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オックスフォード大学研究記

はじめに

cvpaper.challenge PI 片岡裕雄です。当記事は 研究コミュニティ cvpaper.challenge 〜広がる研究コミュニティー〜 Advent Calendar 2024 [Link]の12/1分の記事として公開しています。現在、英国・オックスフォードに来ており、オックスフォード大学では Academic Visitor として活動しています。

上記ポストにあるOxford VGGとは、オックスフォード大学の研究研究室Visual Geometry Group(VGG)[Link]のことで、古くは複数カメラ幾何の草分け的存在であり、深層学習時代では研究室の名を冠したVGGNet [Link]をはじめとした視覚的な深層学習に関する研究を展開する世界的にも有名な大学研究室です。トップ2の教授(Full Professor)はGoogle Scholar換算で2024年12月現在、それぞれ40万超・10万超と2名とも分野を代表する研究者であり、その他3人の気鋭若手研究者も教員として博士課程の学生さん(Doctor of Philosophy; オックスフォード大学ではPh.D. StudentのことをDPhilと呼ぶ)の指導にあたっています。基本は5名の教員や外部とのコラボにより研究室での研究を叩き上げ、high-impact論文や受賞論文を多数出版しています。

私はというと、英国には2024年9月上旬に来てまだ3ヶ月弱しか経っていないですが「英国にて在外研究を行うと決断してから渡英するまでの話」や「短期間だが日本の研究環境から英国のオックスフォード大学に来てみてその違い」などに関するご質問が多く寄せられていました。今回アドベントカレンダーをご依頼頂いたことをきっかけに、思い切って執筆してみます。渡英の苦労や日本の研究室との違いはまだ日が浅いうちの方が書きやすいということから、一度文章として残しておきたいというモチベーションもあり、執筆をお受けしております。

私に関する前提知識として、国立研究所である産業技術総合研究所(通称:産総研)で研究職員をする傍ら、私立大学(複数)の客員教員やテック企業の業務委託社員(研究アドバイザ; 過去にはクロスアポイントメント出向社員の経験あり)などの肩書もあります。また、大学院生博士課程時代ですが、米国(8ヶ月)・独国(2ヶ月x2回)にも訪問研究員として滞在した経験がありますので、国立研究所含め産官学や米独英と、いくつかの視点で研究機関を俯瞰することができると思っております。

当記事では主に、

◆ 英国にて在外研究を行うと決断した経緯

◆ 英国研究編(質問回答形式)

◆ 渡英までの流れ(1. 大学からの許可 2. 英国ビザ取得 3. 家族での引っ越し)

について記載していきます。

【!国際連携メンバー募集中!】もし当記事がきっかけで国際連携にご興味持って頂いたらぜひ片岡 / cvpaper.challengeまでご連絡ください。産総研職員・ポスドク・RA・Intern・cvpaper.challenge研究メンバー・事務局員など様々な形での連携があります。ただし、研究を実施する側のメンバーとして参加する場合、世界トップレベル研究や研究トレンド創出を狙うので求めるレベルは高いです。

英国にて在外研究を行うと決断した経緯

滞在の経緯と教訓

今回の英国在外研究に繋がった要因は主に3つです。ここから学んだ教訓もここで一緒に紹介します。主な登場人物としてはホスト研究者2人 Christian Rupprecht(Chris; オックスフォード大学 准教授)、Iro Laina(Iro; オックスフォード大学 学部講師)、Yuki M. Asano(Asano-san; ニュルンベルク工科大学 教授)の3名です。

◆ 2013年(博士課程3年目)、2014年(ポスドク1年目)に片岡が訪問したミュンヘン工科大学の繋がりが活きた。Chris、Iroは当時ミュンヘン工科大学の大学院生、片岡も一年目の訪問時は大学院生ですぐに友人になり、国際会議・ワークショップ等で交流を続け、10年の時を経て互いに研究者として確立し裁量を持つようになった。

教訓:「どの繋がりが将来活きるか分からない。学会やイベントでは積極的に国際交流しよう!」

◆ ミュンヘン工科大学訪問当時はお互い全く異なる研究をしてきたが、2019〜2020年あたりから同じようなトピックで研究していたことが後にわかる。日本側では「人工生成データにより実画像なしで視覚的事前学習」するのに対して、英国側では「極めて少ない枚数の実画像かつ教師なしで事前学習」をする研究を実施。主著として論文を投稿し続けてきたAsano-sanはオックスフォード大学におけるChrisのメンティーのひとりである。

教訓:「研究哲学を徹底して考えよう、そして論文等での発信を続けよう!」

◆ 数年後、片岡が国際ワークショップをICCV 2023にて企画、Chrisに招待講演を依頼。直後のCVPR 2023でChris、Iro、Asano-san含め国際ワークショップや最近の研究内容を議論したことがきっかけで国際共同研究に発展。

教訓:「自ら学術イベントを企画運営して研究コミュニティを拡大、プロジェクト化しよう!」

という流れでした。なお、同じような研究をしていて、この先目指す方向性が同じなら「オックスフォード大学にてみんなで研究して研究コンセプトを高め研究連携を強化しよう」とCVPRの場で意気投合して国際連携開始となりました。

海外の在外研究先を探して10年

実は、産総研研究職員として配属された新人時代の2016年から海外の在外研究先を探してCVPR / ICCV / ECCVのたびに研究トピックが近い研究者に直接アプローチしていたのですが、某大学の教授からは「博士課程学生 / ポスドク以外は採用していない(恐らく断るための口実)」やまた結構多くの研究者が「履歴書をメールで送ってくれ(からの返信なし)」という無言のRejectを多くもらってきました。やっとの思いでコネクションを作り、米国西海岸の大学に足を踏み入れようとした際にはコロナ禍で延期、その間にホスト研究者が企業に異動となり白紙になってしまったりと、散々な目に遭い絶望して諦めかけた ※1 際に舞い込んできたオックスフォード大学との国際共同研究の話です。

