Amazonのレビュー欄で書いた「願い」がかなった話―読書月記65
(敬称略)
5月4日の真夜中、Amazonで「ブルース・チャトウィン」で検索をかけた。チャトウィンはすでに亡くなっているので、本当の意味で新刊が出ることはないのだが、関連書が出ることもあるからだ。ニコラス・シェイクスピアによる伝記『ブルース・チャトウィン』もこれで気づいた。邦訳の刊行は2020年8月28日だったけど、気づいたのは2021年1月1日だった。
そして今回ヒットしたのはロバート・バイロンの『オクシアーナへの道』だった。邦訳の刊行は2024年10月28日、半年も前のことだった。
2011年2月号の「考える人」(新潮社が出していた季刊誌)について、かつてAmazonでレビューを投じた。同号の特集は「紀行文学を読もう」で、その内容に触れながら、出版社へ要望もそのレビューにいくつか書いている。その一つが、同誌の記事で知った、ニコラス・シェイクスピアによって書かれたブルース・チャトウィンの伝記の「邦訳を読みたい」ということであった。しかし、チャトウィンのファンがある程度いるにしても実現は難しいだろうと思っていた。だから、読めもしないのに2012年5月にはペーパーバック版の洋書を買った。
2014年2月には、チャトウィンの『どうして僕はこんなところに』(角川文庫)についてAmazonのレビューで、同様に、チャトウィンが「「傑作」としているロバート・バイロンの『オクシアーナへの道』を読みたくてたまらなくなる」、「どこか翻訳してくれないだろうか」と書いた。しかし、ロバート・バイロンなんて、チャトウィン以上に日本では知られてないから無理だろうと思い、2020年4月には読めもしない洋書のkindle版を購入した。
ところが、上に書いたようなことが起きていた。ブルース・チャトウィンその人に関していえば、著作もほとんど邦訳されているのだから、ファン層がある程度いて、彼の伝記を読む人がいる可能性は想像つくけど、『オクシアーナへの道』に関しては本当に無理としか考えられなかっただけに邦訳が出るなんて想像もしていなかった。
現在、日本では以前には信じられなかったほど、かなり特異な外国語作品の邦訳や文庫化が増えている気がする。出版社が出版点数を増やすなかで、以前であれば二の足を踏んでいた作品の翻訳、文庫化などが実現していることが増えたと思う(チャトウィンの『パタゴニア』の文庫化はともかく、『どうして僕はこんなところに』の文庫化には驚いた)。
例えば、直近ではガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』『族長の秋』が文庫化され、ジョージ・エリオットの『フロス河の水車小屋』は白水Uブックス版で入手可能になった(それまでは全集版か単行本の古書のみ)。単行本だと、ミシェル・レリスの『ゲームの規則』全4冊が翻訳されたのは2017~2018年のこと。また、ドストエフスキーの中短編の翻訳が光文社古典新訳文庫に入ったり、江川卓訳の『カラマーゾフの兄弟』が中公文庫(6月以降の刊行)に入ることになった。
上に書いたのは「邦訳が読みたい」という希望だが、Amazonのレビューには、「これって抱き合わせ販売では?」とか「こことここは、校閲ミスでは?」といったことも書いたことがある。前者は、その後、売り方が変わったし、後者に関して言えば、ある本は文庫化された時点で指摘したことがすべて訂正されていた。
これらのことや、『ブルース・チャトウィン』と『オクシアーナへの道』の邦訳が刊行されたのと、私のAmazonのレビューが関係しているかどうかは不明だ(さすがに「抱き合わせ販売」は関係があったと思うが)。
だいたい、私は無名の一般人でしかないから、私一人がAmazonのレビュー欄に何を書こうが、大きな影響があるとも思っていない。
ただ、自分の願いは言葉にして表明すべきだといつも思っている。
そして、実現したら、とても嬉しい。
