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愛人に彼女が出来たと言われた日

「そういえば彼女できたんだよね。」

何気ない会話の中で、
彼はさらっとそう言った。

「え、いつから?」

そう聞くと、

「クリスマスあたりかな。」

……半年。

思わず固まった。

彼とは20年近い付き合いになる。

恋人でもない。
夫婦でもない。
でも、去年久しぶりに再会してからは
それまでより頻繁にお互いの近況をぽつぽつ話すくらいの距離感はずっと続いていた。

バレンタインも💝を贈り、

その間もポツポツと連絡は取っていた。

だからこそ思った。

「そのタイミングなら、教えてくれてもよくない?」

彼は笑いながら言った。

「聞かれてないからな(笑)」

でた。

得意のその返し。

私は少しだけ拗ねながら聞いた。

「でも私とはデートしてくれるんでしょ?」

すると彼は、

「我々の関係は特殊ですからね。もちろん♡
俺にはキス、してくれるんでしょ?」

と返してきた。

不思議だった。

彼女ができたことが嫌だったわけじゃない。

今までだって、遊んでいる女性の話は聞いていた。

でも今回は違った。

年も近くて

しっかり半年続いていて。

なんとなく”本気”を感じた。

その瞬間、胸の奥が少しだけざわついた。

私は彼が好きなんだろうか。

……いや、たぶん違う。

じゃあ、この感情は何なんだろう。

もしかしたら私は、
彼を失うのが怖かったんじゃない。

20年かけて自然にできあがっていた、
「特別枠」がなくなる気がしただけなのかもしれない。

人は恋だけじゃなく、
“自分の居場所”が揺らいだ時にも、
胸がざわつく生き物なんだと思った。

私は特別扱いしてくれる人が好き。

そうなるために彼の喜ぶワードを選ぶ。

<俺にはキス、してくれるんでしょ?>

のくだりも
私が前述のマチアプ男の話をした時に

キスすらしたくないと愚痴ったからだ。

だから返信で
死ぬまで〇〇と今の夫くんとしかキスできなくてもいいレベル
って送った。

案の定喜んでいた。

だからこれからも
お互いに特別枠でいたいものだ。

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