なぜ最近の強盗は、すぐ人を殺すのか ーー元刑事が現場で感じた、“今の強盗”の異常性
栃木県上三川町で起きた強盗殺人事件。
報道を見て、多くの人がこう感じたかもしれません。
「こんなの、防ぎようがないじゃないか」
高齢女性が命を奪われ、実行役として逮捕されたのは10代の少年たち。
しかも、その背後には『指示役』の存在も見えてきています。
私は刑事時代、さまざまな強盗や特殊詐欺、組織犯罪を見てきました。
そして今回、テレビ取材で実際に現地へ行き、事件現場周辺の空気や、逮捕現場の緊張感にも触れてきました。
そこで強く感じたことがあります。
それは、
「今の強盗は、昔の強盗とは全くの別物」
ということです。
20カ所も刺している。しかも、『プロの殺し屋』ではない
今回の事件では、被害女性に多数の刺し傷があり、報道では約20カ所に及ぶとも伝えられています。
私はここに、今のトクリュウ型犯罪の危うさを感じました。
言い方は悪いですが、昔の『プロの犯罪者』は、
ある意味で冷静でした。
余計な殺人は、自分たちのリスクを一気に上げる。
だから彼らは、
長居しない
騒がない
余計な暴力を避ける
ことを重視していた。
でも今は違う。実行役の多くは、
若い
未成熟
犯罪経験が浅い
極端に緊張している
ケースが多い。つまり、
感情をコントロールできない状態
で凶悪犯罪をやっている。
「仲間内の空気」が、暴力をエスカレートさせる
今回の事件を見ていて、私は『同調圧力』の怖さも感じています。
若い実行役が複数いた場合、
「ビビってると思われたくない」
「仲間に舐められたくない」
「ここで引いたら終わり」
「やるしかない」
という空気が生まれやすい。
しかも彼らは、
闇バイト
SNSコミュニティ
閉鎖型チャット
指示役との関係
の中で、
承認欲求
仲間意識
支配
恐怖
に囲まれている。
つまり、
“犯罪そのもの”より、
「仲間内の空気」
に支配されていることがある。
だから暴力が一気にエスカレートする。
これはもう、昔の「金目当ての強盗」だけでは説明できない世界です。
「募集」ではなく、「勧誘」へ変わった
今、犯罪組織のリクルート方法も大きく変わっています。
以前は、
「高額案件」
「受け子募集」
「ホワイト案件」
など、露骨な募集が多かった。
でも最近は違う。
警察のサイバーパトロールや仮装身分捜査の警戒が強くなり、闇バイト感を出すと警戒されやすくなった。
だから今は、
人間関係を作ってから引き込む
方向に進化しています。
一番怖いのは、「顔見知りネットワーク」
最近のトクリュウは、完全匿名だけで動いているわけではありません。
むしろ増えているのは、
元同級生
地元の先輩後輩
ゲーム仲間
SNS相互
元職場
一度会ったことがある相手
など、
うっすら繋がっている人間関係
を利用した勧誘です。
これ、犯人側にとってかなり合理的なんです。
人は、
「知らない反社」
には警戒する。
でも、
「知り合いの知り合い」
には、一気に警戒心が下がる。
しかも今の若い世代は、
『リアルの友達』と『ネットの友達』
の境界がかなり薄い。
数回通話しただけ、ゲームを一緒にやっただけでも、
「仲間」だと感じることがある。
そして今回、
その『顔見知り』の繋がりがあったからこそ、
逆にスピード逮捕にも繋がった側面がある。
完全匿名ではなく、地元や同世代の繋がりが残っていた。
だから警察も、人間関係を辿りやすかった。
ここが、今のトクリュウ犯罪の特徴でもあります。
匿名性は高い。
でも実際には、『緩く繋がったリアルな人間関係』で動いている。
強盗は、その日、突然やって来るわけじゃない
今回の事件で、私がかなり気になった点があります。
報道を見ると、
4月上旬の窃盗事件
不審車両
不審なバイク
周辺をうろつく人物
盗難ナンバー車両
地域住民の違和感
など、『事前行動』がかなり見えている。
つまり犯人たちは、突然押し入ったわけじゃない。
「見ていた」
可能性が高い。
犯人は、「家」ではなく「生活」を見ている
これは刑事時代にも強く感じていました。
犯人が見ているのは、
家の大きさ
車
家族構成
留守時間
防犯意識
周辺環境
逃走ルート
つまり、その家の生活そのものを見ている。
今回の現場も、周囲が田畑に囲まれた立地。
さらに、地域では『○○○御殿』と呼ばれるほど知られた家だった。
これは犯人側から見ると、
「目立つ」
「狙いを定めやすい」