※1 博士課程の頃の論文戦績(下記ポスト参照)にもある通り、(Strong)Rejectには慣れていましたが、過ぎ去った時間と先が見えないコロナ禍が重なり、流石に厳しい状況になり一時は在外研究を諦めかけていました。

2020年のCVPR開催時、ちょうどコロナ真っ只中にオンライン開催されたCVPRのOpening CeremonyでChrisの論文 [Link] が 6,566件中第1位のBest Paper Awardを獲得したとアナウンスされました [Link]。当時Chrisはオックスフォード大学のポスドクでしたが、これも彼の成果を大きく後押しして、翌年には学部講師に、2023年には准教授になりホスト研究者になる裁量を与えられるという奇跡のような背景も重なりました。おまけにIroもポスドクとしてオックスフォード大学に来たかと思えば、2023年末には学部講師に昇進したと連絡がありました。

後から考えると、私から頼み込んでメンター・メンティーの関係で在外研究をするよりも、お互い同じようなタイミングで博士号取得・研究者としてのポスト獲得・なおもテニュア獲得に向けて頑張り情報共有してきた研究仲間と同等の関係性で国際連携を実施した方が先に広がりが見えると感じており、寧ろ長らく待って得た効果は大きいです。産総研職員として採用されてから8年間、さらに言うと前回独国を後にして「世界で活躍したい」と思ってから10年を要しましたが、その間に多くの経験をした上で在外研究に辿り着いたことは純粋に良い経験ができて、より良い連携ができています。

英国研究編(質問回答形式)

今回のアドベントカレンダーでは「どうせなら読者が知りたい情報を書こう」と思い、研究コミュニティやSNS等で予めご質問を集めて、質問回答形式で書いています。質問の内容と回答的に一部内容が被る部分もありますが、異なる文脈で出ていることもあるので予めご了承ください。もし他にも追加でご質問あれば可能な範囲で追記するので、何かあれば片岡までお寄せください。

PI (Principal Investigator; 研究室や研究チームのトップなど) レベルの方が海外に長期滞在することは可能なのでしょうか?

事例はそこまで多くないですが、確かにPIレベルの方が1年以上の長期在外研究をすることはあります。大学教員がサバティカルで行くということはその代表的な例です。ただし、産総研で1年より長く在外研究をしているという事例を私は1件のみしか知りません(最大で1年が多い)し、2年以上となるとゼロです。所内予算で「研究者からボトムアップに国際連携を広げる」「産総研・国際連携ラボの設置や、大型国際連携事業を経て、将来的に大きく発展する課題を発掘する」という目的の予算があったので、思い切って応募してみたら採択された、という出来事がありました。幸いにもこの予算が英国に来るための資金になっていますが、実はとてもコンペティティブで情報・人間系では1件のみ採択だったようです。オックスフォード大学・アムステルダム大学・ニュルンベルク工科大学との研究連携を広げて、国際研究コミュニティ(国際ワークショップ [Link] に関連させて LIMIT Community というものを構築しています)、国際研究コミュニティの拡大や国際連携ラボを作るという目的の元で現状は2年間行くことを許可されています。私は「成功するまでは帰りません」と各所で話しているくらい、覚悟を決めてこちらに来たので、ただでは日本に帰りたくないと思っています。今後も研究トレンド創出を狙った研究連携、国際ワークショップへの継続的なプロポーザルの投稿、研究コミュニティの世界的な拡大などを目指して英国で頑張ります。

PI になってから渡航するメリットとは何でしょうか?博士課程・ポスドクの時期に渡航することと比較した場合の利点は素直に気になります!

◆ PIとして在外研究をする場合:自分の研究に止まらず研究連携を大幅に拡張でき、持続可能な枠組みまで持っていけるポテンシャルがある。

◆ 一般的な博士課程・ポスドクとして在外研究をする場合:ホスト研究者とはメンター・メンティーの関係で単発研究になりがちであり、帰国後はコネクションはあるが大きくは広がりづらい傾向にある。

と現在は考えております。私も博士課程在外研究中に米国・独国に数ヶ月ずつ滞在していて完全に後者であり「伝道師」になっていたな、と感じました。つまり、海外で学んだ技術を日本に広めて、結局は海外研究者の技術を広めているだけに過ぎない、と後付けですが思いました。それ自体は良いことなのですが、研究者である以上は現地に行って何か新しい技術を創出して世界に広めて現実世界で使ってもらえるような根本を作りたいと思うようになりました。

また、私は博士課程修了後に海外でポスドクになりたいと思い断念し、産総研新人時代から海外で在外研究したいと思い比較的長い時間が経過してしまいましたが、その間に研究コミュニティ構築(2015年〜)したり複数トピックに渡り研究を提案してきた経験を活かして国際研究コミュニティ拡大と国際連携ラボ構築を狙っています。我々が提案したオリジナル技術である数式ドリブン教師あり学習(FDSL)[Link]を広めていくこともそのひとつですが、それ以上にこちらで我々が主導して提案する技術を世界展開するくらいの気持ちで研究に取り組んでいます。

伝道師になることなく、そのオリジナルを創出したいです。cvpaper.challenge の大目標の後半である「コンピュータビジョン分野のトレンドを創出する」にも帰着しますね。よく cvpaper.challenge は「CVPRを読んで研究して、採択されて終わり?」と間違って伝わることも多いのですが、大目標にある通り、実はそのずっと先を見て研究しています。在外研究で研究トレンド創出に繋がり、産業応用されるような事例も出て来ると成功と言えると思います。

片岡さんの経験を踏まえて、いつどのような研究室に所属するのが研究レベルの向上しそうでしょうか?

