【追悼】土師孝也さんのお声に感じた「脈動」の話
昨日夜、先日の櫻井智さんに続き悲しい報せが入ってきました。
北斗の拳のトキなどで知られる声優、土師孝也さんがお亡くなりになったとのことです。
慎んで、ご冥福をお祈りします。
この世代のベテラン声優としては近年の出演作も非常に多く、精力的に活動されていた方なので…まさに青天の霹靂であります。HUGっと!プリキュアのドクター・トラウムは好きなキャラでしたね。

最終的にはいい人側で着地して、ファンも多いのではないでしょうか
また北斗の拳での、トキのケンシロウやラオウすら超える実力者の風格は、土師さんの声があってこそな面がありました。内海賢二さん、神谷明さんの上に立つような人格者の重みを感じさせる名優でしたね。
これはもう超能力で、どこが拳法やねんと言いたくなるトキの奥義ですが…土師さんの声がトキの最強格を創り出した名シーンでもあります。
ギャグ漫画的に揶揄される事も多い北斗の拳ですが、80年代の声優陣の実力を存分に味わえる歴史的資料の趣きも出て来た作品ですね。
「上手い」より「凄い」を求めたい
土師さんのように、キャラの「格」を創り上げられる役者さんこそが「上手い」の域を越えているプロでは無いかな、とこの度感じました。ただ個性的というだけでなく、このキャラクターはもうこの声以外あり得ない、と言わしめてこそ「声優」なんじゃないかと思います。
個人的に、BTTFのドクはもう青野武さん以外あり得ないと思っています。青野さんのキャラクターはそれこそ何十キャラと聴いていますが、声で顔が浮かぶのがドクだったりしますから。
この、「代わりのいない」ベテラン声優さんが持っているものって何なのだろう?と言語化の手掛かりを探っていました。=若手批判、ではないのですがやはりなかなか声が覚えられない最近の声優陣には無いものがあるのでは…と思ったんですね。
すると、若本規夫さんのお話に辿り着き解答を得ることが出来ました。
ズバリ、声の中の「脈動」が、聴き手の心に残っている。また、残すのがプロの声優なんだなって事ですね。流石若本さん、ズバリ言葉にしてくれていました。
声が覚えられない新しい声優さん達の演技に脈動が無い、のではなく現在の業界がそれを求めていない、といった方が的確であり、問題だとも感じます。声優が本人も含めてキャラクター化している世の中ですから。この話はまた別に取り上げるとして、「脈動」を表現している役者さんは素晴らしいな~と、久しぶりに土師さんのトキの声を聴いて、思った次第です。
それ即ち、職人の持つ凄みだと思います。
伝説のネタキャラも忘れてはいけない
土師さんのトキは格好良い、それは間違いないですが付随して忘れてはならないのが、コイツです。
同じく土師さんが演じたトキのニセモノ、アミバです。実は役者的凄さを感じられるのはトキよりもこちらではないかと思えるほどの好キャラクターなんですね。あえて説明するまでもないですが、最初は闇堕ちしたトキとして登場、ケンシロウを追い詰めるまでの強敵ぶりを見せますがここにレイが現れ、別人であることを暴いてからは豹変、一気に小悪党に成り下がります。その後の格の下がり方は、「アミバ流北斗神拳」による自滅も相まって語り草になっていますね。これでも公式ガイドブックによるキャラの格付けではユダと同等になっていたので、南斗六星拳レベルの力はあったということでしょうか。…とてもそうは見えませんが。
何より最初の、「闇トキ」としての演技、バレてからの「アミバ」としての演技の落差がヒドすぎて、この戦いのコメディレベルを非常に高いものにしています。ハッキリ言って、アミバの声はモヒカン野盗と変わらない小者臭さがあります、この世界の強さランクで言うと暴落なんてものではありません。

ここからDランクまで滑り落ちていきます

秘孔を突くことに極意のある拳法において、筋肉を増やしてマッチョ化する意味はあるんですかと質問してみたかったのですがそれは叶わない夢のようです。40年以上経っても一部で圧倒的な人気を誇るアミバ様、時代が変わっても普遍的な笑いを提供してくれるギャグキャラのカリスマでもあります。
アニメでこのキャラのネタ感をより昇華させてくれたのが土師孝也さんだったことも語り継いでいきたいものです。北斗の拳は近年のメディアでは新しいキャストで展開されていますが、トキとアミバが別々の声なことも多いですね(堀内賢雄さん、関智一さんなどは兼任)。
ともかく、声優さんは職人であって欲しい、とまた一人天国に旅立った職人を思いながら感じました。
土師孝也さん、お疲れ様でした。
震えるほど格好良い北斗の次兄、震えるほど面白い天才の声をありがとうございました。

