしら」
(それは、困ります)と言おうとしたらラトルが袖を引いて目配せした。
「それで異存はごさいません」
「いいわ。受けて立とうじゃないの。ちょうど退屈してたのよ」
こうしてタスケとジェパの親衛隊長が決闘することになってしまった。

ヴァレリラ城内にある格技場。
整然と並ぶイケメン親衛隊士たちが見守る中、格技場にタスケが立っていた。
「紹介するわ。私の親衛隊長……オダノ・ブルーノよ」
ジェパは螺鈿の銀細工が施してある豪華な長椅子に座り、足を組んだまま言った。
そこへ現れたのは、銀髪の長身美青年。涼やかな青い瞳に薄く笑みを浮かべ、手には細身のレイピアを構えている。
「ふん、美形かよ」ぼそりとタスケ言った。
オダノ・ブルーノは銀髪をかき上げ、金の刺繍がほどこされた軍服の袖をまくりながら、タスケを見つめ優雅に微笑んだ。
「僕は美を愛し、美に生きる者だ。………戦いは美しくなくてはね。騎士は美しき女(ひと)のために戦うのさ」
「こっちは好きで戦うわけじゃねえがな……」
「そして戦いに勝った暁には、そこの麗しきお嬢さん。あなたに私の愛を捧げましょう」
突然親衛隊長が私の方を向いて手を胸を付けてお辞儀した。
「えー。いきなりそんなこと言われても……」戸惑ってしまう。
「おまえ、うちの姫さん口説いてるのかよ?」
「美しい女性を口説くのは、僕に課せられた崇高なる使命だからね。神がこの僕に美貌と甘い声を授けたのには意味がある。世の女性を幸せにするためさ」
観衆がざわめく。
「お前、本当に親衛隊長か?」
「無論、ゴールドバニア、イチの美しい男、オダノ・ブルーノさ」
「ふん、勝手に言ってな」鋭い眼光でオダノをにらみつけるタスケ。
「いいねえ、その敵意むき出しの鋭い眼光。たまらないよ」
「は?」
「オダノ! 無駄話はいいからさっさと構えなさい」ジェパが一喝する。
「分かってますジェパ様」
タスケはトンボ切りを低く構えた。膝を折り曲げ重心を低くする。
オダノは優雅にレイピアを真っ直ぐタスケに向けている。
「始めなさい!」ジェパの高らかな声が響く。
瞬間。銀光が走った。
オダノの高速の突きが音もなくタスケの喉元へ伸びる。
間一髪でオダノの切っ先を避けるとくるっと身を翻しながら、槍を払う。
キンッ。
火花が飛び散る。槍とレイピアが打ち合い、オダノはにやりと笑った。
「いいね、その手加減のない殺気」
「ふん、減らず口を叩けるのも今のうちさ」
一旦間合いを取ったタスケは、下から素早く十文字のトンボ斬りを突き出す。それをひらりと飛んでかわすオダノ。両者火花を散らして突き合うが、タスケの容赦ない猛攻にオダノは徐々に後退し、格技場の隅に追いやられてゆく。
だが、次の瞬間。オダノが格技場の隅のポールによじ登るとそこから身体を一回転させて飛んだ。
「!」
不意を突かれたタスケが槍を向けるより早く、オダノのレイピアが胸元を狙う。瞬間、咄嗟に槍を離したタスケは素手でレイピアの刃を受け止めると、よろめきながらレイピアごとオダノを投げ飛ばした。
「くっ!」
オダノの身体が空中に舞い、背中から地面に叩きつけられる。
タスケは一瞬で槍を拾うと、オダノに駆け寄って槍先を顔に向けた。タスケの掌からは血が滴り落ちている。
「ぐっ……いいね。……最高だ」
観衆が静まり返る中、オダノは微笑を浮かべたままタスケを見上げていた。
「ふふ……見事だ……! まさかレイピアごと僕を投げ飛ばすとはね」
タスケは掌の傷から血を流したまま吐き捨てる。
「……ふざけた奴だが、腕は悪くねえな」
オダノはうっとりした表情で頬を赤らめる。
「ふふ……タスケ! 君こそ僕の理想の男だ。ああ、このまま君に突き殺されるのも悪くない……」
「……こいつ変態だな」
観客席の親衛隊員たちは皆、顔を引きつらせて沈黙している。「……オダノ」ジェパが眉間にしわを寄せたまま低く呼びかける。
「はいはい……わかっておりますとも、領主様」
オダノは身体を起こし、胸元を軽くはたきながら言った。
「約束通り、タスケの勝ちだ。……よって、軍を貸して差し上げてはいかがでしょう? なんなら私が参りますよ」
ジェパは片足を組み替え、腕を組んでじっとこちらを見据える。
「ふうん……まあいいわ。暇つぶしにしては十分に楽しませてもらったしね。それにしても……私の親衛隊を借りて一体どうするつもりかしら?」
ジェパはラトルに鋭い視線を向けた。
「ここにいるリリーティア様の祖国神聖マロン帝国の皇都の奪還です。無論攻め取った領土はあなた様に献上致します」
「大きく出たわね。生意気な……。でも気に入ったわ。軍は貸す。約束だから。だけどさすがに何万の軍を預けるっていう訳にはいかないわね。私だって領主としての責任があるのよ。むやみやたらに戦争する訳にはいかないわ」