自分がやりたいと思う時期に、指導を仰ぎたい研究者の下で研究すればいつでも研究レベルは向上します。ただ研究訪問を見てきて、当然ですが受け身ではなくて何か新しいことをしてやろうという気概のある方は活躍するか、その後に大きく力を伸ばす傾向にあると思います。

過去自分自身の経験も踏まえると、何か狙いを持って研究すると良いと思います。

  • D1、カリフォルニア大学リバーサイド校にいた頃は新規分野に飛び込んだこともあり訪問中全然成果は出ませんでしたが、1日16時間は研究か勉強に取り組んでいて、今に繋がる原点になりました。動画認識や人物行動解析の研究を深め、自分の代表的な研究トピックにすることに成功しました。

  • D3、PDで2年連続夏季期間(各2ヶ月)ミュンヘン工科大学にいた頃は短期集中しました。CVPR本会議には不採択だったものの2件の投稿はそれぞれACCV、CVPR Workshopに採択されました。研究チーム構成や論文リーディングやライティングの重要性を学び、研究コミュニティ cvpaper.challenge を設立するきっかけのひとつにもなりました。

片岡さんは日本との時差がある中でどのようにタスク管理や工夫などしているのでしょうか?

日本と英国では通常9時間、サマータイム時で8時間時差があります。日本のメール対応やミーティングは12時くらいまでにはひと通り終わり、そこから自分の研究や英国での仕事を行っているので、リズムが出来てきてやりやすいです。日本側の皆さんのご理解あっての在外研究なので、時間をご調整頂いたり、その他あらゆる面でサポート頂いている皆さんには感謝しております。

ちょっとしたtipsですが、大学まで歩いて行く場合の片道1時間弱に1-on-1や研究相談、雑談するためのミーティングなどを行っています。ミーティングがない時には英語のリスニングや研究者の講演動画などを聞きながら勉強しています。英語の上達に応じて、研究連携が促進され、得られる情報量が増えるので少しでも慣れていきたいです。

片岡さんのモチベーション、行動の源は?

研究においては「ずっと残り続ける概念を最初に提案したい」そして「できれば社会的に使用されるものでありたい」ということがモチベーションです。学会においては「やるからにはhigh-impactでawardを狙える技術と論文」を狙いたいと思っています。今は博士号取得やテニュア取得など喫緊で差し迫った課題がないので常に新しい概念や枠組みの構築を狙っています。

英国滞在については「分野で世界的に知られていること」「日本人がなるべくいない研究で開拓者になれること」が滞在先を選定する条件でした。日本人研究者が何人か(何人も?)いると、どうしてもlittle Japanみたいな小研究グループができてしまうと博士課程の経験から感じていたのでそこは避けておきたいと思いました。

「他人がやっていることはあまりやりたくない」と性格上の問題があり生活には支障を来していますが、研究においてはある程度有利に働くことが経験上分かりました。

片岡さんの一日の生活スタイル・リズムを教えてください!

平日や休日、投稿締切や出張、セミナー・打ち合わせなどのイベントに応じて異なるのですが、こちらに来てよくある平日の生活スタイルは下記のような形です。

  • 4:00 - 5:00:起床

    • 疲れてたら6:00-7:00くらいまで寝てます。この場合は運動・仕事はキャンセルします。

  • 5:00 - 7:00:運動 and/or 仕事

    • ジムでトレーニングするか、仕事が終わっていない時は朝のうちに消化しています。

  • 7:00 - 8:00:朝仕度

  • 8:00 - 9:00:見送り

  • 9:00 - 10:00:移動

    • プレゼンがない場合には移動中にミーティング・通話することもあります。英語リスニングの勉強なんかもしています。

  • 10:00 - 17:30:仕事

    • 午後に1時間弱くらいは昼休憩を入れます。研究室メンバーとCoffee Breakを入れることもあります。

    • 傾向的に日本側とのミーティングは午前中までに終了(通常は英国の12:00が日本の21:00、サマータイム時は20:00)、午後は研究室のミーティングが入ることが多いです。それ以外の時間でデスクワークします。

  • 17:30 - 18:30:移動

  • 18:30 - 20:30:夜仕度

  • 20:30 - 22:00:就寝

    • 早めに寝て、なるべく目覚ましなしで起きれるように心がけてます。実は平均的に7-8時間くらいは寝ていると思います。

VGGレベルの研究室は日本とどこが違うのか?イギリス社会、研究者の質、PIのマネジメントの何が寄与してそうなのかも気になります!

まず、VGGは英国の中でもとても成功している研究室なので、一概に「英国の研究室では〜」とは言えないことを先に断っておきます。もちろん、日本でも良い研究室は多くあるので「日本の研究室のココが悪い」ということも言う意図は全くないです。その上で、VGGは5名の教員、10名前後のポスドク(もしくはエンジニアなどスタッフ)、40名前後のDPhilが在籍していて、なおもアルムナイが出入りしていて、コラボレータが世界中にいること、研究室自体が有名なので国際会議に参加するときにも外部とのコミュニケーションが盛んです。研究室の成功要因はいろいろあるのですが、この数ヶ月で気づいた点を挙げていきます。

【教員】Full Professor 2名が分野を代表する研究者であること / 研究室に教員が合計5名いて他の3名も気鋭の若手研究者であること。

【学生】自主性を持っている学生が多く独立的に動きその上で複数人の教員から指導を受けられる / 行動や実行が素早く毎週のミーティングで受けたフィードバックを翌週には実行して持ってくることが多い。

【研究室セミナー】時期によりますが、研究室単位で毎週〜毎月招待講演を行っています。講演終了後はゲストスピーカーと学生やポスドクとの1-on-1が入ることも多く、研究室内の研究を叩き上げる会として機能しています。招待講演がない時にも研究tipsの共有や学生の研究をブラッシュアップする集まりとして活用されています。

【外部連携】上記の招待講演者との1-on-1以外にも、オックスフォード大学内、欧州研究ファンドの共同メンタリング(e.g. ELLIS [Link])、企業インターン、研究室アルムナイなど汎ゆる枠組みで動いています。VGGの物理的に真下には Torr Vision Group(TVG)[Link] があり連携しています。ELLISでは2人以上のメンターが国を跨いでひとりのDPhilをメンタリングしていますし、2人のFull Professorはどちらも企業の兼業してインターン学生とも研究を実施しています。その他、過去に在籍していた研究室アルムナイが研究室学生のメンタリングを担当するということも結構あるようです。