条件にもなってしまう。
それでも、防げなかった
今回の事件で、私はもう一つ強く感じたことがあります。
この地域では、決して何もしていなかったわけではない。
報道によれば、
不審車両情報
不審人物
周辺での窃盗
回覧板での注意喚起
警察の警戒
盗難ナンバー車両の摘発
まで行われていた。
つまり、地域も警察も、
『異変』には気付いていた。
それでも事件は起きた。
ここが、今のトクリュウ型犯罪の難しさだと思います。
防犯には、「限界」もある
防犯の記事を書くと、
「これをやれば安心」
みたいな話になりがちです。
でも現実は違う。
どれだけ警戒しても、
防ぎきれない事件はある。
刑事時代、私自身もそれを何度も感じました。
だから私は、
「これをやれば絶対安全」
とは言いたくない。
でも、『無意味』ではない
防犯に100点はない。
でも、だからといって意味がないわけじゃない。
もし今回、
地域の警戒
情報共有
不審車両の通報
警察の警戒活動
がなかったら、瞬間的にもっともっと被害が広がっていた可能性だってある。
防犯って、『ゼロか100』じゃない。
被害を減らす
時間を稼ぐ
犯人を焦らせる
次の被害を防ぐ
その積み重ねなんです。
窓ガラスは、“突破される前提”で考えた方がいい
今回の事件では、窓ガラスがバールで破壊されています。
ここ、かなり重要です。
多くの人は、
「鍵を閉めてるから大丈夫」
と思っている。
でも今の強盗は、最初から 破壊前提 で来る。
だから本当に重要なのは、
侵入を諦めさせる時間
を作ることです。
例えば、
防犯フィルム
補助錠
シャッター
防犯ガラス
センサーライト
防犯砂利
「録画中」を見せるカメラ
これらは、「絶対防御」ではない。
でも、
割るのに時間がかかる
それだけで、
犯人はかなり嫌がる。
特に今の未成熟な実行役は、
「想定外」
を極端に嫌います。
もし強盗が入ってきたら、どうするべきか
ここ、今回のケースのような被害を最小限に抑えるうえでかなり大事です。
昔の防犯は、
「立ち向かう」
が前提でした。
でも今は違う。
今の実行役は、
未成熟で、
極端に興奮していて、
予測不能です。
だから私は、皆さんには
まず『命を守る』ことを最優先にしてほしい。
重要なのは、「戦う」ではなく、
時間を稼ぎながら、生き残る
ことです。
例えば、
逃げられるなら屋外へ逃げる
スマホを持って逃げる
110番を最優先する
大声より通報を優先する
家族で避難ルートを決めておく
寝室にスマホを置いて寝る
防犯ブザーを準備しておく
など、侵入後を想定しておくことが大切です。
また、
トイレや浴室に逃げ込むという考え方もあります。
ただ、これは万能ではありません。
浴室やトイレは、比較的ドアが頑丈で、時間を稼げる場合もある。
一方で、逃げ場がなくなるリスクもある。
だから大事なのは、
「その場で籠城する」
ことではなく、
110番する時間を作る
犯人を焦らせる
逃げるタイミングを作る
という発想です。
今の強盗は、長引くことを嫌います。
だから、
少しでも時間を稼ぐことが、
生存率を上げることに繋がる。
それでも、絶望しないでほしい
今回の事件は、本当に痛ましい。
現場を歩いていても、
「もし自分の家族だったら」
と考えずにはいられませんでした。
しかも今回は、
地域で警戒していた
回覧板も回っていた
不審車両情報もあった
警察も動いていた
それでも起きてしまった。
だから、怖くなるのは当然です。
「もう防げないじゃないか」
そう感じた人もいるかもしれません。
でも、
私は絶望してほしくない。
刑事時代、私はたくさんの事件を見てきました。
その中で感じたのは、
人は、無関心になった時が一番危ない
ということです。
逆に言えば、
違和感を共有する
家族で話し合う
地域で声を掛け合う
防犯を見直す
それだけでも、犯罪はやりにくくなる。
防犯って、完璧な壁を作ることじゃない。
「気に掛ける人」を増やすことなんです。
今回の事件で、傷ついた人も、不安になった人もたくさんいると思います。
でも、
怖いから諦める
ではなく、
怖いから備える
社会であってほしい。
進化する犯罪に対して、
こちらも進化していく。
その積み重ねが、
誰かの命を守ることに繋がると、
私は信じています。
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