酒酔い運転の基準が変わった
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」及び「道路交通法の一部を改正する法律」が施行された。この法律改正により、酒酔い運転の基準の一部が変わった。
|概要
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」及び「道路交通法の 一部を改正する法律」が令和8年7月21日に施行された。
この問題は「危険運転致死傷罪」の適用にあたり、飲酒運転やことさら高速度による事故などの基準が明確でないことで改正機運が高まり、国会において審議された。
今回の記事では飲酒運転、つまり酒酔い運転の認定基準の改正について記載する。
今回の改正により、危険運転致死傷罪の要件の一つである、酒酔い運転による事故について、運転者の酒酔い運転の基準が明確化された。
この改正では酒酔い運転の基準が数値で示されたことで、実は事故を起こしちない場合においても(危険運転致死傷罪に限らず一般の道交法違反の取締り)、酒酔い運転の数値的な基準が明確化されたのだ。
|改正等の趣旨
自動車運転死傷処罰法においては、重大な死傷事犯となる危険性及び悪質性が類型的に極めて高い運転行為を行い、その結果人を死傷させた者を、危険運転致死傷罪と して傷害罪や傷害致死罪に準じた重い法定刑により処罰することとしているところである。
しかし、近時、危険運転致死傷罪について、危険かつ悪質な自動車運転による死傷事犯に適切に対処することができていないのではないかとの観点から、様々な指摘がなされていた。
そこで、自動車運転による死傷事犯の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするため、危険運転致死傷罪の対象となる行為の明確化及び追加を行うとともに、酒酔い運転を行った者等に対する罰則の対象となる行為の明確化を行うこととなったものである。
|改正等の内容
➤ 自動車運転死傷処罰法の一部改正
この改正により、いわゆる飲酒類型に係る要件が明確化された。
危険運転致死傷罪の対象行為のうち、アルコールの影響により「正常な運転が 困難な状態」の要件について、
「身体に血液1ミリリットルにつき1.0ミリ グラム以上又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」
と明確化された(改正法による改正後の自動車運転死傷処罰法第2条第1号)。
➤ 道交法の一部改正
道路交通法第64条に定める酒酔い運転の罪に規定されている「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」についても自動車運転死傷処罰法と同様に、その要件として
「身体に血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」と明確化されたのである(法第117条の2関係)。
つまり酒酔い運転の用件が2点となった。
1つは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態について、身体に保有するアルコールの量に着目して、呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上の場合には、その数値に基づき「酒酔い運転」とすること。
2つめは、アルコールの量にかかわらず、客観的に酒酔い状態にある場合
に酒酔い運転と認定されることになったのである。
|改正に伴う注意点等
上記のように、酒酔い運転の基準のひとつに数値基準(呼気1リットルにつき0.5ミリリットル、血中アルコール濃度が1ミリリットルにつき1.0ミリグラム)が設けられ酒酔い運転と認定されることになった。
過去においては0.5ミリグラムを越えていても客観的な酒酔いの状態、例えばふらつきがなく、一定の歩行ができる状態などにあった者は酒酔いではなく酒気帯び運転と認定して措置(赤切符等による刑事責任の請求手続き)をしていたのであるが、7月21日以降は危険運転致死傷罪および道路交通法でも、前記の数値(呼気1リットルにつき0.5ミリリットル、血中アルコール濃度が1ミリリットルにつき1.0ミリグラム)を超えると、酒酔い運転として認定されることになった。
この点の認識を誤らないようにして欲しい。
|呼気「0.5ミリリットル」どのくらい
飲酒者の身長・体重・年齢、飲酒後の経過時間、アルコール耐久性などによっても異なるが、ウィドマーク法により,体重,飲酒量,経過時間から,特定時における呼気1リットル中のアルコール濃度mg/lを推定する計算式で算出すると、一般的には
〇 500mlの9%のストロング系の酎ハイ500mlを飲んで30分以内ので0.5ミリリットルを超える数値が出る人
〇 缶ビール(アルコール5%、500ml)を2本飲んで30分後には0.5~1.0ミリリットルの数値が出る人
がいるよう。このように飲んでから間がない時間でアルコール検知すると、0.5ミリリットルは缶ビール1本飲んだ直後でも酒酔い運転になる可能は捨てきれないということだ。
一方で、もう一つの基準「アルコールの保有量にかかわらず客観的にアルコールの影響で正常な運転ができるかどうかを判断」することになるので、一層の注意が必要である。
そのためには
・飲んだら飲まない
・飲んだ翌日のアルコール残り運転(二日酔い運転)
には十分注意する必要がある。
飲酒運転が常習化している運転者にアンケートしたところ、
・いつも通り
・この程度なら問題ない
など、平素の自分の飲酒および翌朝の酒気残り状態をが慣れ、慣習化してしまうと、飲酒運転(酒残り運転を含む)をしているという認識が乏しくなるという危険性が含まれているので要注意である。
|おわりに
いずれにしても、飲酒運転、特に酒酔い運転の基準が変わったので、飲酒運転をしないことはもちろん、飲酒運転周辺三罪などについても酒酔いの基準が関係・適用されることになるので一層の注意が必要である。
