深夜の奥多摩駅/奥多摩外輪縦走#0
山岳サイクリングの限界値を上げようとする私と、アイスランド徒歩一周に敗退して山歩きの能力を上げようとする友人の二人で、テクテクと地味に歩いた2016年のクリスマスの奥多摩外輪縦走80km3日間を振り返りたい、、ところだが、この縦走について語る前に、縦走のためのトレーニングの思い出があるので触れておきたい。
2016年 秋 奥多摩→タワ尾根→日原
深夜の奥多摩駅に友人と降り立つ。
冷え切った暗闇と僅かな街灯の中、寝床を探しに改札を出る。
われわれは、駅近くで数時間の仮眠(いわゆるステーションビバーク)をとったあと、日原方面まで舗装路を歩き、タワ尾根というバリエーションルートから長沢背稜に入り、天祖山から日原に戻る予定だった。
クリスマスに控える奥多摩外輪縦走の練習だ。
人目につかないベンチにマットを敷き、シュラフを広げてごろり。白い息を吐きながら、目を閉じる。
なんでこんな事をするのかと言えば、奥多摩駅への始発は到着時刻が遅く、予定する行程をこなすには日照時間が足りない。加えて、クリスマスに行う縦走の行動時間帯を踏襲したハイキングをするという狙いがあった。
意識が遠のき、眠りにつこうとしたその時、奥多摩駅に終電が入ってきた。
あー終電まだあったのか、、、と思いつつ微睡んでいくと、突如罵声が聞こえる。
「っんだぁぁぁ!マジがよッ!ンだっ!」
そして、看板や壁を蹴りつける乾いた音も聞こえる。
「アァァァァっ!」
寝過ごして、奥多摩まで来てしまったらしい。それだけなら同情の余地があるが、騒ぎ過ぎだ。都心でやれば直ぐに警察が飛んでくる程度の暴れようだ。
こちらに来なければいいが、、、と思いながら、私は眠りについてしまった。
私が寝に入るくらいだから、暫く駅前で暴れていたんだと思う。しかし、友人は眠れず起きていたらしい。
友人曰く、戦々恐々しながらシュラフに包まっていると、その男の怒声と足音が近付いてきたという。
そしてついに、我々が眠りにつくベンチを男が視界に捉えたその時。
「ウッワ、、マジかよこんなとこで寝てんのかよ、、、何なんだよ、、、」
我々を見た男はドン引きし、ボルテージは幾分下がったらしい。
あんたの方が十分ヤバイよと私は思うが、彼からすると我々のほうがヤバかったようだ。
男は我々を避けて、再び悪態をつきながら短い奥多摩駅前の商店街を歩くと、騒ぎを聞きつけた駐在の警察官に声をかけられ大人しくなったという。
あのあと彼がどうなったのか、我々には知る由もない。
奥多摩行きの列車に乗っているくらいだ、きっと割かし近場の駅で、警察官の助けを借りるなりして無事に帰れているんじゃないだろうか。いや、そうであってほしい。
何はともあれ、我々は翌朝無事にタワ尾根を登り、美しい長沢背稜を踏み、おやつ時には30kmあまりの行程を終えて東日原のバス停でバスを待っていた。
今思い返しても素晴らしい山行だったが、語ると長くなるし割愛する。



