見知らぬ人の言葉
私の職場は野外作業の仕事が多い。
普段ならば仕事をしながら体が動かせて健康的だが
夏場となったら話は別だ。
令和に入り、5月でも30度近い。
夏は最高気温35度以上の日が続く。
8時前に30度を超え、夕方も32度がザラだ。
そして夏場は天気の急変も多く、ずぶ濡れになることもある。
私は野外作業担当のため、一週間前に翌週の計画を立てるように命じられる。
天気予報に合わせ、何度も何度も計画変更を命じられ、計画を変更するごとにやいやい言われる。
暑さや雨から職員だけで野外作業をやろうとすれば「利用者にやりたい、やりたくないは確認したのか?やる気がある場合はどうするのか?」
「何日の何時から誰がどんな動きをするのか小まめに考えて。」と上から言われる。
利用者を連れて一緒にやろうとすれば
「最高気温30度以上の日が続くのに、利用者にやらせるのはかわいそう。」
「それでどうするの?」と上から言われる。
私一人でやろうとすれば「みんなでやってください。」と上から言われ
職員の誰かがやろうとすれば「どちらでもいい。」と上から言われ
「それでどうするの?」と私はまた言われる。
上の中に正解があるなら自分で決めて命じればいい。
何故決めない。何故私に責任をとらせる。
大嫌いだ。これだから大嫌いだよ。
「どうするの?」
「どうするの?」
「どうするの?」
言われるたびに追い詰められる。
「どうしたら…」
「どうしたら……」
「どうしたら………」
頭の中がぐるぐるする。
結局私は暑い中、人の三倍サビ残でやった。
連日ごちゃごちゃ言われ、私は上に対してキレながら「その時間では慣れた人でも終わりません。私は人手不足だったり、みんな忙しいから遠慮して無理して頑張ってるだけなんですよ。」と言ってしまった。
自己嫌悪だ。
理解力がなく、現場が分からない人に期待しても無駄だし
感情的になったら余計に私が悪者にされるのに。
悶々とした中、野外作業をした。
暑い。
早く終わらせないと。
早く。早く。
地域の人がいた。
私は暑さをグッと堪え、表情を作る。
「おはようございます。今日も暑いですね。」
私は笑顔で伝えた。
「おはようございます。今日も暑いねぇ。暑い中お疲れ様。気をつけてね。」
近隣の方が優しく微笑む。
私はジワリと涙が込み上げた。
「お心遣いありがとうございます。毎日暑いですからね。体調崩さないようにお互いに体に気をつけましょう。」
私は頭を下げた。
名前も顔も知っていて一緒に何年も働いている人が、上司が、私に言ったこと。求めたこと。
名前も顔も知らない初めて会った人が私に言ってくれたこと。思いやり。
どちらも忘れないけれど
優しさを心に上書きできて
嫌なこと全部なかったことにできたらいいのに。
ありがとう。
ありがとうございます。
名前も知らないあなたの一言で
どれだけ私は救われたか分からない。
だからまだ頑張れる。
まだ頑張れる。
どこまで頑張れるかは、私にも分からない。