「いいえ、あなた様の親衛隊2000もお貸し願えればけっこうでございます」
「たった2000でどうするってのさ? 内乱があったって神聖マロン帝国よ。動員すれば10万は楽に揃えるでしょう?」
「そのような精兵揃いの兵を用いたらなら、反乱軍に占領され混乱状態である、神聖マロン帝国に攻めいれば逆賊を撃つのはいとも容易きことではありませんか?」
「お黙りなさい! 私をうまく丸め込めると思って? いくら私の兵が強いからって、マロン帝国に攻めこむなんて無謀過ぎるわ! 周辺諸国だって静観して様子を伺っているじゃないの」
「ご懸念はごもっともです。しかし反乱軍は首都マローネを占拠したに過ぎません。各領地では未だに帝室に忠義を尽く、反乱軍に従わぬ勢力も多いと聞き及んでおります。つまり帝国本軍と戦う訳ではないのです。我々はあなた様の軍隊をお借りし、反乱軍に従わぬ勢力を糾合し、有利な体制を構築したのち、一気に首都奪還に撃って出る所存でございます。ゾルタクス王も援軍を差し向けると言っておりました」
ラトルの饒舌な語りに感心させられてしまう。だってほとんど行き当たりばったりの出任せなんだもん。ゾルタクス王の援軍なんてはったりもいいとこだ。しかしジェパは目を光らせた。
「ふーん。あんた、ただのかわいい少年じゃないわね。その話しぶりと交渉術……どこで学んだのかしら?」
ラトルはにっこり微笑みながら肩をすくめた。
「さあて? そこら辺にいるただのイケメンですよ」
「オダノ、おまえはどう思う?」
「はい、ジェパ様。僕は大賛成でございます。男と生まれた以上一か八かの賭けに打って出るのは本望です。たとえ敗れたとしても美しく死ねる」
「敗れちゃちゃだめでしょ。私の大事な兵士よ。あなたの滅びの美学には付き合ってらんないわ」
「いいえジェパ様。なんかこの人たちなら何か大きなことをやってくれそうな気がするんです。それに……状況次第ではあなた様に天下を獲らせることだって出来るかもしれない。まずはエルカリア王国からの独立を……」
「おやおや、いつおまえに私の野心を話したかな?」
「ははは。言わなくても分かりますよ。あなたのことなら。あなたの夢のためにこの身を捧げたい」
「ふん、あなたの覚悟は分かったわ。待って今考えるから」
ジェパは腕を組んで目を瞑って考えている。
「……ふん。あなたたちが言ってることは実現不可能な夢物語よ。……かつてこの地は群雄が割拠し小国同士が争う戦国時代だった。それを百年前に終わらせたのが神聖マロン帝国の初代皇帝ヴァロ。国々はこぞって神聖マロン帝国を盟主と仰ぎその庇護を望んだけど今はその影もないわね。反乱軍が実権を握った帝国に周辺諸国が食指を伸ばすでしょうね」
ジェパは遠くを見るよう目をした。
「あなたのおっしゃる通りでございます。おそらく周辺諸国も軍備を整えているのではないでしょうか?」
「ええそうね。やがてこの地にも戦乱の嵐が吹き荒れるかもしれない。どうせ戦乱に巻き込まれるならこっちから打って出た方がいいかもしれない。あなたたちはいい火種になるわね。ラトル! 作戦はあるの?」
「はっ。まずは国境へ向かい警備が手薄なところから帝国領に侵入します。そこで情報を収集し分析してどうするか決めたいとこまいます。反乱政府に不満を持つ地方領主を味方にするか、偽の情報を流して撹乱するか。勝機があったら反乱軍を襲撃して領土奪います」
「まあ大胆なことを。そう容易くはいかないでしょうね。それに情報を集めるったってどうするのさ?」
たしかにラトルの言うことは絵に描いた餅だ。
「この猫でございます」私の側にいたヘクトーがジェパの前に進んだ。
「にゃ~お」
「あら、ぶさかわいい黒猫ちゃん。一体この猫がなんだっての?」
私はラトルと顔を見合わせて微笑んだ。
「ようジェパさん。あんた中々いい女だな。俺のタイプだぜ」
「きゃ~猫が喋った~! なにこの猫、面白いんだけど」
「はい、この猫はヘクトーと言いまして元々人間だったのを呪いをかけられた猫になったそうです」
「ふ~ん面白いこともあるのね」
「このヘクトーを使えば反乱軍の宿舎に忍び込んで情報を聞き出すのも容易でございます」
「なるほど。情報を制する者は戦いを制する。それなりに勝算はあるってことね。気にいった。あなたたちに賭けてみようじゃかいの。オダノに2000の兵を与えてあなたに貸すわ」
「ありがたき幸せ」
私たち三人は声を揃えて挨拶し、ジェパに使って深々とお辞儀した。
こうして私たちには、新たにオダノが仲間に加わり、ジェパの親衛隊2000と共に国境の町へと向かった。そのうち500騎が騎馬隊で私たち三人は馬に乗った。
※画像はGeminiが作成しました。
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素晴らしい記事ですね♪