トランプより先にイタリアが中国製トマトの関税を上げるかも
イタリアのトマトソース業界の大手ムッティ社(昨年の売上高が6億6500万ユーロ)のフランチェスコ・ムッティ最高経営責任者(CEO)が、中国の新疆ウイグル自治区で生産される安価なトマトペーストによる「不公平な」競争から農家を守り、イタリアの主食である赤い果物の「尊厳」を回復するようEUに要請しました。
その主張の内容は「中国からのトマトペーストの輸入を止めるか、60%の税金を課して、コストがイタリア製品とそれほど変わらないようにすべきだ」というものでした。
中国製のトマトの扱いの各国事情
米国では既に中国トマトの輸入は禁止
現在、米国政府は、中国の新疆ウイグル自治区で生産されたトマトペーストを含む製品の輸入を禁止しています。この決定は、同地域での強制労働といった人権侵害の深刻な疑念があったためです。
2021年初頭、米国税関・国境警備局(CBP)は、新疆産のトマト及びその加工品全般に対しては「違反商品保留命令(WRO)」として輸入差し止め命令を発令しました。
この措置は、中国が新疆ウイグル自治区で収容所の収容者や受刑者を不当に労働力として利用しているという報告が背景にありました。
トマトペーストは新疆の主要な農産物輸出品の一つであり、この禁止措置は地域経済に大きな影響を与えることとなりました。
さらに翌年2022年、米国はウイグル強制労働防止法を施行し、新疆からの輸入規制をさらに強化しました。この法律は、新疆で生産された商品や同地域の企業が関与した製品の輸入を原則的に禁止するものです。
これにより、トマトペーストを含む多くの中国製トマト製品が米国市場への橋頭堡を失うこととなりました。
日本ではカゴメも同時期に中国トマトの輸入を禁止
カゴメ株式会社は、2021年に新疆ウイグル自治区産のトマト加工品の使用中止を決定しました。
カゴメはそれまで、ソース類の原料として新疆ウイグル自治区で生産・加工されたトマトペーストを輸入していました。
しかし、同地域におけるウイグル人への人権侵害疑惑に対するアメリカの動きを筆頭に国際社会からの批判が高まったことを受け、2021年中に新疆ウイグル自治区からの輸入を停止しました。
さらに、すでに輸入済みの原料についても2022年中に使用を終える方針を打ち出しました。
この決定の背景には、カゴメの事業構造が大きく関係しています。トマトは産地による品質の差異が比較的少ない農作物であり、カゴメはもともと気候要因から調達地を分散させていました。そのため、新疆ウイグル自治区以外の地域からの調達で対応が可能でした。
加えて、カゴメの中国での売上比率は全体のわずか0.4%と小さく、この決定による事業への影響は限定的であったと言われています。
カゴメのこの対応は、多くの日本企業が新疆ウイグル問題について沈黙を保つ中で、具体的な行動を取ったという点で当時注目されました。
一方で、当然ながら中国のメディアや SNS ユーザーからは批判的な反応も見られ、国際関係の複雑さも浮き彫りになりました。
カゴメは、ファン株主を獲得にも動いていますね。
一方、EUはこの動きには追随しませんでした
EUは中国との貿易関係を考慮し、新疆ウイグル問題の根拠薄弱として輸入禁止に踏み切ることはしませんでした。
そもそも、イタリアでは原材料の原産地表示を義務付ける法律が存在しないため、「再輸出加工手続き」という制度があり、これにより関税を支払うことなく商品をEU圏内に輸入し、加工後に再輸出を行っていました。
更に、原材料の原産地表示を義務付ける法律が存在しないことを良いことに、中国産トマトを使用した製品でも「メイド・イン・イタリー」として再販していました。
中国とイタリアは、非常に闇の深い共犯関係があったため縁が切れないのだろうという説がまことしやかに流れていました。
今更の如くイタリアで手のひら返し
そして、この期に及んで”私たちは農家により良い栽培方法を教えなければならないが、不公平な競争から彼らを守らなければならない”、”新疆ウイグルでは労働コストは非常に低いため、現在の競争はイタリアの農家には不公平だ"と手のひら返しとしか思えないようなことが主張され始めたということです。
“The competition today is not fair because more than 90 per cent of Chinese tomatoes are produced in the Xinjiang region and labour costs there are very, very low,” said Luigi Pio Scordamaglio, Coldiretti’s director of international affairs.
https://www.ft.com/content/05962eba-b833-4e97-97de-dcf4b1ffa847
産地偽装問題があまりに有名になりすぎたことや、EUの食品表示規制の見直しなどが直接の理由なのかもしれませんが、正直なところ何故このタイミングで考え方を変えてきたのかは、僕にはよく分かりません。
これは分断の前触れか?
トランプは、公然と関税を武装化の道具として使うことを予告しています。実際にやるかどうかは分かりません。
ただ、やらかしてしまった日には世界に保護主義傾向を一気に広げることになり、各国が制裁関税を掛け合い、自由貿易が崩壊し分断を一気に進める流れとなるでしょう。
ある意味、これは前触れなのかもしれません。
いいなと思ったら応援しよう!
日経電子版、Foreign Affairs Magazine等の有償情報ソース、書籍に使わせていただきます!なかなかお小遣いでは購読が難しいのですけど、ここらへん充実できると記事に是非反映してお返し出来ればと思います。