【締め切り前】幸いにも年間を通して投稿論文が1、2番に多いであろうCVPRの締め切り前を過ごすことができました。今年に関しては夏季インターンの学生さんが多く9月は閑散としていたのですが、10月になると人が戻ってきて、11月になるとみなさん集中していて張り詰めた空気感がありました。普段は忙しく飛び回っている教員陣も研究室にて見かけることが多くなり、教員室で頻繁にミーティングしている様子が確認できました。同室にて一緒に仕事をしている教員は十数本のCVPR論文を同時に見ていると話していました。それでも投稿を辞退するということは結構起こることではあります。

【英国研究室の文化?】メインのコミュニケーションツールはSlackになっています。研究室の教員陣としては、現状はあまり交通整理はしていないようで、学生の自主性に任せて運用されています(ここでもオックスフォード大学 在籍学生の自主性が発揮されています)。月並みかもしれませんが、特徴的なのは「セミナー」「論文紹介」「ソーシャル」「国際会議」のチャンネルが盛り上がっています。ただ、私には見えていませんが、プロジェクトごとのチャンネルやDMでのコミュニケーションが多くありそうです。研究やミーティング調整もほぼDM等で済んでいるようです。あとは、イギリス文化なのか、誕生日を登録しておくと、#random チャンネルで誕生日をお祝いしてくれるという風習があります。まだまだ私が気づいていない英国研究室の文化(?)がありそうなので、引き続き調査を続けます。

上記でもまだまだ書けていないことが多そうですが、追々できる範囲で共有していきたいのと、研究トピック・研究トレンドと同様に寧ろ日本からも文化を輸入するくらいの気持ちで良いものはこちらの研究室でも提案して定着させていきたいと思います。すでに入れようとして失敗したり、長い目で少しずつ浸透させようとしている文化などもあるので、今後のレポートを楽しみにしていてください。

よくある議論なのですが、お客様になることなく対等に扱ってもらうためにはやはり年間単位などある程度は長期に渡り中に入り込んで、一緒に何か新しい研究プロジェクトを始めるなどが必要だと思います。

オックスフォード大学の学生さんは何をモチベーションに研究してるのでしょうか?

DPhilの場合はなんと言っても博士号取得です。研究室内ではCVPRなどtop-tierの国際会議で3〜4本が博士号取得ラインだと言われています。もちろん、トピックによっては異なる学会やジャーナルを狙うほうが学術的にインパクトがあるので教員の判断にも委ねられているところはあるようです。これを3〜4年でクリアして次のポストに就くというわけですね。

次いで、ポスドクも含めるとやはりその後のポスト獲得です。最も多いと感じたのはBigTechのResearch Scientistの枠を狙う、次いでUK/EU/USあたりで大学教員(DPhilの場合にはポスドクも含む)になるという選択でした。これらはオックスフォード大学のポスドクや学生といえども競争的なので、研究には熱が入るということですね。日本のアカデミック・インダストリーにも興味があるという声もちらほらありました。

その上で、良い技術や良い論文を書きたいというモチベーションがある学生さんは多いです。ただ、Ph.D.取得に関して数量に条件が設けられている分、まずは数優先でその中で如何にインパクトを出すかという戦略になっているような感じです。

現地にいないとわからない情報を教えてください!

難しいご質問ですね!私は国際会議への投稿やネットワーキング、国際ワークショップ運営を頑張っていれば人脈形成は広がっていくと思っていましたが、より深く大きな人脈形成という意味においては、その前にある程度勝負がついていることに気づきました。例えば、こちらの研究室では毎週〜毎月研究者が来て少人数の講演や議論、懇親会をしている様子を見ています。また、年間イベントの度にアルムナイが来ているのを見ていると、チョットだけ国際会議で話した研究者のことはあまり記憶に残ってないかもしれません。国際ワークショップは招待講演して懇親会などもできるかもしれませんが、それは国際会議という制約がある以上個人で頑張っていると年間1回、多くても2〜3回が限界かもしれません。ある程度歴史や知名度のある研究室は毎週〜毎月単位で国際ワークショップレベルのイベントを打っていて、格段に人脈を広げるチャンスが多いと言えます。

…ということで、私もこちらの研究室で研究室セミナーを主催するなど少しでも知識獲得や人脈形成の機会を作るために貢献したいです。2024年11月末には日本から研究者やRA(Research Assistant)を10名招待して、研究室セミナーを主催しました。研究費を準備して、各研究者との連絡役をして、など結構な労力が発生するのですが、それでもなお双方に効果のある枠組みだと思っています。もちろん、日本の研究者とUK/EUの研究者を繋げるという役割も今後担っていきたいと思っております。

国際会議等で友人の繋がりを辿っていったり、大御所の先生方に直接声掛けするなども頑張ったのですが、やはり対等には扱ってくれる場面だけではない(多くは単に忘れられているだけ)と感じています。圧倒的に知名度のある論文を出してれば別ですが、大体の繋がりは半年〜数年後の国際会議で忘れられていることが多いです。

合計5名の教員で40人前後のDPhilの面倒を見るのは難しいかと思うので、学生同士が議論をしつつ切磋琢磨してるんですかね?

学生同士でもSlack上での議論は見かけます。サブグループを構成しているというのは聞かないですが、おそらくDMしてたり研究室にいると議論しているところは見かけます。仕組み上あるというものではなくて突発的に起こるという感じですね。実際に、同じようなことをしているメンバーはDPhil / ポスドク問わず連携することもあります。トピックとして最近ではGaussian Splattingや3D Generationなどの文脈で研究連携しているところを見かけます。

一方、私のところにもアドバイスを求めて来てくれたり、DMもらったりもします。そこから「研究連携しよう」となったりしているので、私もそのうちオックスフォード大学側の共著者になれそうです。

DPhilはどれくらいの頻度でミーティングしているのでしょうか?

