木下惠介監督の『惜春鳥』を観る

木下恵介 の映画『惜春鳥』を観た。
僕は高校の頃から、なぜか会津という土地に惹かれてきた。雪の匂いのする山々、静かな城下町の佇まい、どこか人の情が深く沈んでいるような空気。だから、この映画のなかに広がる会津の風景を見ているだけで、胸の奥に懐かしいものが灯る。冬の気配を含んだ山や川の景色は、ただの背景ではなく、人の運命そのもののように静かに画面に横たわっている。
物語は若者たちの友情や恋を描きながらも、決して甘い夢には終わらない。誰もが真面目に生きようとしているのに、人生というものはどうにも思うようには運ばない。人の気持ちはすれ違い、善意さえ時に人を傷つけてしまう。そんなやるせなさが、会津の冷たい風のように胸に沁みてくる。
そこへ流れる主題歌、若山彰の歌声がまた素晴らしい。どこか寂しさを含んだその旋律は、若さの輝きと、過ぎてゆく季節の哀しみを同時に抱えているようだ。映画を観終えたあとも、あの歌がしばらく耳の奥で鳴り続ける。
青春というものは、振り返れば美しい。しかし、その最中にいるとき、人は必ずしも幸福ではない。『惜春鳥』という題名の通り、過ぎていく春を見送るような切なさ。この映画を観ていると、人生というものは本当にままならないものだと、しみじみ思わされる。けれど、そのままならなさこそが、人の心を深くするのかもしれない。会津の山の景色を眺めながら、そんなことを考えた。


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