見出し画像

ネットワーク設定は「手順」ではなく「成立条件」を探す仕事

前回、福祉施設様のサーバークライアントシステムで発生したDB接続エラーの話を書きました。

実はその対応と並行して、別件のネットワーク設定について相談を受けていました。

私は自社のお客様だけでなく、他社様からの依頼でネットワーク機器やサーバー周りの設定を行うこともあります。

その流れで、あるフリーランスの設定業者の方から電話がありました。

内容は、

「YAMAHA RTX830でPPPoE設定ができない」

というものです。

現場からの連絡でしたので、こちらも急いで可能性を考えます。

PPPoEの接続IDやパスワードの間違い。

GUIから設定した際に、画面上には見えていない既存設定との衝突。

光回線側のONUや回線側の問題。

あるいは、他の機器がすでにPPPoEセッションを使っていて、セッション上限に達している可能性。

一言で「PPPoE設定ができない」と言っても、疑う場所はいくつもあります。

まずは何が正しいかを確認する

さらに話を聞くと、RTX830は初期化済み。

そして、今回設定するものとは別のプロバイダアカウントでは接続できるとのことでした。

そうなると、ルーターそのものや回線物理層の問題である可能性は下がります。

この時点で一番可能性が高いと考えたのは、PPPoEの接続情報、特にパスワード違いでした。

そこで、

「テスト用PCとONUを直結して、PC側でPPPoE設定を行い、アカウント情報が正しいか確認してみてください」

とお伝えして、その通話は終えました。

ルーターの設定をいくら触っても、そもそものアカウント情報が違っていれば繋がりません。

まずは、ルーター以外の要素で接続情報そのものを確認する必要があります。

翌日の報告で見えてきたこと

翌日、その方からご報告のお電話をいただきました。

現場には以前のIPoE契約が残っており、その接続が優先されてしまっていたのではないか、というお話でした。

具体的には、その現場にあったBuffalo社製のWi-FiルーターをONUへ接続したところ、IPoEで接続されてしまったとのこと。

そのため、PPPoE接続ができなかったのではないか、という見解でした。

今回はお客様ご自身でIPoE側のプロバイダ解約手続きを行い、それが完了してから再度設定訪問されるとのことでした。

私が想像したトラブルの形

ここまでの話を聞いて、私なりにいくつかの可能性を考えました。

一つは、初期化直後のRTX830がIPoE接続を選び、さらにIPv4 over IPv6のトンネルまで形成して、デフォルトゲートウェイがそちらに向いてしまった可能性です。

その設定が残ったまま、後からPPPoEセッションを張ろうとして、意図した動作にならなかったのかもしれません。

もう一つは、同一の光回線配下にビジネスフォンなどPPPoEセッションを利用する別機器が存在していて、セッション上限に達していた可能性です。

また、RTX830は設定次第でIPoEのIPv6接続とPPPoEのIPv4接続を共存させることもできます。

つまり、

「IPoEがあるからPPPoEはできない」

と単純に決めつけられる話でもありません。

WAN側に設定されているプロバイダ情報を確認し、不要な設定を削除し、改めてPPPoEの設定を行えば接続可能だった可能性もあります。

このあたりは、現場の実機設定を直接見ていないので断定はできません。

ただ、複数の要素が絡み合っていた可能性は高そうです。

「併用の手順」を探すのではなく

最後に、その方がこう話されました。

「v6とPPPoE、併用する設定を調べてみます」

この言葉に対して、私は少し厳しめのことをお伝えしました。

そのものズバリ、

「IPv6 IPoEとPPPoEを併用する手順」

というようなマニュアルを探しても、おそらく期待する答えは出てきません。

必要なのは、TCP/IPの理解と、YAMAHAルーターのリファレンスマニュアルを読んで、どの設定項目をどう組み合わせれば目的の状態を作れるのかを考えることです。

ネットワーク設定は、手順書通りにボタンを押せば終わる仕事ではありません。

もちろん、定型的な設定で済む場面もあります。

ただ、現場では回線契約、既存機器、過去の設定、プロバイダ情報、IPv6、PPPoE、IPoE、ひかり電話、ビジネスフォンなど、いくつもの条件が重なります。

その中で、

「この環境では何が成立していて、何が邪魔をしているのか」

を探る必要があります。

設定とは、パラメータを探り当てる仕事

ある程度ネットワークの設定経験を積んでいる人たちは、単に手順を探しているわけではありません。

数ある設定項目の中から、目的の構成を実現できるパラメータを探り当てています。

今回の話も、

「PPPoEができない」

という一言だけでは原因は決まりません。

接続IDとパスワードが正しいのか。

別アカウントでは繋がるのか。

IPoE契約が残っているのか。

ルーターにどんな設定が残っているのか。

他の機器がセッションを使っていないか。

IPv6とIPv4の経路がどうなっているのか。

それらを一つずつ見て、成立条件を探していく必要があります。

これは、前回書いたDB接続エラーの話とも同じです。

「サーバーは動いているのに繋がらない」

「PPPoEの設定を入れているのに繋がらない」

どちらも、表面上の症状だけでは原因に辿り着けません。

どこまでは正常なのか。

どこから成立していないのか。

その境目を探すのが、トラブルシュートの仕事なのだと思います。

いいなと思ったら応援しよう!