メンター・メンティーの1-on-1(もしくは1-on-2、3...)は週1回、1時間の枠を設定することが多いです。私も執筆時点でひとりの博士課程の学生さんの共同アドバイザになっているので毎週サブとして参加してコメントや質問をします。こちらもDMなんかも含めて、議論は楽しく進めています。今後も少しずつ研究室への貢献の幅を広げていきたいと思います。

ご質問内容とは必ずしも関連しないですが、研究室への貢献度という点では、セミナー主催(今週たまたま産総研や英国滞在中の研究者、BMVC参加者を研究室に集めて招待講演x10もといワークショップ的に開催)してますし、Slack内のSNSのような個人チャンネルも研究室Slack内に用意して運用しています(文化が違うので苦戦はしています)。

目指す国際学会に違いはあるのでしょうか?

博士号取得の条件という意味では、こちらのDPhilの多くはCVPR / ICCV / ECCVなどトップ国際会議を目指しています。日本でも国際会議を博士号取得条件の一部に組み込んでいるという例は伺いますが、まだ論文誌採択数で判断する例が多い印象です。

その他において、目指す学会に違いはないですが、研究室メンバーが当たり前のように通しているので、トップ会議という意識よりもいつも投稿してみんな通している国際会議という意識です。CVPR / ICCV / ECCVの1会議あたり平均して10件以上、多いと20件前後くらいは通ります。もちろん、トピックに応じて投稿先を論文誌に変えるという例もありますし、締め切り前に頑張って間に合わなかった場合にはまずpre-printとしてarXiv等の速報サイトに載せるということもあります。目的に合わせて適切に投稿するという点では、日本もこちらの研究室も変わりはありません。

オックスフォード大学の環境では、研究テーマを選ぶ際に日本の大学との違いがあるのでしょうか?例えば、社会的影響を重視する傾向や、産業界との連携の程度など、どのような基準が主流なのか気になります。

最初のテーマはより本質部分を調査するような研究テーマ設定にするような気がします。ただし、博士修了条件もあるので一度良いテーマが出来上がるとその後何本かは周辺を深掘りしています。研究トピックをほぼ変えずに博士課程を終える方もいますし、毎年研究テーマを変えて数本ずつ論文投稿してから次の研究テーマに移行したり、アイディアに富んでいる方は広いテーマでも毎回優れた問題設定を立てて論文投稿しています。これは、個人の性格や次に狙うキャリアに依っても戦略は違うと思います。

研究室や大学内でのコラボレーションや議論の文化に、日本と英国でどのような違いを感じましたか?例えば、研究の進め方や議論(セミナー)のスタイルなど。

学生同士のコラボレーションというのは無くはないのですが、ほぼ個人でひとテーマ、もしくは複数テーマを同時に持っていて、横で関連するテーマを実施している場合には複数テーマを複数人で深掘りするという形式のようです。一方で、DPhilひとり辺りに明示的に2〜3名のメンターが付いて指導するのはUK/EUの文化なのかな、と思います。場合によっては研究ファンドの枠組みで国をまたいで共同メンタリングが発生したりします。

研究の進め方について、当然2〜3人のメンターが明示的に割り当たる形式になっているので、多面的な指導が受けられます。研究コミュニティ内でもやはりひとつの研究プロジェクトに対して研究する実働メンバーが3名前後、メンターも3名前後がよいということが経験的にわかっているので、UK/EUの研究スタイルというのはその理想を体型的に実現しているようにも思います。

一方で、研究室全体で何かしようというのは研究室セミナーか年一回のイベントくらいしかありません。普段の研究ミーティングは基本1-on-1(メンター側が2人か3人ということは結構あり得ます)やSlackでの議論が中心であるようです。

英国での研究生活は、日本と比べて家庭やプライベートとのバランスが取りやすいのでしょうか?例えば、働き方や休暇制度の違いなどについて知りたいです!

日本と英国、大学・企業・研究機関の違いはあるものの時間管理ができる人は公私ともに充実しています!その上で、英国は日本よりも時間変化に寛容で、押せば融通を利かせてくれるところがある文化のようです。研究室ミーティングやセミナーは「5分遅れならOK」となっていて、10時予定なら(何がOKかは分からないですが)10:05開始ならセーフです。事務関係もこちらからメールするまで(メールしても)なかなか動かないですが直接頼みに行くと直ぐに対応してくれたりします。「期限切れたからダメだ」と言われても直接頼みに行けば受け入れてくれたりすることもあります。

こちらの研究室ではテレワークが多いです。ミーティングスペースの確保が難しいということも関係していますが、多くの方が集中する際には家で作業するという感じになっています。ロンドンなど大都会は別かもしれませんが、オックスフォードでは夜遅くまで空いている店は少なくて、カフェやスーパーも18〜20時で閉まるところが多いことからもわかるように結構勤務時間や休暇は取りやすいのではないかと思います。

VGGのDPhilはどのくらいの勢いで研究しているのでしょうか?

まず平均的に投稿する会議がCVPR / ICCV / ECCVで、日本の同分野で言うとMIRU / SSII / ViEW / JSAIや国内ジャーナルなどに投稿する感覚でこれらの学会に投稿しています。DPhil修了条件になっていることもあり、どんな手段を使ってもこれらの会議には間に合わせようとします。例えば、10月初旬のECCV発表後にゼロからプロジェクトを始めて1.5ヶ月後のCVPR投稿間に合わせようとしているという凄い気合いを感じる事例も見ていますし、CVPR Best Paper取得した学生さんなんかはやれる実験は全て実施した上、投稿ID1ケタを取得、SNSでのポスト内容も工夫するなどのエピソードを伺っています。

全てがそうではないですが、国際会議採択はもちろんですができればそれよりも上のライン(OralやAward Finalist)を狙うという気概もあるような感じです。限られた時間ながら研究テーマに拘り、複数教員からの多面的な指導、高速ライティング、度重なる論文修正、最後は教員陣による論文の詰めを経て投稿されています。ここにおいては、CVPR Best Paper AwardもしくはTest-of-Time Awardを経験している教員が現在3名もいるということが大きな要因にもなっていそうです。単純に世界トップを知る視点の数がいくつもあり、その経験も段違いにあるということを感じました。

日本の大学研究室だとコアタイムという概念が存在しますが、英国だとどうなんでしょうか?コアタイムがないとしたら研究室の出席割合ってどのぐらいなんでしょうか?

