心に火を灯す
「心に火を灯す」
これは、私が尊敬する教育者、
長谷川博之氏の
教育観の中にある言葉です。
平たく言えば、
相手の意欲ややる気を引き出すこと。
最近、子どもたちの心に火を灯せたのではないか、と感じる出来事がありました。
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私は普段、算数専科の教員です。
掃除の担当場所は、5年生の階段と廊下。
ところがその日、5年担任の先生から
「今日は行事の関係で掃除はなしにしてください」
と依頼がありました。
そこで私は、普段の大掃除でよくやることをしました。
教室の中の、普段見えない高いところの拭き掃除です。
ただ掃除をするのではなく、
場を清めるという意識を持って。
拭きながら、ふと「ありがとう」という感謝の気持ちも湧いてきます。
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ひと通り拭き終わったあと、今度は水場の床を磨くことにしました。
ちょうど年度末。
「次に使う子どもたちのために」という気持ちです。
普段その場所は、ほうきで掃くことはあっても、
拭き掃除まではしません。
水場の近くなので湿気も高く、
水分
空気中のほこり
上靴の裏の土
それらが混ざり合い、床は真っ黒になっています。
とはいえ、この汚れは
水と雑巾でこすれば落ちる汚れです。
5分ほど磨くと、
20cm×60cmほどの床がピカピカになりました。
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その様子を、たまたま私の算数の授業を受けている子どもたち3人が見ていました。
ピカピカになった床を見て、驚いた顔をしています。
私は言いました。
「ものの5分でこれくらいきれいになるよ。」
「次にここを使う後輩たちに、気持ちよく引き渡せたら嬉しいよね。」
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掃除の時間が終わり、昼休みが始まりました。
チャイムが鳴り、私は雑巾を洗って元の場所に戻し、
自分の教室へ丸つけをしに戻りました。
その水場は、教室からも遠く、
休み時間でも人があまり来ない場所です。
ところがそのとき、
何やら相談しているような声が聞こえてきました。
見に行ってみると——
そこには3人の子どもがいました。
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男女3人の子どもたちが、
私がやっていたのと同じように
しゃがみ、視線を低くして、
雑巾で床を磨いていたのです。
休み時間です。
遊びたい盛りの子どもたちです。
それなのに、掃除の時間が終わったあとも
床を磨いている。
そして言い合っています。
「ピカピカになった!」
「気持ちいいね!」
その光景は、とても微笑ましいものでした。
このとき私は思いました。
ああ、子どもたちの心に火が灯ったのかもしれない。
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その日の終わり、
床磨きをしていた3人の担任の先生にも
「休み時間なのに、掃除を頑張っていましたよ」
と伝えました。
清々しい気持ちでその日は終わりました。
そして、子どもたちの火は
翌日さらに広がります。
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次の日。
昨日の3人はもちろん、
さらに3人の女の子が加わっていました。
しゃがみ、視線を低くして、
雑巾で床を磨いています。
私は声をかけました。
「1人でやるのも素晴らしい。」
「でも、仲間と一緒にきれいにすると、
もっと気持ちよくなるよね。」
子どもたちはうなずいていました。
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教師の仕事は、
知識を教えることだけではありません。
心に火を灯すこと。
それができた瞬間だったのかもしれません。
