滝川第二高校演劇部「防空壕のはなし」
「舞台をお楽しみください。そして、滝川第二演劇部のファンになって帰ってください」との舞台アナウンスで始まった滝川第二高等学校の演劇。
今年度の高校演劇大会の神戸地区大会は勝ち越しましたが、兵庫県大会では最終学年である高校2年生が修学旅行と重なり、高校1年生版で参加するも近畿大会への切符を逃したそう。
そこで、兵庫県大会の会場である「明石市立西部市民会館」で、もう一度県大会を沸かせた高1主体の部と、本来舞台に立ちたかった高2主体の部の2公演を上演とすることなりました。
子どもたちの思いを受けて動いた顧問の先生。そして、こどもたち、保護者、同級生の思いが重なり、今回の公演となったのが、アナウンスや手作りの演劇パンフレットにも伝わるものがたくさんありました。(最後に続く…)
現代と戦時中のシーンが交錯し、現代に集約していく作品で、滝川第二演劇部では、戦後60年(2005年)全国大会にて「君死にたまふことなかれ」、戦後70年(2015年)に「花火」、そして戦後80年(2025年)に今作品「防空壕のはなし」と、節目の年に戦争にまつわる芝居を上演しています。
☆あらすじ
B棟1階階段下倉庫の前を陣取り、「自主放送部」と称して勝手に部活動をしている高校2年の上月サヤハは、元担任の佐倉先生から、戦時中に19歳でアナウンサーになった由利ヨシノの手記を渡されます。
さっそく手記に魅せられたサヤハは、掲載されている写真や記述内容から想像を膨らませていきます。
蚊の鳴くような小さな声しか出せなかった幼い頃のヨシノが、兄サネユキと共にラジオ放送を楽しみながら成長していく様子と並行して、サヤハ自身の悩みが少しずつ明らかに・・・。
何をされるわけではないけれどクラスメイトからは距離を置くサヤハは、まもなく始まる修学旅行の日々悩みを募らせていきます。
戦時中のラジオ放送が戦意高揚から「欲しがりません勝つまでは」に変わっていくように、今の担任の八重先生からは、修学旅行の班決めについて、「どの班もあなたを歓迎している」と言われたかと思えば「学校行事なんだから」と我慢を強いられるなど、刻々と変化していきます。
そして、手記が防空壕のシーンに差し掛かった時、
八重先生から「あなたが自主放送部としてやっている『本日は晴天なり』は発音上意味がない。『It's fine today』と言ってみたら」と言われたサヤハは・・・。
☆☆みどころ
☆一番の見どころは、「防空壕」です。
今回、作劇のきっかけになったのが、本校B棟1階階段下倉庫です。戦争を題材に作劇を始める中で、現代にはコミュニケーションや自己表現が上手くいかず、閉塞的な思いを抱いて過ごしている生徒がいて、いわゆる居場所を求め、学校生活においては「ずっと何かと戦っている」生徒の存在に注目しました。
舞台は、一種のデッドスペースで、そもそも人の通りが少ない場所ですが、階段の壁が影になって、人がいても注意して見ないと分かりません。そこから発想を膨らませ、階段下の一角を陣取って、自らの思いを発信したくても出来ない、でも発信したい。自己矛盾をはらみながら居場所を求めている「自主放送部員」と、戦時中の防空壕での生活を、重ね合わせていく話を作りました。

☆☆☆ 作劇について
戦時中の放送という着眼点から、戦時中に19才でアナウンサーになった「武井照子さん」の手記の記述などの文献を複合的に参考にしました。特に、武井照子さんの手記については、幼い頃の生活や、アナウンサーとなって終戦を迎える様子など、大いに参考にさせていただいております。

顧問から「ダブルキャストで作劇し、神戸地区大会は高2版、もし勝ち上がれたら県大会は高1版で、もし近畿大会に行けたら、高2・高1の芝居に作り直す」という、かなり無謀な提案を行い、この度兵庫県大会まで繋ぐことが出来ました。男子2名を女子1名が二役する場面もあって、相当不利な条件でしたが、審査員の先生からは、「女性が演じることに意義を見出すことが出来た」という講評をいただきました。
☆☆☆☆神戸地区舞台美術田中賞
今回舞台上に、写真のようにB棟1階階段下倉庫を再現しました。
地区大会・県大会では舞台設置・撤収を10分以内で行う必要があるため、様々な工夫がなされています。
もちろん、階段の上り下り、倉庫の扉も開閉して、芝居の中で多種多様な役割を果たしていきます。

☆☆彡☆外部公演を観て
外部公演に際して、手作りしたパンフレットには、お楽しみコーナーがあり、観覧者にもプレゼントが用意されていました。

今回は、高校の演劇部での出来事ですが、大会に向けて”頑張りたい”思いと、学校行事の日程との狭間で、顧問と部員が一つになって、新たな挑戦をしました。その部活は、高校だけでなく中高一貫の滝二演劇部でした。また、ストーリーを考える、役を演じる、解りやすく伝える、とさまざまな角度からも部員たちが学び、力を合わせました。そして、公演できる喜びと、支えてくださった人々への感謝も表現することも忘れませんでした。そして、部活に携わった人たちだけでなく、観劇した我々も、豊かな時間を過ごすことができました!
今、公立中学校の部活が地域移行されようとしています。現在のままでは続けていけないのは周知の事実ですが、部活の本来の意義を再認識しつつ、その方向性を探ってみたくなります。