英国でも研究室に依ると思いますが、滞在中の研究室ではコアタイムはないです。ベースは教員との1-on-1ミーティング、研究室全体のセミナーがあるくらいで、あとはたまに研究室イベントが入ります。具体的な研究室の出席割合は算出できないですが、テレワークしている研究者が多く、普段の研究室は人が少なめです。目算では平均10名前後くらいでしょうか。研究室が位置する建物内に食堂や売店がないこともあり、昼食を食べてから研究室に来て作業する人も多いです。DPhilやポスドクが中心の研究室ということもありますが、基本的には自主性に任せて研究活動が行われています。

VGGではいくつかの大型プロジェクトが動いているとのことですが、これは研究者が個々に研究テーマを持っているのではなく常に複数人で研究をしているということでしょうか?

研究費や研究室の文化的なところもあり、プロジェクトとして大きなトピックはいくつかありますが、基本的には個人で1〜Nテーマ持つということが多いです。博士課程修了条件が3〜4つの主著論文を出版することにあるのと関係が深いと思います。コーディングが得意な学生さんが多いということ、不採択されたら改良して再投稿するという流れもあり、同時期に1人で複数テーマを持つということが普通になっています。

招待講演のスピーカーの研究分野としてはやはりコンピュータビジョン系の講演が多いのでしょうか?最近だとマルチモーダルの研究も多いので自然言語処理系の講演もあったりするのでしょうか?

基本的にはコンピュータビジョン系の研究者が来て講演する機会が多いです。ただ、最近では自然言語を使う場合も多いのと、研究室的には音声研究にも取り組んでいるので、マルチモーダルの研究者も来て講演してくれています。深層学習時代になり久しく、最近は基盤モデルなどマルチモーダルの時代になっているので、研究室でも積極的に垣根を越えて研究しようというモチベーションや意志を感じます。

VGGでの計算環境に関してお伺いしたいです!

研究室クラスタは現状約120枚のGPUが接続されています(定期的に増設されています)。50〜60名のDPhilや研究員で使用しているわけなので、決して潤沢にあるわけではなく、これは日本の研究室と比較してもそこまで多いという水準ではありません。寧ろ富岳 / ABCI / TSUBAMEなどスパコンにアクセスできる日本の大学や研究機関の方が計算リソースが潤沢であると言えます。そのため、研究室内でも論文投稿の一ヶ月前くらいからとても計算機のジョブが混んでいて、思うように実験ができず投稿を諦めた、という声も結構上がっています。

一方で、研究室専属のエンジニアがいて、クラスタやジョブを管理してくれます。環境構築も行ってくれていて環境構築や計算機サーバをゼロから触ることなくスムーズに研究に入れるという点は普通の大学研究室とは異なります。如何に計算機を効率化するか、というtips共有のセミナーや計算効率を良くしようとする工夫は共有されています。

もし日本のラボと同様に計算環境が十分にあるわけでは無い場合、どのようにして実験を効率的に進めているのでしょうか?

上記の通りで計算リソースは十分ではありません。実験を劇的に効率化できたということはあまり聞かないですが、その分実行する研究テーマを予めよく考えて設定するということはしていそうです。研究テーマ自体を計画的に進めることも考えてはいますが、それでも締め切り前の追い込みはどうしても発生しがちです。その分研究テーマ自体の新規性で乗り切るということが重要です。

偶然学生側から発見的に良いテーマが見つかるということは結構研究室の文化的にあります。Asano-sanの1画像の自己教師あり学習 [Link]や画像内に赤丸を描画するとCLIPが物体に反応しやすくなるというVLMの創発現象 [Link]を発見したという研究は最近の代表例です。計算リソースがないからこそ、より良いテーマに拘るということは重要ですね。

国際連携におけるこれまでの成果を教えてください!

現在の国際連携チームは、産総研とオックスフォード大学、ニュルンベルク工科大学、アムステルダム大学が参画しています。産総研RA(リサーチアシスタント)という形で日本国内の多様な大学院生が参加しています。また、研究費の申請書を開始した2023年6月からカウントすると、下記の通りです。

  • 論文:ECCV 2024 2件採択

  • 国際会議併設ワークショップ:ICCV 2023 採択、CVPR 2024 採択

  • 共同ワークショップ:オックスフォード大学 VGG Seminar(2024/11/29)、ニュルンベルク工科大学 UTN x AIST Workshop(2024/12/02)

  • 大学ポジション:オックスフォード大学VGG Academic Visitor就任(片岡)、ニュルンベルク工科大学Fundamental AI Research Lab Co-supervisor 就任(片岡)

最初の一年間で、国際連携チーム構築やそれに付随した各種申請などを頑張ってきました。国際連携の規模(日本 x 海外で約30名)を考えると決して巨大なチームではないですが、幸いにも4カ国4研究機関に跨りネットワーク構築できているので、今後は大きな成果を挙げられるようにプロジェクト進めていきます。論文においてはCVPRと並ぶトップ国際会議のECCVに2件が採択されていますが、2023年時点では本格開始には至らず多くの論文が採択されているという状況ではありません。2024年1月から開始した私の渡英準備が長引いたこともあり、研究プロジェクトの整理ができていなかった時期もありましたが、2024年9月からは滞在を開始できUK/EUの研究者ともコミュニケーションができているので、今のところ複数のプロジェクトが順調に動き出しています。ここからの数年で大きく成果を伸ばせるように、またUK/EU内で連携拡大できるように動き出しています。

国際連携の将来展望を教えてください!

現在までに研究コミュニティではFDSL提案や時空間モデル(3D ResNet [Link])開発において、多くの研究者から引用されたり、産業応用が進めてきましたが、国際連携でも同様に研究トレンド創出や現実世界で使える技術を生み出したいと思っております。また、UK/EUを中心として研究コミュニティを形成して、世界に拡げていきたいです。主要メンバーの経験的には、難関国際会議での受賞や千回以上引用されるようなhigh-impact論文出版が狙える位置にいるので、その上で世界的な研究トレンド創出も狙っています。現状は、LIMITの研究哲学を形にしたり、そこから研究コミュニティを拡大して一大勢力にできると良いと思っております。海外研究者も含めた多様性の中で異なる視点から生まれるアイディアをベースに研究を実施して、大学院生や若手研究員の育成にも貢献していきたいです。

渡英までの流れ

このパートは比較的短めに終わりますが、それでも英国に長期滞在したい方、渡英にご興味ある方に向けて記載します。オックスフォード大学の工学部(Department of Engineering Science)に滞在する際には「大学からの許可」を得てレターが発行され「英国ビザ申請」によりビザ獲得、晴れて英国に長期滞在する権利をもらうことができました。そこから「家族(夫婦、子1、犬1)での渡英」を経験したのでその状況を簡単にお知らせします。

大学からの許可

国際連携プロジェクトの明示的な始まりは2023年6月、オックスフォード大学の招待講演は2023年11月でした。なんの偶然か、海外在外研究OKな研究費の採択通知が講演日の朝に受け取ったので、講演後のミーティングにてすぐさまビザ取得に向けた相談を始めました。それによると、まずは大学からの許可をもらいレターを発行してもらうことが重要であると伺いました。私も年末は結構仕事が溜まっていたのとオックスフォード大学側でも大学院の次年度受け入れのための面接など、双方仕事があったので年明けから進めることになりました。

工程としては主に(1) 学部担当者(HR Office)に書類提出して学部内の手続き、(2) 移民チーム(Immigration Team)に引き継いでレターを発行してもらう、でした。(1)の段階では「履歴書」「パスポートコピー」「予算採択通知(英訳・サイン含む)」「大学からの同意書(サイン含む))」「大学での研究計画書(任意形式)」「依頼書(滞在期間やホスト研究者からの紹介やサイン含む)」を作成して提出しました。基本的に学部担当者から(2)移民チームへの手続きをしてもらえたのですが、それでも書類の修正などが発生してやり取りが頻繁に発生しました。修正の例としては「提出された研究費の保証期間が年度内なので、期限はひとまず2025年3月にしておく(これは延長手続きが可能)」「採択通知書に代表者のサインがないので入れること」など、やはり英国滞在する際の資金が保証されているか、という点は重点的に確認されました。その他は単純なミスなど軽微な修正が多かったです。

主な流れだけを書くとなんてことはないのですが、実は私の場合は英国ビザ発行よりも大学からのレター発行までの時間がとにかく長く、記録によると2024年1月に開始して2024年7月4日に大学からのレターを発行してもらっています。主な原因はだいぶ後で分かったのですが「担当者が数ヶ月単位で育休を取得していたこと」でした。途中何度メールしても返信がなかったり、定期的にリマインダを送らないと連絡や次に必要な書類が何であるのかすらわかりませんでした。上記の通り提出が求められた書類は必ず即日もしくは翌日には提出したものの、途中数ヶ月待たされることもあり、特に5〜7月は(その後7〜9月は渡英直前で)ストレスフルな生活でした。

元々の渡航予定日程を2024年7月初旬にしていたにも関わらず、7月になっても大学からのレターが一向に発行されませんでした。痺れを切らし、思い切って連絡先が公開されている移民チームのメンバー全員に対して、個別にメールを送って対応してもらえないかということを訴えました。前述の「英国での働き方」あたりでも触れたように、直接頼むと直ぐに対応してくれるという英国人の性質なのか、個別メールを送ってからはなんと2日でレターが発行されました。

英国ビザ取得

大学側との相談で、私の場合 Tier 5 の Government Authorized Exchange (Temporary Work) というビザが良さそうと言われました。ビザの期限は2年間で、この期限が私の現在の滞在期間と結びついています。大学からのレター(正式にはCertificate of Sponsorship; CoS)は英国ビザ申請のうちのひとつであり、その他下記のような流れや書類提出が求められました。

【英国ビザ申請の流れ】

  • オンラインシステム [Link]を通じてビザ申請*
    扶養家族はやはりオンラインシステム [Link]から個別に申請を行う

  • 6ヶ月以上英国滞在する場合にはNHSへの支払いが必要(期間に応じて支払いする額が増える)

  • オンライン申請後に申請書のコピーを取得してビザ申請センターに予約

  • ビザセンターにて指紋と顔写真の生体情報を提出

  • (渡英後に)近くの郵便局等で生体認証カード(BRP)を受け取り

【提出書類】

  • 申請者本人

    • パスポート

    • 大学レター(CoS)のコピー

    • 銀行明細書コピー(英訳版)

    • オンライン申請のコピー

    • ビザセンター予約票

  • 扶養家族

    • パスポート

    • 戸籍謄本とその英訳、公証役場の承認

    • 出生証明書とその英訳、公証役場の承認

    • 家族を証明する書類

    • オンライン申請のコピー

    • ビザセンター予約票

上記のうち、家族を証明する書類は結局何が効いたのかはわかりませんが、それまでの家族旅行で行った国内線チケットの英訳、家族写真、その他使えそうな書類を市役所に依頼してひたすら英訳の上で提出しました。米国ビザを取得した経験もあるのですが、比較すると英国ビザはとにかく個別化されていること、英国ビザセンターは委託先が運営しているので、質問しても「英国側が判断するので正確な回答はできない」と言われて困りました。

家族での渡英

「英国ビザ取得」が家族での渡英に関する大きな項目だったのですが、その他大きな項目としては「犬の渡英」や「引越し」がありました。

犬の渡英について、調べていくと空路では英国入りができなかったので、羽田→(航空機)→パリ→(ペットタクシーでユーロトンネル通過)→ロンドン→(ホテルで一泊後タクシー)→オックスフォードという大移動です。書類準備もUK/EUで別々になっていたり、(確か)72時間以内に投薬して獣医のサインを全ての書類にもらう、羽田空港の税関に確認という作業が求められました。詳細な書類、具体的な手続きなどまだまだ書けることはあるのですが、長くなりそうなのでここら辺に止めておきます。

引越しについて、日本の住居も解約して家族での移住なので荷物の総浚いが迫られていました。幸い実家が同県にあったので、まずは毎週末実家に戻り(車で往復3時間)荷物の整理、次に住居内を整理して「英国に運ぶ」「実家に運ぶ」「捨てる」の3種に分類していきました。そう書くと容易く聞こえるのですが、結局3〜4ヶ月くらいは荷物整理をしていましたし、何より仕事をしながら、英国ビザや移住準備もしながらだったので、常に何かに追われているという状態でした。

その他、渡英までのToDoリストを見返してみると「解約・契約変更関係(電気/ガス/水道/インターネット/ジム/保険/マンション/スマホなど)」「自動車売却」「国際送金アカウント開設」「保育園関係」「住所変更」「国際運転免許証」「研究室デスク・備品整理」「渡航の証明書発行」などなど思っていた以上のタスクを抱えていました。オックスフォードの家探しも結局2ヶ月近く格闘して、一度決まりかけたにも関わらず酷い扱いを受けて破談になり再度探し始めました。結局家に関しては渡航を3週間遅らせるくらいの出来事だったのと、またそこから別の家の契約を試みたので全てがギリギリでした。おまけに外国人は家賃12ヶ月分とデポジットを先に支払うこと、同時に行っていた英国ビザ申請や引っ越し、航空券購入と合わせて結局立替払いの合計は一時1,000万円に到達する勢いでした(ちなみに家族分は基本自費であり、立替払いによる返却はされません)。あまり表には出せなかったのですが、このように(後である程度は回収できるものの)積み上げてきた財産が日ごとに減っていくこともあり精神的にもかなり削られます。ある程度事前に進められるものもありましたが、ビザ発行の目処が立ってからでないと始められないもの、順序があるものも多く最後の2ヶ月間でよく間に合ったと今思い返しても思います。

おわりに

過去を振り返ってみると、高校時代で最下位の成績(偏差値28)で絶望し、そこから必死で勉強して大学になんとか入れたことをたまーに思い出し、夢に出て飛び起きたりもします。そこから20年後の2024年現在も残るような酷い経験になってしまっているのですが、オックスフォード大学の大学院生にアドバイスしているとか、代表として英国・独国の国際連携を主導しているなんてことは20年前では絶対に信じないですね!ここから、もし今絶望しているとしても、諦めず継続すれば必ず今の状況を打開して自分の思う方向に進めることができる、ということです。受験に大失敗したり、希望の就職ができなかった ※2 としても「強い気持ち」があれば思う通りの人生の路線変更はないと思います。直向きに頑張っていれば、必ずチャンスは来ます。その分、助けてくれる人がいることも忘れないようにしましょう。

※2 私は修士卒で企業研究所に行こうとして6社7研究所を受けましたが、全部落ちてしまいました(下記ポスト参照)。企業の判断では、私は研究者に向いていない、ということで落ち込みました。

当記事の通り、渡英に至る経緯の最中や直前準備についても厳しい経験をしました。これらの経験から2024年はもの凄く長い一年になりましたが、それを乗り越えたとしてもオックスフォード大学に来て最高の環境で研究ができていること、今後しばらく英国に身を置いて国際連携を拡大できることはそれを上回るくらい、すでに良い出来事になっています!私もまだ道の途中。研究コミュニティの大目標にもなっている「コンピュータビジョン分野のトレンドを創出する」を超えて「コンピュータビジョン分野のトレンドを創出"し続ける"」やその先の「研究コミュニティからスター研究者を輩出する」など世界トップレベルで如何に競っていくかを日々考えて研究していきます。

2024年12月18日追記

「家族での渡英」で登場したミニチュアダックス🐕 右のように英国は12月に入るとすっかりクリスマス🎄で、ツリーの飾り付けも手伝ってくれていました。


2024年12月18日(英国時間)追記内容です。統計から「オックスフォード大学研究記」は多くのみなさんに読んで頂けて、また直接多くのコメントをお寄せ頂きまして誠にありがとうございました。私のみならず、家族へのコメントも結構あり「ワンちゃん🐶まで一緒に渡英したのですか?」「片岡ファミリーのファンになりました!」のように嬉しいコメントも頂きました。

頭では理解していても「最悪命を落とす可能性もある」と怖い文章が書類には書いてあったりしたのでご心配の声もあったのですが、上記写真のように、日本にいる時以上に元気に過ごしています。近所の散歩中や英国内での旅行時など "Sooooo cute!!!❤️" なんて聞こえてくるので、調子に乗ることも多くなりました。英国でも街中がクリスマスムードで、こちらでも家族楽しく過ごせています。

記事公開(2024年12月1日)日には実はドイツ・ニュルンベルクに移動、直後の12月2日にはProf. Yuki M. Asano率いるFunAI Lab [Link]にてUTN x AIST 合同ワークショップを開催し、お互いの研究チームからプレゼン合戦や将来のコラボレーションについて議論する機会を設けていました。🇯🇵🇬🇧🇩🇪の国際連携も今後劇的に進め、日本にも還元していきます。


関連:片岡担当のcvpaper.challenge アドベントカレンダー

  • 国際ワークショップから世界と繋がる (2023/12/6) [Link]

  • 「最強の」研究チームについて考える (2022/12/12)] [Link]

  • アドベントカレンダー企画2022 開幕宣言 (2022/12/01) [Link]

  • つくばを、世界で一番熱い(コンピュータビジョン研究の)場所にする (2021/12/25) [Link]

  • CV分野メジャー国際会議受賞 / トップジャーナル採択までの道のり (2021/12/12) [Link]



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